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タイトル情報屋台http://johoyatai.com/)掲示板上のやりとり
記事No203
投稿日: 2007/03/26(Mon) 11:27
投稿者太田述正
<高成田>

日本は「非核」を貫け

藤田正美さんの「ご異見番」にある「世界は『核拡散』の時代へ」を読んで、まったくその通りだと思いました。NPT(核拡散条約)体制という既存の核保有国の身勝手な論理を、ほかの国がかろうじて認めるとしたら、「核軍縮」しかないのに、保有国はそれをさぼり、米国にいたっては、新規の核開発に着手するありさまです。

インド、パキスタンが核実験で「核保有国」になったのを見れば、フセインや金正日ような独善的な指導者が核保有の誘惑にかられるのは当然で、北朝鮮は核実験までこぎつけ、いまはイランが核開発への道を拓こうとしています。

民主的な政権ができて自主的に核兵器を放棄した南アフリカ、米国などの圧力に耐えかねて核開発の放棄を宣言したリビアなどは、むしろ例外ということになりそうです。

この問題でもっとも気になるのは、日本の動向です。北朝鮮の核実験に対して、日本の世論は冷静で、日本の核武装化についての論議は高まりませんでしたが、藤田さんが指摘するように、核拡散の方向が強まれば、日本の世論だって変化するのではないでしょうか。

「英吉利亭」の太田述正さんにとっては、日本という国家を国家たるものにする機会と見るのかもしれませんが、道具を手にすると、いつか使いたくなるもので、日本には「非核」を貫いて欲しいと願うばかりです。
投稿者: Toru Takanarita  投稿時間:2007/03/25 11:51:20

<太田>

>日本は「非核」を貫け

 4つのトピックのうち、これだけが中立的な表現でないのはいかがかと思います。

>「英吉利亭」の太田述正さんにとっては、日本という国家を国家たるものにする機会と見るのかもしれません

 私は、英国のかつての植民地(エジプト)で幼少期を過ごしたので、いかに長く植民地であることが住民の精神を荒廃させるかを身にしみて知っています。奴隷であったことがその人の精神を荒廃させることと同じです。
 ですから、私は日本を米国から独立させようとしているのです。
 「国家を国家たるものにする」なんて小沢さんみたいな言い方をしたことはありません。
 また、日本の独立を達成するために日本は核を持つべきだといった趣旨のことを言ったこともありません。
 そもそも私は日本核武装論者ではありませんでした。
 私が核武装論者に「転向」したのは、つい最近の昨年7月のことであり、そのやむなき事情は太田述正コラム(#1339、1340。
http://www.ohtan.net/board/
)上で明らかにしています。
 他人の考えに言及される時は、正確に言及されるようにお願いします。
 
 なお、これまで誰も情報屋台の投稿欄に投稿しなかったので、投稿を促すつもりでトピックを設定されたのでしょうが、不祥事対策をお考えのためか、投稿する前に管理者から求められる情報開示が多岐にわたりすぎていることも投稿がない理由の一つではないでしょうか。
投稿者: nobumasaohta  投稿時間:2007/03/26 11:02:53

タイトルRe: 情報屋台http://johoyatai.com/)掲示板上のやりとり
記事No212
投稿日: 2007/03/27(Tue) 15:30
投稿者太田述正
<高成田>

 「英吉利亭」(情報屋台での太田のハンドルネーム(太田)さん、失礼しました。世界の核拡散が日本「非核」を揺るがせると考えたときに、ふと、「英吉利亭」さんのことが思い浮かんだのです。

 昨年7月の北朝鮮の核実験を期に、やむをえず核武装論に「転向」されたようで、国民の多数派ではないと思いますが、国防を真摯に考えている人が「転向」しているという事実は、重く受け止めたいと思います。

 それでも「非核」を、という論理を稿を改めて書きたいと思います。

「やみ鍋軒」(高成田氏の情報屋台でのハンドルネーム(太田))主人より



<太田>

「やみ鍋軒」さん。
 ちょっとひどすぎるんじゃないですか。

 北朝鮮が核実験をやったのは昨年の10月ですよ。(
典拠をつけるまでもないけど、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%9D%E9%AE%AE%E6%B0%91%E4%B8%BB%E4%B8%BB%E7%BE%A9%E4%BA%BA%E6%B0%91%E5%85%B1%E5%92%8C%E5%9B%BD%E3%81%AE%E6%A0%B8%E5%AE%9F%E9%A8%93_(2006%E5%B9%B4)
)。

