太田述正コラム#2756(2008.8.28)
<皆さんとディスカッション(続x234)>
<ライサ>
 私もコラム#2679「シークレット・サンシャイン鑑賞記(その2)」を読みました。
 その最後の部分に付いての感想です。
>・・・そしてそこには、日本化しつつも、世界の大部分の地域の人々と同じような「歪み」をほんの少しだけ残している人々が住んでいます。まさに、彼らを移民として無条件で受け入れるべきではないか、そして近い将来、日本と韓国との間で、ぜひともEU的統合を実現したい、と痛切に思い・・・
 釈迦に説法で、私なんぞが、偉そうに言うには、いささか問題が大きすぎるのですが、EUになる前は、ズーと以前からそういう動きはありましたが、EEC(欧州経済共同体)→EC(欧州共同体)→EU(欧州連合)のプロセスがありました。その間に様々な障害、障壁を乗り越えてきたわけです。異なっているとはいえ、キリスト教文化圏内での統合と、似ているようで異なる価値観を多く持つ、韓国とのEU的統合はかなり困難があると思います。 ちなみに、EU的統合とはどのような物かと言えば、欧州議会は、欧州連合が一つの国家として見なされているので、一つの国家になる道をすすんでいることの反映であり、加盟国の国民から議員も選ばれます。この議会の権限は制限されているので、同格の主権国家同士の外交交渉である閣僚理事会が重要であることも、加盟国ができるだけ個々の国民国家のままにとどまろうとすることの反映だと思います。
 欧州連合(EU)は加盟国の国民から見ると身近な行政府とは感じられない遠い存在であるため、この超国家的機関の中では民主主義が機能しにくいのです。普通の国家では、選挙で選ばれた政治家が立法を担当していますが、統合欧州ではそうなっていません。
 欧州のガイドラインなどの法案を作成しているのは欧州委員会(ブリュッセル)で、この機関は普通の国のしくみでいえば省庁であり、そこには欧州官僚と呼ばれる役人が働いています。選挙で選ばれた人々ではない役人と識者・業界団体ら関係者からなる諮問委員会が、法案を作成しています。
 欧州議会に加盟国の国民から直接の選挙で選ばれた代表者もいますが、法案は作成しないので立法機関とはいえません。この機関は企業でいえばで監査役会のようなもので、監視機能を果たしたり、一部の法案に対して同意したりするだけです。そして、本当の重要事項は欧州委員会から加盟国政府の代表者、担当大臣が(外交)交渉をします。
 欧州連合の中で活躍しているのは行政関係者ばかりで、本来の民主主義の要となる選挙で選ばれた立法府は極端に弱いのです。自国政府が閣僚理事会で合意したことは、、欧州統合が超党派で進められているために、国民は「外圧」として感じながら承諾するしかありません。
 EUの合衆国志向」型の政治統合では、内部では独仏が露骨にリーダー国としてふるまい、小国が慢性的に不満を抱く構造ができあがっています。
 EUが出来た結果として、肉体労働者の多くは東欧圏出身者となりつつあります。今まで西欧圏出身で西欧圏で働いていた労働者は失業を余儀なくされる傾向が強まっています。
 こういう状況を韓国との間でクリアしていくことは、また韓国の次の段階としての中国も視野に入れると、、、周辺の東南アジア諸国、そして大洋州諸国まで含めると、極端に困難な事項が多すぎて、大きなため息をせざるを得ません。
 だからと言って、グローバリズムの流れには竿をさせないのも事実ですから、「う~ん、民主党さん頑張ってね。おっと!太田さんも」(笑)
<太田>
 英国は、EUに入ることによって、EUの単一経済・労働市場の恩恵をフルに享受するとともに、他方で主権国家であり続けようとし、しかるがゆえにユーロ圏に入らずにポンドを維持し続けています。
 私がEUと言う時、現在の英国人が描くEU像をさしあたり念頭に置いており、その対象は、旧日本帝国に属していた国や地域です。
 (いちいち、コラムのナンバーはあげません。)
<ライサ>
 コラム#2754のバグってハニーさんの投稿に関してです。
 怒らないでね!相手にしてくれないかもね・・・
・ゴリの占拠
 プーチンに取っては偉大と思える強いロシアを象徴するスターリンの出生地・彼の父方の祖父はプロの料理人で、スターリンのダーチャ(別荘)の一つで給仕していた。それ以前は、レーニンに仕えていた。このことはプーチンの自伝『プーチン、自らを語る』で明かされている。
