太田述正コラム#10648(2019.6.30)
<2019.6.29東京オフ会次第(その2)>(2019.9.18公開)

C:米国の力は本当に落ちているのか。
O:中共等に比べて(軍事力や経済力が)相対的に落ちてきているだけではなく、(ソフトパワー、というか、発信力が)絶対的に落ちてきている。
 (私が英文を読むのが億劫になりつつある、という部分も全くないとは言わないが、)そそられる、本やコラムが、米国で、ここ数年、殆ど上梓されなくなったことで、そのことを、私は肌で感じている。
 これは、(現在の世界覇権国の)米国だけではなく、(かつての世界覇権国で、その座を失ってからも、発信力という意味での影響力はずっと維持してきたところの、)英国にもあてはまるが・・。
C:しかし、アマゾン、フェイスブック、グーグル、等、未来に関わるIT関係の分野で、米国は世界を席捲しているではないか。
D:中共は、自前でそれぞれに相当する企業群を持ち、これら企業群が国内に入ってくるのを阻止している。
O:海外旅行や留学等を積極的に推進しているのだから、中共当局の最大の目的は、人民への外からの情報の遮断にあるのではなく、将来を見据えている、ということだ。
E(こうちゃん):(コラム#10647で記述した部分は省略。)
 ところで、対話篇はそんなにスゴイのか。
F:スゴイ。
O:まだ、プラトンの対話篇も、アイスキュロス等の戯曲群も、読んでいないのなら、老後に楽しむ材料が一杯ある、ということだ。
D:敗けるし、兵士だけではなく一般国民にも多大の死傷者が出る、ということが分かっていた杉山元らが、にもかかわらず、あえて対英だけではなく対米開戦もやった、という太田さんの指摘だけは、いまだに、自分は納得がいかない。
B:私も同じだ。
O:同じことを、亡くなった母親がよく私に言っていたものだ。
G:私は軍事専門家だが、軍隊というものは、目的が達成できるのなら、犠牲を厭わずに戦争、戦闘を行うものだ。
 太田さんの指摘は正しい。
O:何度も言っているように、天文学的な人命が、欧州という「文明の地」で失われたところの、第一次世界大戦直後の時代だった、ということも思い出さなければならない。
B:どうして、日本が実は先の大戦で勝った、と、太田さんが気付くのが遅れたのか。
 そう言いだしてからまだ3年くらいしか経っていないのでは?
O:私も、それだけ、戦後日本の通説に毒されていたということだろう。
O:武田邦彦も、大東亜宣言
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E6%9D%B1%E4%BA%9C%E5%85%B1%E5%90%8C%E5%AE%A3%E8%A8%80
が戦後実現したのだから、日本は先の大戦に勝った、と言っており、それを直接聞いたことがある。
 アプローチが全然違う、彼のような人物、と、太田さん、が同じことを言っているのだから、私もそうだと信じている。
E:スイスでどうして、直接民主制が機能しえたのか?
O:私自身、まだ深くは考えていない。
 スイスが、守るに易い山地であったこと(に加えて、侵攻して得られる実益が少なかったということ)が大きいのではないか、とは思っているが・・。
E:スパルタが、民主制もなく、にもかかわらず、領域拡大もしなかったのはなぜか。
O:常に、自ポリス内に大量にいた奴隷が反乱するのに備えなければならなかったからだ。
E:どうしてゲルマン人は個人主義だったのか。
F:とにかく、タキトゥスは『ゲルマニア』で、ゲルマン人について、本拠地では個人主義的生活をしている的な描写をしている。
 ローマ領内では指揮官の下で集団で強奪行為を働いて、獲物を分配して領外の本拠地に戻ったら、互いに干渉しあわない、という、ゲルマン人の生き方にはそれなりの合理性があったと思うが、そういうライフスタイルを選んだ彼等は、やはり変わっていると言わざるを得ない。
 人に天才がいるように、集団にも、アテナイ人達のような天才達もおれば、ゲルマン人達のような変わり者達もいる、ということだろう。
E:そんなゲルマン人が、ローマ領内に定着するようになったら個人主義性を失ったのはなぜか?
O:原住民達を農奴にして自分達が搾取する、という体制を維持するには、常在戦場的意識を維持しなければならなかったからだろう。
 しかも、周りのゲルマン人支配者達だって、隙あらば支配領域を拡大しようと虎視眈々としているのだから、なおさらだ。
E:ブリトン島に定着したゲルマン人はどうして個人主義性を失わなかったのか。
O:ローマ領だった期間が長かった欧州とは違って、ブリトン島では、ローマが撤退してから未開の地に戻ってしまっていて、経済力も大したことがなく、そこに定着する魅力はそういう意味では余りなかったにもかかわらず、ブリトン島にゲルマン人が定着したのは、原住民のブリトン人との間で、弥生人に対する縄文人みたいに、互いにウマが妙にあった、ということではなかろうか。
 その結果、ゲルマン人は個人主義性を失わず、ブリトン人は個人主義性を真似て身に着けたのではないか。
B:英蘭のシェルや米国の石油メジャーでは、自国民を中心に白人しかボードのメンバーにはなれない不文律がある。
O:そりゃそうかも。
 次回の東京オフ会は、9月21日(土)にしたい。

(完)