太田述正コラム#3596(2009.10.21)
<皆さんとディスカッション(続x634)>
<おーつか>
 押井守さんは高校全共闘出身で、ロジックは左翼だけど既成左翼批判派、戦争は何をやっても勝たなければいけないという意見。
 兵頭二十八の戦略論も好き。
 南北戦争で分裂した米国に代わり太平洋の覇権を得た民主日本が、ベトナム戦争に介入してヒドイ目にあう、なんて小説も書いてます。
http://www.amazon.co.jp/%E9%9B%B7%E8%BD%9Frolling-thunder-PAX-JAPONICA-%E6%8A%BC%E4%BA%95%E5%AE%88/dp/4757726694
<χΑχΑ>(「たった一人の反乱」より)
≫無駄死にで馬鹿を見た兵隊が多かったのは事実だろ、どう考えても。 もう勝てないのにズルズルと終戦を引き伸ばしたんだから。・・・≪(コラム#3592。χχΑΑ)
 無駄死にさせられた兵隊は本当に気の毒だ。
 作戦上のミスや上官の怠慢 或いは上官の敵前逃亡による損害、その他の払わなくていい犠牲者については、本来、戦後、きちんと検証して同様のミスを犯さないよう対処しなくてはいけなかったんだろうが、戦争そのものが悪かったことにされてしまったんで、そこらへんの検証が無いがしろにされているんだよね。
 そちらも問題かと。
 終戦を引き伸ばしたっていうのも相手があっての話だ。こちらが一方的に伸ばしたわけではない。
 しかし、下手に終戦工作をすると相手さんも戦意が無いと見てかかってくるから要求が法外になる。
 戦争した相手も悪かった。アメリカは馬鹿だから終戦の条件が無条件降伏だからな。
 これで戦争終結がずるずると引き延ばされた。
 しかし、必死で戦った軍人の死は決して無駄だった訳では無い。
 その戦いぶりがあったからこそ、日本に対する畏怖と恐怖があって敗戦したのに、ここまでの国になったとも言える。
 TV討論でアメの軍人が日本人を馬鹿にした時、「アメリカ海兵隊に最大の損害を与えたのは日本軍です」と言い返されて反論できなかったように。
 同様のことは↓でもふれられている。
http://www.youtube.com/watch?v=6UAStYu_CBg&feature=related
 これが、抵抗らしい抵抗を見せずに降伏したハンガリーやデンマークなんかの国は国際評価も低く一人前の国としては見てもらえていない。
<χχΑΑ>
 ・・・兵隊が真剣に命がけで戦わされた一点をもって戦争自体も尊い、という事になってしまうなら、オウムやイスラムのようなキチガイじみた宗教を兵隊信者に信じこませて命がけのテロをやらせる行為もみんな尊いって事になるね。・・・
<χΑχΑ>
 オウム事件が起こった時、ケント・ギルバートが面白いことを言っていたよ。
 「アメリカ人はみんなオウム真理教のようなものです」ってね。
 司会は関口浩だったが、司会含めてみんな意味がわからず、ポカーンとしてたな。
 町山智浩の紹介する映画でもイスラムのテロの映像を見て、「我々はこれ以上に頑張らねばならない」とかいうキリスト教原理主義者が出ていたな。
 ところでテロは犯罪だが戦争行為は合法だよ。
 法治国家という立場から考えれば似たような行為であるが天と地ほど差があるね。
 相撲取りがルールに従って相撲を取るのはいいけど、キックとかパンチ出したら非難されるでしょ。
 テロは相撲でキックやパンチを出す行為なの。
<χΑΑχ>
>ところでテロは犯罪だが戦争行為は合法だよ
 ↑残念ながら~だが、強国連合側のまことに身勝手な上から目線でもあるよなW。
 有色人種の軍事力が脆弱な小国若しくは、国と認定されない(したくない)民族組織がこれは戦争であると言っても、国際的にはテロと恣意的に認定させられているのも現実だろ。
 合法だの国際法だのの言い訳は一応はあっても、それが戦争(紛争)には機能していないし、それを誰が何の権利をもって裁くのか…。
 町山智浩が紹介していたように、アメリカもイスラム国家も宗教原理主義が大きな権力を持っている国家は、言葉はあれだがキチガイのようなものだよな。
 「アメリカ人はみんなオウム真理教のようなものです」っていっているのを理解するために この映画をこそ広く世に知らしめるのがよいとおもうぞ。
 要は、じゃいあんの云うことは へたれどもは黙認するってこと。
 『無理が通れば(るので)道理が引っ込む』って こったな~。
 N・チョムスキーの本で「テロの帝国アメリカ」ってタイトルがあるが、ったくその通りだぜ。
<太田>
 それぞれ、もうちょっと典拠を明示して欲しいが、一応典拠に基づく議論になってきているので、その一部を切り取って転載することにしたよ。