 そもそも、せっかく私の「転向」理由を書いたとして紹介した太田述正コラムに全く目を通していただけなかったようですね。

 もう一度繰り返します。
 
 他人の考えに言及される時は、正確に言及されるようにお願いします。

タイトルRe^2: 情報屋台http://johoyatai.com/)掲示板上のやりとり
記事No221
投稿日: 2007/03/28(Wed) 09:06
投稿者太田述正
<高成田>

 英吉利亭さん、またまた失礼しました。貴ホームページのバックナンバーの行間の空間が大きいので、一見さんは読めない者と勘違いしました。

 核武装への「転向」は、ペリーの北朝鮮空爆論がきっかけで、それは日本のことは考えずに、米国のことしか考えていないからだで、これは民主党のペリーにかぎらず共和党も含めた米国全体にいえるということですね。

 私も、米国は自国の利益しか考えていないし、北朝鮮のように、米国への直接的な脅威になっていない場合は、その傾向が目立つと思います。

 しかし、日本が核攻撃を受ければ、米国が核で反撃するという日米安保の建前がある以上、また、本音はわからかくても反撃があいまいである以上、抑止は働くと思います。反撃されるかもしれないという可能性があれば、必ずしも100%反撃しなくても、抑止になると思うからです。

 また、日本の核武装を米国が認めることはないと思います。米国が追求する核不拡散が完全に崩れるし、日本を「従属」させることもできなくなるからです。

 さらに、中国や韓国に対しても、日米安保が日本の核武装を抑え込んでいるコルクの栓だというフィクションも通用しなくなります。

 こうしたデメリットに米国は耐えられないと思いますし、米国に対してそれだけの苦痛を与えることを日本側からやるとは思えません。

早とちりの「やみ鍋軒」の主人より

<太田>

>「米国<は>・・日本のことは考えずに、米国のことしか考えていない」

は、いささか舌足らずの紹介ではないでしょうか。
 私は、

 「米国人が・・米本土に住んでいる人の命の方を日本や韓国に住んでいる人の命より重視するというエゴイスティックな主張・・をすることは一見当然のように見えるけれど、・・執筆者がどちらも、つい最近まで民主党政権下の政府高官であった人物・・であり、しかも、現在米国を代表する著名な・・大学の教授・・であるという立場、かつそのテーマが核問題である、ということを考慮すれば、絶対に公に口にすべきではない主張なのです。」
https://app.cocolog-nifty.com/t/app/weblog/post?__mode=edit_entry&id=12807546&blog_id=117931

と記したところです。
 それはともかくとして、

>日米安保<は>日本の核武装を抑え込んでいるコルクの栓だ

は、スタックポール在沖米海兵隊少将(当時)の発言を指していると思われるところ、彼は、「の核武装」なんて言っていませんよ。また、蛇足ながら、「コルクの栓」ではなく、「瓶の栓」(cap in the bottle)です。
http://www.archivelago.com/~Chisso/041029beisenryaku.htm

 高名なジャーナリストである「やみ鍋亭」さんに、こんな基本的なことを申しあげたくないけれど、うろ覚えや思い込みで「議論」をするのはやめましょう。
 そのためにも、典拠にきちんとあたられることをお勧めします。
 このトピックを設定されたことには敬意を表したいと思いますが、少なくともこのトピックでは「やみ鍋亭」さんとこれ以上議論はしたくないですね。

タイトルRe^3: 情報屋台http://johoyatai.com/)掲示板上のやりとり
記事No223
投稿日: 2007/03/28(Wed) 18:51
投稿者太田述正
<高成田>

 どうもこの問題では、英吉利亭さんに嫌われているようで、こちらは安保はしろうとで、安保のプロの胸を借りようと思ったのですが、残念です。

 びんのふた論は、日米安保の基本的な概念で、それは核についての議論でも、敷衍できるのだと思ったのですが、だめですか。

 なお、グーグルを見ても、日米安保でコルクという言い方もずいぶんと使われていますし、コルクという言い方で米国の研究者と議論をしたこともあります。ほかの失礼はあやまりますが、少なくとも、このことで、非難される筋合いはないと思います。

「やみ鍋軒」より

<太田>

 私は、防衛庁の中にいた頃から、カーター政権末期以来、民主党、共和党を問わず、米国政府は一貫して日本に軍事的自立を促してきている、という認識を持っています(太田述正コラム#30)。
 なおこれは、日米安保を、拡大されたNATOの中に取り込む、あるいはオーストラリア等を含めた太平洋版NATOに発展させるもくろみとセットになっています(同上)。
 この事実から、日本のマスコミはあえて目をそらせてきたのではないでしょうか。
 現に、マスキー国務長官(当時)が初めてこのような趣旨の発言を行った(同上)際、これをキャリーした時事の配信を、日本のメディアは完全に無視しました。

