太田述正コラム#10187(2018.11.12)
<木村光彦『日本統治下の朝鮮』を読む(その13)>(2019.1.31公開)

 「他方、政府サービスのなかで、衛生・防疫事業は明らかに、生活水準の向上要因である。・・・
 総督府は、天然痘をはじめ赤痢、チフス、コレラといった急性伝染病だけでなく、肺ジストマ(寄生虫病)などの慢性病にたいしても対策を進めた。
 こうした事業への支出額もまた、前記の消費額は含んでいない。
 第三は、分配の問題である。
 一人当たり消費額はあくまでも平均値にすぎず、一般住民の消費水準を直接とらえるものではない。
 分配が不平等化すれば、平均値が高まっても、住民多数の消費水準は低下し得る。・・・
 分配の変化の検証はデータの制約上、容易でない。・・・
 <例えば、>日本統治期、朝鮮人の身長変化を示す体系的な官庁統計は存在しない。
 総督府は長い間、朝鮮人の健康、体力に大きな関心を払わなかった。
 この状況が変わったのは1930年代後半である。
 これは、朝鮮の人的資源を戦時動員するうえで、彼らの平均的な体力を知る必要が生じたからである。
 総督府の調査は1938年に行われた。・・・
 地域別には、・・・北部出身者がもっとも長身である。<(注15)>・・・

 (注15)「気候の影響が言われる場合もある。ベルクマンの法則<参照。>」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BA%AB%E9%95%B7
 「ベルクマンの法則とはドイツの生物学者クリスティアン・ベルクマン(Christian Bergmann)が1847年に発表したものであり、「恒温動物においては、同じ種でも寒冷な地域に生息するものほど体重が大きく、近縁な種間では大型の種ほど寒冷な地域に生息する」というものである。これは、体温維持に関わって体重と体表面積の関係・・体内での熱生産量はほぼ体重に比例し、放熱量はおおよそ体表面積に比例する<、>つまり放熱量は体長の2乗に、熱生産量は体長の3乗に比例する・・から生じるものである。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%83%AB%E3%82%AF%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%81%AE%E6%B3%95%E5%89%87

 <それ以外の諸調査も踏まえて>判明するのは、階層間、地域間で身長に差があったこと、半面、時期、世代による明瞭な差はなかったことである。・・・
 <いずれにせよ、>最近の研究では、日本統治期を通じた朝鮮人平均身長の全般的低下は確認されていない・・・。<(注16)>

 (注16)「日本では肉食の普及に伴って身長が伸びたとされる。東京帝国大学(現在の東京大学)男子学生を対象とした調査によると、1910年代から1940年代の30年間に3.1 cmの身長増加が認められ、同じく<どこの?(太田)>女子学生では1910年代から1950年代の40年間に3.4 cmの増加があ<った>」(上掲)
 「なんと明治の人は縄文の人よりも小柄です。それは、食料の問題が一因だと言われています。狩猟から家畜へ、古来から肉をよく食べていた日本人ですが、飛鳥時代に「肉食禁止令」が出されて以降、米と菜食、魚介を主体とした和食文化を育んできました。」
http://www.metromin.net/feature/47933.html

⇒ほぼ同じ時期に、内地では、身長が増加しているのですから、朝鮮人の身長が増加しなかったのは気になります。(太田)

 <結局、>身長データを指標とす<る限り>、1940年以前、一般朝鮮人の生活水準は大きく変化<は>しなかった。・・・」(96~98、103、105~106)

(続く)

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