 『プーチンが「絶対に手放す物か!」と言うので僕メドベージェフは反対で出来なんで困っているよ』 と言ったかどうか(笑)
・南オセチアからはるか離れた港町ポチの占拠
 ポチにはグルジア海軍の司令部と主要な基地があり、アゼルバイジャンから石油の陸路輸送の最終点で、グルジア経済を支える重要都市。
 「ヨーロッパの首根っこを押さえる美味しい場所を手放すわけはないぜ」 と言ったかどうか(笑)
・グルジア海軍のフネを沈めたこと
 「南オセチアの人々の安全を守るためには、どんなおんぼろの軍艦だって、セバストポリに対抗するかも知れないんだから、軍事力を潰しておかねばならない」 と青ざめた顔で言ったかどうか(笑)
・グルジア軍の武器・弾薬を持ち去ったこと
 南オセチアの人々の安全を守るためには軍事力は除いておかねばならない、、、それに武器弾薬類は、元もと俺たちの物だったんだぜ」と言ったかどうか(笑)
・停戦後もなかなか撤退しなかったこと
 「南オセチアの人々の安全を守るためには西欧諸国やグルジアが本当に守ってくれるか見極めなければ、、、俺たちには虐殺対象となっている南オセチア人を守 る義務がある。確認してからでも遅くは無いだろう、だって、それが俺たちの大義名分だったんだから」と言ったかどうか(笑)
・勝手に設定した緩衝地帯に未だ居座っていること
 「南オセチアの人々の安全を守るために危険をおかして駐留?している俺たちにだって自分を守る権利はあるぜ。危ない犯罪者どもからは少しは離れる権利だってあるだろー、当然ジャン」と言ったかどうか(笑)
<太田>
 バグってハニーさんは、私がお願いしたコラム執筆にお忙しいので、私がピンチヒッターでお答えしますが、一番最後を除き、笑話集として出色のできだと思います。
<ライサ>
≫今次グルジア「戦争」は、ロシアにとって、(ソ連ならぬ)ロシアの早期没落、解体をもたらした自殺的愚行であった、ということになりそうです。≪(コラム#2754。太田)
 ロシアも、南オセチア、アブハジアと次、、、、、と言うように、いかにも正義に満ちた理由による傀儡政権樹立によって、その領土を広げていくのでしょうか。どこの国でも、どの時代でも程度の差は有れど、戦争にはこんな事がつきものです。 侵略 = 解放 コインの裏表ですものね。
 例え占領していなくても、それと同等の効果を得れば満足なアメリカと対照的なロシア。
 その差は、土地=領土 という現物が「在るか無いか」の違いだけのような気がします。
 でもそれが人間にとっては重要なことなんですよね。
国家 = 一定の領域と人民と排他的な統治権
日中戦争・北支事変・支那事変・中国抗日戦争・八年抗戦・Second Sino-Japanese War・Японо-китайская война
満州国                  1932年- 1945年 
冀東防共自治政府          1935年- 1938年まで中国河北省
蒙古軍政府(蒙古聯盟自治政府) 1936年 – 1939年
中華民国臨時政府          1937年 北京及び天津、華北
察南自治政府             1937年 – 1939年
晋北自治政府             1937年 – 1939年
中華民国維新政府          1938年 江蘇省、浙江省、安徽省の三省と、南京及び上海
蒙古聯合自治政府          1939年 – 1945年
中華民国南京国民政府       1940年 成立の汪兆銘政権
<太田>
 もう一つの投稿についても言えるのですが、やっぱし、典拠をはしょっちゃいけませんよ。
 他方、日中戦争の様々な名称を併記したり、日本がつくった「傀儡」政権を列挙したりするだけでは、何がおっしゃりたいのか分かりませんよ。
 19世紀の初頭までの米国の帝国主義、それ以降の米国の帝国主義、ロシア/ソ連の帝国主義、戦前の日本の帝国主義を比較されたい、というのであれば、一筋縄ではいきませんね。
 それにしても、これだけ執筆意欲とお時間がおありなのだから、ぜひコラム書いてくださいよ。
 さてここで、ライサさんにちなんで、女性に関する話題をいくつか皆さんにご紹介しておきます。
1 スイス東部グラルス州議会は27日、「欧州最後の魔女」とされ1782年に処刑された女性(コラム#2114)の名誉を回復する決議を採択しました(
http://news.goo.ne.jp/article/kyodo/world/CO2008082801000226.html