 さて、この軍事的自立の中に、日本の核武装が入らないわけがありません。
 英仏はもとより、イスラエルやインド、更にはパキスタンにまで核武装を容認した米国ですよ。
 そもそも、これら諸国と違って、日本は、米国の核戦略に深くコミットしています(同上)。

 以上申し上げたことと、日本が核武装を選択するかどうかは全く別問題ですが、事実認識としては、以上のような認識を議論の共通の前提とすべきでしょう。

タイトル太田氏の日本核武装論に対する反論
記事No225
投稿日: 2007/03/29(Thu) 04:49
投稿者バグってハニー
今日はちょっと違うトピックで...。情報屋台は登録が面倒なのでこちらに書き込みます(眺めるだけでも登録が必要だなんて...)。

私は以下の三つの理由から太田氏の日本核武装論は意義が乏しく、実現性も非常に低いと考えます。

@「米国は日本を核の傘の外に置いている」という前提がまずおかしい
この傍証として前民主党政権のペリーらの発言を引いていますが、彼らの発言を太田氏が主張するように解釈することに私は同意しませんが、仮にそこは譲ったとしても、彼らの発言はあくまでも責任のない外野の発言でしかなく、それを「場合によっては米共和党も(太田コラム「戦後日本史の転換点に立って(その3)」から)」などと拡大解釈するのは根拠薄弱です。米国政府の真意はその最高責任者である大統領の発言から計るべきでしょう。高成田氏が「反撃されるかもしれないという可能性があれば、必ずしも100%反撃しなくても、抑止になる」といみじくも指摘したとおり、「攻撃される可能性は低いかもしれないが、もしも被害を受ければ甚大になる」というのが核による抑止の基本ですから、米大統領自身の明確なメッセージは核抑止の上で絶大な効果があります。
北朝鮮の核実験直後にブッシュ大統領は以下の声明を表明しています。
「私は、韓国と日本を含むこの地域の同盟諸国に対し、米国は核抑止と安全保障のコミットメントの全てを履行するであろうことを改めて保証した(太田コラム「北朝鮮核実験か(続x5)」から)」
つまり、大統領自ら米国の核の傘は万全であることを保証しました。
また、ブッシュ大統領は折に触れ北朝鮮の問題は話し合いによって解決することを強調しています。これは、ペリーらが主張する拙速な武力行使を明確に否定していることになります(というかブッシュが弱腰だからペリーらは強硬なこと言ってるのですが)。ブッシュの話し合い路線には様々な理由があると思いますが、米国が北朝鮮に武力行使すれば、韓国と日本の一般大衆が巻き込まれることは目に見えていますから、ブッシュ大統領は両国に対して配慮しているとも考えられます。さらに同日の会見では
「北朝鮮による、核兵器または核物質の国家または非国家的存在への移転は、米国にとって重大な脅威であると見なされ、かかる行為のもたらす結果に対し、北朝鮮に完全に責任を負わせるだろう(同コラムから)」
とも語り、これはWP紙のクラウトハマーによれば
「米国またはその同盟諸国で核爆発が起こった時は、北朝鮮以外に、核に係る諸義務をかくも不用意に破る核保有国はありえないので、これは北朝鮮による攻撃であると見なし、米国は北朝鮮に対し全面的な核報復を行う(同コラムから)」
ことを意味します。つまり、米国は従来の核抑止策に加え、「拡張された核抑止(同コラムから)」を整備する用意があることを表明しました。
拡張された核抑止では、例えばテロリストによる核攻撃に報復する際に、その出所を迅速に同定することが重要になります。ブッシュ大統領の声明に呼応し、この「核反応物質プロファイリング」を実現すべく、マイケル・メイ(Michael May)ローレンス・バリモア国立研究所名誉所長、ジェイ・デービス(Jay Davis)米国防脅威削減局前長官、レイモンド・ジーンロズ(Raymond Jeanloz)米科学アカデミー国際安全保障軍縮委員長の三名はネーチャー誌に連名で国際的なデータ・バンクの創設を提言しました。
http://www.nature.com/nature/journal/v443/n7114/full/443907a.html
今現在の技術でも、爆発が核によるものかどうかは一時間以内で、核物質の種類と起爆装置がどれだけ精緻であるのかは数時間から数週間で、核物質の「指紋」とも呼ぶべき固有の化学的物理的特徴は1〜2週間で判明します。ウランなら、どこの鉱山で産出され、どのように処理されたかによって同位体や不純物の組成が変わってき、プルトニウムも原子炉のタイプによって特有の変化が生じます。核爆発では必ず核反応物質に燃え残りが生じるので、後はそれを採取し、あらかじめ収集しておいたデータ・ベースとつき合わせることによって出所が判明します。
ドイツ・カールスルーエの超ウラン元素研究所やオーストリア・ウィーンの国際原子力機関にはそのような核反応物質のデータ・ベースがすでに存在します。これらを国際的な協力によってより完全なものにしていくことが期待されます。テロリストやテロ国家がたとえこっそり核を爆発させても必ず突き止められて報復にあう、というのであれば、それは新たな、強力な核抑止となることでしょう。

