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タイトル情報屋台(3)
記事No254
投稿日: 2007/04/03(Tue) 00:06
投稿者太田述正
<高成田>

F・フクヤマ氏の論考が面白い

1 米国の保守的な論客で、『歴史の終わり』の著者として名をはせたフランシス・フクヤマ氏が最近、「日本の勃興するナショナリズムは東アジアでの孤立を招く」と題するコラムを書いています。慰安婦問題での安倍発言をきっかけにしたもので、シンジケーションで流されているためでしょう、世界各地の新聞に掲載されています。
http://www.taipeitimes.com/News/editorials/archives/2007/03/28/2003354232/print

米国の戦略家たちは、日米安保を進めて中国を包囲するNATOのような枠組みをつくろうとし、そのために日本が憲法9条を修正することを支持してきた。しかし、米国は憲法改正の向かうところに注意をすべきだ。なぜなら、極東における米国の軍事的な正当性は、日本の防衛力を自制させるところに成り立っているのに、日本の新しいナショナリズムからくる憲法改正は、日本をアジアから孤立させることになりかねないからだ。ブッシュ大統領は、日本がイラク戦争を支えていたので、日本の新しいナショナリズムについて余計なことは言わなかった。しかし、日本がイラクから自衛隊を引き揚げたいま、ブッシュ大統領は安倍首相に直言をするのではないか。

要するに、米国はこれまで対中戦略を考えて、日本の憲法改正の動きを支持してきたが、安倍首相のような日本の新しいナショナリズムを放置しておくと、対中戦略もうまくいかなくなると、警告しているのです。

慰安婦問題で日本政府に謝罪を要求する決議案を米議会に出しているのは、米民主党の議員ですが、最近、イラク戦争のていたらくに失望して「転向」したとはいえ、ネオコンの一人と見られていたフクヤマ氏までが、日本のナショナリズムを気にしだしたのは、興味深い現象だと思います。

日本の核武装を米国が認めるかどうか、別のカテゴリー(日本は「非核」を貫け)で、議論が進んでいますが、とても米国が認めるとは思えないひとつの根拠として、フクヤマ論考をあげておきます。

なお、アサヒ・コムの「アスパラクラブ」にある「aサロン」で、「ニュースDrag」というコラムを連載しているのですが、そこで、もう少し詳しく、この問題を論じています。「アスパラクラブ」も「情報屋台」と同じように、入りづらいので、申しわけありませんが、あわせてお読みいただければ幸いです。

(やみ鍋軒より)

<太田>

 またも私を無理やりひっぱりだしていただくという重ね重ねのご配慮に感謝します。

 この台北タイムス掲載コラムは私も読んでいますが、フクヤマが、日本については、どシロウトであることを発見して憐憫の念さえ覚えました。
 ここにも、慰安婦決議を推進している某米下院議員同様、米国に過剰適応した日本人がいた、ということです。

 (英語のフクヤマについてのウィキペディアには、彼の両親(確か片方は日系米人、片方は日本人)についてどころか、彼が日系人であることすら出てきません。これは、フクヤマが自分のバイオに頑ななまでにこれらのことを記していないことを推測させます。確か彼は日本語が全くできません。)

 というのは、このコラムの中でフクヤマは、1990年代初めまで(当時既に評論家として大変な人気を博していた)渡部昇一なる人物の存在を全く知らなかったこと、渡部がフクヤマの「歴史の終わり」の翻訳者として日本の出版社によって指名されて初めて渡部を知ったと述べているからです。
 しかも、フクヤマは、渡部の名前をWatanabe Soichiと誤記しています。
 これは単なる校正ミスと片付けるわけにはいきません。なぜなら、フクヤマが知るところとなった渡部に対する批判がこのコラムの中でかなりのウェートを占めているからです。
 以上から、フクヤマがいかに日本について無知であるかは明らかです。

 その日本は、1980年代終わりには、文字通り米国の経済的脅威となっていました。
 にもかかわらず、フクヤマは、日本を知ることを避け続けてきた、ということになります。
 どうりで、フクヤマは「歴史の終わり」などという早とちりでノーテンキな本が書けたのでしょうね。
 日本について全く土地勘がない、というか土地勘を持つことを頑なに拒み続けてきた人物が書いた日本についてのコラムなんぞ、われわれは聞く耳を持ってはいけないのです。
 軍事について余り土地勘をお持ちでなさそうな「何とか軒」さんの日本核武装反対論同様にね。

