太田述正コラム#2203(2007.11.29)
<皆さんとディスカッション(続x8)>
<遠江人>
>この関連で皆さんにお考えいただきたいのは、死刑の存廃論です。
 なるほど、太田さんがこのコラムで読者に喚起したかった狙いはそこにあったんですね。死の差別という偽善欺瞞、そこから日本の最大の偽善欺瞞の一つである憲法9条と死刑存廃の関係を想起せよ、と。
 日本の社会学者などにありがちな、軍事的視点からの分析がすっぽり抜け落ちているものだから、いきなり大上段から世界を語ろうとしたり真理を捻り出そうと して、大概ろくでもない論考にしかならないというパターンと、ちょっと似たような書き込みになってしまっていたかもしれません。
 憲法第9条墨守論者にしろ死刑廃止論者にしろ、人命尊重だなんだといっても、結局、一つの社会問題に限定した中でしか理論を組み立てることをしないか ら、おかしなことになっているように思えます。様々な別種の問題をリンクさせて物事を考えないと到底まともな論考はできないのに(軍事的要素がリンクを繋 げる役目を果たすことが往々にしてある?)、知ってか知らずか都合の悪いことは無視して、自分の言い分だけ言っている人が結構多いような気がします。(こ うなると議論だとか啓蒙だとか以前に、無知な人をいかに洗脳するか合戦(?)のような・・・)
 それもこれも吉田ドクトリン下で安全保障も外交も本気で考える必要が無いことが、国民にも影響して、社会問題を本気で考えなくていいという潜在意識が形成されてしまっているのでしょうか。
 結局、人を殺す覚悟も人を殺さない覚悟も、どちらもしたくない、というのが今の日本人の本音と言えそうです。最悪に卑怯ですね。
<太田>
 おっしゃる通りだと思います。
 ところで、「戦闘行為によって(軍隊にあらざる)自衛隊が人を殺すことも、自衛官が殺されることもありえません。」と書いたのに対し、日本が武力攻撃を受けた時にはそういうことがありうるのではないか、という問題意識を持った方はおられなかったですか。。
 お説ごもっともなのですが、第一に、日本が(組織的計画的な)武力攻撃を受けることなど見通しうる将来にわたってまずありえないこと、第二に、可能性が少しはあるテロリスト的攻撃への対処は犯罪に対する警察的行動であるところ、その際にテロリストたる犯人を殺すことは許されるのか、という問題は、死刑を科すのは許されるのか、という問題と基本的に同じ次元の話であることから、「」内のように言い切らせていただいた次第です。
<読者TK>
 自主開発か完全輸入か?はたまた。
 昔から言われてきたことですが、米国のF-15は60億円で、ライセンス生産の日本のものは120億円。また、米国製戦車の3倍もする90式戦車をなぜ配備するのか?といったようなこと(数字は正確ではなく、たとえ話として。その最たるものがF-2でしょう。)をどう思われますか?
 もちろん、相手が売ってくれるかどうか、日本に生産能力があるかどうか、といったこともあるでしょう。
 もっとも、必要かどうかが一番重要ですが。
<太田>
 輸入した方が安いのにわざわざライセンス生産をするのは、値段をつり上げることができるので、それが防衛省にとっても業者にとっても(更には政治家にとっても)よりうまみがあるからです。
 ライセンス生産は、戦闘機等を将来純国産化するためのトレーニングになるという言い訳は、米国自身が日本の戦闘機の純国産化の試みを粉砕したことで破綻しています。
 もっとひどいのは、米国にとってどうでもよい二線級装備であるからこそ日本が純国産を認められてきた装備です。
 値段がつり上がっているだけではありません。
 輸入装備やライセンス生産装備なら性能が国際的に保証されていますが、純国産した装備のうち大部分の性能に疑問符がつきます。
 それどころか、訓練で使うだけでも自衛隊員にとって危険な装備が少なくないのが実情です。
 これに加えて、装備の輸出が禁止されていることも、価格面や性能面でリーズナブルな純国産装備の出現を妨げていると言ってよいでしょう。
 CXのエンジンのことばかりが取り沙汰されていますが、今時輸送機を純国産すること自体を疑問視する声が出ないのは不思議でなりません。
 (純国産のC-1(ジェット機)が失敗作で、米国製のC-130(プロペラ機)に切り替えた経験が全く生かされていません。)
<T.M.@横浜>
 はじめまして、太田様。
 今日、森屋元次官が逮捕され、夫人まで逮捕されました。本人ではない家族にまで、収賄になるというのは、法律を拡大解釈しすぎているように思うのですが???
 こういう拡大解釈は、”チョット恐ろしいこと”でしょうか?
<太田>
 ”チョット恐ろしいこと”どころではありません。
 検察ファッショってやつです。
 
 「前防衛事務次官守屋武昌容疑者側が、山田洋行元専務宮崎元伸容疑者側から受け取った現金が2004年の二百万円に加え、さらに百数十万円あり、総額三百数十万円に上ることが分かった。東京地検特捜部は、資金提供にわいろの趣旨がなかったか解明を進めているもようだ。関係者によると、現金は04年から06年にかけ、山田洋行の米国現地法人「ヤマダインターナショナルコーポレーション」(ワシントン)の元社長秋山収容疑者(70)=業務上横領容疑などで逮捕=が管理する口座から複数回にわたり、宮崎容疑者の指示で送金されたという。送金先は、守屋容疑者の妻幸子容疑者と親族の口座。幸子容疑者の口座には04年に約二百万円が振り込まれていた。こうした金のやりとりについて、宮崎容疑者は特捜部の調べに対し「融資だった。金は返してもらっている」などと供述しているという。」(
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2007112902068257.html
。11月29日アクセス)
 要するに、検察はゴルフ等接待だけで守屋を立件すると自分達や他官庁のキャリアにもご迷惑がかかるので血眼になって守屋が現金をもらっていないか探し回ってもゴミみたいな金額にしかならないので、幸子さんに振り込まれたところの、(恐らく守屋が気がついてすぐ返させた)200万円に目をつけ、無理矢理彼女を共犯に仕立て上げた、ということです。
 そもそも夫婦だって別人格ですよ。
 幸子さんがどれだけ宮崎さんに金品をもらったところで、それは即守屋が利得したということにはなりません。
 検察はやり過ぎです。
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太田述正コラム#2204(2007.11.29)
<懲りない防衛省OB達>
→非公開
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<太田>
 日本テレビの「太田総理・・」に7日(3日収録)、14日(10日収録)に加えて、25日(17日収録。年末特別編)にも出演することになりました。