>有色人種の軍事力が脆弱な小国若しくは、国と認定されない(したくない)民族組織がこれは戦争であると言っても、国際的にはテロと恣意的に認定させられているのも現実だろ。
 そう、ブッシュにとっては、日米戦争は、日本の真珠湾攻撃というテロ行為に対する米国の報復戦争であり(典拠省略)、その意味で、9.11同時多発テロに対する報復戦争として始めたアフガニスタン戦争と全くパラレルなんだよな。
>アメリカもイスラム国家も宗教原理主義が大きな権力を持っている国家は、言葉はあれだがキチガイのようなものだよな。
 私が、米国が’bastard’アングロサクソンだって言ってきたこと、改めてかみしめて欲しいな。
 「1971年に末日聖徒イエス・キリスト教会のモルモン宣教師として初来日」して「「原爆は 戦争を早く終わらせるために 落としたのだ」との認識の上から、「開発された以上、どこかに落とされるのは運命。2発目の長崎は許せないが、最初の広島は歴史的にはしかたなかった。」と発言」したらしいケントギルバート
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B1%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%AE%E3%83%AB%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%88
のような米国人たる「宗教原理主義者」ではなくて、また、同じく米国人たるチョムスキー(Avram Noam Chomsky)のような、著名な言語学者ではあっても、「アナキスト」で米国のやる戦争にはことごとく反対している人物
http://en.wikipedia.org/wiki/Noam_Chomsky
でもなくて、原爆投下当時の米国=アルカーイダ等のイスラム聖戦主義運動=ナチス下のドイツ=スターリン下のソ連・・であると正鵠を射た指摘を行い、欧米で反響を呼びつつある、米国人たる歴史学者の話に耳を傾けるべきだろうね。
 この最後の話を、数日後の未公開コラム・シリーズで書く予定だ。
 一ヶ月後に公開するので楽しみにしてくれたまえ。
 それでは、記事の紹介です。
 ああ恥ずかしい。岡田君いいかげんにしなよ。↓
 「・・・岡田氏は、持論の核の先制不使用論を取り上げ「日米間の緊密な協議」を提案。ゲーツ<米国防長官>は「米国は核のない世界を目指すが、核抑止の柔軟性も必要だ」とけん制した。・・・」
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2009102001000542.html
 (全く他の米主要メディアでは報じられておらず、)よくある東京新聞の杜撰な記事でないことを祈るが、これは超重要。↓
 「米国防総省が、重量約十五トンの地下貫通型大型爆弾(<Massive Ordnance Penetrator=>MOP)の開発を急いでいる。米軍が持つ通常兵器(非核兵器)の中では最大となり、従来型の約十倍の破壊力を持つとされる。モレル国防総省報道官は今月七日の記者会見で「数カ月で配備可能」との見通しを強調。・・・
 米ABCテレビは六日、国防総省が、MOP開発を急ぐため他の事業から予算を振り向けるよう議会に了承を要請し、承認されたと報道した。地下約六十メートルの施設への攻撃を想定して設計されたMOPについて、北朝鮮を担当する米太平洋軍と、イランを受け持つ中央軍が、緊急配備の必要性を主張しているという。同テレビは特に、イランの核施設に対する攻撃に適した兵器だと指摘した。
 イランの脅威を強調するイスラエルの英字紙エルサレム・ポストは七日、電子版でABC報道を引用し「米国はイラン攻撃の準備を加速している可能性がある」と報じた。
http://www.jpost.com/servlet/Satellite?cid=1254861887735&pagename=JPost%2FJPArticle%2FPrinter (太田)
 報道を追認する形でモレル報道官は同日、MOPの配備見通しを示し、「敵国の大量破壊兵器貯蔵施設などの破壊を想定している」と述べた。・・・」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2009102102000102.html
 世論調査で、慰安婦問題で謝罪すべきだとする者がする必要がないとする者を上回ったとする日本での世論調査が載ってました↓。何で日本語版には載せないの?