すなわち、米国による核の傘はほころんでなどおらず、むしろ拡大強化されつつあると言えます。この時点で太田氏が唱える日本核武装論の根拠はすでに崩れています。日本がとるべき道は核武装などではなく、米国や諸外国と協調し、さらにはイニシアティブをとって、この新たな核抑止策を推進することにあると私は考えます。

(続く)

タイトル訂正
記事No226
投稿日: 2007/03/29(Thu) 05:07
投稿者バグってハニー
Oops...

ローレンス「バリモア」国立研究所じゃなくて
ローレンス「リバモア」国立研究所(Lawrence Livermore)でした。

タイトルRe: 太田氏の日本核武装論に対する反論
記事No227
投稿日: 2007/03/29(Thu) 11:48
投稿者太田述正
 太田述正コラム#1711「日本は核武装すべきか(その1)」をご覧ください。

タイトルRe^2: 太田氏の日本核武装論に対する反論
記事No233
投稿日: 2007/03/29(Thu) 20:07
投稿者太田述正
<高成田>

 英吉利亭さんのおっしゃる「非核武装論は非武装論の一環であり、非武装論者でない人が非核武装論をとるのは論理的には矛盾」というのは、極端な見方ではないでしょうか。核兵器も兵器のひとつですが、核を持つことによる政治的、軍事的コストを考えながら、核を持たないという選択もありうるからです。

 たとえば、日本が自衛力の一環として核兵器を持てば、北朝鮮にかぎらず、韓国や台湾の核保有を促し、中国の核強化を招くと思います。その政治的、軍事的コストやリスクを考えれば、米国の「核の傘」を前提にした非核を貫くほうが現実的なように思います。論理的に矛盾する現実はたくさんありますから、英吉利亭さんも、論理的でないから核を持て、と主張しているわけではないと思いますが。

 それでは、米国の「核の傘」は存続するのか、という問題があります。米国内にも、米国が傘をさすよりも、日本に持たせろという意見があると思いますが、共和党政権だろうが民主党政権だろうが、政権としては、日本の核武装を認めないだろうと思います。

 北朝鮮の核実験の直後、米政府もその日本向けセールスマンである駐日大使も、米国が戦後一貫して、核の傘で日本を守ってきたことを繰り返して強調し、大使は「米国を信頼してほしい」という言葉を使いました。

 国内では、すわ日本も核武装だという声が盛り上がらなかったのに、米国の反応が過剰だったことに驚きましたが、それだけ、米国が日本の核武装に神経質になり、そちらに向かうなというシグナルを懸命に出したのだと思います。

 さきごろ、チェイニー米副大統領が来日したのは、米・日・豪の同盟強化が狙いで、米政府内にはこの3国を軸にしたNATOの太平洋版という構想をつくろうという動きがあるのでしょう。英吉利亭さんのご指摘とおり、日本メディアの反応は鈍いかもしれません。

 米国はこの構想で、より自立的な軍事力を日本や豪州に期待していると思いますが、それが核となると、米国の見方は違うと思います。むしろ同盟の最後のよりどころ(求心力)として米国の「核の傘」を考えているように思います。太平洋版のNATOの狙いは、中国を包囲することですが、中国の核に対しては、米本土や米艦船などからのINBMによる攻撃が想定されていますから、あえて、日本や豪州の核を利用する必要はないと思います。

 いちいち根拠を示す余裕がないので、私の個人的な推測ということになりますが、いかがでしょうか。



タイトルRe^3: 太田氏の日本核武装論に対する反論
記事No234
投稿日: 2007/03/29(Thu) 21:00
投稿者太田述正
<太田>


 バグってハニーさんの続編を待ちましょう。

 それにしても「やみ鍋軒」さん。
 私はジャーナリストの経験はないのだけれど、あまり土地勘のない分野を取材する場合、土地勘のある分野での取材以上の勉強と慎重さが求められるのではないでしょうか。

