太田述正コラム#2459(2008.4.1)
<皆さんとディスカッション(続x100)/マリネラの核武装問題:消印所沢通信25(その1)>
<田吾作>
 コラム#2455で論じられていた「無線ICタグの国際標準化問題」に関連するアメリカのユーザー側の実態を示す資料をお送りします。
 「・・2006年の平均返品率は小売市場全体の20%程度、金額にすると4600億ドル相当にもなる。日本の返品率3%前後と比べると信じられない返品率の高さである。こんな面白いデータもある。衣類部門の返品率は市場全体と同じ20%であるが、水着に的を絞ると、返品率はなんと60%にまで跳ね上がる。おそらく、夏の間に使った水着を夏が終わる頃に返品する消費者が多数存在しているはずである。・・」
【不思議の国アメリカ】
何でもありの返品制度が築くゴミの山
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20070704/276716/?ST=biz_shin&P=1
より引用
 「・・売れ残ったペーパーバックは返本されない。カバーだけが返される。残りの部分は断裁されるのだ。なかには古本屋に流す書店もある。だから、カバーのないペーパーバックが売られているのだが、これは著者や出版社、あるいは両方からの窃盗である。ペーパーバックが返本されずに断裁される理由は複雑だ。もっと詳しく知りたければ、SF作家協会の記事を見てほしい。・・」
続・混沌の館にて
紙の本は10年後になくなる
http://cmad.nikkeibp.co.jp/?4_8410_117676_31
より引用
 管理の容易な流通業だけでなく、消費者を含むアメリカの社会全体を論じる視点が必要ではないでしょうか?
<太田>
 前者の筆者は、「アメリカで確立している、大量生産、大量販促、大量購買、大量消費(浪費)、大量返品、 大量廃棄」の問題性を指摘しているわけですが、だから、米国では無線ICタグに対するニーズが大きいのだと田吾作さんはおっしゃりたいのですか?
 しかし、大量返品の点を除けば、日本でも基本的に事情は同じではないでしょうか。
 また、後者の筆者が紹介する「ペーパーバック」の「カバーだけが返される」理由は、米国の在庫品にかけられる税制にある(
http://www.sfwa.org/bulletin/articles/thor.htm
。3月30日アクセス)ようですが、この話と無線ICタグの話とは全く関係がないのではありませんか?
 
<かたせ>
 やっぱり今の民主党を応援なんて出来ねえよ。
 ま、所詮は社会党左派の生き残りだしなw。
 それに民主に政権渡しても混乱きたすだけで何かが解決するとも思えないしね。
 後、民主が出す対案の殆どに国籍条項は設けないって一文が入るのは何とかならんのか。
 そんなんだから売国政党とか言われるんだよ。
 それといい加減仕事しろ民主。
 あ~あ、俺も民主党みたいにサボって数千万円もらえる仕事やりてぇなぁ。
<太田>
 右派を含めて社会党の生き残りは、民主党の議員の一部に過ぎません。
 それに、ロビイスト業と選挙運動(事前運動を含む)を除けば、自民党の議員だって碌に仕事なんてしてやしませんよ。
 朝鮮日報が、「日本には専門分野を持つ国会議員が多い。彼らの話を聞くと、「下手な専門家も顔負け」と感じることがある。」と日本の議員をヨイショしている(
http://www.chosunonline.com/article/20080330000017
。3月30日アクセス)のを読んで苦笑しちゃいました。
 どうしても民主党に投票したくなければ、せめて棄権してね。
<バグってハニー>
 つらつらと眺めていて発見した記事です。
NYT紙「日本の教科書、韓中よりバランスが取れている」
http://www.chosunonline.com/article/20050418000028
 相変わらずストレートに書かないところが朝鮮日報らしいです。
<太田>
 「日本の教科<は>韓<国>・・よりバランスが取れている」という記事のタイトル部分と、「<韓国の教科書には>日帝の植民地支配に協力した韓国人に対する記述など『タブー』が今も残っている・・」という記事本文の最後の部分を言いたいがため、韜晦しまくっているという感じの「客観」記事・・引用の引用!・・ですね。
 朝鮮日報、大好き!
