太田述正コラム#3312(2009.6.3)
<皆さんとディスカッション(続x505)>
<globalyst>
 –日本の核武装 捕捉–
 5月30日シンガポールで開催された第8回IISS Asia Security Summitで、ゲーツ長官は、演説の中で
「その後、韓国および日本は、十分に訓練、装備された近代的武力を備えた経済大国となった。両国は、自国の防衛に一層大きな責任を担うことを望みまたそれが可能であり、そして、国境を越えた集団的安全保障の責任を担っている。その結果、我々は、両国の各々で保護者ではなくパートナーとして一層適切な立場を維持すべく調整を行っている。ただし、それは同盟における我々の全ての責任、私は繰り返す、全ての責任を果たすべく完全に準備されたパートナーである。」
The Republic of Korea and Japan have since become economic powerhouses with modern, well-trained and equipped armed forces. They are more willing and able to take responsibility for their own defense and assume responsibility for collective security beyond their shores. As a result, we are making adjustments in each country to maintain a posture that is more appropriate to that of a partner, as opposed to a patron. Still, though, a partner fully prepared and able to carry out all- I repeat, all – of our alliance obligations.
http://www.iiss.org/conferences/the-shangri-la-dialogue/shangri-la-dialogue-2009/plenary-session-speeches-2009/first-plenary-session/dr-robert-gates/
と言ったそうです。
 ゲーツ長官は「パートナーだ」と明言しています(a partner, as opposed to a patron)。そして彼は、この後、米軍のグアム移転について日本の国会が批准し、クリントン長官が合意にサインしたということを述べていますので、「グアム移転後は、米軍はパートナーだよ」つまり「保護しないよ(as opposed to a patron)」というように読めました。
 先日、私は日本の核武装について否定的な事を並べましたが(#3306)、ゲーツ長官の「パートナー」発言からは、太田さんが言うように「案外、米国はこれを認めるかもしれない」と感じました。
 一方、先日のキッシンジャー元国務長官の発言(#3310)からは、日本の核武装を認めたくないんだな感じました。
<太田>
 私はIISSの会員を一昨年までで止めたところですが、このゲーツ発言は面白いですね。
 responsibility for collective security beyond their shoresを日本にassumeせよ、と迫っているように読めるところです。
 これは、日本が集団的自衛権を行使する決意を固めないのであれば、日本をpartnerとしては認めない、と言っているに等しいのであって、その場合、日本のpatron役を米国は務めないのはもちろんのこと、partner役だって務めないよ、安保条約はないものと思ってね、と言いたいのだと受け止めました。
 鳩山さんに誰か伝えてあげてね。
<カチハヤ>(http://blogs.dion.ne.jp/kachihaya/
 面白いコラムがあったので紹介したいと思います。
 今回紹介するのは、以前にも取り上げたことのある 太田述正氏のブログから<コラム#3228> 『 友人の効用 』 というコラムです。
 親密な友人の存在が、我々の身体、精神にどのような影響を及ぼしているのか……。
 男性の友情と女性の友情はどちらが強固なのか……。
 興味のある方は読んでみてください。
<?!!>(2009.4.14)(http://www.mypress.jp/v2/dbm/dbm_comment_disp.php?writer_id=csms2764&story_id=1824251
 –本の話「実名告発 防衛省」 太田述正・著  金曜日  ¥1,600円+税–
 防衛省(防衛庁)の元キャリア官僚が古巣を告発した衝撃の書。著者は東京大学を卒業後、防衛庁に入庁、官房審議官や仙台防衛施設局長などを歴任し、2001年に自ら退職している。
 国家機関としての防衛省の堕落と同時に、それに群がる政治家や政官財の癒着構造、天下りの実態に驚く。
 これは防衛省だけの問題では無いぞ。
 つい最近の西松事件をめぐる小沢民主党代表の秘書逮捕事件で、「捜査は自民党に及ばず」と政府首脳が発言した事。実際、微罪の政治資金規正法よりもはるかに疑惑が深い二階大臣周辺の捜査に及び腰の検察。防衛省と山田洋行をめぐる贈収賄事件が大山鳴動して、結局、守屋事務次官への過剰接待ばかりが話題になり、事件の幕引きがはかられた事。
 事件の核心、額賀や久間の元防衛庁長官は御咎めなし。
 「自民党から民主党への政権交代を絶対に阻止せねば」そんな大きな力を働かせる日本の官僚機構と、それを存在の糧とする自民党政治のおぞましさには、想像を絶する怖さがある。
 見積は業者の言いなり、防衛調達本部は見積の能力を有していない。
 浮きドック回航の費用が著者の抗議で52億円から18億円に! 
