太田述正コラム#689(2005.4.12)
<風雲急を告げる北東アジア情勢(その2)> 
3 中共での動き

 (1)始めに
 取り上げるのは、このところの中共での反日行動なのですが、どうしてそれが反国家分裂法採択がらみの話なのかと疑問に思われることでしょう。
 その答えは後で述べるとして、まずは事実関係を押さえておきましょう。

 (2)反日行動
 今月2(土)、3(日)の両日、四川省の成都(Chengdu)と広東省の深セン(Shenzhen。香港に隣接)で日本の国連安保理常任理事国入りに反対する、それぞれ人、最大1万人、3000人以上の規模の反日集会・デモが起こりました。成都では日本のデパートの窓がたたき割られました。9日(土)には、インターネットや携帯メールでの呼びかけに答えて、北京で推定1万人以上が参加した反日デモが行われました。デモ隊が掲げるプラカードや横断幕に書かれた(教科書問題・歴史認識問題・尖閣問題・日本製品不買等に係る)反日スローガンはいずれもきれいに活字体で記されており、周到な事前準備がなされたことを示していました。デモの途中で、デモ隊の指揮をとっている者が「見本」を示した後、日本料理店・銀行支店の窓ガラスが投石で割られ始め、日本製品の街頭広告も投石されたり引き裂かれたりし、日本国旗が焼かれ、或いは日本車まで傷つけられ或いはひっくりされたりした後、デモ隊の一部は日本大使公邸に向かい、本隊は日本大使館に向かいました。大使館前では、6時間にも及ぶ反日行動が繰り広げられ、ペットボトルや生卵・小石が投げられ、大使館のガラスが割られる事態になりました。しかし、数千人の警備陣は、デモそのものはもとより、これら暴力行為についても一切制止しなかったどころか、大使館前では、投石等がしやすいようにデモ隊にスペースをつくってやりました。参加者は北京・人民・精華等の大学生と途中で加わった群衆(子供連れを含む)であり、大学生については、当局がバスに乗せてデモの出発点まで連れて帰りました。
 翌10日(日)、北京では何も起こりませんでしたが、再び深センで、今度は日本のスーパに1万人が押しかけ、ペットボトルで窓等のガラスをたたき割りましたし、広東省の広州(Guangzhou)では日本の総領事館等への3000人(10000人説あり)のデモが起きました(注2)。

  • (注2)このような反日デモは、1985年に中曽根首相(当時)の靖国神社参拝に広義して行われたもの以来。また、外国公館への器物破損を伴った抗議行動としては、1999年に米国等に対して行われたもの(後述)以来。

 中共のTVや新聞は一切、これら反日行動の報道をしていませんが、国営新華社通信は英文で、9日の反日行動に限り、北京で1万人が日本の教科書による歴史改ざんに抗議するとともに、日本製品不買を訴えた、などと報じました。
 また、中共政府は、日本政府の抗議にもかかわらず、これらは民衆の自発的行動だとし、謝罪を拒み、賠償要求も事実上拒否しています。
 (以上、NHKとTV朝日の連日の報道番組、http://www.sankei.co.jp/news/morning/10iti002.htmhttp://www.sankei.co.jp/news/morning/10na1001.htmhttp://www.sankei.co.jp/news/050409/kok047.htmhttp://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/4427379.stmhttp://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/4408627.stmhttp://www.nytimes.com/2005/04/10/international/10china.LONG.html?pagewanted=print&position=、http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-chinajapan10apr10,1,2371214,print.story?coll=la-headlines-world。(以上、4月10日アクセス)、http://www.csmonitor.com/2005/0411/p01s04-woap.htmlhttp://news.ft.com/cms/s/48223246-a9e8-11d9-aa38-00000e2511c8.htmlhttp://www.washingtonpost.com/ac2/wp-dyn/A40503-2005Apr9?language=printerhttp://www.nytimes.com/2005/04/10/international/asia/10cnd-japan.html?hp&ex=1113192000&en=f38e74bec87e07d5&ei=5094&partner=homepage(以上、4月11日アクセス)、http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-neighbors11apr11,1,4352153.story?coll=la-headlines-world(以上、4月12日アクセス)、による。)
 なお、中共では、欧米のメディアが把握しただけでも、例えば10日に数千人規模の反公害暴動が浙江(Zhejiang)省で起こっており(http://www.washingtonpost.com/ac2/wp-dyn/A42880-2005Apr11?language=printer。4月12日アクセス)、一連の反日行動並の騒動は日常茶飯事だと考えた方が良さそうです。