太田述正コラム#1593(2006.12.27)
<第一審判決について(その1)>
 (「マクファーレン・マルサス・英日」シリーズで、「イギリス」と書いてきたのが、途中で「英国」に変わってしまっていることに気付きました。マクファーレンは「England」と書いているので、すべて「イギリス」に読み替えてください。ブログとHPはそのままにしてあります。)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
<ある有料読者からのメール>(コラム#1592と同じ方)
 「温故知新」の、大学習期に向けて(会員継続の考え方について)。再伸します。
 本当に、官僚的答弁ですね。私は「有料会員」に5つ加入していますが、「毎回」のメルマガ送信に、毎日何人申込みがあった・・などの記載がウザイと申し上げたのです。他にはないから、余計そう感じるのでしょう。
 私が言いたかったのは、期間を限って「会員」集める「PR」を記事下にすればいいと思たからです。故に、太田さんは、「大脳思考肥大」で「内蔵思考」が不足している、と申し上げた次第です。
 単に「会員数」による経営問題なら、上記のような回答ではなく、怒るときは、相手を罵倒するくらいの決死の覚悟でなければ、「会員」を集めて有料化などは無理でしょう。あまり、大衆を馬鹿にした答弁は許されませんよ。この意味がお分かりですか?オフ会に出ても、同じことを言い切ります。
 つまり、会員数の問題が目標達成できないなら、メルマガ自体を中止すべきでしょう。又は、ウェブサイトで、「無料頁」と「会員用BBS」を作り、「会員用」には、パスワードでしか見れないような工夫をして、経費節減をはかるべきでしょう。そして、「会員」だけにしか見れない内容の濃い(真実の暴き)があってもいいと思います。
真実はザワザワとしか伝わりません。ましてや、来年は、「いいこと」も「わるいこと」も、隠れたところで準備が始まる「温故知新」の、大学習期になる、というのが私の時代認識ですので。
 私は、日々の「経営」で「キャッシュ・フローを生み出すことに苦労していますので、太田さんの、上記の回答は、何と呑気なものだと思います。お客様は神様です。いくら太田様が偉くて、優秀であっても、大会社や公務員には通用するかもしれませんが、これは「オフ会」に出る以前の庶民的な常識です。こういうやりとりが「会員減」になります。
 参考までに「無料」ですが、ある「ブログ」の、ある日の投稿を紹介します。
(転載記事貼り付け始め)
松藤民輔■ブログ■(2006年12月16日)
http://blog.ushinomiya.co.jp/economics/2006/12/16.html「ジニ係数が示す日本の力」 
 貧富の格差を表すのにジニ係数がある。・・<長いので中間を省略させていただきます(太田)>・・東大官僚村が崩壊する時、日本はより大衆化し、世界で最も成功した共産主義国家、大衆国家になっていくに違いない。なのにどうして東大を目指したがるのだろうか!?投稿者: 松藤民輔 | 日時: 2006年12月16日 08:05
(転載記事貼り付け終わり)
 色々と失礼なことを申し上げましたが、私は、所詮、下等学問のHumnitiesの文学部哲学科(これは、西周<にし・あまね>の誤訳)卒ですので、非礼はお許しください。哲学は神学の下女(したため)ですから、本来は「神学部愛知学科」が正しいと思います。
<太田>
>会員継続の考え方について・・再伸します。
要するに、継続されるのですか、されないのですか?
>オフ会に出ても、同じことを言い切ります。
9割方は、オフ会には出ない、という風に読めます。一体どちらなのでしょうか?
