太田述正コラム#1434(2006.10.5)
<信頼ゼロの中共社会(続)(その2)>

 この公開書簡は、米国の人権監視団(Human Rights Watch)が肝いり役となって作成されたものであり、署名しているのは、ハーバード、プリンストン、カリフォルニア各大学の中共問題の権威やユーゴスラビアとウガンダを対象とする国際軍事法廷で首席検事を勤めた人物等です。
 この書簡にいわく、「われわれは、<中共の人権>活動家とその家族に対し、執拗ないやがらせ・追放・拘束・逮捕・投獄によって公的に報復するケースがどんどん増えていることに憂慮の念を抱いている。・・われわれはまた、社会活動がしばしば国家秘密漏洩の嫌疑で妨げられていることも承知している。」と。
 (以上、
http://www.nytimes.com/2006/10/03/world/asia/04chinacnd.html?ei=5094&en=e541a6ebd3fb8f3f&hp=&ex=1159934400&partner=homepage&pagewanted=print
(10月4日アクセス)による。)
 中共で人権規制が強化されていることは、9月20日に公表された、中共に関する米議会・行政府委員会(CONGRESSIONAL-EXECUTIVE COMMISSION ON CHINA)の2006年次報告書でも指摘されています。
 その冒頭にいわく、「本委員会は、増加する社会的騒擾(注2)に対処するとともに共産党の権威を高めるための中共政府の政策の内の一部が、次第に中共の市民の人権を抑圧する結果をもたらしつつあることを深く憂慮している。本委員会は、中共政府の人権に対する姿勢が2004年には限定的ながら改善したことを確認しているが、2005年と2006年には人権を後退させる政府諸決定が行われた・・」と。

 (注2)労働争議の件数は2005年に急増し、労働問題での訴訟は30万件と、2004年より20.6%、1995年より950%も増加した。また、スト・行進・デモ・集団的請願は、1994年には1,500件未満だったが、2003年には11,000件に増え、労働者の参加数は、1994年には53,000人だったのが、2003年には515,000人(推定)まで増えた。

 そして、具体例が挙げられていくのですが、そのうちのいくつかをご紹介しましょう。
 「<中共>政府は、<今年に入ってから>BBC、ラジオ自由アジア、ボイス・オブ・アメリカといった外国のニュース報道機関のウェッブサイト・ラジオ・TVを遮断した。2005年には、沢山の新聞と百にもなろうかという「違法な」政治的出版物を発禁処分にした。2005年5月からは、本委員会のウェッブサイトを中共国内で見ることができないように遮断した。2006年には、中共当局は、外国の報道機関の関心をひくような政治的に微妙な問題に携わる弁護士に対する規制を強化した。2005年中頃からは、微妙な刑事民事案件において権利を擁護する活動に関与した者に対し、地方当局が嫌がらせや暴力的措置を行うようになった。」
 「2005年以来、政府は弁護士や人権活動家による政府の権限濫用に抗議する活動の規制を始めた。全中共弁護士協会は、大集団がらみの案件に携わる弁護士に規制をかけるガイドラインを発出した。地方当局は、弁護活動への追加的規制措置をとった。」
 「チベットにおいて、政治的理由で拘禁される者のうちの仏教の僧侶や尼僧の数は、2004年には15人中8人だったが、2005年には、24人中21人となった。」
(以上、
http://www.cecc.gov/pages/annualRpt/annualRpt06/FullReport.php
(10月3日アクセス)による。)

4 感想

 先般、北朝鮮の核実験実施宣言があったばかりですが、中共政府が、汚職の蔓延という深刻な病に冒され、民衆の怒りにうろたえて、人権抑圧に血道を上げるに至った、というのですから、東アジア情勢は確実に暗転しつつあります。
 日本は一刻も早く、再武装を行い、諜報機関を設立し、米国からの独立を果たすとともに、中共と北朝鮮という、東アジアの独裁ブロックに対する、硬軟取り混ぜた総合戦略を作成すべきでしょう。

(完)