太田述正コラム#11262006.3.15

<中共のお国自慢>

1 始めに

 中共政府は、ナショナリズムをかきたてることで、引き続き共産党支配を維持しようとしているわけですが、そのために、お国自慢の種を探し求めています。

 昔から、支那起源のものとしては、紙・火薬・羅針盤が有名ですが、それ以外にも色々あるよ、というわけです。

2 お国自慢の種

 (1)ゴルフ?

 ゴルフ発祥の地と自他共に許してきたスコットランド(注1)が真っ青になるような説が中共で唱えられています。

 (注1)スコットランド人のお国自慢ぶりは有名だ。彼らは、近代世界において価値のあることのすべてを発明したと公言してはばからない。ゴルフのほか、ウィスキー・ペニシリン・テレビ、それに(18世紀のアダム・スミスが始祖とされている)経済学は、確かにスコットランドが起源だ。(http://www.latimes.com/news/opinion/commentary/la-oe-ferguson2jan02,0,4489136,print.column?coll=la-news-comment-opinions。1月2日アクセス)。蛇足ながら、経済学の始祖は、17世紀のイギリスのペティーだという説も有力だ(典拠省略)。

 スコットランドでのゴルフの起源は少なくとも15世紀以上前に遡ることが文献上分かっているのですが、それよりはるか以前から、支那ではゴルフに似た競技が行われていた、というのです。

 (2)スキー?

 今年1月に国営メディアは、支那では新石器時代からスキーをやっていたことが、崖に描かれた絵が発見されて明らかになったと報じました。

そもそも数年前から、中共・モンゴル・カザフスタン三国の国境地帯のアルタイ山脈地方で、モンゴル人やカザフ人がスキー(スキー板の幅が広く、ストックは一本。体重を後ろにかけて、船の艪を漕ぐようにストックを使う)を狩り等に使っていることが話題になっていたところです。このタイプのスキーは2,000年前から存在していたことも分かっていますが、アルタイ山脈地方におけるスキーの歴史はもっとずっと昔に遡れると考えられています。(http://www.csmonitor.com/2006/0315/p01s01-woap.html。3月15日アクセス)

 どうやら、スカンディナビア地方がスキー発祥の地であるとされてきた歴史・・4,500年前のスキーがスェーデンで発掘されている・・の書き換えが必要であり、スキーの発祥はアルタイ山脈地方であって、これがスカンディナビア地方に伝わったか、後の時代にスカンディナビア地方で独自にスキーが生まれたか、どちらかだ、ということのようです。

 もっとも、新石器時代に支那もヘチマもないだろうし、モンゴル人やカザフ人の歴史もまた、(漢人中心の)支那の歴史の範疇には属さないのではないか、と揶揄されています。

 (3)サッカー?

 今度はイギリスが青ざめる番ですが、サッカーの起源は、支那古代のQi(?)王国であるという説が唱えられており、国際サッカー連盟も注目している、ということになっています。

 (4)パスタ

 昨年、青海(Qinghai)省で、4000年前の遺跡から、お椀が麺が入った状態で発見され、パスタの元祖は支那であることが、改めて明確になったと報じられました。(これは、日本でも報道されたと記憶しています。)

 (5)最初の世界周航?

英国人のメンジーズ(Gavin Menzies)が唱えた、鄭和こそ、マゼランよりずっと早く、世界一周の航海を行ったという説(コラム#132799800)を、最初はおずおずと、しかし最近では確信ありげに中共当局の関係者達が口にするようになりました。

(以上、特に断っていない限りhttp://news.ft.com/cms/s/258428f8-b067-11da-a142-0000779e2340.html(3月12日アクセス)による。)

(6)長城

 2,000年の歴史があり、4,000マイルの長さがあるのですから、これはすごい、と言わざるをえません(http://books.guardian.co.uk/reviews/history/0,,1723609,00.html。3月5日アクセス)。

 (7)東洋医学

東洋医学と言っても幅が広いけれど、このところ針治療の科学性を欧米の医学界が認めつつあります。例えば、針が大脳の痛覚中枢の機能を停止させる力があることが分かったのです(http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/4631930.stm。1月22日アクセス)。

3 感想

 率直に言って、イマイチという感がありますね。