太田述正コラム#8552005.9.7

<カトリーナ米国を直撃す(続)(その2)>

 (2)対外的関与

 もう一つの懸念は、イラク戦争等、対テロ戦争に米国の資源を投入しすぎていることが、今次大災害に際して迅速かつ適切な対応ができなかった原因ではないか、というものです。

 「ブッシュのイラクでの愚行によってカネが蕩尽されただけでなく、州兵の30%とその装備の半分がイラクに送り込まれている」http://www.nytimes.com/2005/09/03/opinion/03dowd.html?pagewanted=print。9月4日アクセス)、「ブッシュ大統領がイラクでの戦争にかまけていなかったとすれば、米国の市民の福祉をないがしろにしたり、米国の国内資源の稀少化を招いたりはしなかったのではないか」(http://observer.guardian.co.uk/focus/story/0,6903,1562298,00.html。9月4日アクセス)、等がこの懸念の表明です。

 しかも、対テロ戦争は、米国を模範としてイスラム世界の体制変革をなしとげるというのが謳い文句であったというのに、今回の大災害を通じて、米国は、自らが抱える貧困問題や人種問題の解決ができないだけでなく、災害救援・復旧活動も碌にできない国であることを世界中に映像付きで見せてしまった以上、もはや胸を張って対テロ戦争を続けるわけにはいかないのではないか、という論調(CNNで視聴)が出てきています。

 まさに、「米国は自分が文明の燈台であるというイメージを振りまいてきた。しかし、そのイメージには泥が塗られてしまった」http://observer.guardian.co.uk/leaders/story/0,6903,1562328,00.html。9月4日アクセス)のです。

 このような論調を踏まえると、仮に上述した大きな政府への政策大転換がなされたとしても、米国の対外的関与は縮小される方向が見えてきます。

 そうなれば、これは戦後の米国の対外政策の大転換につながる可能性があります。

4 コメント

 歴史学者のニール・ファーガソンは、ブッシュ政権擁護論を展開し、以上のような立論は、大洪水を神の愚かな人間に対する懲罰だとした旧約聖書のノアの箱船の説話まで遡る、いつものパターンだと戒めるとともに、世界全体で、自然災害による死者は毎年数万から数十万のオーダーであり、テロによる死者(2003年には4,271人)よりは多いかもしれないが、エイズによる死者(300万人前後)や交通事故死者数(100万人前後)よりははるかに少ない、と冷静になることを求めています。

 (以上、http://www.latimes.com/news/opinion/commentary/la-oe-ferguson5sep05,0,1137619,print.story?coll=la-news-comment-opinions(9月6日アクセス)による。)

 それはその通りだとしても、今次災害発生後、迅速かつ適切な対応ができなかった点を問うまでもなく、以下のような、今回の大災害が(少なくともニューオーリーンズが受けた被害に関しては、)人災であることを示唆する事実を前にしては、ブッシュ政権が批判を免れることは困難でしょう。

一、早くも1832年に、堤防の決壊によって将来必ずニューオーリンズは大打撃を受けるとの指摘がなされていた(http://slate.msn.com/id/2125733/。9月6日アクセス)。

二、2001年初めにはFEMAが、米国で最も可能性のある三つの災害として、ニューヨークへのテロ攻撃、サンフランシスコでの大地震と並んで、ハリケーンによるニューオーリンズでの大洪水、を挙げていた。

三、2002年には、ニューオーリーンズの現地紙が、大洪水が起こり、「生存者は屋根の上、建物の中、或いは丘の上で水に囲まれ、恐らく何日間にもわたって、逃げることもできず、食糧も飲料水もない状態でに取り残されるだろう」と予言していた。

(以上、http://www.latimes.com/news/opinion/editorials/la-ed-katrina2sep02,0,1058234,print.story?coll=la-news-comment-editorials(9月3日アクセス)による)。

(完)