太田述正コラム#1991(2007.8.10)
<民主党へのアドバイス(続)(その2)>
 (本篇は情報屋台の掲示板への投稿を兼ねており、即時公開します。)
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<太田>
 ここで、コラム#1889を受けての読者との対話をご披露しましょう。
<バグってハニー>
 小沢先生はどうだか分かりませんが、アフガンとイラクを意図的にごっちゃにして不朽の自由作戦にも難癖つける人がいますよねえ。
 911直後に採択された安保理決議1368では「あらゆる手段を用いて闘うこと」というふうに武力行使が容認されています。
http://www.mofa.jp/mofaj/gaiko/terro/anpo_1368.html
 ただ、この決議には「アフガン」という対象が含まれていませんでした。そこで、米英がアフガン侵攻に当たって新たな決議が必要なのかどうかに関して、イラク戦争を食い止められなかったことを一生の不覚と恥じるアナン国連事務総長(当時)でさえ、アフガン侵攻には新たな安保理決議は必要でないことを示唆したわけです。
https://www.toonippo.co.jp/tokushuu/danmen/danmen2001/0924.html
 それで、実際に米英の軍事行動が始まってみると主要国はこぞって支持を表明したわけです。ロシアのプーチンでさえ。都合よく健忘症に陥ってこういったことをすっかり忘れている人が多いですが、今現在、ISAFという国際間の枠組みがあるのはそういう経緯があるからです。
 先生の言うとおり、民主党マニフェストにあるように、イラクの空自空輸部隊を撤退させるとしても、インド洋の燃料補給作戦に対する理解とISAFへの自衛隊参加を表明しないと、小沢氏は首尾一貫してないですよねえ。
<太田>
 適切な補足をしていただき、ありがとうございました。
<バグってハニー>
 小沢氏のもう少し詳しい発言内容が下掲に掲載されています。
http://news.www.infoseek.co.jp/politics/story/photo02mainichiF20070809k0000m010074000c
 アフガニスタン戦争について「米国がテロとの戦いだと国際社会のコンセンサスを待たずに始めた」と反論。国連の平和維持活動には積極的に参加するとしながらも、アフガニスタンでの米軍の活動について「直接的に根拠となる国連決議はない」として、参加できない考えを明確にした。
 無知なのか、すっとぼけているのか。だめだ、こりゃ。それ以前にも
07年7月 原爆の投下について謝罪を求める、そういう考えで、アメリカと話し合うべきだ(1日、民間団体主催の安倍晋三首相との党首討論で)
  8月 アフガン戦争はアメリカが「これは我々の自衛戦争だ」と言って始めた戦争だ。国連や国際社会は関係ない(7日、記者会見で)
<太田>
>原爆の投下について謝罪を求める、そういう考えで、アメリカと話し合うべきだ
という小沢発言は、コラム#1899で用いた
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20070809k0000m010074000c.html
でも引用されていますが、こんなことを首相の座を目指す野党第一党の党首である小沢氏が言っちゃダメなのです。
 米国は、エシュロンで小沢氏の電話やメールは全部盗聴していると考えるべきであり、不祥事の噂の絶えない小沢氏のことですから、その政治生命を米国が絶とうとしたらいつでも絶てる、くらいに考えておいた方がいいのであって、小沢氏が虎の尾を踏む愚をこのところ繰り返していることは私には到底理解できません。
 ただ、今となってはもうダメでしょうが、私は野党が多数を占めた参議院で、小沢氏が、絶対表に出ない形で、原爆投下を非難する決議案を社民党あたりから出させるといったことをやっておれば面白かったと思っています。
 米下院での慰安婦決議の採択を受け、「米政府と議会では日本の保守派が原爆投下や東京大空襲を人権問題と見なし、米国に謝罪を要求することを懸念している」らしい(
http://www.chosunonline.com/article/20070801000030
(8月2日アクセス)がキャリーした毎日新聞記事)ところ、彼らのこの「期待」にある程度答えてあげることは、ジャパン・パッシングに傾きかけている彼らの目を覚まさせ、反省させる効果があったと思うのです。 
 ブッシュ米政権は、訪米した小池百合子防衛相に対し、めったに日本の政界関係者とは会わないチェイニー副大統領のほか、ゲーツ国防長官、ライス国務長官が会談するなど、異例の厚遇ぶりを見せました(
http://www.sankei.co.jp/kokusai/usa/070810/usa070810000.htm
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20070810AT3S0900G09082007.html
。8月10日アクセス)。
 これは、小沢氏がテロ特措法反対を明言したことに対し、米ブッシュ政権が浮き足立っている現れです。
 米国にとってペルソナ・ノングラータとなった小沢氏の政治生命は、もはや長くはないのではないでしょうか。
 小沢氏は、米国に対して毅然とした姿勢を示すことで世論の支持を得たかったのでしょうが、それなら、原爆投下非難決議の採択にこそ密かに動くべきだったのです。
 米タイム誌が、外交などなきに等しく防衛についてもを完全に米国に依存してきた日本が最近ようやく変わりつつあり、安全保障を政争の具にしなくなってきていたというのに、小沢氏は再び安全保障を政争の具にしてしまったと小沢氏を批判し、このような小沢氏に民主党内のタカ派が反発して党が分裂する可能性があると述べ、(仮に民主党が分裂しないとしても、)日本の世論が民主党には政権担当能力はないと判断するかもしれない、とする記事(
http://www.time.com/time/world/article/0,8599,1651342,00.html
。8月10日アクセス)を掲載したのは、ブッシュ政権の意向を的確に代弁していると思います。
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(続く)