太田述正コラム#3657(2009.11.20)
<皆さんとディスカッション(続x663)>
<木阿弥>
 太田さん、・・・<コラム#3649で>丁寧なご回答をいただき、感謝申し上げます。
 まず、ご紹介くださった琉球新報【普天間移設非公式協議】を読み、当方の疑問のほとんどが晴れました。
 地政学的に、日本の防衛にとって沖縄は重要拠点には違いありませんが、航空機や船舶などの性能の進化によって、多少の辺隔地であっても充分にカバーできるようになったことも要因の一つだと理解したならば、もはや沖縄だけに基地を集中させる理由は無いようです。
≫佐世保のような、高度な艦船造修機能のある港・・・≪(コラム#3649。太田)
 これらが限られている以上、運用の方法も総覧しなければならないのですね。
 多分、太田さんに言わせると「そんな局地的なことにこだわる必要は無い」のであって、日米同盟を双務的に運用できるようにし、全体のパッケージで捉えなさいというところでしょうか。
 また、「思いやり予算」によって海兵隊が延命されただけでなく、基本的には「思いやり予算の分け前に(米国は)与り続けよう」との<太田さんの>指摘には納得させられました。
 日本が「そうしてください」と言ってるようなもんですから。
 ともあれ現実的には、自民・民主両党もが《集団的自衛権を認める》ことにすら躊躇しているのですから、結局は米国の要求を呑むしかないと思います。
 当方が引用した日刊ゲンダイの記事は、普天間飛行場の佐賀空港への移設をスグにでも可能であるかの論調で記されていますが、基地機能を含めて移設するならば周辺農地を回収する必要もあるため、今となっては後の祭りだということですね。
 日米で普天間の問題を協議し始めた1995年から、日本側が真剣に代替地を探し、具体案(佐賀空港など)を米側に提示したならば検討する用意はあったのだと解しました。
 地図を見ますと、佐世保湾全体が軍事港の様相を呈しており、なるほど北九州のロケーションならば願っても無いところでしょう。
 ここで一つの疑問が生じました。太田さんが引用した【普天間移設非公式協議】の中で、キャンベル氏と守屋氏のやり取りから、『米国の意向を伝達せずに止めた人物がいるのではないか?』と言うことです。
 守屋氏の「これまで聞いている話と随分違う」、「県外移駐が米側として運用上受け入れ可能ということがもっと以前に分かっておれば」との発言から、引っかかるものを感じます。
→単に守屋や彼を当時支えた防衛政策課員達が不勉強だったというだけのことです。その不勉強の中には、在日米軍の幹部達とホンネで話をする関係を構築していなかったことが含まれます。(太田)
 また、太田さんがご指摘する
≫地上部隊なんて、装備ごと輸送機で運べばいいはずだ。・・・(略)・・・ということは、この地上部隊がグアムにいたっていいわけさ。≪(同上)
とあるように、国内の移転地も北関東周辺まで広げることも可能だと思いますが、その上で太田さんがくださったヒントから、佐賀空港か長崎空港(=大村飛行場)を基地に転用せずとも米軍が利用できるのならば、海兵隊の移転先の自由度は拡大するとも解します。
 問題は《演習地の確保》ですよね? (もしかすると、東北地方まで考慮できるのかも)
 すると、あらら、米海兵隊には静岡県富士地区にキャンプを持っているようですが、要するに陸自の東富士演習場を米海兵隊も演習地として利用しているのでした。
 ■東富士演習場
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E5%AF%8C%E5%A3%AB%E6%BC%94%E7%BF%92%E5%A0%B4
 しかし、当該の【普天間移設非公式協議】の中でキャンベル氏が指摘した「何千という海兵隊員の常駐を受け入れてくれる場所が一体日本のどこにあるというのか。」の通り、居住区の選定と確保も同時に必要ですから、国内が前提だと非常に困難です。
 国内最大級の一つである東富士演習場ですら、砲撃訓練での直線距離に不満があるのだろうし、隊員の常駐居留地まで併設する必要があるとしたならば、日本国内において米軍の要求を満たす演習場など無いのかも知れません。(米側のカードにもされる訳だ…)
 ただし、あくまで地図上の判断ですが、険しい山岳地帯ながら《宮崎県内陸部》の他、《和歌山県南中部》に若干のスペースがあるようにも思えますし、《富士山西側》も目に留まるところ、ゴルフ場などの娯楽施設の数ヶ所を回収できれば何とかなりそうな気もします。
 これを実行に移すならば、目星をつける前に何かしらの譲歩を引き出すため、米側の《言質》も取りたいところです。
 西富士ならば、演習場、基地、居住区、そして飛行場をパッケージで移転できそうですし、近くに田子の浦港もあるので、防波堤を海に伸ばして桟橋を設ければ艦船も…、忘れてた。
 日本で一番高いハードルは《住民の声》と、それを祭り上げるマスコミなのでした。
 また、
≫日本本土の各地の演習場を転々として火砲の射撃訓練をやっている・・しかも、その追加的経費を日本政府に支払わせている・・・≪(同上)
