太田述正コラム#1535(2006.11.28)
<米国最新女性事情(その1)>(有料→2007.4.21公開))

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1 始めに

 米国の女性の最新事情を最近上梓された2冊の本を通じて探ってみましょう。

2 結婚について

 (1)手がかりになる本
 手がかりになる本は、ウェラン(Christine B. Whelan)のWHY SMART MEN MARRY SMART WOMEN, Simon & Schuster です。
 ウェランは、経済・社会史の博士号を持っている29歳の女性であり、国勢調査の結果、自ら1629人の仕事をバリバリやっている男女を対象に実施した世論調査、及び仕事をバリバリやっている100名の男女と全米9つの都市で自ら行ったインタビューを踏まえて、この本を書き下ろしました。

 (2)本の概要
 かつては、仕事をバリバリやっている女性は結婚できないし子供も持てないと思われていた。
 ミシガン大学のかつての研究によれば、大卒の男性は、より劣位にある女性と結婚することを好んだ。例えば、会社の幹部は、自分の上司や同輩より、秘書である女性の方を好んだ。
 具体的には、1980年においては、40歳から44歳になった時点でそれまでに結婚したことがある者の率は、修士号以上を持っている女性は高卒の女性に比べて13.5%も低かった。
 また、英国のかつての研究によれば、IQの高い女性は低い女性に比べて結婚できる率はかなり低いけれど、男性の場合はその逆だった。
 1970年代、1980年代において、そして1990年代においてもなお、それが紛れもない現実だった。
 しかし、2000年までには、少なくとも米国においては状況が一変した。
 この間、1970年に比べて、現在では3倍もの女性が修士号や博士号を取得するようになった。今や大学生の57%は女性だし、ロースクールやメディカルスクールの学生の半分近くが女性になった。そして、女性は企業、非営利団体、教育界等あらゆる分野で高いポストにつくようになった。これが状況の変化をもたらしたのだ。
最近では調査すると、地位が高く力を持っている女性の方がそうでない女性より男性から見て魅力的だという結果が出るようになった。
 具体的には、白人の女性の場合、年間所得が1万ドル増えると1年以内に結婚する可能性は7%あがるし、黒人の女性の場合は、8%以上あがる。
 こうして、修士号以上の学位を持っているか、それぞれの年齢集団で上位10%の所得を得ている(注1)か、あるいはその両方の活躍している女性は、その他の女性に比べて、結婚の時期が遅れるだけで、結婚する率は同じになった。

 (注1)2005年に24歳から34歳までで年5万ドル以上の所得のある女性、35歳から40歳までで年6万ドル以上の所得がある女性。

 結婚の時期が遅れるという点だが、29歳の時点で、修士号以上を持っている女性の55%しか結婚していないが、その他の女性の61%が結婚している。ところが、30代になってから、修士号以上を持っている女性は追いつくのだ。すなわち、30歳の時点で、学士号以下しか持っていない女性が結婚する可能性は三分の二であるのに対して、修士号以上を持っている女性が結婚する可能性は四分の三もあるのだ。
 しかも、彼女たちは、その他の女性に比べて離婚率がほとんど半分だ。
 にもかかわらず、仕事をバリバリやっている女性達の半分近くは、いまだに自分達は縁遠い存在と思いこんでいる。彼女たちは、仕事をバリバリやっている男性は同じような女性を求めているし、そもそも今時の男性は、高学歴の女性や仕事で成功している女性を決して敬遠などしないことを知らないのだ。
 なお、私の行った世論調査によれば、高学歴の女性の半分は、ぴったりくる男性が現れなかったら未婚の母になりたいと思っている。
 私はそれはそれで立派な選択だと思う。
 (以上、
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/11/22/AR2006112201801_pf.html(書評)
(11月27日アクセス)、及び
http://washingtontimes.com/functions/print.php?StoryID=20061115-105432-9752r(書評)、
http://www.abcnews.go.com/GMA/print?id=2569852(抜き刷り)
(どちらも11月28日アクセス)による。)

 (3)感想
 ワシントンポスト上掲の書評子は、ウェランの本は、題名である「なぜ今頭の良い男は頭の良い女と結婚するのか」を説明していないし、男性の結婚願望は女性より強いというのに、低収入・低学歴の男性は女性から相手にされず、独身のみじめな人生を送る、といったことに全く触れていない、と批判しつつも、既に明らかにされつつあったとはいえ、高学歴・高所得の人々に関して、結婚が同レベルの男女間で行われる傾向が強まりつつあることを、改めて指摘したと言う点でこの本の意義は大きい、と記しています。
 なお、この本に対しては、未婚の母になることも立派な選択だ、と言っている箇所だけは問題だ、という批判(
http://progressiveconservatism.blogspot.com/2006/10/new-review-why-smart-men-marry-smart.html
。11月28日アクセス)もあります。
 子供はペットではなく、やはり父性も必要としているのだから、未婚の母になることが立派な選択とは必ずしも言えない、というのです。
 私もこれらの批判に同感です。
 ところで、日本では、2004年度で、大学(短大を除く)への進学率が男子49.3%,女子35.2%と男子の方が15%近く上回っており、大卒でただちに大学院に進学する率に至っては、男性14.4%に対し、女性は7.1%と半分でしかない(
http://www.gender.go.jp/whitepaper/h17/danjyo_gaiyou/danjyo/html/honpen/chap01_08.html
。11月28日アクセス)、という「遅れた」状況をまず何とかしなければならない、と思います。
 高学歴の女性の結婚問題を考えるのはそれからでしょう。

(続く)