太田述正コラム#8322005.8.23

<原爆投下と終戦(追補)(その3)>

 (本篇は、形式的にはコラム#831の続きですが、実質的にはコラム#830の続きであり、8月21日に上梓しました。)

  イ NYタイムス

インターナショナル・ヘラルド・トリビューンは現在ではNYタイムスの完全子会社ですから、ご紹介する同紙記事(http://www.iht.com/articles/2005/08/05/news/hiro.php。8月13日アクセス)は、NYタイムスの論調と申し上げて良いと思います。

この記事は、広島の原爆記念館を俎上に乗せ、同館が展示の中で、広島が軍事都市でもあったこと、日本が先の大戦において行った侵略行為の数々、そして先の大戦における日本軍の残虐行為、に全く触れないで、日本の犠牲者としての側面だけを取り上げていることをあげつらっています。

また、展示の中で、原爆投下が終戦を早めた点に触れていないことも批判しています。

そして、この原爆記念館に限らず、戦後日本が、先の大戦における日本の犠牲者としての側面だけを取り上げてきたことが、日本が他国に対する侵略についての責任を認めることを妨げてきた、という日本の識者なる者の声を紹介しています。

この記事は、ある広島の被爆者が中共を訪れて、日本軍が支那で何をやったかを知り、日本が戦争責任を認めない限り、いつまで経っても日本とアジアは和解できないことを悟った、という話を紹介して終わっています。

この記事は、先にご紹介したワシントンポストの記事とは180度異なり、未来志向ではなく、過去に拘泥しており、NYタイムスの質の低下を如実に示しています。

  ウ ロサンゼルスタイムス

 しかし、良かれ悪しかれ旗幟を鮮明にしているNYタイムスに比べると、ロサンゼルスタイムスは判断停止をして逃げていると言うほかなく、より嘆かわしいのではないでしょうか。

 同紙の8月3日付の記事(http://www.latimes.com/news/opinion/commentary/la-oe-boot3aug03,0,2044686,print.column?coll=la-news-comment-opinions。8月3日アクセス)は、原爆投下は、それまで日本等に対して英米が行ってきた戦略爆撃とねらいにおいても被害の大きさにおいても大差ない(注4)のであって、ことさら原爆投下を問題視するのはおかしい、という形式論で逃げているだけでなく、それまで英米がもっぱら一般住民の殺戮を目的とした戦略爆撃も行ったことすら正視していません。しかも、原爆投下が日本の終戦を早め、米兵の犠牲を回避したことを当然視しています。

 (注4)原爆投下によって10万人が死んだが、それまでに空襲で、ドイツでは少なくとも60万人が死に、日本では少なくとも20万人が死んでいた。原爆投下による死者は日本のの空襲による死者の三分の一、都市における破壊面積の3.5%しか占めていない。

蛇足ながら、原爆投下を扱ったものではありませんが、同紙の8月20日付の記事(http://www.latimes.com/news/opinion/editorials/la-ed-japan20aug20,0,5238661,print.story?coll=la-news-comment-editorials。8月21日アクセス)は、ある意味では上記記事よりも更にたちが悪く、あたかも土人同士の争いに白人が高いところから裁断を下しているような代物です。

この記事は、日本による朝鮮半島の過酷な植民地化(?!)(注5)や先の大戦におけるアジア諸国の占領並びに教科書改悪(?!)と、中共建国以降に中共内で行われた無数の無辜の民の殺戮並びに中共の臭いものに蓋をした教科書、とを相打ちにした上で、先般小泉首相が戦後60周年に際して行った謝罪表明を評価し、中共はこれ以上日本に謝罪を要求すべきではない、と結んでいます。

(注51899年から1913年に及んだ米国のフィリピン征服戦争(米比戦争)で、フィリピン側に兵士16,000人、及び一般住民25万人から100万人の死者を出した(http://en.wikipedia.org/wiki/Philippine-American_War。8月21日アクセス)のに対し、1910年の日韓併合の際の韓国側の死者など聞いたことがない。ちなみに、1917年の3.1運動(独立運動)の際の朝鮮半島住民側の死者は死者405人(韓国の主張では7,509人)に過ぎない(http://blog.livedoor.jp/lancer1/archives/23804109.html。8月21日アクセス)。「過酷な植民地化」と米国のメディアがのたまう神経を疑う。

まことにありがたいご託宣ではありませんか。

(3)英国

 そこに行くと、英ガーディアンの記事(台北タイムスに転載されたもの。http://www.taipeitimes.com/News/editorials/archives/2005/08/08/2003266930(8月10日アクセス))は秀逸です。

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