のならば、50~100年のスパンで考えて実現可能な一帯を回収して主要な演習地とし、その周辺に一部の駐屯地や居住区を移設させるくらいの国家戦略があってもいいような気がします。
 費用対効果の観点からも、真剣に考える必要がありそうですが、米国としては金を引っ張る名目を失うので逆に難癖をつけそうでもあります。
→山岳地帯は演習場になりませんし、平地(ゆるやかな傾斜地を含む)で新たな演習場を確保できるような場所は日本には残されていません。それに仮にあったとして、買収費用だけでなく、西富士あたりだと東富士演習場の例に照らすと、法外な周辺対策費を周辺自治体からむしりとられ、海外で演習した方が安上がりになってしまいます。(現にかなり、海外で演習が行われるに至っているはずです。)これから過疎地化がどんどん進んだ暁には分かりませんがね・・。(太田)
 いずれにせよ、「日米合意」がある以上は普天間の辺野古沖移設に変更があるとは考えられませんし、いざ実現すると次に「嘉手納の移転」の声が上がってきそうです。同じように他の米軍施設を移転させる《米軍基地移設の市民運動》が活発化しそうな予感もします。
 ならば、これを逆手に取って新たに沖縄県外の移設地を検討するきっかけにできそうな気もしますが、そこまで強い意志を持った政権が誕生するかは微妙なところでもあります。
 次に、補足していただいた《第一の点》には納得させられました。
 《第二の点》については、すでに前述しましたので残る感想を述べます。
≫米軍内部での勢力争いに日本が関与する必要は全くない、というのが私の考えです。≪(同上)
 要するに、年次拡大する「思いやり予算」を大幅にカットしても問題は無く、米国の都合に日本が合わせなくとも、米国として必要だと認識する拠出はするのだと理解しました。
 また、
≫海兵師団は、もっぱら、イラクやアフガニスタンといった内陸部で、軽歩兵師団として運用されているところです。≪(同上)
 とのご指摘に、当方も多少の疑問を持っておりました。
 個人的なイメージに過ぎないのですが、「海兵隊」ならば上陸作戦において《陸軍的な機能》も必要とされることから、陸上の一部を制圧した後は順次陸軍部隊への移行によって作戦を展開するのが本来の役割分担だと認識しますが、現実的には「海軍が持つ陸軍」のようです。
 例えるなら、空軍の持つ「空挺部隊」を、「空軍が持つ陸軍」として運用するような印象です。(ただし、私は軍事に関する素人です)
→そもそも、空軍が「空挺部隊」を持つ例はほとんどないのではないでしょうか。陸軍の「空挺部隊」が空軍の輸送機に乗っていくわけです。
 海軍が「海兵部隊」は持つ例は若干はあるのですが、それでも、陸軍の「海兵部隊」が海軍の艦艇に乗っていく例がほとんどです。「海軍が持つ陸軍」どころか、「海軍とほぼ肩を並べる海兵隊」を持つ米国は、例外中の例外に属します。(太田)
 要するに米軍は、《海兵隊を最前線に送る尖兵隊として運用している》のであり、米国における《不良などの下層階級者》を職業軍人として雇っているのでしょう。(個人的には、戦死または退役後の保障さえ担保されるならば、非常に有益だと思います)
 だからこそ太田さんは、《海兵隊の上澄み部分以外》を『アブナイ手足』と称したのだと解するところです。実際に沖縄で事件を起こすのは、「海兵隊の兵士」がほとんどということですね。
 さて、かなりの長文になってしまったことをお詫びするとともに、返信が遅れたことに謝意を申し上げます。
 当方の拙い知識では、太田さんのHPに参加する皆さんと議論するのはままならないと考えるところ、太田さんを始め皆さんの今後の努力にご期待申し上げます。
<太田>
 よくお調べになりましたね。
 これで、一層多くの読者が、普天間基地問題を的確に理解できるようになったのではないでしょうか。
 いずれにせよ、私の、日本のためにも、とりわけ沖縄のためにも、そして米国のためにも、在沖海兵隊の海外移転が最も望ましい策であるとの見解はゆるぎません。
<ΒγγΒ>(「たった一人の反乱」より)
 元自民党で無くて首相の可能性が一番高いってーのは菅直人しかいないよなぁ。<(コラム#3655参照)
<ΓΓββ> (同上)
 ようはそうしろと言ってるわけだよ。
<太田>
 そこまで、全く考えてなかったけど、論理的にはそういうことになるかもね。
 いや、いずれにしても、次の総理は菅直人現副総理じゃないかな。
<ΓβΓβ> (同上)
≫こいつは大ニュースです・・・女性の性的欲求を増進させ、性的行為における充足感を高める効果があると発表した。≪(コラム#3655。太田)
 日本ではすでに市販されてるよね。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B000QTFOY2/
<ΓββΓ> (同上)
 ↑家畜繁殖計画だな~人間牧場完成まで間近になった。
 でも・・・地球では増えすぎて餌不足なんだがな~。ん?食料としての繁殖か?
