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タイトルコラム#1733(未公開)のポイント
記事No305
投稿日: 2007/04/14(Sat) 22:43
投稿者太田述正
 コラム#1733(2007.4.14)「暮れゆく覇権国の醜聞(続)」のさわりの部分をご紹介しておきます。

 その後、英ガーディアンが、ウォルフォヴィッツの辞職を求める論説を掲載した一方で、米ウォールストリートジャーナル(WSJ)がウォルフォヴィッツ擁護の論陣を張り、事態は、明確に現覇権国と前覇権国の対立の様相を呈してきました・・。
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 世界の二大経済紙である英ファイナンシャルタイムス・・と米WSJ・・が真っ向から対立した形になったことも面白いですね・・。
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 欧州諸国の政府はもちろんメディアも、まだ表向きには何も言っていませんが、心情的には英国側に与していることは間違いありません。
 と言うより、英国のメディアは欧州諸国の意向を代弁している、と考えた方がよさそうです。
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 ガーディアンの上記論説・・は、2005年にウォルフォヴィッツが世銀総裁に就任することになった時に、戦後のブレトンウッズ体制下における世銀との双子の兄弟であるIMFの専務理事を欧州人が勤め、世銀総裁は米国人が勤めるという、慣行が崩れることを懼れて表だってウォルフォヴィッツの就任に反対しなかったことがそもそも間違いだったと指摘しています。
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 そして、欧州諸国の政府は一致団結してウォルフォヴィッツを辞任に追い込まなければならない、と結んでいます。

 他方、WSJは、やはり論説で、世銀内の守旧派が、総裁の腐敗撲滅と世銀のアカウンタビリティー確立に向けての努力に水を差すために取るに足りない問題を取り上げて総裁を辞任に追い込もうとしているが、そもそもこれは連中が総裁をはめるために設定した罠に総裁が見事にはまったということではないか、とウォルフォヴィッツを全面的に擁護しました・・。
 WSJは保守的な新聞であるところ、米国のリベラルを代表するニューヨークタイムスとワシントンポストまで、客観的報道に終始することで、ウォルフォヴィッツを擁護する結果になっています。

 ワシントンポストは、総裁が辞任すべきかという議論は、ブッシュ政権とその他の世界との間の争いの代理戦争であるとし、ブッシュ政権が、2003年に対イラク戦を始めて以来、ボルトン・・という国連批判者を国連大使として送り込んだことや、IAEAのエルバラダイ・・事務局長・・が2003年初めにサダム・フセインがイラクの核武装を再び追求しているという証拠はないと宣言した時、同事務局長を退任させようと画策したことで、ブッシュ政権は世界中を敵に回してしまった、と指摘しています。
 そしてこの論説は、世銀においても、総裁は、アフリカにとりわけ力を入れ、債務免除にも努める等、貧困撲滅のために真摯に取り組んできたし、その債務国及び世銀自身に対する腐敗撲滅方針も正しかったしいかにも米国人らしい方針であるとしつつも、腐敗撲滅をやりすぎたことで貧困撲滅に悪い影響が出てきていることや、腐敗撲滅方針が米国にとって戦略的に重要なイラク・パキスタン・アフガニスタンに対しては事実上適用除外とされていること、また、そもそも米国の対テロ戦争協力国に対して手厚い資金供与を行ってきたこと、更にはウズベキスタンに対してとった措置(既述)、等に対して世銀債務国や世銀内部から強い批判が出ている、と指摘しています。