太田述正コラム#3184(2009.3.30)
<英諜報機関の100周年(その1)>(2009.9.9公開)
1 始めに
 スパイについての著作がたくさんある、英国人のゴードン・トーマス(Gordon Thomas。1933年~)(注)が上梓した “Secret Wars: One Hundred Years of British Intelligence Inside MI5 and MI6” の中身のさわりの部分をご紹介しましょう。
 (注)ウェールズ出身で青年時代から著作活動を行い、大学には行っていない。これまで53冊の本を出版し、総売上は4,500万部に達している。
http://en.wikipedia.org/wiki/Gordon_Thomas
2 英諜報機関の100周年
 (1)全般
 「MI6は<米国の>CIAのような英国の対外諜報<(諜報)>機関であり、・・・外相の指揮下にある。MI5は<米国の>FBIのような対内諜報<(対諜報)>機関であり、・・・内相の指揮下にある。・・・
 <MI6の長は、>その執務机から英首相、CIAの長官、そしてイスラエルのモサド(Mossad)に直通電話をかけることができる。・・・
http://www.latimes.com/features/books/la-et-rutten25-2009mar25,0,3415049,print.story
(3月25日アクセス)
→英国の諜報機関にとって、モサドがそのようステータスの存在であったとは! 考えてみれば、イスラエルは英国がつくった国でしたね。(太田)
 「・・・<MI5とMI6は、>世界で最も古く、かつ最も強力な<2つの>諜報機関だ。>
 この2009年8月に、どちらも創設されてから、事件だらけであった100周年を迎える。・・・」
http://www.ufodigest.com/phprint.php
(3月30日アクセス) 
 (2)MI5とMI6の事績
 「・・・MI6は、米国の国家安全保障庁(National Security Agency=NSA)と密接な関係を構築しており、<英国の>ヨークシャーのメンウィズ・ヒル(Menwith Hill)にはNSAの秘密基地がある。・・・
 MI6とモサドは、9.11同時多発テロを予知し警告を発していたが、米国政府はこの警告をほとんど無視した。・・・
 MI6は、第二次世界大戦中、ロンドン郊外の邸宅に盗聴器をしかけ、捕虜にしたナチスドイツの将軍達をそこに収容し、彼らのおしゃべりをもとにウィンストン・チャーチル<首相>に、ヒットラーとの戦争をどのように遂行するかについて貴重なヒントを提供した。このテープの存在は第二次大戦の最後の大きな秘密の一つであり、2007年に至ってようやくその存在が明かされた。
 ・・・MI6は、アンソニー・イーデン英国首相の承認の下でエジプトのナセル大統領を暗殺する計画を立てた。この計画は、英国の化学・生物兵器に係る機関であるポートン・ダウン(Porton Down)が調製した致死性の貝の毒をナセルの好物のチョコレートに混ぜ<てナセルに食べさせ>るというものだった。イーデンは、<他国の>国家元首の殺害を認めた最初の平時における英国首相となったわけだ。
 MI6のスエズ危機の際の役割は、フランスのある城での会合の開催に関わったことであり、これが仏英両国共同によるスエズ運河攻撃へと発展した。記録によれば、米国はこの攻撃について事前に知らされてはいなかった。・・・」
http://www.ufodigest.com/phprint.php上掲
 「・・・1970年代に暫定(Provisional)IRAが次第に東側陣営と関係を深めて行くとともに、KGBを通じて、超過激派のジョージ・ハバシュ(George Habash)と彼が率いるパレスティナ解放人民戦線(Popular Front for the Liberation of Palestine=PLF)といった国際的テロリスト達との関係を深めて行ったことは、<北アイルランドの>ベルファスト駐在のモサドの敏腕この上ない作戦部長のラフィ・エイタン(Rafi Eitan)によって突き止められた。
 そして、アルスター(Ulster<=北アイルランド>)における暴力的なアイルランド・ナショナリズムは、封じ込める(contain)ことはできるが、絶対に敗北させることはできない、という助言を最初に行った・・これは、この地域に平和をもたらした良い金曜日協定(Good Friday Agreement)への英国政府の道行きの最初の一歩となった決定的に重要な洞察だったが・・のは、アルスターにおけるMI6の工作員だった。
 また、パキスタンによる背信的な核拡散なる悪行についての重要情報は、最初にMI6とモサドがもたらした。・・・
 <MI5とMI6の功績としては、>KGBがPLF、ドイツ赤軍派、イタリアの赤い旅団、そしてスペインの<バスク独立を目指すテロリスト団体たる>ETAのようなグループを結集して、1970年代につくりあげようとしたテロリスト・インターナショナルを敗北させ破壊したこともあげられる。・・・」
http://oraclesyndicate.twoday.net/stories/5604129/
(3月30日アクセス)
(続く)