太田述正コラム#3022(2009.1.8)
<イスラエルのガザ攻撃(続x7)>(2009.2.20公開)
1 始めに
 
 今回は、表記に係るヒズボラとオバマ次期米大統領の動静を取り上げます。
2 ヒズボラの動静
 「8日、4つのロケットがレバノンからイスラエル北部に撃ち込まれ、2人が負傷した。・・・
 ・・・ロケットは、レバノン国境から6マイル離れたナハリヤ(Nahariya)市の近郊に撃ち込まれた。イスラエル軍は、ロケットが発射された場所に向かって砲撃を返したと述べた。・・・
 現在のところ、この仕業について自分達がやったと名乗り出た者はいない。・・・
 ヒズボラは、<2006年の戦争の停戦以来、>レバノン南部の自分達の部隊が勝手に動かないように厳しく統制してきた。しかし、レバノン南部では、ヒズボラ以外にもいくつかのグループが活動している。」
http://edition.cnn.com/2009/WORLD/meast/01/08/israel.rockets/index.html
(1月8日アクセス)
 「・・・レバノンのアナリスト達は、ヒズボラ内部で対立があると見ている。
 上級幹部達の中には自制すべきだとする者と、パレスティナ人達への支持表明だけでは不十分なのであって、それはイスラエルへの攻撃を伴わなければならないと主張している者がいる。・・・
 しかしヒズボラは、イスラエルを攻撃することを避けるべき理由がある。
 第一に、イスラエルによってなされる対応への恐れだ。イスラエルはヒズボラによるいかなる攻撃もレバノン政府による攻撃とみなすと言明している。これは、レバノン政府の諸機関を正当な報復攻撃の対象と考えるという意味だ。
 もう一つの理由は、5月に予定されているレバノンの議会選挙だ。
 ヒズボラについての専門家・・・は、ヒズボラは現時点でその政治的諸ライバルを敵に回すことは避けようと思っているのではないかと考えている。<国防軍でもない>ヒズボラが武器を保有し続けている問題を無期限に棚上げすることを可能にしているところの、「対話の場(dialogue table)」が破壊されることをヒズボラは欲していない、というのだ。」
http://www.haaretz.com/hasen/spages/1053014.html
(1月6日アクセス)
 「・・・<ヒズボラの最高指導者の>ナスララ(Nasrallah)は、彼の強力な民兵に戦闘指令を発してはいない。
 これまでのところ、レバノン南部から<ヒズボラの>ロケットは発射されていない。・・・ハマスの状況が絶望的にならない限り、ヒズボラが攻撃を行うことは考えられない、とアナリスト達は口をそろえる。
 それには二つ理由がある。
 第一に、ヒズボラが今なおハマスが勝利するだろうと信じていることだ。
 第二に、ヒズボラが、2006年のようなひどい戦闘にレバノンを引きずり込む危険を冒すわけにはいかないことだ。ヒズボラはレバノンで今なお政治的には脆弱だからだ。・・・
 2006年の戦争の後、ナスララはイスラエルに勝利したと主張したが、同時にレバノンの人々に対して謝罪した。つまり、イスラエルが34日間にもわたって凄まじい反撃をしかけてくると知っていたなら、自分は、2006年の戦闘を引き起こしたところの、越境攻撃命令を下さなかっただろうと述べたのだ。
 それ以来、ヒズボラはレバノン政府内で重要な新しい権力を獲得したわけだが、ヒズボラを中心とする連合勢力は、今年の議会諸選挙で多数の議席を勝ち取ることを予見している。これはヒズボラにとって大きな前進だ。
 今戦闘をしかければこのすべてが台無しになりかねないばかりか、レバノンの人々を怒らせ、「ヒズボラが保持し続けている武器に関するあらゆる議論を再燃させてしまう懼れがある・・・」のだ。・・・」
http://www.nytimes.com/2009/01/05/world/middleeast/05hezbollah.html?ref=world&pagewanted=print
(1月5日アクセス)
 私は、これ以上、ヒズボラ以外の(あるいはヒズボラの下部組織の?)跳ね上がり的ロケット攻撃がイスラエルに対してなされないように、ヒズボラは懸命に努力するだろうと見ています。