<コバ>
バンクーバーではプールや海岸でのトップレスが認められているそうです(
http://www.dailymail.co.uk/pages/live/articles/news/worldnews.html?in_article_id=548728&in_page_id=1811
)が、こうしたヴィクトリア朝的価値観からの逸脱は欧州化、非アングロサクソン化と捉えられるのでしょうか?日本も米国に敗戦したことで捨てさせられた物事(ちんみさんの言ってた大麻‘ヘンプ’とか?)がたくさんあるのではないかなと思うと、米国からの独立を早く達成しなければならないと思います。
<太田>
 そんなもんで驚いていちゃいけません。私が留学していた1970年代中頃、スタンフォード大学近くの太平洋岸にもトップレスどころか、+ボトムレス(要するに全裸)ビーチがありましたよ。
 誰でも自由に入れるので、友人達と(海水着を着けたかどうか記憶にありませんが)「見学」に行ってきましたが・・。
 これは米国の中でもカリフォルニアだけの現象なのか、イギリスはどうなのか、等は承知していませんが、いずれにせよ非アングロサクソン化なんて大げさなものではなく、高緯度帯(地理的意味での欧州)の日光浴の習慣の延長線上の話のように私は当時受け止めましたね。
 スタンフォード大学校内の芝生でも、水着で寝そべっている学生達をよく目にしたものです。
<コバ>
 去年、太田さんが出演した番組について論じているサイト(
http://knnjapan.exblog.jp/6588365/
)を見つけました。非常に自民党ファンのようで、民主党が沖縄をチャイナに割譲するとか、変な認識をしているところもたくさんありますが、下野した自民党は何をするかわからないというところには恐怖感を覚えました。ともあれ、民主党の政権奪取は速やかに実現させねばなりません。
<太田>
 私も読んだことあります。
 自民シンパの人としては、私についての理解の的確さは表彰ものです。
 防衛省/自衛隊シンパの人々も少しは彼を見倣って欲しいものです。
<読者OM>
 最近のガソリン税等を巡る国会の混乱を、与野党両方の責任だという人が多いのですが、私にはこの主張は理解できません。責任は100%与党にあると考えます。
 原因は参議院での敗北以後、国民の意思を早急に解散総選挙で確認しなかったことだと思います。
 総選挙で、与党が支持されたのなら、例えば今回のガソリン税の暫定税率延長が与党の意思であり、それが同時に国民の意思に近いという自信をもって、野党に能率的な論議を要求できます。仮に参議院で否決されても、衆議院で2/3議席を保有していれば、参院での否決を引っくり返せば良いし、2/3議席なくて延長できなければ、その時こそ、ねじれ国会という言葉を持ち出して野党の態度を非難することも可能かと思います。
 つまり、与党は国民の考えと自分たちの考えが大幅に異なっていることを承知しており、期限ギリギリになって、国会の混乱を避けるのが議会人としての義務であるという訳の判らない理屈で野党を脅している様に見えます。
 太田さんのお考えをお教え下さい。
<太田>
 福田首相の、自民党後退が確実な総選挙をできる限り先延ばしにするという判断は正しいと思います。
 問題は公明党を合わせれば衆議院で絶対多数、参議院では少数、という状況の下での福田氏の決断が常に too little, too late であったところにあります。
 日銀総裁問題でも、早期に前財務官の渡辺君あたりを候補者として提示していれば、決着していたでしょうし、ガソリン税の問題にしても、早期に即時一般財源化案(その見合い額の地方自治体への付け替えを明示する)を提示していれば決着していたでしょう。
 そもそも、福田氏の民主党内情勢等の情報収集・分析能力は余りにもひどすぎます。
 要するに、福田氏は戦いに絶対に勝てない司令官の典型であり、到底首相の器ではないということです。
 吉田ドクトリンがもたらした平和ボケが福田氏のような人間を首相にさせたのです。
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<マリネラの核武装問題:消印所沢通信25(その1)>
 マリネラの核武装問題が初めてアメリカの知るところとなったのは1979年頃とされている. この年,CIAエージェント,アーサー・ヒューイットがマリネラに弾道ミサイルや核ミサイル発射指示用のブラックボックスなどを目撃,直ちにラングレー(CIA本部)に報告した.
 CIAにとっては,これは僥倖だった.(当時,CIAの高官だったロバート・ゲーツ――のちのCIA長官――は,「まぐれ当りの大ホームラン」と評した) ヒューイット情報は,彼と国王パタリロ8世との個人的なつながりによって得ることができたものであり,それまでのCIAのマリネラ王国への浸透の試みはことごとく失敗していたからだ.
 マリネラ王国はカリブ海に浮かぶ小国である. しかしダイヤモンド産業を基幹産業にしていて財力は潤沢であり,前国王ヒギンズ3世時代から強力な防諜網を有していると推測されてきた.(表向き知られている情報部とは別に,存在すら極秘の諜報機関があり,そのトップは恐らく警察長官が兼ねているだろうと,あるNSA高官は語ってくれた)
 しかし,1978年に前国王ヒギンズ3世が死去したとき,新国王パタリロ8世はまだ10歳であり,その政権基盤は弱体だったという. そのため新国王は欧米協調路線を模索し,MI6に協力を求めたと考えられている. ヒューイットがCIAエージェントの公式の肩書きのまま,マリネラに入国できたのは,そのツテのおかげだった.  時のアメリカ大統領,ジミー・カーターは大変驚愕した. 当時,大統領の科学技術顧問だったフランク・プレスは当時を振り返って次のように述べた.「まさに最悪のタイミングだった. その直後にイランのアメリカ大使館人質事件が起こり,議会ではSALTII批准審議が予定されていて,共和党はソ連が条約違反してもアメリカ政府は検証できないとして,これを強く批判していた. とどめに南アフリカで核実験だ. マリネラの核兵器保有の情報が,カーター政権のケチのつき始めのように思えた」
 カーターはさっそくマリネラ大使を召還し,ことの真偽をただした. これに対し,大使の答えは,過去のマリネラの公式の回答と同じだった.「我が国の核開発は,平和利用に限られている.核兵器保有などありえない」
 しかし,核兵器を完成させ,弾道ミサイルに搭載可能なほど小型化するには,開発開始から最低でも30年はかかる. マリネラが本当に核武装しているとするならば,ヒギンズ3世の時代にはすでに開発が始まっていたはずである.
 そもそもヒギンズ3世はなぜ核武装を決意したのだろうか?
(つづく)