 「中国の核に対しては、米本土や米艦船などからのINBMによる攻撃が想定されています」なんて言われちゃうとガックリくるのですよ。
 INBMはICBMのミスプリなんでしょうが、日本の経済事情について取材する際、「日本版NOX法」(SOX法の間違い)なんて言葉が質問事項に入っていたら、それだけでアウトでしょう。
 ついでに言うと、艦載の核兵器については、ICBMとは言いません。ICBMがIntercontinental Ballistic Missile の略であることを思い出してください。
 水上艦艇搭載の核はドマホーク巡航ミサイルが中心ですし、潜水艦搭載の核はSLBMです。

 もう一つ。
 私が既に示唆しているように、核戦略には核兵器システムだけがかかわっているわけではありません。
 通常兵力だって大きな役割を果たしています。
 冷戦時代のソ連の在極東第二撃核戦力(SSBN)の最大の脅威は、日本の自衛隊であったはずです。
 
 ですから、「」の中は、「中国の核に対しては、米国の核戦力と米国及び(その保護国である(!?))日本の通常兵力で対処することが想定されています」とすべきなのです。

タイトルRe^4: 太田氏の日本核武装論に対する反論
記事No235
投稿日: 2007/03/30(Fri) 05:07
投稿者バグってハニー
>  まるで自分自身に対してコメントするようなコメントを次回以降行う羽目になりそうです。

なんか、他人のふんどしで相撲取ってるような気分なのですが、安全保障関連は太田コラムが完璧に網羅しているので、結局そこにたどり着いちゃうんですよね。調べ物がなかなか分からなくて、ふと太田コラムを読み返してみると「何だ、書いてあんじゃん!最初から言ってよ!」というのがよくあります。

>  非核武装論は非武装論の一環であり、非武装論者でない人が非核武装論をとるのは論理的には矛盾です。

これには高成田さんに激しく同意しますね。世界には200カ国近くある中で、核保有国はごく少数派です。その必要がないのか、別な手段で代替しているのかどちらかでしょう。五大国以外の核保有国ではイスラエル・印・パは今現在進行中の紛争を抱えてますし、日本とは違います。日本も、所期の目的が非核でも達成でき、なおかつそちらのほうがコストがかからないのであれば、当然そちらを選択するのが合理的というものです。

>  豪州政府や韓国政府等と違って、日本政府と米国政府との間で、米国の核の配置や米国による核使用に関する話し合いが全く行われていない

のが問題なのだったらその話し合いを始めればいいだけの話と違うのですかね。独自の核武装よりも政治的ハードルはずっと低いし、財政的コストは限りなく0に近いですよ。前にしまださんとの間で旧ソ連による東欧でのSS-20の配備の話が出ましたよね。西ドイツのコール首相(当時)は米国の戦術核を積極的に受け入れることによってこの危機を乗り越えました。さらに、コールの英断はINF全廃という画期的な軍縮条約へとつながり、最終的に旧ソ連を「撃破」したわけです。日米は共同して相手が音を上げるまで軍拡を続ければいいんですよ。米国と日本は世界第一位と二位の経済大国ですから、束になればどんな国でも絶対に追随できません。逆に他の国に万が一でも勝機があるとすれば、それは日米が離反したときでしょう。私は非核三原則のうちの「持ち込ませない」を朝鮮半島が非核化されるまで暫定的に廃止し、米戦略原潜に日本へ寄港することを要請するのが一番手っ取り早いと思いますね。

>  米国の核戦略へのコミットとは、NATO有事等における日本の自衛隊の在来兵器による第三国の核戦力の撃破計画が存在していることを指しています。

最初は何のことかとドキッとしましたが

>  冷戦時代のソ連の在極東第二撃核戦力(SSBN)の最大の脅威は、日本の自衛隊であったはずです。

のことなのですね。自衛隊も「見せ金」ばかりじゃないじゃないですか。

>  議論が拡散しないための頭の整理の第一弾です。

すいません。議論は拡散しちゃいます。というかそういう構想だったもので。

タイトル太田氏への反論・第二弾
記事No236
投稿日: 2007/03/30(Fri) 06:15
投稿者バグってハニー
A太田氏の日本核武装論は日本がおかれた国際的立場を無視している

