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タイトルコラム#1707(未公開)のポイント
記事No217
投稿日: 2007/03/27(Tue) 22:20
投稿者太田述正
 コラム#1707「慰安婦問題の「理論的」考察(その8)」のさわりの部分をご紹介しておきます。

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、ニューヨークタイムスが社説で日本政府を非難した・・ことについては先に太田掲示板上で話題になりましたが、今度はワシントン・ポストまで24日、社説で、・・<日本政府を非難>しました。
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 そこへ本日、日本のメディアや韓国のメディアの電子版はほとんどとりあげなかった話を、米英のメディアが大きくとりあげました。
 26日の国会で、安部首相が、「従軍」慰安婦について謝罪をし、にもかかわらず、官憲による強制連行は再度否定したのですが、これは河野談話を踏襲しただけのことであるところ、何故これがニュースになるのかいささか理解に苦しむのですが、ニューヨークタイムスと英ガーディアンがこれをそのまま報じたのはまだしも、英ファイナンシャルタイムスと英BBCに至っては、安部首相が強制連行を再度否定したことには触れず、謝罪をしたことだけを報じたのです。
 これらメディア、とりわけファイナンシャルタイムスとBBCの報道から、アングロサクソンは、強制性の有無を問わず、慰安婦制そのものを問題にしているのではないか、という私の推測が裏付けられた思いがしました。
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 <さて、>19世紀を迎えた頃の英国は、・・俗悪で、酔っぱらいの多い、歯に衣を着せない物言いをする、直截的にして性的放縦の英国でしたが、1937年のビクトリア女王就任の頃になると、英国は、すっかり様変わりしてしまいました。
 重苦しい中産階級的価値観が支配する、禁欲的、婉曲的、同調的にして性的抑制の国、英国へと変貌したのです。
 この180度的な大きな変化は、フランスの軍事的脅威、フランス革命伝播への恐怖、そして急速に発展する不安定な産業資本主義、が引き起こした社会的不安に危機意識を募らせ、犯罪・貧困・社会的騒擾の増大は放置できないとし、問題は貧困層や労働者階級の背徳にあると考えたところの、・・プロテスタント新宗派の博愛主義者達、・・世俗的な効用学派の哲学者達、及び自由市場を信奉する経済学者達が手を携えて、貧困層や労働者階級を主たるターゲットとして、性的節制・勤勉・自己抑制・洗練された行儀作法、を旨とする社会改革/道徳改革運動を展開したために生じたものです・・。 
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 やがて英国は、この禁欲的なビクトリア朝的倫理感から次第に解放されて行きます。
 ところが最近、英国では、保守党を中心にこのビクトリア朝的倫理感への郷愁が高まっています。
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 しかも、できそこないとはいえ、米国もアングロサクソンである証拠に、その倫理感の変遷は、以上ご紹介した英国の変遷を、タイムラグはあっても忠実に追って現在に至っているのです。

(続く)