太田述正コラム#10199(2018.11.18)
<井上寿一『戦争調査会–幻の政府文書を読み解く』を読む(付け足し)(その17)>(2019.2.7公開)

〇人命の被害が大き過ぎたのでは?

 以前、(コラム#10181で)太平天国の乱(1851~64年)を引き合いに出して、必ずしも大きくないと申し上げたところですが、この乱と時期的に一部重なる、米国の内戦である南北戦争(1861~1865年)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%97%E5%8C%97%E6%88%A6%E4%BA%89
を今度は引き合いに出しましょう。
 この戦争では、南北総人口3100万人中80万人が死亡したので、死亡率は2.5%でした。
https://www.washingtonpost.com/outlook/2018/11/06/united-states-isnt-democracy-and-was-never-intended-be/?utm_term=.01f68c7c2c14
(11月7日アクセス)
https://www.y-history.net/appendix/wh1203-046.html
 それに対し、大東亜戦争(1941~1945年。長さ的に南北戦争に近似。満州事変と日支戦争を含めなかったのは、この点に加えて、14年間では人口がかなり変わってしまっていること等が理由)では、台湾と朝鮮も含めて、1億330万人(1940年)中310万人が死亡したので、死亡率は3.0%でした。
 (大部分の黒人が南北戦争に従軍しなかったのに対し、大部分の台湾人と朝鮮人が大東亜戦争に従軍しなかった点も似通っています。だからと言って、黒人を総人口に入れなかったり、台湾人と朝鮮人を総人口に入れなかったりしたらおかしいでしょう。)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E4%BA%BA%E5%8F%A3%E7%B5%B1%E8%A8%88
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E7%B5%B1%E6%B2%BB%E6%99%82%E4%BB%A3%E3%81%AE%E5%8F%B0%E6%B9%BE
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E7%B5%B1%E6%B2%BB%E6%99%82%E4%BB%A3%E3%81%AE%E6%9C%9D%E9%AE%AE
 で、南北戦争は、南北の統合維持か分裂かを巡る戦争であり、欲得ずくの、いわばどうでもよい戦争でもって、これほどの数の、犬死に等しい死者を出したわけです。
 (奴隷制維持の是非だったなんて話は神話に近いと思ってください。
 現に、北軍勝利の後も、南部の黒人達の奴隷的状態に変わりはなく、その状態の法的解消がなったのは、1960年代になってからです。(典拠省略))
 それに対して、大東亜戦争が、日本が「勝利」することで、いかに日本、そして世界が裨益したかを考えてみてください。
 その死者達の死はまことに貴く、全く無駄ではなかったのです。
 太平天国を引き合いに出した時と違って、日本人(台湾人、朝鮮人を含む)以外の死者達を無視しているではないか、ですって?
 そんなこと言ったって、南北戦争は内戦だったんだから、米国人以外が基本的に死ぬわけがないんだから仕方がないでしょう。
 (まあ、確かに、同じく内戦であった太平天国を持ち出した時には、比較対象は、大東亜戦争ならぬ満州事変・日支戦争・大東亜戦争の日本人ならぬアジア人の死者数だったわけですが、あの場合は、総死者数が近似するのでそうしたわけです。)
 なお、総死者数に着目すれば、第二次世界大戦の時、ソ連は、自国だけで2000万~3000万人です
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8B%AC%E3%82%BD%E6%88%A6
が、どういうわけか、スターリンは、独ソ戦勃発後、できるだけ早期にナチスドイツに降伏することで、このような天文学的な死者発生を回避すべきだったという人は、ソ連/ロシアのみならず、世界中に誰一人いなさそうですよね。
 況や大東亜戦争における日本においてをや、ですよ。

(続く)