。8月28日アクセス)。
 名誉回復にかくも長い時間がかかったことは、欧州文明の何たるかを物語っている、というのが私の考えであることは、想像がつく読者が少なくないと思います。
2 脱北者を装った北朝鮮の女性ハニートラップ・スパイが韓国で逮捕された話は、お聞き及びかと思いますが、日本のTVでは彼女の写真にボカシを入れています。ボカシなしの写真をご覧になりたい方は、カラーの顔写真なら
http://www.chosunonline.com/article/20080828000022
白黒だけど上半身全体の写真なら
http://english.chosun.com/w21data/html/news/200808/200808280014.html
(どちらも8月28日アクセス)をどうぞ。
 もっとも、大韓航空機爆破事件の金賢姫の方がはるかにいい女ですねえ。
3 そう言えば、北朝鮮はなぜ北京五輪に「美女応援団」を派遣しなかったのかについて、韓国に3度にわたって派遣した時、彼女たちが見聞きしたことを喋りすぎて体制の危機が生じたからだ、という愉快な記事が、
http://www.chosunonline.com/article/20080824000024
http://www.chosunonline.com/article/20080824000025
(どちらも8月25日アクセス)に出てたっけ。
4 どこやらの大統領夫人は、結構売れているシンガーソングライター兼歌手ですが、ベルルスコーニ・イタリア大統領(コラム#130、2708)も実はそうなのです。
 これが、なんで女性に関する話題かって?
 彼が書き、歌うのはもっぱらラブソングであり、その最高傑作が、
・・・
I feel that life is bent on dividing us
And I am frightened of being left without you
I know perhaps you’ll make me suffer
But I’ll not let you go
Even if I have to fight
For I’ll love you to the end
(もちろん、原詩はイタリア語)
という、彼の現在の妻との愛の歌だからです。
 (以上、
http://news.bbc.co.uk/2/hi/europe/7581952.stm
http://news.bbc.co.uk/2/hi/entertainment/3080100.stm
(どちらも8月28日アクセス)による。)
<海驢>
 –東村山事件について–
維新政党新風・瀬戸氏の活動の影響かもしれませんが、最近、改めていろいろなところで話題となっているようです。
 太田さんには間接的ですが大いに関係のある事項だと思いますので、以下、ご参考まで。
<以下、引用:東村山事件 - worldNote http://blog.goo.ne.jp/worldnote/e/a2fa56de54154a1cf169f60844bc6754
>
東村山事件、大体の経緯は知っていたが、強い疑惑はあっても、それ以上の認識は無かった。しかし、どうやら決め手はあったようですね。
 以下、勝手まとめ。
1.東京地裁判決で、朝木明代さんの「万引き」は明確に否定されている。つまり万引きは事実無根。
2.事件の2日後に高知県で開かれる「反創価学会シンポジウム」に参加する予定だった。
3.彼女の靴が現場から発見されていない。警察犬は現場ビルから朝木さんの臭いを発見できなかった。
4.事件当夜に入っていた留守電の声が、「極度の興奮状態」「切迫した生命の危機にあることがうかがい知れる」と鑑定された。
5.司法解剖で両腕上腕部内側の変色痕(圧迫痕)が認められている。
 1と3だけでも決め手になるのではないかと思う。これ、疑惑が事実なら、どれだけ重大な事件か知れない。
<引用終わり>
※参考(元記事):創価学会による朝木明代さん謀殺容疑が確信に変わった日|Doronpaの独り言
http://ameblo.jp/doronpa01/entry-10131351483.html
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太田述正コラム#2757(2008.8.28)
<EU等の人口動態>
→非公開