日本は資源・エネルギー・食糧を外国からの輸入に頼る工業国であり、そうやって作った製品を輸出することによって成り立っています。つまり、諸外国との良好な関係は日本にとって死活問題であり、たとえ米国が日本にとっての最大の貿易相手国であったとしても、大胆な政策変更を行う際にはそれ以外の国の反応も考慮する必要があります。そこで、太田氏への反論・第二弾では、私が知る限り太田氏が一度も触れたことのない、日本の核武装と核不拡散条約(NPT)の兼ね合いを議論してみたいと思います。

言うまでもなく、日本の核武装にとってNPTは大きな足かせとなるでしょう。巷間ではNPTの趣旨が正しく理解されていないきらいがありますが、この条約は三つの柱からなっています。
http://en.wikipedia.org/wiki/Nuclear_Non-Proliferation_Treaty
すなわち、@核不拡散、A核軍縮、B核の平和利用です。日本の核武装がもたらす大きな弊害はそのBと関わってきます。

日本は北朝鮮とは異なり、国内に有力なウラン鉱脈がないため原子力発電に用いるウランも輸入に頼っています。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A9%E7%84%B6%E3%82%A6%E3%83%A9%E3%83%B3
そして、日本の円滑な原子力燃料サイクルを支えているのはとりもなおさず、このNPTなのです。このことに関して小川伸一防衛研究所主任研究官は以下のように述べています。

日本は、米、英、仏、加、豪州、中国の6カ国と協定を結び、天然ウランや濃縮ウランを輸入しているが、これらの協定では、輸入した核関連物資の使用を平和(民生)目的に限定されている。したがって、日本が協定に違反した場合、禁輸措置に直面することは明らかである。日本の総発電量の約30%が原子力発電に依存していることを考慮すれば、こうした禁輸措置は、高速増殖炉を実用化し、核燃料サイクルを確立しない限り、日本経済に深刻な悪影響を及ぼすことが必定である。
http://www.nids.go.jp/dissemination/briefing/2003/pdf/200304.pdf
少し古いですが、それ以外の日本の核武装の問題点も非常に分かりやすく述べられているので、ぜひご一読ください。)

太田氏が論じるように、日本の核武装が米国の戦略と合致し、民主主義の手続きに則り、日本の核がそれ以上拡散しないように努力する限り、米国は日本の核政策をインドのように承認し協力することでしょう。(米国とインドの関係は米印核協定
http://en.wikipedia.org/wiki/United_States-India_Peaceful_Atomic_Energy_Cooperation_Act
を参照しました。)

しかし、日本は米国以外の国からもウランを輸入しています。日本は米国の顔色だけを伺って核武装すればよいわけではないのです。最悪の場合、たとえ一時的だとしても、電力3割減を甘受することになります。工業国・日本にとって、これは大きな打撃となることでしょう。果たして我々は、ピョンヤン市民のように蝋燭の明かりの下で夕食をとることに我慢できるのでしょうか(以前PBSで観たドキュメンタリーにそういう場面があったので)。

考えても見てください。五大国以外で核兵器を「違法」に所持しているのはイスラエル・印・パ・北朝鮮です。このうちイスラエル・印・パはNPTに一度も加盟したことがなく、イスラエルにいたっては核実験さえ行っていません。パキスタンは核実験に伴う制裁が効いたようで、今では米国の対テロ戦争のお先棒を担がされています。日本がNPT加盟国でありながら核保有国となれば北朝鮮に続いて二例目です。その暁には日本も晴れてトンデモ国家の仲間入りです。核武装とは国際的に干されることを覚悟の上で行うことなのです。

(第三弾では太田氏の提言を詳細に検証する予定です。)

タイトルRe: 太田氏への反論・第二弾
記事No237
投稿日: 2007/03/30(Fri) 10:13
投稿者太田述正
 コラム#1712をご覧ください。

タイトルRe^2: 太田氏への反論・第二弾
記事No240
投稿日: 2007/03/30(Fri) 19:54
投稿者太田述正
<高成田>

 英吉利亭<(太田)>さん、ありがとう。<情報屋台の掲示板中のこのトピックの>12<(本掲示板上では#233)>にある私の投稿で、INBMとあるのはICBMの誤りで、艦船からのICBMはありません。前者は打ち間違い、後者は「本土からのICBM」と書いていたら、「米国の核攻撃能力は本土からだけではないぞ」という英吉利亭さんの影の声が聞こえたように思ったので、あわてて「艦船」を入れた次第です。しろうとのあさはかさです。

やみ鍋軒より

タイトルRe^4: 太田氏の日本核武装論に対する反論
記事No238
投稿日: 2007/03/30(Fri) 17:28
投稿者岩本虎眼
>>「日本版NOX法」(SOX法の間違い)なんて言葉が質問事項に入っていたら、それだけでアウトでしょう

