太田述正コラム#2381(2008.2.23)
<皆さんとディスカッション(続x71)>
<チェ・ゲバラ>
 イージス艦(あたご)の事件に関してですが、民主党の鳩山議員が石破防衛大臣に対して辞任を要求していますね。
 この感覚がサッパリ理解できません。
 穿った見方をすると、事故で行方不明になった2人を出しにして、福田内閣をここぞとばかりに攻め立ててるようにしか思えません。
 石破大臣より、あたごの艦長の方が重大責任だと思うのは私だけでしょうか?
<太田>
 鳩山さんがいかなる意図で辞任要求をしているのかは知りませんが、私のお答えはイエス・アンド・ノーです。公開したばかりのコラム#2380をご参照下さい。
 ところで、今朝大阪讀賣テレビの番組「ウェークアップ!ぷらす」を見ていたら、評論家の森本敏氏と民主党副代表の前原誠司氏が口裏を合わせたように、防衛省の情報開示が小出しになっているのは、あたご乗組員全員が海保の事情聴取の対象となって艦内にとどめられており、海自が彼らと接触ができない状況であって、海保が海自にこれは開示してもよいとして伝達したことをその都度そのまま開示しているからだ、と防衛省を弁護していましたが、これが本当だとしたら、まことに困った話です。
 海保は事故原因究明と捜査の両方を担っているわけですが、事情聴取を受ける側は、捜査と受け止める以上、自分に不利になることは明かそうとしないのが人情ですし、部外者に対して機密情報を明かすわけにも行きません。
 こういう場合は、捜査情報としては用いないと断った上で、海自のイニシアティブの下での事故原因究明が優先されるべきなのです。
 そもそも論を申し上げれば、自衛隊の警察である警務隊(昔の憲兵)の管轄は、自衛隊の施設内で行われた、隊員だけが当事者である事件に限られていますが、自衛隊の施設内外にかかわらず、一方の当事者が隊員であり、かつその事件が当該隊員の業務遂行にからむものである場合にまで拡大すべきでしょう。
 きちんと典拠にあたる必要がありますが、これが国際標準であるはずです。
<チェ・ゲバラ>
 先日、韓国で民主党の小沢代表が「在日外国人の地方参政権を実現する」という内容の発言をしましたが、これは本心でしょうか?
 一度、在日外国人に地方参政権を与えると、なかなか後戻りできないのでしょうか?
 後戻りが難しいのなら、民主党に政権を渡すのは、泥棒に刃物持たせるようなものですね。
<太田>
 この問題については、既に過去のコラムで何度も取り上げています。いちいちコラム番号はあげませんが、ぜひご参照下さい。
 ところで、小沢氏は21日ソウルで、中国共産党の腐敗について、「(腐敗で失脚し た)国民党のようにならないか憂慮せざるを得ない」と指摘した上で、「全ての紛争は貧困と貧富の差から始まる。中国は貧富の差に対する不満が一気に爆発することがあり得ることを知るべきだ」と述べ、また、中国の軍拡について、「周辺国は中国の成長に伴う軍事力膨張を懸念している。中国が人類史的に大きな貢献をしていくことを『現実の行動』で見せなければならない」と強調した。小沢代表は、中国共産党の指導部らと会談した際にもこうした意見を伝えたとされ、「中国の混乱は世界的な混乱につながる。中国政治がソフトランディング(軟着陸)できるように隣国(韓国・日本)が支援することは歴史的使命だ」と主張しました。
 この小沢発言に対し、同じカンファレンスに出ていたキッシンジャー元米国務長官は「現実的な発言だ」と捉えたのに対し、自民党の猪口邦子衆議院議員は、「日本人が みな、小沢代表のように考えているわけではない」と話した、というのですが、面白いですね。
 (以上、
http://www.chosunonline.com/article/20080222000050
(2月22日アクセス)による。)
<msl>
 チェ・ゲバラさんの投稿についてですが、党利党略・私利私欲が、公の精神・モラルより優先されちゃう事が根本なんじゃないですかね。自分さえよければいい個人・拝金主義が幅を利かせてて。
 上に立って力持ってる人間がそうなんだから、下の人は右へならえしないとつまはじきくらうからそういう人間がどんどん増殖されていく。
<太田>
 党利党略と言えば、沖縄での一連の強姦事件に対する日本の政治家の言動に米国人はうさんくささを感じているようです。
 沖縄県における「2007年の米軍構成員(軍人・軍属・家族)の犯罪・・摘発件数は63件で前年より6件増加、摘発人数は46人で17人減少し・・摘発人数は1997年、98年と並んで復帰後2番目の低さとなった。摘発人数が最少だったのは、少女乱暴事件の翌年の96年で33人。その後03年までは増加傾向だったが、米軍のイラク派兵後の04年からは4年連続で減少した。」(
http://mainichi.jp/area/okinawa/news/20080202rky00m040003000c.html  
。2月13日アクセス)と、在沖米軍の犯罪は減少気味である、ということをまず頭に入れておきましょう。
 ロサンゼルスタイムスの編集委員(staff writer)は、日本の外相や官房長官が米軍を強く批判しているのは、米軍再編問題を抱え、沖縄の世論に配慮しなければならないからに過ぎないとし、上述のように沖縄での米軍犯罪は減少傾向にあることに言及しつつ、日本では強姦などさして問題視されていないことを考えると米軍への批判はバランスを失していると指摘しています。
 つまり、日本では強姦被害者のための24時間ホットラインが設置されておらず、2006年には1948件の強姦が警察に申告されているけれど、この数は氷山の一角だとしています。
 これは、申告すると、強姦されるのはされた方にも責任があるという(福田首相も抱いていてる)観念の下で、心理的医学的ケアをしてくれるどころか、根掘り葉掘り状況を尋問され、実地検分までさせられ、しかも不起訴処分になることが多いからだというのです。
 その証拠として、昨年秋の広島市における米海兵隊4名による強姦容疑事件が、11月に何の説明もないまま不起訴処分になったけれど、米軍等局は引き続き立件に向けて捜査を継続している事実を挙げています。
 (以上、
http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-rape22feb22,1,6691925,print.story
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太田述正コラム#2382(2008.2.23)
<ビザンツ帝国(その1)>
→非公開