太田述正コラム#2542(2008.5.12)
<皆さんとディスカッション(続x136)>
<Emmanuel_Channel>(http://nf.ch-sakura.jp/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=1764&forum=1&viewmode=flat&order=ASC&start=420より)
 南京大虐殺<について、>・・・太田述正のコラム#253では,数千人の大虐殺事件としています。
 太田氏の場合は、イギリスの専門家の発言を元にしてそう言っているようです。計画殺人ではなく兵士個人個人ん非違行為の積み重ねとして述べていて、便衣隊の問題では、合法説を支持しているので、実質的にまぼろし派というところでしょうか。
<太田>
 1937年の南京事件については、コラム#253、254、256~259のシリーズで最初に取り上げたところ、確かにコラム#253では、「<虐殺数は、南京をめぐる組織的戦闘が終わってから日本軍が殺害した支那人>5~6万人中の一部、せいぜい数千人であったのではないかと思われます。」と記したことは事実ですが、それに引き続き、「とは言え、具体的な規模はともかく、日本軍が南京で大虐殺事件を引き起こした事実は、争いの余地がありません。」と記しており、かつ、コラム#256で「まぼろし派」を切り捨て、コラム#1304で「1937年のいわゆる南京事件での日本軍の支那人殺害のすべてが許されるということにはなりません」と申し上げていることから、私は、形式的にも実質的にもまぼろし派ではありません。
 数が問題ではないのです。英国は、1904年に、戦闘が終わった後、英軍がチベット兵500人~1,300人を殺害したことでいまだに自らを責めていますよ(コラム#2441。なお、コラム#2001も参照のこと)。
 
<大阪の川にゃ>
 –2003年。北は、米国からの重油を止められると自動的にプルトニウムの再処理を開始した。–
 「「降伏」した北朝鮮とパレスティナ」シリーズ(コラム#170、171)を読みました。
≫・・・米国の本当のねらいは、六カ国協議に参加することで世界のハト派を籠絡しつつ、この協議が実質的成果を生み出さないままの状態を継続させ、北朝鮮を自壊させるか、耐えられなくなった北朝鮮に核実験でもさせて世界世論を敵に回させた上で、米国主導で経済封鎖、更には軍事力行使を行って北朝鮮の体制変革を実現する、ことであると思われます。金正日に、ブッシュ政権のこういった魂胆が見えていないはずがありません。その彼が六カ国協議に応じた、ということは、彼が米国に「降伏」したということであり、そんな六カ国協議なる泥船にすらわらをつかむ思いですがりつかざるを得ないほど、彼が追いつめられている、ということを意味するのです。≪(太田)
1、太田さんは、六カ国協議を北の降伏(コラム#0115、#0170)とみなしましたが、どうでしょうか。北は六カ国協議に参加しましたが、プルトニウム燃料棒の抜き取り作業は一切中断していませんでしたから。
 太田さんがこのコラムを執筆した2003年の10月には、既に8000本の燃料棒のプルトニウムの再処理は終わってるでしょう。再処理を開始してから1 年近く経過しているからです。よって、この時点で、抽出されたプルトニウムは北の各地に分散・隠匿されてしまい、空爆で破壊することが難しいように思えます。
http://d.hatena.ne.jp/gayuu_fujina/20070706/1183703083(毎日新聞)
 空爆のチャンスは2回でした。2002年年末に8000本の燃料棒の抜き取り作業を開始した時と、再処理工場で再処理を開始した2003年初頭です。(余談ですが、太田さんのコラム#0170の「降伏」説の影響を受けた軍事専門家がどうやらいます。#0170を最近読んではっと気がつきました。)
2、2003年5月に長崎型原爆約5発分のプルトニウムの抽出を終了し、さらに2005年春にもプルトニウム再処理を別途開始した北朝鮮は、長崎型を9発持っている計算になります。つまり、94年の米朝合意時に米国が目をつぶった2発と、上記5発と、上記2005年春の別途分2発です。(典拠:産経新聞社の雑誌「正論」平成17年11月号、西岡教授の小論)
 もちろん、北の爆縮技術は不完全だったようですから(4ktを予定して1ktが実現)1発の威力は現時点では、長崎型の4分の1ですが。
 もちろん、米国による核抑止が機能していますから、安心ではありますが。(典拠:太田さんのコラム#2423)
3、ここで質問です。今後米国が北への空爆等の軍事攻撃をする可能性はどの程度あるのでしょうか。
4、さらに質問です。中国をして北を止めさせる意思が米国にあったという点は認めます。しかし、中国は経済制裁をほとんどせず、北が再処理や核実験をしてしまったからには、上記3とは別に米国は中国になんらかの落とし前を要求してくるのでしょうか。
<太田>
 六カ国協議・北降伏説は、「北朝鮮の「降伏」」シリーズ(コラム#115、117)で初めて提起したものです。
 ただし、「降伏」したけれど、金正日は、金王朝を対内的・対外的に維持できる降伏条件を模索しつつ(コラム#170、171)、ブッシュ政権の対北朝鮮なぶりもの戦略(コラム#2509等)に翻弄されながら、七転八倒しつつ、次第に追い詰められて行っている、と見ているわけです。