>> ドマホーク巡航ミサイル

タイトルRe^5: 太田氏の日本核武装論に対する反論
記事No239
投稿日: 2007/03/30(Fri) 19:22
投稿者太田述正
 ドマホーク巡航ミサイル(誤り)
→トマホーク巡航ミサイル(正しい)

 いやあ、すばらしいですね。
 全くこのミスプリには気づきませんでした。
 目の良い方ですねえ。
 だけど、私は専門家の端くれですから、この程度のミスプリは許されるのでは?
 と言いたいところだけど、素直に兜を脱ぎましょう。
 
 いずれにせよ、私としては、「潜水艦搭載の核はSLBMです」の方のケアレスミスを指摘してほしかったですね。
 潜水艦だって搭載できる核兵器はSLBMだけじゃなく、トマホークだって搭載できるし、昔は核魚雷なんてのもありましたね。
 ですから、「潜水艦搭載の核はSLBM等です」とすべきでした。

タイトルコラム#1713・1715をめぐって
記事No247
投稿日: 2007/04/02(Mon) 03:25
投稿者海驢
太田様

お疲れさまです

有料メルマガの方で、この情報屋台内でのやりとりを拝見しました。
私としては、概ね太田さんのご意見を支持します。
(若干、太田さんの表現がキツイというのは多少あると思いますが・・・)

 典拠の記載について、これは、不可欠だと思います。
例え私のような素人でも、込みいった議論には典拠が必要かと。
根拠が判らないと、意見の妥当性が判断できません。
=信頼するに不十分な意見としか思えません。
(これは、丸山眞男氏の本を読んだときも思いました)

 屋台主αさん、βさんのご意見は、典拠に当たる手間を惜しむ
言い訳のように思えます。少なくとも私は、勝手に典拠URLは
読み飛ばしますし、興味を持てばリンク先を確認します。
 URL記載を評価こそすれ、煩雑と思ったことはありません。

 また、根拠が不明確で思い込みだけで書かれたコラムなど、
知識の少ない人はミスリードされるという害があるでしょうし、
少し知ってる場合はいちいち突っ込みたくなってイライラします。
まして、根拠薄弱なのに「謙虚さがない」のはいただけないです。

※これだけは突っ込み入れます。
> 道具を手にすると、いつか使いたくなるもので、日本には「非核」を貫いて欲しいと願うばかりです。
今のところ、60年前の米以外、使いたくなっていないようですが、
日本だけが「いつか使いたくなる」はずないですよね。
「道具」をすでに手にした米露英仏中印パ等も、当然、
「いつか使いたくなる」はずですから、日本に非核を貫いて欲しい、
というのはいかなる理由なのでしょうか?
 中共や米国の代弁でしょうか?

タイトルRe: コラム#1713・1715をめぐって
記事No248
投稿日: 2007/04/02(Mon) 07:52
投稿者太田述正
参照先http://www.ueda-reiko.com/
 無料読者の方々のために、注釈を加えておきます。
 
 コラム#1713(正)と1715(続)は、未公開のコラムであり、それぞれのポイントについても、この掲示板上でご披露していません。
 これは、情報屋台の屋台主(及び管理人)のメーリングリスト内でのやりとりを、有料読者向けに配信したものです。
 永久非公開の方針でしたが、私以外の屋台主は完全匿名にしてあるので、6ヶ月後の公開を考えています。

 なお、海驢さんの投稿の最後の部分は、この掲示板への投稿#203中の高成田氏(やみ鍋軒)氏の主張へのコメントです。

タイトルRe: コラム#1713・1715をめぐって
記事No250
投稿日: 2007/04/02(Mon) 09:29
投稿者太田述正
参照先http://www.ueda-reiko.com/
>丸山眞男氏の本を読んだときも思いました

 今手元にないのですが、彼の『日本の思想』(岩波新書)がそうだったかもしれません。
 しかし、今私の手元にある5冊の彼の著作には、(対談を転載した1冊を除き、)典拠がついています。

タイトルRe: コラム#1713・1715をめぐって
記事No255
投稿日: 2007/04/03(Tue) 07:12
投稿者バグってハニー
すいません、第三弾が遅れて。先生が私の投稿に正面から反論しないので、いろいろ悩んじゃってますが、そのうちなんか書きます。

なんか、転載してもらったおかげで変なことになっちゃって申し訳ないです。でも、情報屋台の掲示板、読んでる人、両手(片手?)で数えるのよりも少ないでしょうから、とても書く気になれないですよね。