率直に申し上げて、全般的に、あなたの文章は極めて分かりにくいです。言いたいことが一杯ありすぎて文章がそれに追いついていない、という感じですね。多分、話をされる時はもっと分かりやすく話されるのではないかと思います。
実際、少し無理してオフ会に出席されませんか?人生観変わるかもしれませんよ。
 ところで、島田さん以外にお二人の方がオフ会出席希望を伝えてこられました。うちお一人はカレンダーを持参していただけるそうです。
 最後にお目障りでしょうが、会費納入状況等について、報告させていただきます。
<新規有料講読申し込み者>
 はじめまして。○○といいます。軍事関係に興味があり、最近は国際政治などにも興味を持つ、普通の社会人です。(一応大学生でもありますが)
 今年の4月頃、所沢さんのHPから太田さんのHPを知り、それ以後毎日楽しみにコラムを読ませて頂いておりました。
 現在の状況をみて、このままでは完全有料化になってしまうと危惧し、散々優れた文章を無料で読ませて貰ったんだから、ここらで無料コラムの維持に貢献するべきだろう。と考えまして、有料購読の申し込みをします。
 期間は来年1月から6月までの半年を、取り合えずお願いします。振込み銀行は △で、バックナンバーも希望します。ぎりぎりの申し込みとなってしまい申し訳ありませんがよろしくお願いします。
<太田>
 これで、新規有料購読を申し込まれた方は、14名になりました。うち12名が会費を納入済みです。
 26日1300現在、上記を含め、来期の会費を納入済の方は108名に達し、助っ人(コラム執筆等)1名を加えると109名ですが、目標の129名を達成するためには残り1日で20名の方が会費を納入するか助っ人を引き受けていただく必要があります。なお、納入を確約されたと私が見なした場合は、会費納入済扱いします。
 ちなみに、会費を振り込むとご連絡をいただいている方が現在6名おられます。最終日である明日28日まであきらめませんので、その他の方々も含め、よろしくお願いします。
 新規申し込みや助っ人(コラム執筆等)希望者は、ohta@ohtan.net へどうぞ。
 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
1 始めに
 昨日付で、例の創価学会関連訴訟の東京地裁判決があり、本日送達された判決を受け取りました。
私の実質全面敗訴です。
 判決は以下のとおりです。(被告は私です。)
 なお、過去の関連コラムに記されている部分は省略しました。
2 判決
主文
1 被告は、原告に対し、50万円を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを5分し、その3を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
<省略>
第2 事案の概要
<省略>
第3 争点に対する判断
1 本件記事は原告の社会的評価を低下させるに足りるものか。
(1)ある記事が人の社会的評価を低下させるに足りるものかどうかは、当該記事についての一般読者の普通の注意と読み方とを基準として解釈した意味内容に従って判断すべきであると解するのが相当である。(最高裁昭和31年7月20日第二小法廷判決・民集10巻8号1059ページ参照)
 これを本件についてみると、本件記事(甲1)(私のコラム#195のこと(太田))を一般読者の普通の注意と読み方とを基準として解釈した意味内容に従えば、東村山警察署で本件事件の捜査及び広報の責任者を務めていた創価学会員である副署長らは、公僕としての義務よりも創価学会への忠誠を優先させ、本件窃盗事件を捏造し、本件転落死事件の隠ぺい工作を行ったとの事実を摘示したものと認められる。
 そうすると、警察署副署長が刑事事件を捏造したり隠ぺい工作を行ったとの事実の摘示が、当該副署長の社会的名誉を低下させるに足りるものであることは明らかであるというべきである。
(2)これに対して、被告は、原告に警察官としての職務能力等を疑わせる作為不作為があったとの指摘は、さまざまな出版物やインターネット上の記事においてなされており、本件記事が掲載された時点では、既に公知の事実となっていたから、本件記事が原告の社会的評価を新たに低下させるに足りるものではないと主張する。
 この点、証拠(甲3から5、乙1、2、5から8)によれば、本件記事が掲載される以前に、本件事件及びこれに対する原告の関与ないし職務遂行上の問題等を指摘する記事が、書籍(本件書籍及び「怪死」と題するもの)、雑誌等(「リバティ」、「東村山市民新聞」、「FORUM21」と題するもの)及びインターネットのホームページにおいて掲載されていたことが認められるが、いずれも国内において著名な書籍、日刊紙及び週刊誌等であるとは言い難い上、これらの発行部数や発行・頒布地域、アクセス回数等も証拠上明らかではないことにかんがみれば、本件記事の掲載当時、原告について上記の指摘がされていることが広く一般に知られていたとまではいうことができず、そのほかにこれを認めるに足りる的確な証拠はない。