 念のため申し上げておきますが、私は渡部ファンではありません。
 太田述正コラム#1694〜1696で渡部氏のアングロサクソン論批判を展開したばかりです。
 (未公開ですが、太田掲示板
http://sol.la.coocan.jp/wforum/wforum.cgi
で、「コラム#1694(未公開)のポイント」(以下同じ)と題して内容の概要を示してあります。)

タイトルRe: 情報屋台(3)
記事No256
投稿日: 2007/04/03(Tue) 09:01
投稿者太田述正
<高成田>

 やみ鍋軒の主人です。私がF・フクヤマ氏の論考をなぜ面白いと思ったかというと、米国の外交戦略に影響力を持っている人物が、米国が看過できないものとして、日本のナショナリズムを意識しはじめたからです。

 これまでアーミテージ氏のような知日派が意識的に避けてきた部分に、知日派でないからこそ気付いて、なんだ話が違うじゃないかと言い始めた、というところでしょう。そのきっかけは、彼自身が体験した靖国神社の付属施設である遊就館であり、慰安婦をめぐる安倍発言だったということです。

 日米同盟を機軸に中国や北朝鮮と対峙するという米国の基本戦略にとって、日本のこうしたナショナリズムが突出してくることは、不安要因になるというわけで、これが米国の主流になるとは思えませんが、不協和音として感じ始めているのは事実だと思います。

 「靖国の本質はA級戦犯の合祀ではなく、太平洋戦争を正当化する遊就館のイデオロギーだ」といった見方は、民主党系の知日派では、常識のようになっていますから、民主党が次の政権に就けば、日本警戒論がもう少し強まるかもしれません。

 日本の保守の主流は親米なのだから、フクヤマ氏の反応は過剰反応かもしれませんが、戦勝国であるがゆえに戦前と戦後が断続していない米国にとっては、戦前の日本は間違っていた、という歴史認識は共有したいところでしょう。

 日本の保守系の言論を見れば、東京裁判は勝者の勝手な裁判だし、南京虐殺は中国が騒ぎ立てるほどのものではなかったし、性奴隷のような慰安婦もいなかった、という主張があふれています。その主張の正しさの度合いはさておいて、日本の首相がこれらをそのまま米国に主張したのちに、日米同盟の重要性をいくら叫んでも、米国は聞く耳を持たないでしょう。

 安倍首相にそんな意図は毛頭ないと思いますが、慰安婦問題で思わず、「親米保守」の微妙な均衡を超えて、危険領域に踏み込んでしまった、ということではないでしょうか。繰り返しますが、知日派ではないフクヤマ氏が言い出したことに意味があると思います。

 ところで、フクヤマ氏には何度かインタビューをしたりしているのですが、出自については「日系3世」という意識しかありませんでした。しかし、朝日新聞の人物紹介欄に載っていた記事を読んだら、母親は日本人とあったので、驚きました。その記事を下記に書き写しておきます。

フランシス・フクヤマ氏 「アメリカの終わり」を出版した米政治学者(06年12月20日付朝日新聞)

自らを「背教者」と呼ぶ。米ブッシュ政権を支える新保守主義者(ネオコン)の一人だった。だが、今年刊行した「アメリカの終わり」(邦題)でイラク政策は誤りだったと批判し、ネオコンに別れを告げた。転向者と言われ、絶交状態になった仲間もいるが、「しがらみを断ち切ってでも発言すべき時がある。米国はあまりに傲慢だった」。

 ニューヨークで育った。父は日系2世の宗教学者、日本人の母は京都大教授の娘。父方の祖父は戦前、日系人として強制収容されている。家庭内の会話は英語だった。両親は、息子に聞かれたくない時だけ日本語を話した。

 ハーバード大学院修了後、国務省に入って対中東・欧州の外交政策を担当。01年からジョンズ・ホプキンス大学院で国際政治経済を教える。

 柔らかな物腰は日本人的だが、日本語は今も話せない。「日系米国人の研究者は日本だけの専門家になりがち。僕は日本語ができなかったからこそ、多様な問題にかかわることができた」

