太田述正コラム#1611(2007.1.9)
<消印所沢通信3:長いのでタイトルは省略!>

<太田>
 消印所沢さんのコラム第三弾を、独立してお送りします。
 読みようによっては、これは、私の国際情勢予測を揶揄したコラムとも受け止められますね。
 なお、消印所沢さんやバグってハニーさんのコラムを独立してお送りする場合は、ただちに公開することにしています。

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   実用(?)講座:あなたにも書ける「大胆予測!2007年,世界はこうなる」

 年始のテレビや雑誌などで定番なのが,「2007年はこうなる」といった予測もの.
 中には,こうした予測を「的中」させることで一躍,スターダムにのし上がった評論家や占い師もいます.

 しかし,実はこれ,誰でも簡単に書けるのです.
 これから述べるテクニックを使えば,誰でもお手軽・簡単に,「百発百中」の予測または予言をでっち上げることが可能です.

 では,さっそく始めましょう.

 さて,まず基本を押さえておきましょう.
 予言,予見で忘れちゃならないのがノストラダムス.
 1999年の「世界終末予言」ではちょいとポカをやっちゃいましたが,そのテクニックは今でも通用します.その証拠に,ノストラダムス・テクニックそのまんまのやり方をしている占い師やカルト宗教の教祖やゴーマニズム漫画家などは,今もしばしば散見されます.

 もはや言い古されている感もありますが,ノストラダムス・テクニックその1は,
「あいまいな予言をする」
例えば,「地震が来る」より「自然災害が起こる」のほうが,地震でも台風でも津波でも何でも「的中した」ことになる確率が高くなりますね.
 さらに「自然災害が起こる」より「災いが起こる」のほうが,自然災害でも事件でも事故でも「的中した」と言い易くなります.それだけ「的中」確率が高まるわけですね.

 また,時期に関しても,できれば「2007年には」と限定するより,「近い将来には」と曖昧な表現にしたほうがベター.
 2007年には起こらなかったことでも,その後何年かの内には起こる可能性は増すからです.
 単に「将来には」とか「やがて」とかいった表現にしておけば,そりゃ,いつの日か必ず何らかの事件・事故・災害などが起こりますから,もうこれは外しっこない「予言・予測」とすることができます.
 
 テクニックその2は,
「できるだけたくさん予言する」
 「下手な鉄砲,数撃ちゃ当たる」の言葉通り,数多く予言しておけば,どれかは当たります.
 6大陸の凶事は全て抑えておくようにしましょう.

 そして,テクニックその3:
「外れた予言は,なかったことにする」
 外れた予言が「なかった」なら,あなたは百発百中です.
 外れたものは,ブログから削除し,本からも消し,蒸し返す人には否定しまくりましょう.
 どうせ,外した予言をいちいちチェックするのはマニアだけですから,否定し続けていれば,なんとかなります.
 その代わり,当たった予言のことは毎日言い続け,宣伝し続けましょう.

 以上3点を踏まえた上で,国際情勢を騙る,もとい語るに当たって押さえておきたいのが,次の定石.

 (1) 中東は「新たな武力衝突が起きる」とか何とか言っておけば,まずハズレはしない.
 あそこほどしょっちゅう撃ち合いが起こっている地域もないのですから,どんな無知でも予測は可能です.
 現在も,ハマスとファタハが断続的に殺し合いをやっていますから,今日予言すれば,明日にでもすぐに「的中」します.

 (2)大国は必ず「将来」衰退する.
 そりゃ,今が最盛期なんだから「大国」を名乗ることができているんで,最盛期が永遠に続きはしないことは誰にでも分かる理屈.
 その時期がいつかを予測することはプロにも難しいのですが,「将来」としておけば絶対に「ハズレは」ありません.

 (3)テロは必ず起こる.
 あまり知られていないことですが,タイ南部やインドなどでは,ほぼ毎日テロが発生しています.ただ,あまりに頻繁なのと小規模なのとでニュース・バリューが低く,日本では報道されていないだけです.
 それに加えて,イスラム過激原理主義,ヒンドゥー過激主義,環境過激主義,過激無抵抗主義(一部ウソ)など各種過激派が世界中にはゴマンと存在しますので,これでテロが起きない日のほうが不思議.
 「テロが今年,起こる」とだけ予言しておけば絶対に当たりますし,それこそ連日報道されるような大きなテロが起こったなら,そのときはでかい顔をしましょう.

 さあ,これで予言・予測は完璧ですね.
 あとは演出.「ヤマ勘で言っているだけ」と見破られないようにする必要があります.
 占星術・易学などのデータを駆使して味付けするか,色々なソースを根拠として引っ張ってくることが肝心.

 前者なら,ホームページやブログはあえて無機質なデザインにし,かつ,数字と具体例とを次々と並べ,さも「科学的」であるように装うと現代チック.
 え? 「データはどこから持ってくるの?」ですって?
 それは適当に自作すればOK.占いなんて占い師の数だけやり方があるのですから,他の占い師があなたの占いの数字の根拠を検証するなんて不可能,バレやしません.

 後者なら,グーグル検索で適当に専門サイトなど探し,そのURLをべたべた貼れば,そのサイトをあなたが例え全く読んでいなくとも,まずバレません.
 具体的な引用は避けると共に,そうしたURLを20も30も並べておけばOK.
 訪問者はそれを全部読むことはまれですし,具体的な引用さえしなければ,どのサイトのどの部分からそうした結論を引き出したのか,検証はさらに困難です.

 両者とも,最後に文明批判,世評批判的なコメントを付け加えておけば,読者は「ああ,この人は真面目に世界のことを考えているんだな」と勝手に勘違いしてくれます.
 下手をすれば,マスコミ関係者までが勝手に勘違いして,大きく取り上げてくれるかもしれません.
 実際,そんな勘違いによって有名になった某ブログもありますね(笑).

 さあ,あなたも政治ブログの女王,政治サイトの雄を目指し,さっそく「予測」してみませんか?
 レッツ・トライ!