太田述正コラム#3006(2008.12.31)
<イスラエルのガザ攻撃(その4)>(2009.2.12公開)
8 中間的総括
 「・・・何年もイスラエルのハト派の外相を務めたアッバ・エバン(Abba Eban)は、永久に残る箴言、「パレスティナ人達は、機会を失する機会を逃したことがない」を残した。・・・
 だからと言ってイスラエルの諸政策が免責されるわけではない。しかし、これではイスラエルの歴代政府は平和のために危険を冒すなんてことは不可能というものだ。
 いかなる政府にとってもその第一義的責任はその市民達の安全だ。イスラエルもその例外ではない。その歴代イスラエル政府をして、パレスティナ人達は彼らのこれまでの政策によって、強硬的立場をとることを余儀なくさせてきた。・・・
 彼らが最初に行った決定は、1920年にヌセイベ(Nousseibeh)一族ではなく、フセイニ(Husseini)一族を選択したことだ。
 ヌセイベ一族はコスモポリタンであり、協調の用意があった。他方、フセイニ一族は戦闘的であり、1940年代にはユダヤ人を全滅させるNazi-Endlosung計画に参画し、Waffen-SS大隊の創設をやらかした<(コラム#75)>。
 彼らが次に行った決定は、1947年に国連による<パレスティナ>分割計画を拒否し、国際社会によって認められたイスラエル国家に対する全面的攻撃に参加したことだ。その結果、1948年の戦争によってイスラエルに、その古里から75万人のパレスティナ人を追放する機会を提供することとなってしまった。
 三番目の決定は、妥協の追求ではなくイスラエルを壊滅させるというあからさまな計画に基づいてパレスティナ解放機構(PLO)の諸政策を構築したことだ。
 四番目の決定は、2000年のキャンプ・デービッドでの首脳会談と2001年初頭のタバでの首脳会談に対して、2回目のインティファーダ・・イスラエルに対する自爆テロの波状攻撃・・で応えたことだ。
 これで<パレスティナ和平を追求した>エフード・バラク政府は倒れ、アリエル・シャロンが権力の座につくことになった。
 そして今回は五番目の誤った決定を行った。
 イスラエルは2005年に一方的にガザ地峡から撤退した。
 <ところが>ガザ地峡を掌握することとなった<パレスティナ人達中の>ハマスは、「シオニストとの協力者」ではなくイスラエルに抵抗していることを支持者達に見せることで、ファタに対する得点を稼ぐため、南部イスラエルへのロケット攻撃を続けることを選択した。
 ハマスの諸政策は完璧なまでに冷笑的だ。
 イスラエルはあらゆるルートを通じて<ハマスに>、どんな主権国家とも同様に、その一般市民に対する継続的なロケット攻撃は容認できず、かかる攻撃に対する対応は厳しいものになることを明確に伝えてきた。
 しかしハマスは、自分の支持者達の間で発生する一般市民の死傷のことなど意に介していない。彼らはイスラエルに対して抵抗していることを見せることにしか関心がないのだ。・・・」
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2008/dec/30/gaza-hamas-palestinians-israel
(12月31日アクセス。以下同じ)
 「人口密集地の一般市民地区から一般市民に対してロケットを発射するというのは、死を愛し、生を愛する民主主義諸国を愛するところの、テロリスト達による最新の戦術なのだ。
 テロリスト達は、たとえそれが敵の一般市民であれ、一般市民を殺害することを欲しない民主主義諸国の道徳観念にいかにしてつけ入るかを学んだ。・・・
 過去数ヶ月の<ハマスとの>停戦は・・・道徳的に疑わしく法的に非対称だった。
 要するにイスラエルは、ハマスにこう言ってきたわけだ。もしお前が我々の無辜の一般市民を標的にするという戦争犯罪を止めるのなら、我々はお前達のテロリスト達を標的にするという、完全に法にかなった軍事的行動をとることを止めるだろうと。
 だから、停戦期間中も、イスラエルは自分の一般市民に対してロケットを発射しているテロリスト達に対する自衛行動をとる権利を留保していた。
 敵対行為が再開される直前、イスラエルは人道的支援物資がガザに搬入されることを許すために関門を再び開けた。しかし、イスラエルは、関門がガザのロケットの標的にされたことから、関門を閉鎖した。
 イスラエルの首相のエフード・オルメルトもまた、ハマスに対し、ロケット攻撃を止めなければ、全面的な軍事的対抗策がとられるだろうという、厳しい最終警告を発した。
 しかしそれでもなお、ハマスのロケット攻撃が続いたため、イスラエルは言葉通り、ハマスの標的に対する、周到に準備された経空攻撃を実施に移したのだ。・・・
 ハマス筋でさえ、<イスラエルの攻撃によって>殺された者の大部分はハマスのテロリスト達であることを認めている。もちろん、一般市民の死傷が若干伴うことは避けられないことだ。・・・
 ハマスのロケットに対するイスラエルの軍事行動に関する国際的反応には三種類の型がある。
 これは驚くべきことではないが、イラン、ハマスその他の膝蓋腱反射的イスラエル非難者達はハマスのイスラエル一般市民に対するロケット攻撃は完全に合法的であり、イスラエルの反撃は戦争犯罪だと主張している。
 国連、EU、ロシアその他の反応も驚くべきことではない。
 彼らは、少なくともイスラエルに関しては、一般市民を標的にするテロリスト達とテロリスト達を標的として対応する民主主義国家とを道徳的、法的に同一視しているのだ。
 そして最後に米国と数少ない諸国だ。
 彼らは、自分達の一般市民を人間の盾として、その後ろに隠れてイスラエルの一般市民にロケットを発射するという違法かつ非道徳的な政策に関してハマスをもっぱら非難する。
 この三つの反応のうち最も危険なのはイラン=ハマスの戯言ではない。というのも、そんなものは、考える力のある道徳的な人々からはおおむね無視されているからだ。
 意図的な一般市民の殺害と国連憲章第51条に則った合法的自衛とを同一視するところの、国連とEUの反応こそ最も危険なのだ。・・・」
http://www.csmonitor.com/2008/1231/p09s02-coop.html
 私がつけ加えることは何もありません。
 来年も、日本の「独立」のために頑張りましょう。
 
(完)