太田述正コラム#2204(2007.11.29)
<懲りない防衛省OB達>(2007.12.7公開)
 (本篇は当分の間、公開しません。)
1 始めに
 守屋の事件に関して防衛省OBの大部分は押し黙っていますが、(私はともかくとして、)約2名が声高にしゃべっておられます。
 私は穴があったら入りたい心地です。
2 佐藤正久参議院議員篇
 2007年11月28日付サンケイ電子版に次のような記事が載っています。
 
 「「いい迷惑だ。守屋容疑者ら背広組とわれわれ隊員が同じだと思われたくない」。こう語るのは「ヒゲの隊長」こと、参院議員の佐藤正久氏。イラク先遣隊長として現地入りし、現場の過酷さを肌で感じた指揮官として怒りの度合いは強い。「綱紀粛正を呼びかける通達は、事務次官や官房長、つまり守屋の名前でわれわれのところに届いていた。その本人がなんでこんなことを。しかも奥さんまで・・、一体何なんだ・・・佐藤氏は「守屋容疑者の接待問題で悪いイメージを持たれ、防衛省と商社のコミュニケーションが取れなくなるとしたら怖い」と指摘。「接待はもちろんいけないが、両者がコミュニケーションを密に取らないと、良い武器を調達できなくなる」と懸念している。」(
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/071128/crm0711281735034-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/071128/crm0711281735034-n2.htm
(11月28日アクセス)による。)
 最後のセンテンスは、コラム#2199で述べた私の懸念と同様の懸念であり、同感ですが、それ以外の部分はよく言うよ、というのが率直な感想です。
 というのは、私が民主党から立候補して自民党の現職の参議院議員であった依田さん(元防衛事務次官)・・例の斡旋利得議員等リストの中に登場する人物の中で、職務権限を直接持っているだけに最も悪質・・を落としたおかげで、6年間にわたり、(防衛省に長年在籍した)防衛省OBたる自民党議員がゼロになっていたというのに、その状態を「打破」したのが佐藤さんだからです。
 守屋らの退廃と腐敗の最大の責任は歴代の防衛庁長官/防衛大臣を輩出してきた自民党にあるというのに、自民党を利する行動をとった佐藤さんの責任は重大です。
 しかも、現役の防衛省職員(自衛官を含む)が選挙運動をやるわけにはいかないだけに、防衛省職員OB、就中自衛官将官OB達が彼の推薦人名簿に名前を連ねたはずですが、その大部分は企業等に天下った人々です。
 いわば彼は、防衛省と業界の癒着の象徴たる人々の推薦と運動によって、票を集めて当選したのです。
 その彼が、よりにもよって守屋や幸子さんの腐敗、退廃を指弾するなど天につばきするものと言うべきでしょう。
3 嶋口元防衛施設庁長官篇
 週刊文春2007年12月6日号に次のような記事が載っています。
 「防衛施設庁長官が実名告発 「福田に守屋親密商社との面会をゴリ押しされた!」
・・普天間飛行場移設問題を巡る協議で、新基地の建設工法の決定に向けた原案作りに取りかかっていた頃、一本の電話が入ったという。電話の主は当時内閣官房副長官の職にあった古川貞二郎氏だった。嶋口氏が振り返る。「古川さんから『福田康夫官房長官からの話だ。日商岩井が、いい案があるから聞いて欲しいと言っている。先方は日商岩井の役員で福田さんの同級生だ』と言われ、日商岩井の幹部二人と防衛施設庁の長官室で会いました。」彼らは図面を広げ、自分たちが推す建設工法をひとしきり説明。嶋口氏は、その説明に対して自らの見解を述べた後で、「ところで」と切り出したという。『なぜあなたがた商社が、こんな図面を持っているのですか。しかもそんなにいい案なら直接こちらに提案してくれればいいものを、なぜ政治家を使って話を持ってくるのですか。』と問い詰めた後、『二度と来ないで欲しい。出て行ってくれ』と一喝しました。わずか30分ほどでのやり取りでしたが、工事決定に政治力があったと疑われることは決してあってはならないことです。しかも、彼らが持参した図面は、当時の守屋防衛局長が持ち歩いていた図緬と全く同じ図面だったので、尚更驚いたのです・・」
 嶋口さん(防衛省キャリアで私より1期先輩)もヒドイけれど、こんな記事を載せた文春の見識も疑いますね。
 業者が案をつくって防衛局長や(沖縄問題の所管大臣でもある)官房長官に説明することに何の問題もないし、また、説明を受けた官房長官がそれを実施官庁である防衛施設庁の長官にも説明するよう業者に促すことにも何の問題もありません。
 古川官房長官は当時の福田官房長官のスタッフであると同時に、沖縄問題の事務的総合調整の担当者でもあり、この話が古川さんを通じて嶋口さんに伝えられたこともごく自然なことです。
 嶋口さんは、あらゆる業務はボトムアップでなされるべきであり、トップダウンでなされるべきではないとでも思っているのでしょうか。しかも、この場合、日商岩井案でやれと命じられた訳でも何でもなく、単にこの案も検討したらどうかと示唆されただけのことです。
 嶋口さんは、このような、いわば上司筋たる政治家からの正当な指示を不服とし、案の説明者をたたき出したというのですから、彼は、(私の嫌いな言葉ですが、)シビリアンコントロール違反をしでかしたことになります。
 よく恥ずかししげもなくこんな話をしたものです。
 よほど守屋に自分が次官になる目をつぶされたこと(
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2007112990071143.html
。11月29日アクセス)を根に持っているのでしょうね。
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<太田>
 日本テレビの「太田総理・・」に14日(3日収録)、21日(10日収録)に加えて、25日(17日収録。年末特別編)にも出演することになりました。