太田述正コラム#711(2005.5.3)
<米単独開戦前夜(?)の朝鮮半島(その4)>
  ウ ブッシュによる「宣戦布告」
 ブッシュ大統領は、4月28日、記者会見の席上、北朝鮮のミサイルへの核弾頭搭載能力に言及した上で(上述)、「だから<北朝鮮のミサイルを>撃ち落とせた方がいいだろう」とミサイル防衛システムを整備する意義を強調しました。
 そして、金正日を12回も呼び捨てにしつつ、金が「危険な男」で「暴君(tyrant)」であって、「自国民を餓死させて」おり、「巨大な収容所群」を設けていて、「脅迫とほら吹き」を常とする、と非難しました。
 3月16日に北朝鮮の外相は、ライス米国務長官が、上院での就任審査の際に北朝鮮を(outpost of tyranny)と称した(コラム#606)のを撤回し謝罪しない限り、北朝鮮は六カ国協議には復帰しないと言明していたのですから、ブッシュのこの発言は、米国政府が六カ国協議を葬り去った、ということを意味します。
 (以上、http://www.nytimes.com/2005/04/30/international/asia/30korea.html?pagewanted=print&position=http://english.chosun.com/w21data/html/news/200504/200504290033.html、及びhttp://english.chosun.com/w21data/html/news/200504/200504290019.html(いずれも4月30日アクセス)による。)

 4 北朝鮮はどうなるのか

 北朝鮮には、何の見返りも期待できないまま核を全面放棄する以外に、もはや方策はありません。
 しかしそれは、金正日の権威失墜、失権を意味する以上、金正日は、対米核「抑止」力確保という新政策に、「だめもと」ですがりつき続けることでしょう(注3)。

  • (注3)北朝鮮は4月30日、上記ブッシュ発言をとらえてブッシュに悪罵の限りをなげかけ、「われわれは、もはや<米国の>政策の変更を漫然と待つことはできなくなった。・・われわれの選択した路線は正しいのであって、われわれはこの路線をまっしぐらに歩み続けるであろう」と悲愴な決意表明をした(http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2005/04/30/AR2005043000590_pf.html。5月2日アクセス)。

 しかし、その先に待ち構えているのは、間違いなく米国による北朝鮮核施設への攻撃であり、それに伴う金正日体制の崩壊です。
 米国がぶちあげた北朝鮮封鎖構想は中韓のサボタージュに会って実現しないでしょうが、米国としては、あらゆる手段を尽くした、と米国内外に説明ができればそれで十分なのであって、その上で、北朝鮮に対する、戦術核攻撃を含む軍事攻撃を開始することでしょう(注4)。

  • (注4)「ならず者国家」やテロ組織が大量破壊兵器を使い、米国や日本などの同盟国を攻撃する危険が迫った場合に、在日米軍や在韓米軍を傘下に置く太平洋軍など各地域統合軍の司令官が、ブッシュ大統領に戦術核兵器の使用許可を要請できるとの方針(案)(「統合核作戦のためのドクトリン」(草案))を、米統合参謀本部が3月15日に策定した、と産経新聞が報じた。
     この記事(http://www.sankei.co.jp/news/050501/kok083.htm。5月2日アクセス)は、米国は冷戦後の1991年に、アジア、欧州配備の地上戦術核や空母、潜水艦搭載の海上戦術核を撤去し、米本土に戻したと指摘した上で、この文書が第一に、海上型戦術核について、「有事に備え、配備可能な状態にしてある」こと、第二に、現在でも横須賀や佐世保、沖縄に寄港している攻撃型原潜は核弾頭「W80」を再搭載できる状態になっていること、第三に、地域統合軍司令官が核使用許可を要請できるのは、ア 敵が米国や同盟国に大量破壊兵器を使用したり、使用を企てている、イ 敵の生物兵器攻撃が迫り、核兵器だけが安全に生物兵器を破壊できる、ウ 大量破壊兵器を貯蔵した地下拠点を攻撃する?などの場合であること、を明記している、と記している。

 つまり、若干の核能力を持っていると目される金正日の北朝鮮には、サダム・フセインのイラクより以上に過酷な運命が待ち受けている、ということです。
 合掌。

(完)

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