 したがって、本件記事が原告の社会的評価を新たに低下させるに足りるものではないとの被告の主張は採用することはできない。
(3)また、被告は、本件記事において原告の実名は挙げられていないことを根拠として、本件記事による指摘を原告の実名を伴った形で認識することができた読者はほとんどおらず、原告の社会的評価を低下させることはないと主張する。
 しかし、本件記事において指摘されている人物は、本件事件前後に東村山警察署副署長を務めていた者であることが容易に読みとれるものであるから、たとえ原告の実名が記載されていなかったとしても、当該人物が原告であることが特定可能であるというべきである。
 したがって、この点についての被告の主張も採用することはできない。
(4)よって、本件記事は原告の社会的評価を低下させるに足りるものであると認められるから、本件記事の掲載は原告の名誉を毀損するものというべきである。
2 名誉毀損の成立阻却事由の有無
(1)事実を摘示しての名誉毀損にあっては、その行為が公共の利害に関する事実にかかり、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、摘示された事実がその重要な部分について真実であることの証明があったときには、上記行為には違法性がなく、仮に上記証明がないときにも、行為者において上記事実の重要な部分を真実と信ずるについて相当の理由があれば、その故意又は過失は否定される。(最高裁昭和41年6月23日第一小法廷判決・民集20巻5号1118ページ参照)
(2)公共性
 本件記事において摘示された事実は、捜査機関が刑事事件を捏造・隠ぺいするなど、本来あるべき適切な捜査を行っていないことを指摘するものであるから、本件記事の掲載が公共の利害に関する事実にかかるものであることは明らかである。
(3)公益性
 上記のとおり、本件記事は公共の利害に関する事実にかかるものであることに加えて、本件記事全体の表現方法、体裁等にかんがみれば、本件記事が原告らの人格攻撃や揶揄等を企図してなされたものであるとは言い難いから、その目的が専ら公益を図ることにあったと認めるのが相当である。
(4)真実性
 本件記事は、その記述の内容、表現方法等に照らせば、本件書籍が存在していること及びその内容を正しく紹介するにとどまるものではなく、本件書籍において記述されている事実が、あたかも客観的に存在する真実であるかのように指摘するものであると認められるところ、本件記事において摘示された事実がその重要な部分について真実であるとの主張はない。
 これに対して、被告は、本件記事は本件書籍を要約紹介した論評(コラム)であるところ、本件記事は本件書籍の主旨に基本的に沿ったもので、全体として正確性を欠くものではないから、名誉毀損としての違法性は阻却されると主張する。
 しかし、被告が引用する判決は、他人の著作物に関し、その執筆姿勢を批判する内容の論評についての名誉毀損が問題となった事案において、その前提としての引用紹介が全体として正確性を欠くとまではいえないとして、当該論評に名誉毀損としての違法性があるということはできないと判示したもので、本件とは事案を異にするから、この点についての被告の主張は独自の見解というほかなく、これを採用することはできない。
(5)相当性
 被告は、本件書籍が公選された公務員2名が執筆した公刊書籍であること、本件書籍が絶版とされておらず現在においても流通していることを根拠として、本件記事において摘示した事実の重要な部分を真実と信ずるについて相当の理由があると主張する。
しかし、現在も流通しており、かつ、公選された公務員が執筆した公刊書籍の記載内容が真実であるということについて、社会通念上、高い信頼が確立しているとまではいうことはできないから、このような書籍に基づくとの一事によって、直ちに、その記載内容を真実と信じたことに無理からぬものがあるとはいえない。そして、被告が当該事実について独自に取材をしたり、原告に対して取材を申し入れたことがないことは争いがなく、そのほかに被告が当該事実を真実と信ずることがやむを得なかったと認めるに足りる証拠はない。
 そうすると、被告が本件記事において摘示した事実を真実と信ずるについて相当の理由があるということはできない。
(6)よって、本件記事による名誉毀損の成立が阻却されるとはいえない。
3 損害
 本件記事において摘示された事実やその表現方法、体裁、媒体、そのほか本件にあらわれた一切の事情を考慮すると、原告が被った損害は50万円と認めるのが相当である。
第4 結論
 よって、原告の請求は、被告に対して50万円の支払を求める限度で理由があるが、その余は理由がないので、これを棄却することとし、仮執行宣言は相当でないのでこれを付さないこととし、主文のとおり判決する。
 東京地方裁判所民事第28部
  裁判長裁判官 加藤謙一
  裁判官    杉本宏之
  裁判官    間明宏充