このアルファ、ベータ両氏は平均的な日本人だと思いますね。私も別な掲示板でいろいろ典拠つけて主張したら否定的な反応が返ってきてがっかりしたことあります。先生常々、日本の論壇には愛想尽かしたって強調しますけど、結局、日本人の手による社会批評、エッセイでもコラムでも掲示板のやりとりでも何でもいいですけど、こんなレベルです。

典拠を強制されるのは勘弁してくれっていうのは分かるんですよ。強制されること自体に反発は出ますし、まあめんどくさいですし、考え方はいろいろですから。でも、そういう人たちって典拠付けてるお前の方がおかしい、とか言い始めるでしょ。これはどう考えても狂っています。

結局、何のためにコラム書いてるのかって話ですよね。自分には何か考えがあって、それを他人に伝えたい、できればその考えを読者に正しいと認めてもらいたい、という動機があるからでしょう。ですから、何でもいいですけど何かモノを書くときにはまず自分の意見を明確にする、そしてその意見をできるだけ多くの事実によって支持・補強して説得力を持たせる、というのが肝要になります。ですから、その事実の確度は自説にとってクリティカルになるはずです。どこの誰が言ったのか、その情報は信頼に足るのか、と言った情報です。典拠をつけるという行為は自説の信頼性・説得力を上昇させることもあっても、害することは絶対にないです。逆に、典拠を付すことを頭から否定する人は自説には別に信頼性も説得力もなくてもいいんだ、と放言してるのと同じです。

>  「情報」を伝達するコラムを書く場合に大事なことは、どこま
でがこのような意味での「ファクト」であり、どこからが自分「オピニオン」であるかを読者にできる限り情報開示することである

同じこと私の博士論文の指導教官が言ってましたね。それが分かるように文末の表現を変えろとか(「である」などの断定調と「と考えられる」とか、私の投稿でも意識的にそうしてます)。科学論文書く人は必ず通る道です。ところが、日本の大学では(初等中等教育でも)こういうモノの書き方って体系的に教えることはまずありません。それで、自分で論文書くようになって初めていろいろ学ぶはめになるわけです。昔、出身大学でティーチング・アシスタントやってたときの話なのですが、実験やらせてそのレポート書かせるだけなのですが、ちゃんとしたレポートの書き方習ってないからかなり基本的なことから始める必要があって大変でした。それで、米国に来ると、小学3年生の娘に先日エッセイ読解の宿題が出されたのですが(イタリアの伝説的カーレーサーにまつわる文章)、設問は「まず筆者の意見を書き出せ」。そして、「その意見をサポートする事実を三つ抜き出せ」と来るわけです。それで私、がーんと来ちゃいました。米国ではガキンチョの時分からこういうこと叩き込むわけです。従軍慰安婦でもなんでも一方的に言い負かさせるのもむべなるかな。英語の文章って初めからそういう構造になってるんですよね。

ただ、こういうのはいつも温度差が出ちゃいますよね。ここは「屋台」なんだから細かいことはどうだっていいんだ、別に床屋談義でかまわないんだ、と言われたら返す言葉ないですよね。それでも、先生の提案はただただ情報屋台のレベルアップを願ってのことだということは両名には理解してほしいですけど。

まあ、両名には何言っても無駄のような気がしますから、先生にアドバイスしときます。
@典拠を最後に持ってくる。昔私が「ハフニウム爆弾」のコラムで試してみましたけど、典拠は全て(注1)とだけ示して、文末に列挙するというスタイルです。そうすりゃ、URLがうざったい、なんて難癖つけられることはなくなります。ただ、私は今のスタイルのほうが好きです。というのは読んだ直後にそれはワシントン・ポストの記事なのか、それともガーディアンか、BBCか、NYタイムズか、LAタイムズの記事なのか確認したいからです。(これも「何日付のガーディアン紙によると」などと枕詞をいちいちつけることによって代替できますね。)

A間違いは素直に謝る。「ドマホーク」の件です。まあ、議論が白熱してくると「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」で一歩も引けなくなることがありますし、先生の性格もよく存じ上げているつもりですが、あんな書き方する代わりに「高成田氏を声高に非難したくせに、自分もそそっかしい間違いをしてお恥ずかしいです。謹んで訂正します。すみません。」と書いときゃ、それで沙汰止みです。もう二度と突っ込まれることはありません。まあ、その突っ込みが理不尽だから再反論したのでしょうが、なんつうか、こんなことにエネルギーと時間を費やすのがまずばかばかしいです。引くべきときには引いたほうが、議論を円滑に楽しむことができるってもんです。