太田述正コラム#2816(2008.9.27)
<オバマとマケインの初討論>(2008.11.13公開)
1 始めに
 9月26日、オバマとマケインの間で最初の討論が行われました。
 今回はそのご紹介です。
 (以下、
http://www.guardian.co.uk/world/2008/sep/27/uselections2008.barackobama1
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/michaeltomasky/2008/sep/27/barackobama.johnmccain
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/09/27/AR2008092700301_pf.html
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/09/26/AR2008092602981_pf.html
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/09/26/AR2008092602981_pf.html
http://voices.washingtonpost.com/postpartisan/2008/09/the_debate_the_prime_minister.html?hpid=opinionsbox1
http://voices.washingtonpost.com/postpartisan/2008/09/the_debate_an_edge_for_obama.html?hpid=opinionsbox1
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/09/27/AR2008092700059_pf.html
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/09/26/AR2008092603593_pf.html
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/09/27/AR2008092700037_pf.html
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/09/26/AR2008092603593_pf.html
http://www.nytimes.com/2008/09/27/us/politics/27debate.html?_r=1&hp=&oref=slogin&pagewanted=print
(いずれも9月27日アクセス)による。)
2 全般
 この討論は、三回行われるうちの一回目であり、本来は外交安全保障政策だけが対象になる予定でしたが、金融問題が焦点となっていることから、全体で90分のうち最初の40分が経済問題にあてられました。
 トリビアをまずとりあげましょう。
 討論の間、オバマはマケインをファーストネームでジョン(John)とかジム(Jim)とか呼んだのに対し、マケインは一切そうしませんでした。
 討論の途中で、マケインがこのところの戦争でなくなった兵士を祈念する腕輪を身につけていることを明らかにしたところ、オバマも、おずおずとなくなったある軍曹の腕輪を身につけていることを明らかにするという一幕がありました。
 全般的印象としては、オバマは首相然、マケインは大統領然としていたとか、オバマはいつもより歯切れが良かったが、慎重すぎて若干不満が残る、といった論評がなされています。
3 外交・安全保障
 経済問題では、オバマもマケインも一般論で終始したので、もっぱら外交・安全保障をめぐる議論に焦点をあてましょう。
 オバマとマケインは、レトリックが示すところよりも外交・安全保障で見解の相違が意外に少ないことが判明しました。
 緊迫した場面は一回しかありませんでした。
 議論の間中、オバマはマケインの言うことにじっと耳をかたむけ、しばしば相づちをうつというスタイルを通し、わずかにイラクに関する議論の際に、「あなたは<対イラク>戦争が速く簡単に終わると言ったが間違っていた。あなたは大量破壊兵器が見つかると言ったが間違っていた。あなたの唱えたイラク統治政策も間違っていた」と激しく切りこむにとどめたからです。
 状況の急速な変化が二人の間の違いを縮めたのです。
 確かに対イラク開戦にマケインは賛成しオバマは反対しましたが、その後の兵力増強(surge)にマケインは賛成しオバマは反対したところ、兵力増強は功を奏したわけですし、マケインはイラクからの早期撤退に反対してきたところ、いまやイラク政府が米国に2010年末までの米軍撤退を強く求めており、これはオバマの持論である16ヶ月での米軍撤退論より数ヶ月遅いだけだからです。
 また、マケインはオバマが敵とも交渉すべきだと主張してきたことを批判してきましたが、実はブッシュ政権はまさにそれをイランと北朝鮮とやったときています。
 更に言えば、マケインはオバマがアルカーイダをパキスタン領内で発見したら攻撃すると主張してきたことを批判してきましたが、先週、ブッシュ政権がまさにそれを行ったことが判明しています。
 自由貿易協定にはマケインは賛成し、オバマは反対しました。
 なお、オバマが韓国との自由貿易協定に反対するとともに、米印核協力にも反対の意向を表明たことから、米国とアジアの重要な民主主義諸国との関係を危殆に瀕しかねない、という懸念が一部に出ています。
4 どちらが討論に勝利したか?
 CBSとKnowledge Networksが、どちらの候補者を支持するか決めていない、米国の500人の討論聴視者を対象に、討論終了直後に行った世論調査によると、39%(40%?)がオバマが勝利したと答えました。マケインが勝利したと答えたのは25%(22%?)です。36%(38%?)は引き分けと答えました。
 また、46%がオバマにより好印象を抱くようになったと答え、31%がマケインにより好印象を抱くようになったと答えました。
 更に、66%がオバマは経済に関し正しい決定を行うことができると答え、マケインができると答えたのは44%でした。
 急遽経済問題が討論の対象に加えられたことがオバマにとっては好都合だったということになりそうです。
 他方、CNNの世論調査では、オバマ全般的勝利が51%対38%、オバマ経済で勝利が58-37%、オバマがイラクで勝利でさえ52-47%でした。
 オバマは着実に大統領選勝利への道を歩んでいる、と言えるでしょう。