 いとこの河田悌一・関西大学長に招かれ、来春からは関西大の客員教授にもなる。アニメ好きの16歳の長男は喜んで、家庭教師に日本語を習い始めた。

 生涯で訪れた最も美しい場所は、京都の法然院だという。日本の陶器や刀の収集が趣味だった亡き両親が、この寺に眠っている。

<太田述正>

上記投稿を読まずに、以下を書いたことを最初にお断りしておきます。
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 昨夜、寝る直前にこの新しいトピックを目にし、大急ぎでコメントを書いて投稿したので、補足しておきます。
 
 フクヤマのコラムの最大の問題は、次の個所にあります。

Watanabe, a professor at Sophia University, was a collaborator of Shintaro Ishihara, the nationalist politician who wrote The Japan that Can Say No and is now the governor of Tokyo.
I heard him explain in front of large public audiences how the people of Manchuria had tears in their eyes when the occupying Kwantung Army left China, so grateful were they to Japan. According to Watanabe, the Pacific War boiled down to race, as the US was determined to keep a non-white people down. Watanabe is thus the equivalent of a Holocaust denier.

 つまり、フクヤマは、渡部を「ホロコースト否定論者に相当する」と評しているわけですが、「ホロコースト否定論者(Holocaust denier)」という言葉が欧米でもつ意味をご存じの方は、これがおよそ人間に対して投げかけられる最大の悪罵であることはご存じでしょう。
 フクヤマが紹介している渡部の言は、もう10年以上日本の論壇をフォローしていない私としては、は本当に渡部がそう言ったのか知りませんが、仮に渡部がそう言ったとしても、第一に、「太平洋戦争」の米人種差別原因論は、昭和天皇の考えでもあります。

 「<先の大戦>の原因を尋ねれば、遠く第一次世界大戦后の平和条約の内容に伏在してゐる。日本の主張した人種平等案は列国の承認する処とならず、黄白の差別感は依然残存し加州移民拒否の如きは日本国民を憤慨させるに充分なものである。・・かかる国民的憤慨を背景として一度、軍が立ち上がった時に、之を抑へることは容易な業ではない。」(昭和天皇の1946年の発言。「昭和天皇独白録」文春文庫24〜25頁)

 第二に、満州国の(日本人以外の)住民の中で、敗戦で日本人が引き揚げる時に涙した人々がいても全く不思議ではありません。
 これに関連し、今上天皇は、日中戦争の原因が中国側にあると考えているとしか思えないことを付言しておきます(太田述正コラム#214、215)。

 しかも、フクヤマは、渡部を石原慎太郎の共謀者(coollaborator)であると言っているのですから、石原都知事までホロコースト否定者だと言っているに等しいわけです。
 これらは許しがたい暴言であって、渡部の数多くのファンのみならず、(私自身は石原に票を投じたことは一度もないけれど、)石原を都知事に選んできた東京都民、ひいては日本国民に対する侮辱です。
 それだけでこのコラムはゴミ箱に投じられるべきでしょう。

 恐らく、フクヤマは、米国の学校の教科書に書いてある、「太平洋戦争」についての歴史観をうのみにしているのであって、この点に関しては全く思考停止状態にあるのでしょう。
 私が、フクヤマが「過剰適応」であると言ったことがご理解いただけたでしょうか。
 
 ここで遅ればせながら、典拠をつけておきましょう。
フクヤマが昨年の新著 ’After the Neocons’ で従来のネオコン路線と決別、政権批判に転じた時に投げかけられた批判は、同時に「歴史の終わり」に対する批判になっていて参考になります。
参照:
http://books.guardian.co.uk/reviews/politicsphilosophyandsociety/0,,1744735,00.html
http://www.slate.com/id/2137134/

 また、フクヤマの両親や日本語については、東京新聞2007.3.20付電子版(
http://72.14.235.104/search?q=cache:zIhnmtgWYYUJ:www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20070320/mng_____kakushin000.shtml+%E3%83%95%E3%82%AF%E3%83%A4%E3%83%9E%EF%BC%9B%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E&hl=ja&ct=clnk&cd=3&lr=lang_ja
)に記されています。