 なお、ハマスが実質的に参画する形での停戦交渉がエジプト等の仲介の下で行われている限り、ということは絶対にヒズボラが対イスラエル攻撃に乗り出すことはありえないでしょう。
 
3 オバマの動静
 「次期米大統領のオバマは、勇敢にも選挙期間中に、米国にとって敵性があるとみなされた存在とも、前提条件なしに開かれた対話を行うとの政策について語った。・・・
 <しかし、>米国務長官になるのが目前の人物<であるヒラリー・クリントン>は、数年前にエルサレムがイスラエルの「不可分の」首都となることに承認を与えるべきだと主張した。また、オバマ次期米政権の首席補佐官となる人物は、非合法テロリスト団体のイルグン(Irgun)・・シオニスト集団として数多の暴虐行為を行った・・の武装組織に所属していた人物の息子としての汚名を背負っている。・・・」
http://www.latimes.com/news/opinion/commentary/la-oe-marzook6-2009jan06,0,6028486,print.story
(1月7日アクセス)
 「<そのオバマは、今回のミニ戦争について沈黙を保ってきた。>
 ・・・内外の批判者は、<この>オバマの「大統領は一人しかいない<のだから自分は沈黙を保つ>」政策にもかかわらず、彼は、11月のインドのムンバイでのテロ攻撃に際しては、イスラム過激派の「憎しみのイデオロギー」なるものを非難したことを指摘している。、
 オバマが沈黙を保っているからこそ、多くの人々が、オバマがイスラエルのスデロット(Sderot)で昨年7月、イスラエルの軍事報復の権利を事実上認めた彼の発言を想起する。
 彼は、「もし誰かが私の二人の女の子供達が寝ている私の家にロケットを撃ち込んでいるとすれば、私は自分ができることを何でもやって止めさせようとするだろう」と報道陣に語ったのだ。
 イスラエルの国防相のエフード・バラクは、このオバマの発言を、12月29日のニュース・ブリーフィングの際にハマスに対する攻撃を正当化するために用いた。・・・」
http://www.nytimes.com/2009/01/05/washington/05diplo.html?hp=&pagewanted=print
(1月5日アクセス)
 「<また>オバマは、世界的な金融収縮の影響を緩和するための政策表明をしばしば行っている。・・・
 ・・・最近の・・・世論調査によれば、米国の人々の見方が欧州や中東の人々の見方とどんなに違っているかが分かる。
 この調査によれば、米国人達にとって、12の外交問題の中で、「イスラエル・パレスティナ紛争の解決策を見つける」の優先順位は一番低かった。
 大体からして、もっぱら経済、職、貯金のことについて心配している米国の有権者の大部分にとって、外交政策なんてほとんど関心がないことなのだ。・・・」
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2009/jan/04/obama-gaza-israel
(1月6日アクセス)
 「・・・<しかし、さすがに沈黙を続けるわけに行かなくなったのだろう。>
 オバマは、6日に報道陣に対し、・・・「あそこで続いている紛争について非常に心配している。・・・一般住民の生命がガザとイスラエルで失われていることに憂慮の念を抱かざるをえない」と述べたのだ。」
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/01/06/AR2009010600541_pf.html
(1月7日アクセス)
 「<更に、政権交替を目前にひかえて移った>ワシントンで、次期米大統領のオバマは、7日、大統領に就任したら中東危機に「ただちに取り組む」と述べ、両陣営の生命の損失について「私は非常に心配している」と述べた。・・・「短期的状況についてだけでなく、地域においてより永続的な平和を達成できるようなプロセスを構築する」と。」
http://www.nytimes.com/2009/01/08/world/middleeast/08mideast.html?_r=1&hp=&pagewanted=print
(1月8日アクセス)
 オバマのお手並み拝見、といきましょうか。