太田述正コラム#2620(2008.6.20)
<皆さんとディスカッション(続x170)>
<読者KY>
 在英のKYです。
≫フランスや英国と日本の医療保険制度の運用実態については、他の読者のご意見もうかがいたいものです。≪(コラム#2618。太田)
 最近125ccのバイクで転倒して左の鎖骨を折りまして、仕方なくNHSを利用したのですが、散々でしたよ。酔っ払いの喧嘩が多い金曜日の夜は忙しいらしく、救急に電話しても繋がらないんで、仕方なく骨折したまま片手運転で救急外来まで自力で行きましたが(クラッチが操作できず、結構工夫と忍耐が要りました)、受付で「人種」やら「宗教」やら”sexual orientation”まで尋ねられ、おまけに2時間待ち。それで、最後に医者に会ったら、「あ。2箇所で折れています。1週間後にまた来て」と言われ、鎖骨バンドも着けずに帰されました。仕方が無いんで暫く柔道着の帯で襷掛けにして耐えました。それで1週間後に戻ったら、1週間前のX線写真で色々と解り切った説明をされ、「4週間後にまた来て」。ところが、予約は6週間先まで一杯。それで、真面目に6週間後に戻ったら、何故か予約がデータベースに無く、さらに2週間待ち。
 最後に、まあ最近は珍しくも無いNHS絡みのオチなんですが、なんとか医者に会った時はもう殆ど治癒していました、と。
 実際に行ってみて思ったのは、やたらと事務職員やら何やらが多くて、そいつらがダラダラとしているんですね。典型的な社会主義的国営企業です。もう無茶苦茶です。これが歯科治療だと半年待ちが常態化しているんで、骨折の場合はまだ相当にマシなんですかね。歯痛になったらポーランド辺りで£100も払って直して貰った方が良いかと。
 ちなみに転倒した理由なんですが、そもそも不要な”traffic calming device”を街灯も住宅も全く無い所に作った馬鹿カウンシルが原因な訳です。なにしろ、突然目の前に「歩道が」飛び出して来る。しかもセンターラインは真っ直ぐなんですよ。正直に20マイルで走っても駄目でした。労働党は公共投資が大好きですから、最近はこの手の創意工夫が多くて、どうにもなりません。私の同僚は車のサスペンションを壊して怒り狂っていました。最近そこらじゅうで聞かれる類の体験談です。
<太田>
 やっぱしそんな感じですか。
 1988年にロンドン郊外に一年間滞在した時、住んでいた英陸軍宿舎の近くの医者にかかったことがありましたが、すぐ診てくれたし、説明も懇切丁寧で、薬も(服用方法が余りにも日本と違うのでたまげましたが)その場で確か出してくれ、満足して戻ったことがあります。料金もタダでした。
 ただ、当時私は、何事によらず英国の将校並の扱いをされていたので、私の経験を一般化はできないと思い、読者の方々に呼びかけさせていただいた次第です。
 なお、米国は国民皆保険制でないことはご承知の通りですが、1974~76年の米スタンフォード大学留学の際には、構内の診療所と大学病院の双方にかかったところ、どちらも不満はありませんでしたね。料金もとられなかったと思います。
 ただ、構内には歯科医がなく、学外の歯科医(一般医と専門医にかかる必要があった)にかかって親知らずを一本抜いた時は、目玉の飛び出る金額を支払わされた記憶があります。
 とはいえ、基本的に後で日本の医療保険で還付してもらいましたが・・。
<nebosuke>
 コラム#1365(2006.8.4)「イスラエルの反撃の均衡性をめぐって(続)(その4)」を読みました。
 イスラエルとレバノンとの間での人質交換に関する記事を拝見させていただきました。
 一つ疑問に思ったのですが、戦死した兵士の遺体よりも生存したまま拉致されている兵士を交換条件にした方が、後々軍の戦力の面から見てメリットが大きいと思ったのですが、何故遺体となのでしょうか?
 もしお時間がございましたら、回答をお聞かせ下さい。よろしくお願いします。
<太田>
 まともな国のまともな軍隊であれば、遺体であれ、生存者であれ、帰還していない兵士の帰還に全力を尽くすのは当然です。
 これは功利主義的な発想に基づくことではないので、遺体より生存者を優先することはありません。
 (典拠はご勘弁を!)
<大>
 大阪市西成区で暴動が起きています。
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200806150040.html
http://kamapat.seesaa.net/article/100589547.html
 そこで質問ですが、このことはテレビではあまりやってないように思いますが、
一、そんなにたいそうなことではないんですかね?
 僕は、自宅からそれほど遠くないので、驚いているのですが。
 あそこは労働者自身もあまり柄が良くなさそうだし、事実はどうなのかわかりませんが、本当に警察官からそのような暴行があれば救済されなければならないと思います。
二、太田さんは今回のようなことに関してはどういう感想をお持ちですか?
 暴動を起こす必要まであったのかどうかはわかりませんが、
三、こういう場合、どのような手段で対抗するのが効果的だと思われますか?
<太田>
 昔からお馴染みの風景ですね。
 全国で報道されないのは、暴動の規模が小さいからでしょう。
 労働者側の問題には立ち入らないこととし、一般論として申し上げれば、日本の警察は事実上国家警察であるにもかかわらず、経費の大部分を都道府県が負担しており、公安委員会制度ともあいまって、国のコントロールも都道府県のコントロールも十分受けていないところに根本的な問題があります(コラム#1056、2170、2252)。
 公安委員会制度を廃止するとともに、純粋な国家警察にするか国家警察と地方警察に分離する必要があります。
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太田述正コラム#2621(2008.6.20)
<欧州配備米核爆弾>
→非公開