太田述正コラム#8662005.9.15

<「小さい政府」について(その1)>

1 始めに

 コラム#475853及び862(の(注1))で「小さい政府」という言葉を用いたところですが、現在の日本が「小さい政府」の国であること、そしてなぜ「小さい政府」たりえているのかを説明した上で、政府・自民党及び民主党の「小さい政府」政策への批判を試みたいと思います。

2 日本の公務員の数の異常な少なさ

 日本が「小さい政府」の国であることは、ワシントンポストまでが、人口1000人あたり公務員数が米国では97人、フランスでは79人であるのに対して日本では38人に過ぎない(注1)、と指摘している(http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2005/09/12/AR2005091201967_pf.html。9月14日アクセス)ように、知る人ぞ知るところです。

 (注1)ワシントンポストは、数字はILO等によるとしているが、何年の数字か、いかなる数字かは記されていない。

ちなみに、日本の総務庁は、1998年の数字で、人口1000人あたりの公務員数(防衛職員+行政職員(=国家公務員+地方公務員+政府企業職員))は、日本382+36)・英国815+76)・フランス9710+87)・米国758+67)・ドイツ656+59)、としている。(http://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je05/05-00201.html。9月14日アクセス)。

 実際、一般政府雇用の総雇用に対する比率で見ても日本は米国やドイツの約半分ですし、一般政府被用者報酬の対GDP比率で見ても、日本は米国やドイツの7割程度に過ぎません。これでは現在の日本は「異常に小さい政府」だと言わざるをえません(http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200508251149164。9月14日アクセス)。

3 日本の政府支出の規模も決して大きくない

公務員の数だけでなく、政府支出の規模ということでも日本は比較的「小さな政府」です。

OECDの統計でみると、(国・地方・社会保障基金を合わせた)一般政府の支出規模(2004年)は、日本ではGDP比約37%であり、米国の約36%よりは高いものの、ユーロ圏平均の約49%やOECD諸国平均の約41%と比べると低いからです(注2)。

(注2)支出の内容については、日本は、公共投資等を含む経済・公共の比重が他の国と比べてやや高いものの、防衛・治安など一般公共サービス、保健・社会保障などは比較的小さい。

ただし、財政赤字を将来負担としてとらえ、(租税・社会保険料負担を国民所得で除した)国民負担率に財政赤字分を加えた潜在的な国民負担率を計算すると、日本は約45%(2005年度)に達しています。これは、フランスの約68%(2002年)やスウェーデンの約71%(2002年)と比べると低いけれど、米国の約38%(2002年)と比べると高く、今後少子高齢化の進展等によって政府の支出規模及び国民負担が今後増大していくことが見込まれることから、このままでは、支出・負担といった面で、将来「大きな」政府になってしまう懼れはあります。

(以上、http://www.jil.go.jp/institute/zassi/200404/200404e.PDF(9月14日アクセス)による。)

4 なぜ日本は「小さい政府」たりえているのか

 いずれにせよ以上から、現在日本が「小さい政府」であることがお分かりいただけたと思います。

 中村圭介東大教授は、なぜ日本が「小さい政府」たりえているのか、について、「自動車産業を例にとると、日本の自動車企業の外製比率(製造費用にしめる部品・材料・外注費用の割合)は平均して70%以上で,アメリカの企業よりも高い傾向にある・・。日本企業はすべてを自分で生産するのではなく関連企業を活用することが多い。関連企業は重層構造をなす。下層にいくほど、企業規模が小さくなり、企業数も増える。これがピラミッド型の下請け分業構造と呼ばれるものである。同じようなことが行政分野でも生じているのではないか。・・欧米諸国では行政が行っている業務を、日本では外注しているのではないか。その結果、公務員数は少なくてすむ。」という仮説を提示しています(日刊ベリタ上掲)。

 私も同意見です。

政府がケイレツ類似の中間組織(コラム#844)(注3)を活用しているおかげで、日本は「小さい政府」たりえているのです。

(注3)法律に根拠を置く団体(例えば全国町村会)、公益法人の一部、(これとオーバーラップしているところの)各種業界団体、NPO法人の一部、消防団、町内会等々。

 ですから、日本の政府をより効率的・効果的なものにしようと思ったら、「小さい政府」などを追求するのではなく、公務員の意識改革、あるいはマネジメント改革をこそ追求しなければならないのです。

 意識改革とは、私的権益の擁護ではなく公益の擁護をさせることであり、そのためには天下りを禁止し、その見返りとして(あえて誤解を恐れずに言いますが、)生涯給与を上げること等が必要です。

 マネジメントの改革とは、中村教授もおっしゃっていることですが、民間企業や軍隊(自衛隊)に倣って、若い頃は、ジェネラリストではなく、スペシャリストを育てるような人事を行うべきだ、ということです(注4)。

 (注4)公務員、特に国家公務員中の文系キャリアについては、在職中、広く浅い知識経験しか身につける機会がなく、また、多くは大組織を統率した経験にも乏しいため、私の見るところ、40台後半にもなれば、役所からの天下りではなく、裸の実力で大学の教師や民間企業の幹部として再就職できる者は皆無に近い。これは、高い資質を有する者が少なくない彼らを、官僚機構が使いこなしておらず、スポイルしていることを意味する。

(続く)