 水増し請求を許す随意契約、それを担保する役目の天下り官僚たち。
 売上げ10億円にOB一人という「相場」がある。
 官制談合もそう。
 違法な国会議員の口利きの実態を数多く掴んでいながら検察は捜査に及び腰。
 会計検査院がOBの天下り先を防衛省に頼むこともあれば、検察だって、OBの天下り先が必要。
 天下りシステムを維持する政治家の役割を捜査対象にすることは、自分たちの組織にも影響する事なのだ。著者はこの実態を正すには政権交代しかないと言い切る。
 自分が驚いたのは駐留アメリカ軍に対する思いやり予算。
 他の同盟国には無い駐留経費の負担割合は、2分の1以上になる。
 基地の借地料分を計算に入れれば、実に8割以上を負担している事になるという。
 基地内で働く日本人正規労働者のほか、基地内で独立採算のハンバーガーショップの日本人スタッフの給与まで負担。
 米軍の要員は減っているのに、基地で働く日本人の数は増えている。基地従業員の割合は米軍100人当たり75.9人で、韓国47.2人、イタリア43.1人、ドイツ30.8人と比べてその異常さが分る。
 まさにアメリカの属国。
 このシステムは戦後の吉田ドクトリンに遡るという。
 そして、日本が3兆円を負担する駐留米軍再編費用問題。その一部、グアムに移るアメリカ兵の数は実質2,500人なのに8,000人分の金額が計上されている。
 これもアメリカの言いなり。
 アメリカの世界戦略で、イラクやアフガンに派遣されている海兵隊の駐留経費の半分以上が日本の金でまかなわれているのだ。
 小沢民主党代表が駐留米軍のあり方に疑問を呈した発言をしたとたんの秘書逮捕、西松事件はアメリカの圧力?って穿った思いまで浮かぶ。
 その他、情報管理の甘さや制服組と背広組みの反目などなど、自衛隊は有事のとき本当に役に立つの?そんな不安を抱く。
 今回の北朝鮮ミサイル問題、情報伝達の御粗末さもその一端。
 憲法との関係で自衛隊の存在、役割をどのように方向付けするかは、難しい問題だが、組織の存在意義さえ疑われ、税金をどぶに捨てるような現状は何とかせねば。
 国民の一人として、問題意識を持つべき情報をこの本は与えている。
 それと同時に、100年に一度の経済危機と称して、選挙対策のバラマキ予算を平気で唱える自民党政権。
 現状の行政システムをそのままに、将来の増税を国民に押し付ける政策は、国の未来を危うくし官僚政治をのさばらせるだけ。
 官僚政治を見直し、行政の無駄を徹底的に無くす。そのための天下り根絶。
 政権交代で過去の政治を徹底的に検証することが必要なのだ。
<太田>
 大力作の書評、ありがとうございました。
 この人も、そして次のちんみさん↓も、検察の小沢捜査については、外から見ているとそういう感じを持たれるんでしょうが、そこは違うんですがね・・。
 
<ちんみ>(2009.3.28)(http://amesei.exblog.jp/9517843/
 アメリカからの要求を日本で受け止める窓口は、日米互いの国家機密が絡むので、究極は首相ただひとりなのではないかと兵頭二十八氏が云っていましたが・・。
 首相が米国(宗主国)がらの要求(命令)ということで、表には到底出ないでしょうが 例えば今回の小沢に対する指揮権の発動に有無をいわせない暗黙の了解が閣内にはあるんだろうと。 
 首相は舵取りができますしね。
 米国による角栄失脚(ロッキード)は、日本は属国なんだぞとの意図の宗主国の強烈なインパクト=恐怖を日本の中枢政権に植え付けトラウマ・・立花氏の(閣僚に囲まれての)後日談が物語っていますよね~。
 元防衛省官僚太田述正氏の、防衛最前線現場体験者故のあまりにもリアルな、米国からの日本財界に対する代理人・天川氏を囲む勉強会、
http://blog.ohtan.net/archives/50953970.html
一読の価値ありますよ。
<豊丘時竹>(2009.5.11)(http://d.hatena.ne.jp/toyotoki11/20090511/1242033254
 –小沢一郎辞任–
 これで次回の民主党の勝利が確定したろう。
 ただこれは私の考えではない。太田述正氏の意見である。
 私には世の中の動きは、とてものことに読めない。誰かに頼るしかない。氏の考えに説得されどしゃにむに民主党に投票する。女房にも勧める。 …
<太田>
 私の国内政治論は、国際問題論や安全保障論のオマケみたいなものですが、それでも、「小沢」民主党による政権交替を推奨してきた、国際問題/安全保障問題音痴とお見受けする山口二郎の国内政治論
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20090602/196440/?top
なんぞよりは、分かり易いし説得力があるような気が自分ではしてるんですがね・・。
 その他の記事の紹介です。
 「・・・若い女性が年長の男に、ある種の「熱」がこもった視線を向けてくることは、実際のところ往々にしてある。別に小説家や大学教授のような教養人に限った話ではない。一般の企業人でも、社内でなにがしか指導的なポジションにいる人ならば、若い部下からその手の視線を向けられる機会はあろうというものだ。
 でも、それ自体は不思議なことでもなんでもない。我々が職業上の知識や教養、深い人生経験を尊重するのとまったく同じ意味で、女子学生やOLにとっても、それらは十分に価値があるものだからだ。
 したがって、教わる側が向ける尊敬の念と、恋愛に特有なロマンティックな感情とは必ずしも重なるものではない(というよりむしろほとんどの場合、根本的に別物ですらある)ということをよくよく理解しておかなければいけない。・・・」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20090602/196450/?top
 ↑ノー・コメント。
 Examples of pottery found in a cave at Yuchanyan in China’s Hunan province may be the oldest known to science.