 ですから、いまだに本当に「核」実験であったかどうかさえ定かでない、2006年10月9日の北朝鮮の核実験も、金正日の窮余の一策であったと私は考えています。
 なお、ご指摘のように、この爆発の規模は、フランス政府も米国政府も1キロトン以下の(TNTでも起こせるような)爆発であったとしているところです(
http://en.wikipedia.org/wiki/2006_North_Korean_nuclear_test
。5月12日アクセス)。
 「今後米国が北への空爆等の軍事攻撃をする可能性はどの程度あるのでしょうか」というご質問ですが、米国は、これもご示唆のように、北朝鮮が抽出した核物質等をどこに貯蔵しているかまだ把握していない(典拠失念)以上、現時点で、北朝鮮の核能力を除去する目的での空爆等を行うことは考えられません。
 ところで、ワシントンポストが、北朝鮮の工作員が欧州で、自国及びシリア用の核関連機材の買付を行っている事実を2002年にまずドイツがつかみ、2003年には欧州諸国が北朝鮮のシリアへの核支援についてもつかみ、米国がシリアが建設していた核施設の空撮や工作員による地上撮影を行い、最終的にイスラエルがこの施設を空爆して破壊した、と書いていましたよ(
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/05/10/AR2008051002810_pf.html  
。5月11日アクセス)。
<コバ>
朝鮮日報で日本が検討している道州制について述べられています(
http://www.chosunonline.com/article/20080507000042
)。
 次の衆院選では民主党は天下りや談合の問題と同時に、抜本的な地方分権化も争点にすべきではないでしょうか? それともしないほうがいいのか?ダメ庶民の自分にとってみれば、自民党による道州制と民主党による道州制って何が違うの?と疑問に思ってしまいます。どちらの党も似たり寄ったりな政策なら自民党に投票しようと考える有権者も多いのではないでしょうか。
 自民党の「改革」が米国や中央官庁に都合のいいものであることはわかるのですが…。
 民主党は自民党をぶっ壊すために本当に奮起してもらいたいです。
<太田>
 
 確かに、コラム#873でも申し上げたように、民主党の方が道州制導入により積極的だけれど、まだまだ腰が引けていますね。 
 ところで、政権交代で打倒すべき、政官業の三位一体的癒着構造についてですが、マスコミもその一端を担っているとかねてより申し上げてきているところ、暴力団もそうだということ(コラム#2172、2177、2242、2352)を、改めて指摘しておきたいと思います。
 ワシントンポストが、元讀賣新聞の記者をしていた米国人エーデルステイン(Jake Adelstein)の論考(
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/05/09/AR2008050902544_pf.html  
。5月11日アクセス)を掲載しました。
 この論考の要旨は次のとおりです。
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 暴力団は日本では市民権を得ている。
 暴力団のファン雑誌や漫画本が堂々とコンビニで売られており、暴力団幹部は政治家達と交際している。
 暴力団構成員は8万人近くいる。最も強力な山口組だけで4万人近くだ。
 日本では、司法取引も証人保護プログラムもないので暴力団を根絶できないのだという。いや、根絶させる意思がないのだ。
 暴力団は次第に営業を多角化、グローバル化しつつあるが、売春・ヤク・みかじめ料・児童ポルノといった古典的営業も引き続き盛んにやっている。
 特に児童ポルノはドル箱だ。
 日本は、諸外国からの非難を受け、最近しぶしぶ児童ポルノの製造と販売を禁止した。しかし、主要政党と出版社が所持禁止にまで踏み込むことに反対しているため、所持は禁止していない。これではほとんど意味がない。
 米国は、日本発の児童ポルノの流入やマネーロンダリング等、日本の暴力団の暗躍に頭を痛めており、FBIが暴力団構成員名簿を日本の警察に求めたところ、プライバシーの問題があるとして、わずか50人ほどの名前と生年月日だけしか提供しなかった。
 FBIは、3年前にある暴力団組長と取引し、暴力団情報を明かすことと引き替えに米国内で肝臓移植手術を行うことを認めたことがある。これすら、日本の警察は、自分達に黙ってやったと不快感を抱いている。
 この暴力団組長は、私がこの件を記事にしようとしていることを知って、止めなければ米国のお前の家族を消すぞ、と言ってきた男だ。
 そこで私は讀賣新聞を辞め、暴力団についての本を書くことにした。
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 果たして、彼の本が日本で翻訳出版されるか、見守りたいですね。
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太田述正コラム#2543(2008.5.12)
<中共のある風刺小説をめぐって>
→非公開