太田述正コラム#9022005.10.11

<六カ国協議の「進展」をめぐって(その6)>

 (本篇は、10月9日に上梓しました。)

 以上からすれば、米国は軍事攻撃の対象として、シリアをイランより優先させる可能性が高いように思われます。

 今年5月に米国政府内の情勢分析で、イランが核兵器を保有するには10年以上はかかるという結論が出た(注12http://www.nytimes.com/2005/09/07/international/middleeast/07iran.html?pagewanted=print、及びhttp://news.ft.com/cms/s/2dde6744-1eb7-11da-94d5-00000e2511c8.html(どちらも9月7日アクセス))ことから、イランの核関連施設を破壊する緊急性が薄れ、かつ今年6月にイランで行われた大統領選挙で保守強硬派のアフマディネジャドが当選した(コラム#769ことから、1978年のイラン・イスラム革命の熱情が広く民衆の間で蘇っていて、もはやイランに改革派と保守派の対立など存在しないことが明らかになりhttp://www.atimes.com/atimes/Middle_East/GF29Ak04.html。6月29日アクセス)、イランの核関連施設等を軍事攻撃することがイランの体制変革の呼び水になるどころか、イラン全体を一層シーア派原理主義化させる懼れがあると判断されるに至った以上、ブッシュ政権にとって、軍事攻撃に係るイランの優先度は、シリアに比べて更に低くなったと言えるでしょう(注13)。

 (注12)ただし、本年9月にロンドンの国際戦略研究所(IISS。私は会員)は、無理をすれば5年でイランは核兵器を保有することができる、と発表している。

 (注13)これは、米国が今後ともイランに対する軍事攻撃は行わないということではない。軍事攻撃をちらつかせることによって、イランがイラクのシーア派諸勢力を通じてイラク内で影響力をこれまで以上に行使することや、核兵器開発に突っ走ることを抑止すべき(後者についての米国の論者の主張についてはhttp://observer.guardian.co.uk/international/story/0,6903,1588150,00.html10月9日アクセス)参照)であるし、遅かれ早かれ単独ででもイランの核関連施設攻撃を敢行するであろうイスラエル(コラム#512)にそれを思いとどまらせるためにも、米国はイランに対する軍事攻撃というオプションを放棄するわけにはいかないからだ。

 (6)ブッシュ新悪の枢軸を語る

 10月4日、ブッシュ米大統領自身の口で、シリアとイランを名指しで新悪の枢軸扱いをする演説が、National Endowment for Democracy総会の場行われました

 ブッシュは、「イスラム過激主義の影響力は、協力者と支援者によって増幅している。彼ら<協力者と支援者>は専制的体制によって庇護されている。米国や穏健なイスラム政府に危害を加えるという共通の目的を持ち、自らの失敗を西側や米国やユダヤ人のせいに転嫁するテロリスト的プロパガンダを用いるシリアとイランのような野合的同盟によって・・。」と述べた上で、後の方で、「シリアやイランのようにテロリストとの協働の長い歴史を有する国家たる<テロリストの>スポンサーは、テロの犠牲者に忍耐を求める資格はない。」と断言したのです。

 (以上、演説内容はhttp://www.washingtonpost.com/wp-srv/politics/administration/bushtext_100605.html10月7日アクセス)による。)

「忍耐を求める資格はない」というのは、どう見ても、シリアとイランに対する宣戦布告です。しかも、ブッシュ政権にとって、軍事攻撃の優先度がシリア、イランの順であることも、ブッシュ御大自ら明らかにしてくれたわけです。

(続く)