http://english.chosun.com/site/data/html_dir/2009/10/20/2009102000799.html
 核保有国各国の保有状況が出てました。↓
 ・・・the United States “keeps roughly 1,000 nuclear warheads on alert” atop 450 Minuteman III land-based intercontinental ballistic missiles (ICBMs) and on the submarine-launched ballistic missiles (SLBMs) aboard as many as four Trident subs patrolling in different parts of the world.
 Russia “retains approximately 1,200 warheads on alert,” according to the study, with most on ICBMs, although Moscow’s few operational strategic subs could launch missiles from home ports and hit U.S. targets. ・・・
 China keeps an estimated 30 strategic systems on high alert, according to the study. It identified 12 as liquid-fueled ICBMs with two-megaton warheads “ready to launch in approximately 30 minutes,” and 18 solid-fueled ICBMs “in silos on a 20-minute alert.”
 France has eliminated its land-based nuclear missiles, keeping the weapons on its submarines in the ” ‘lowest possible’ level consistent with the maintenance of the credibility of its deterrent.” England, which has eliminated its bomber- and land-based nuclear forces, keeps its Trident subs untargeted and “on several days’ notice to fire.”
 India, which subscribes to a no-first-use doctrine, reportedly keeps its warheads separate from its delivery systems, as does Pakistan. When it comes to Israel, which does not acknowledge the reported 200 nuclear bombs and missiles in its arsenal, the study said, “not enough is known . . . to warrant an assessment.” ・・・
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/10/19/AR2009101903329_pf.html
 寄付は必ずしも利他的行為・・すなわち、人間の人間(じんかん)主義的傾向の現れ・・ではないと考えるべきだ、とする書評が出てました。↓
http://www.nytimes.com/2009/10/20/opinion/20freakonomics-excerpt.html?pagewanted=print
 ガーディアンが、ガザ戦争の時イスラエルが戦争犯罪を犯したとする国連報告書の総括執筆者である南アのユダヤ系判事を非難するコラムを掲載しました。↓
 ・・・South African judge Richard Goldstone. Poor Judge Goldstone now regrets how his good name has been used to single out Israel.・・・
 He said that, as a Jew himself, he was surprised to be invited. He shouldn’t have been, and should never have accepted leadership of a commission whose terms of reference were designed to excuse the aggressor, Hamas, and punish the defender, Israel. ・・・
 In testimony volunteered to the human rights council (and ignored), Colonel Richard Kemp, a British commander in Bosnia and Afghanistan, stated: “The Israeli Defence Forces did more to safeguard the rights of civilians in a combat zone than any other army in the history of warfare.” The “collateral damage” was less than the Nato allies inflicted on the Bosnians in the conflict with Yugoslavia.・・・
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2009/oct/20/israel-goldstone-palestine-gaza-un
 イスラム聖戦主義者達によるテロリズムの被害者たるイスラエルを、加害者にすり替えるペテン師的試みが性懲りもなく繰り返されていることに、我々はもっと怒りの声をあげなければなりません。
 ニューヨークタイムスも、この問題に関連して、Human Rights Watchの反イスラエル的スタンスを非難する、同団体の創始者のコラムを掲載しています。
http://www.nytimes.com/2009/10/20/opinion/20bernstein.html?ref=opinion&pagewanted=print
 ガーディアンが、アフガニスタンの大統領選で第二ラウンドを実施すること・・自由民主主義の押しつけ・・の愚を声を枯らして訴え始めました。↓
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2009/oct/20/afghanistan-run-off-electionhttp://www.guardian.co.uk/commentisfree/2009/oct/20/afghanistan-election-karzai-liberal-arrogance
 「民主主義が機能する条件」シリーズ(コラム#3581、3583、3585)も1ヶ月後に公開するので、読んでみて下さい。
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太田述正コラム#3597(2009.10.21)
<ウェードの本をめぐって(その6)>
→非公開