太田述正コラム#2540(2008.5.11)
<皆さんとディスカッション(続x135)>
<観戦棋士>
 コラム#2118「ナチスの犯罪と戦後ドイツ(その2)」を読みました。
 ドイツ人の深層心理を見事に表現されていて感心しました。
 実は以前から同様な感想をもっており、今回のご指摘は「腑に落ちる」ものでした。
 そこで「百尺竿頭一歩を進める」と(古い表現ですね)、ドイツ国民は「指導者(ナチス)は悪かったが、国民はわるくなかった」という連合側の論理を利己的見地からすんなり受け入れたが、日本国民は「上下一体で戦ったのだ」という一体感を保持、故に全戦没者慰霊に靖国に訪れる、これが分離・支配を狙う中国、韓国の目論見に逆らうので、日本対中韓の心理争闘は未来永劫に続く、という元軍国少年の私見となります。
<太田>
 正確には、「日本帝国臣民(subject)は「上下一体で戦った」」です。
 女優の黒田福美さんの提唱で建立された、朝鮮半島出身者たる特攻隊員慰霊碑の韓国での除幕式が、10日、妨害運動によって挙行できず、慰霊碑は撤去されることになりました(
http://sankei.jp.msn.com/world/korea/080510/kor0805101747000-n1.htm
。5月11日アクセス)。
 一部韓国民のこのような「誤解」は容易に解消しないかもしれませんが、朝鮮日報の親日報道ぶり(靖国報道に関してはコラム#1378)を見るにつけ、靖国神社に対する大方の韓国民の「誤解」は、遠からず雲散霧消すると思いますよ。
 それはそれとして、A級戦犯の靖国神社合祀問題は、一部A級戦犯に対する昭和天皇のわだかまりによって、いまだに今上天皇も参拝を控えておられる(コラム#933、934、1378、1896、2425)こともあり、悩ましいですね。
 次の天皇の最大の課題は、靖国神社参拝の再開でしょう。
 その間、靖国神社側が行わなければならないことは、「遊就館」(コラム#698、919、920、1133、1718)の、ベーカーの本(コラム#2536)的な一次史料だけの展示内容への切り替えか、「遊就館」の靖国神社からの切り離しです。
<ケンスケ2>
 ドイツ人の人種論的優越感、日本人の鎖国主義的孤立感は、共にこの地球上に世界の人々と共に生きていく上で乗り越えていかなければならない体質であるように思います。ドイツ人の残虐性と、日本人の他民族への冷酷なまでの無関心は、対照的とも言えるかも知れませんね。
 何億人死のうと、そこに1人の日本人が含まれていないなら何も感じないという、孤立主義的冷酷性です。
 同じ地球上に生きる人間同士としての共感能力に欠けているように思います。
 それが世界政治への無関心と、数々の政治決断の失敗を生み出しているようです。
<太田>
 日本人についてのご指摘はおっしゃるとおりであり、「ミヤンマーに人道的介入?」シシリーズ(#2539~。未完。未公開)は、まさにそのことがテーマです。
<クコ>
 –ロシアの体制シリーズを読んで–
すみません、メルマガでお返事をいただいてから、ずいぶん時間が経ってしまいました。
 2008年の大統領選の結果から、80%は大げさにしても、プーチンに対して、70%程度の支持率が実際にあると考えられるのではないですか。
(大統領選結果のwikipedia↓)
http://ja.wikipedia.org/wiki/2008%E5%B9%B4%E3%83%AD%E3%82%B7%E3%82%A2%E5%A4%A7%E7%B5%B1%E9%A0%98%E9%81%B8%E6%8C%99
 日々の生活への満足、不満足は、経済的な「上昇」が必ず必要だとは思えません。
 賃金が上昇するかどうかよりも、希望が持てるかどうかなどの精神的な面の方が重要です。
 アメリカ合衆国でスラムの住人の死亡率が高いこと(お腹を空かせているわけではないが、破れかぶれに暮らし犯罪に手を染め、殺されたり病気になったりして死んでしまう)などがその証拠であることは、太田さんのコラムで学んだような気がするのですが・・。
<太田>
 現時点で中共で、「チベット問題で欧米のメディアはゆがんだ報道をしていると思うか」と尋ねる世論調査をすれば、99%が「そう思う」と答えても不思議ではありませんが、ナショナリズム教育を行い、情報統制をしている中共で、こんな世論調査でどんな結論が出ようと意味がない、と思いませんか?
 同じことが、現在のロシアにおける世論調査や選挙についても言えるのではないか、と申し上げているつもりです。
<六円>
 太田さんの目指すものがどうも分かりません。
只、防衛省、自衛隊を突っつきたいのか。
はたまた、更生して欲しいのか。
脳天気に9条的なのか?
たまには「領海侵犯中国原潜を撃沈せよ!」と言って欲しい。
もし何処かに主張が書かれてあって、見逃しなら失礼。
<太田>
 確かに、『防衛庁再生宣言』以来、防衛構想めいたものはほとんど書いていないので、とまどわれる方が出てくるかもしれませんね。
 以前にも申し上げたことがあるはずですが、私は英米で言うところのリベラリズムに最も親近感を覚える人間です。
 リベラリズムと字義通りの日本国憲法第9条とは全く相容れません。
 すなわち私は、日本が軍隊を保有するのも集団的自衛権を行使するのも当然だと思っています。
 この点さえ押さえれば、私の安全保障問題や国際問題に関する一連のコラムをお読みになることで、私がいかなる防衛構想を抱いているか、容易に想像がつくはずですよ。
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太田述正コラム#2541(2008.5.11)
<ミヤンマーに人道的介入?(その2)>
→非公開