太田述正コラム#11122006.3.7

<ブッシュ三題噺(その6)>

 ハリケーン・カトリーナがニューオーリーンズに大災害をもたらした後、ブッシュは、対策が後手に回ったことについて、「あの防波堤が壊れるなんて誰も予想していなかった」と言い訳めいた発言をしたものです。

 しかも、結局当時のFEMAのブラウン(Michael Brown)長官が詰め腹を切らされ、辞任に追い込まれました。

 しかし先般、カトリーナがミシシッピ州等を直撃する直前に、ビデオ会議の席上、FEMA側から、カトリーナが巨大なハリケーンであって、風力によって防波堤を越えて海水が流れ込む可能性があり、その場合多大の人命が失われる懼れがある、と報告を受けていたことが判明しました。ビデオ会議ですから、一部始終がビデオで撮されていて、説明を受ける間、ブッシュが全く質問をしようとしなかったこと、そして最後にブッシュが「われわれは準備万端整えている」と発言したことが問題視されているほか、ブッシュの上記の事後の言い訳めいた発言はウソをついたことになるとも批判されています。

 詰め腹を切らされたブラウン前FEMA長官が、期せずしてブッシュに一矢を報いた形です。

 既にご説明した港湾管理会社問題では、政治家や国民の多くから超党派で批判されているブッシュですが、本件に関しては、幸いなことに批判はもっぱら野党の民主党及び民主党寄りのメディアが行っており、与党の共和党及び共和党寄りのメディアは、ブッシュの批判を控えています(注7)。

(以上、http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/03/03/AR2006030301615_pf.htmlhttp://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/blog/2006/03/03/BL2006030300539_pf.html、及びhttp://www.slate.com/id/2137268/(3月4日アクセス)による。)

(注7)彼らは、防波堤が壊れることと、海水が防波堤を越えることとは異なるので、ブッシュはウソをついたことにはならないとか、やはりミシシッピ州知事やニューオーリンズ市長が無能だったのだ、といった擁護の仕方をしている。

 私自身は、ブッシュの内外政策の大部分について及第点を付ける気にはならないものの、ブッシュ有能説に与しており(コラム#948)、港湾管理会社問題で、全く動じず、正論を吐き続けているブッシュを見て、改めてその感を深くしています(注8)。

 (注8)それに対し、次回の民主党大統領候補に擬せられている一人であるヒラリー・クリントン上院議員はすっかり女を下げた。リベラルの旗手のはずの彼女が、あろうことか、アラブ人に対する人種差別意識を露呈してしまったからだ。しかも間の抜けたことに、亭主のクリントン前大統領が、ドバイの首長一族に対し、DPW社の件で面倒を見てやってたのだが、そのことを彼女は全く知らなかったことが判明している。(http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/blog/2006/03/03/BL2006030300539_pf.html前掲)

 ですから私は、本件に関しても、ブッシュを批判する人々には違和感を覚えます。

 大統領といえどもスーパーマンではないのですから、自分の所にあがってくるあらゆる案件について、適切な質問をした上で率先垂範する、というわけにはいきません。

 結局のところ、カトリーナ災害への対応の不手際は、中央においては、ブラウンFEMA長官とその上司であるチャートフ国土安全保障省長官、そして現場においてはミシシッピー州知事とニューオーリーンズ市長の責任であると言わざるをえません。

 そして、この際改めて強調しておきますが、彼らの不手際の背後には、米国の政治制度の後進性(コラム#304)という問題点が横たわっているのです。カトリーナ災害に関して申し上げれば、中央政府である連邦政府におけるシロウト行政と、地方政府である州の権限が強大であるという連邦制の問題点です。

(続く)