<太田>
 ΓββΓクンが、本日公開したばかりのコラム#3595を読んで書いたのだとすれば、連歌として更に面白くなるので、そう思うことにしようっと。
 ところで、連歌の続きとしてはストレート過ぎるかもしれないけど、一週間くらい前の記事にこんなのあったよ。↓
http://news.bbc.co.uk/2/hi/europe/8360569.stm
 ところで、FUKOさんが、太田述正掲示板に、
<皆さんとディスカッション(続x660)>においてべじたんさんが紹介なさった記事
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2009/nov/13/lindsay-hawker-japanese-men
というか、私がコラム#3645<皆さんとディスカッション(続x657)>で紹介したこの記事の邦訳を投稿されておられますので、関心ある方はご参照下さい。
 この邦訳文を利用させていただきますが、「・・・西洋人が成功した非白人の文化に対して憤慨し恐怖を抱いていて、しかも彼らは非白人の文化を中傷し、人間性を失わせることによってこれに対処するということを示唆している。・・・」は、XXXX学会の池田某を批判したポリーおばさんの筆致からもちょっぴり感じましたねえ。
 それでは、記事の紹介です。あんましこれといった記事がなかったなあ。
 日本のクラシック業界事情がコンパクトに紹介されてました。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20091118/210072/?top
 上記記事にも登場する辻井伸行を取り上げた記事が米タイム誌の電子版に出ていました。
http://www.time.com/time/world/article/0,8599,1940215,00.html
 喫煙にはこんな、いやーな相関関係があるんですね。↓
 ・・・smokers are less happy than nonsmokers across all income levels.・・・
 Smokers are also more likely than nonsmokers to report having been diagnosed with depression at some point in their lives, and are less likely to have access to basic necessities like food, shelter and medical care・・・
http://economix.blogs.nytimes.com/2009/11/19/rich-or-poor-nonsmokers-are-happier/?hp
 睡眠中に記憶をより確かなものにする方法があることが判明しました。↓
 ・・・In a study published online Thursday by the journal Science, researchers taught people to move 50 pictures to their correct locations on a computer screen. Each picture was accompanied by a related sound ? meow for a cat, whirring for a helicopter, for example.
 Then, 12 subjects took a nap, during which 25 of the sounds were played along with white noise as they slept. When they awoke, none realized that the sounds had been played or could guess which ones had been used. Yet, almost all remembered more precisely the computer locations of the pictures associated with the 25 sounds that had been played while they slept, doing less well placing the other 25 pictures. ・・・
 The thinking is that during sleep, memory consolidation is going on and that rehearsal is a good way to strengthen memories. We showed that you can get information in during sleep using the auditory system, and that you can cue that rehearsal by providing sounds specific to each episode of learning.”
 The study adds a dimension to a theory that sleep allows the brain to process and consolidate memories.
 While a 2007 study found that people given whiffs of rose scent while learning a task remembered the task better when they also inhaled rose scent while sleeping, the new research suggests that individual memories can be explicitly singled out for strengthening. ・・・
http://www.nytimes.com/2009/11/20/science/20sleep.html?_r=1&hpw=&pagewanted=print
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太田述正コラム#3658(2009.11.20)
<米国の世紀末前後(続)(その1)>
→非公開