タイトルRe^2: 情報屋台(3)
記事No257
投稿日: 2007/04/03(Tue) 17:45
投稿者太田述正
<太田>

 なんだか、「やみ鍋軒」さんのおっしゃることにケチばかりつけていると思われるといけないので、まだ未公開ですが、私のコラムの全文を一つご紹介しておきます。
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太田述正コラム#1686(2007.3.9)
<慰安婦問題余話(その2)>

<省略:投稿#131参照>
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 つまり、「やみ鍋軒」さんと、私の問題意識は、かなりオーバラップしているのですよ。
 私が、「やみ鍋軒」さんがフクヤマのコラムを取り上げたことに異議申し立てをしているのは、それが、「相手の人格を傷つけたり、「反日」とか「ファッショ」とか、レッテル貼りの批判をしたり」していて、本掲示板に投稿されたものであるとしたら、削除されてしかるべき代物だからです。
 それにフクヤマのコラムは、私が皆さんにおこがましくも求めているところの、情報屋台掲載コラムがクリアすべき質にも全く達していません。
 ですから、フクヤマのこんなコラムについては、これを日本人同士の議論を促すためのたたき台として紹介するなどということは止めて、批判の対象とするかせめて無視すべきだ、ということを言いたいのです。
 「やみ鍋軒」さんや私がいかなる歴史観を持っているか、日本の核武装を是とするか否か、石原や渡部が好きか嫌いか、なんてこととは関係なくね・・。

タイトルRe^3: 情報屋台(3)
記事No261
投稿日: 2007/04/04(Wed) 09:36
投稿者太田述正
<高成田>

やみ鍋軒の主人です。私が慰安婦問題をとりあげているのは、中国や韓国ではなく、米国で論議になっている現象が米国ウォッチャーのはしくれとして面白いと思ったからです。NYタイムズやLAタイムズ、Wポストのようなリベラル的な新聞だけならまだしも、フクヤマ氏のような保守と目される論客まで加わったところが新といったしい現象だと思いますし、Wポストは「ダブルトーク」というきつい言葉まで投げかけました。

日本の保守派の人たちが日韓併合から中国侵略を経て太平洋戦争までの日本の行動を正当化しようとすればするほど、米国の世界観や歴史観と相容れなくなると思います。今回の慰安婦問題騒ぎで、その矛盾が鮮明に出てきたと、私は思うのです。

英吉利亭さんは、私の問題提起を受けて、より一般的な形にすると、「日本は、米国の保護国として米国の世界観や歴史観を受け入れ続けるのか」(A路線)、それとも「米国と自由・民主主義という基本的価値は共有しつつも、独自の世界観や歴史観を持った独立国になるのか」(B路線)という選択だと、まとめています。

こう比較すれば、だれだってBに○を付けたくなります。私は「親米保守」といわれる保守派の人たちが、戦前の日本について「独自の世界観や歴史観」を持っているのなら、なぜ、現在の米国の政策について、たとえばイラク戦争について、おかしいと文句を言わないのか、と思うのです。

私は、戦前の日本は多くの過ちをおかしてきたと思いますし、数十万という非戦闘員を無差別に殺戮した米国の東京大空襲や広島・長崎への原爆投下は大きな過ちだと思っています。その延長線上で、ベトナム戦争もイラク戦争も誤った戦争だと思い、機会があれば、そう語ってきました。

私は保守派のなかでいえば、イラク戦争を批判して、それに加担した小泉首相を「ブッシュのポチ」だと言い放った小林よしのり氏らのほうが保守という独自の歴史観で米国に対しているという意味で、一貫していると思うのです。

ネットメディアとして独自の世界観を示しているジャーナリストの田中宇さんが最新の「日米同盟を揺るがす慰安婦問題」と題したコラムで、フクヤマ氏の論考も取り上げています。内向きをめざす米国の日本離れを示す兆候として、米国での慰安婦問題の取り上げ方を論じています。

http://tanakanews.com/070403JPUS.htm

私はイラク戦争の失敗で、「単独行動主義」から「国際協調主義」に、ややシフトした程度だと見ていますが、世界に積極的に関与しようとする新ウイルソン主義(ネオコン)から、伝統的な孤立主義へ回帰しようとしているというのは、少なくとも、いまの米国のそうありたいという「空気」を表しているように思えます。

タイトルRe^2: 情報屋台(3)
記事No260
投稿日: 2007/04/04(Wed) 05:23
投稿者バグってハニー
また英語の話で恐縮ですが...