 By determining the fraction of a type, or isotope, of carbon in bone fragments and charcoal, the specimens were found to be 17,500 to 18,300 years old.
The authors say that the ages are more precise than previous efforts because a series of more than 40 radiocarbon-dated samples support the estimate.
The work is reported in the Proceedings of the National Academy of Sciences.
The Yuchanyan cave was the site where the oldest kernels of rice were found in 2005, and it is viewed as an important link between cave-dwelling hunter-gatherer peoples and the farmers that arose later in the basin of the nearby Yangtze River.
 The previous oldest-known example of pottery was found in Japan, dated to an age between 16,000 and 17,000 years ago, but debate has raged in the archaeological community as to whether pottery was first made in China or Japan. ・・・
http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/8077168.stm
 ↑これ大ニュースだと思うんだけど、日本の主要紙の電子版じゃ全く取り上げてませんね。
 本当に縄文土器より古いのか、また、支那でもかつて土器を伴った狩猟採集社会が存在したのか、私の縄文/弥生モード論の帰趨にも大きな影響を持つ話です。
 ・・・New Zealand is now officially your best bet for a risk-free destination, according to the new Global Peace Index (GPI), an annual ranking of the world’s nations on the basis of how peaceful they are.・・・
  It uses a weighted mix of 23 criteria, including foreign wars, internal conflicts, respect for human rights, the number of murders, the number of people in jail, the arms trade, and degrees of democracy.・・・
 Despite the much-vaunted progress on security, Iraq remained bottom<(=144位)> of the list, below・・・
 The United States has clawed its way up six places to 83rd・・・
http://www.guardian.co.uk/world/2009/jun/02/newzealand-tops-global-peace-ranking ちなみに、日本は7位、韓国は33位、英国は35位、台湾は37位、中共は74位、タイは118位、インドは122位、北朝鮮は131位、ロシアは136位、パキスタンは137位です。
http://www.visionofhumanity.org/gpi/results/rankings.php
 韓国人有識者が、北朝鮮と韓国の現状が恥であると赤裸々に語っています↓。
 ・・・As a Korean, I am always puzzled by Korean extremism <例えば、北の弾道ミサイル発射や核実験と金王朝、南のキリスト教フィーバーと前大統領の自殺>・・・。・・・
 Cornelius Osgood, an American anthropologist, attributed Korean extremism to the peninsula’s weather. He observed that the Korean temperament is a product of long, harsh Siberian winters and hot, humid summers, with only short springs and autumns.
I believe, however, that Korean extremism stems from the country’s geography and history. Surrounded by hostile neighbours, such as Chinese, Mongols, and Manchus in the north and Japanese across the sea, Koreans have struggled tooth and nail for thousands of years to retain their ethnic, linguistic, cultural and political identity.・・・
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2009/jun/02/korean-extremism-nuclear
 オフ会の2次会(会食)の申し込みは今日までですよ。
太田述正オフ会(1次会)
日時:6月6日(土)
   9時30分~16時30分(昼休憩12時~13時)
    最初に行われるのが私の講演
場所:大井第三地域センター
(http://www.city.shinagawa.tokyo.jp/hp/menu000007300/hpg000007215.htm) 
会費:500円
注:
一、途中参加、飛び入り参加可。
二、2次会を午後五時頃から品川駅付近で行う予定。
  2次会のみの参加も可。
申込はこちら↓
http://www.ohtan.net/meeting/
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太田述正コラム#3313(2009.6.3)
<芸術論(続)(その2)>
→非公開