"collaborator"は単に「共著者」という意味じゃないですか?「それでも「NO(ノー)」と言える日本―日米間の根本問題」という本を小川和久氏と三人で出してますし。先生の解釈だと"Watanabe, a professor at Sophia University, WAS a collaborator of Shintaro Ishihara"と過去形で書いてる意味がわかんないですよね。フクヤマは出版社に紹介されただけで渡辺のこと知らなくて、それは読者もそうだろうから、石原という有名な人をダシにして、昔一緒に本を出したこともあるからどこぞの馬の骨ではないよ、と言ってるだけだと思うんですけど。

それから"Holocaust denier"の部分はそれに引き続く、"I am regularly sent books by Japanese writers "explaining" that the Nanjing Massacre was a big fraud."の部分を端折って論じるのはフェアじゃないと思います。つまり「南京虐殺はでっちあげだと主張する本が私のところにしょっちゅう送られてくるが、渡辺はそういう本の著者の一人だ」という意味でしょう。渡辺はいろいろな理由をつけて(それが論理的であるかどうかはともかく)南京虐殺を否定していることは確かです。以下のブログでは、そのような渡辺の講演を書き起こしたものが紹介されています。
http://kukkuri.jpn.org/boyakikukkuri2/log/eid251.html
渡辺はフクヤマとの対話においておそらく自説を紹介したのでしょう。

ホロコーストと南京虐殺は規模も目的もそれが起きた理由も全く異なりますが、それを否定する人たちはそれが被害にあった人たちによるでっちあげだと主張する点においては同じです。フクヤマはこのアナロジーに着目して渡辺をホロコースト否定論者と同列に悪罵したのでしょう。中共のみならず、この「でっちあげ」には東京裁判を行った米英も加担した、と渡辺は主張しているわけですから、普通に考えて米国人がまともに相手することはないでしょう。

僭越ながら高成田氏の投稿に補足しますが、仮に太田先生が唱えるようにフクヤマは日本音痴だとしても、我々は簡単にフクヤマの主張を切り捨てるわけにはいかないでしょう。というのは、米政府の対日政策を決定する人々が太田先生と同じ結論にたどり着くとは限らないからです。むしろ、日本に対する「誤解」「無知」「無理解」に基づいて日本の取り扱いが決まることは十分にありえると思います。そのように考えると、安倍首相の不用意な発言は私には残念でなりません。理由もなく日本の対外関係に波風を立てているとしか思えないからです。高成田氏の意見は、私のように日米同盟の強化という視点から発されたものではないとは思いますが。

タイトルRe^3: 情報屋台(3)
記事No266
投稿日: 2007/04/04(Wed) 20:13
投稿者太田述正
 コラム#1719をごらんください。

タイトルRe^4: 情報屋台(3)
記事No272
投稿日: 2007/04/05(Thu) 07:47
投稿者太田述正
<高成田>

英吉利亭さん、あなたの以前のコメント(#257)で気付いたのですが、私は「元朝日新聞論説委員」ではなく「現朝日新聞論説委員」です。まさか、こんなばかなことを書くやつが論説委員であるはずはない、という皮肉であれば、甘受しますが、私の専門は国際経済と米州全般ということで、少なくとも私が日米安保について、社説を起案したことはありません。

きょう、知日派の元米政府の高官に会ったので、私の持論(米国における慰安婦問題は、安倍首相がナショナリズムを先鋭化させることで、米国から文句を言われることはないと、見誤った結果)をぶつけたら、「米国では、保守もリベラルも人権は重要視するので、慰安婦発言を看過できなかったからでしょう」と言ってました。

なるほど、そういう意味では、安倍首相は人権という米国民が重要と考える価値の重さを見落としたということでしょうか。M・ホンダは知人だそうで、「彼は学校の教師出身で、昔から正義漢です。中国や韓国系の有権者が地元に多いという理由もあるでようが、それだけではありません」と説明していました。

私の印象は、それほど好意的なものではありませんでしたが、より近い人の発言ですから、ここにあわせてお伝えします。