太田述正コラム#3751(2010.1.6)
<皆さんとディスカッション(続x705)>
<ΘββΘ>(「たった一人の反乱」より)
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100105/plc1001050257003-n1.htm
 この記事どうですか。
<太田>
 厳しい言い方をしますが、渡辺利夫も、自民党政権時代の典型的な御用学者の一人であり、吉田ドクトリン墨守の広報宣伝をせっせとやってきた人物です。
 人種主義的帝国主義なるイデオロギーに基づき、日英同盟を破棄させたばかりか、それに代わって東アジアの秩序を維持するというタテマエで日英に押しつけたワシントン体制を蔑ろにして日本を追い詰め、日本帝国の崩壊をもたらし、東アジアを共産主義勢力に席巻させることとなった、愚か極まる米国に対し、日本が、同盟という名の下に、自ら属国となって現在に至っていることを、どうして彼は問題視しないのでしょうか。
 問題視した瞬間に、自民党政権からポイ捨てされ、長らく中曽根元首相が総長を務めてきた拓殖大学になんて、再就職できなくなるからだ、と思われても仕方がないでしょう。
<βΘβΘ>(同上)
http://www.47news.jp/CN/200912/CN2009122401000570.html
 すげぇな。アメリカ、そしてオバマ。
 太田さんはアメリカの人種差別を批判するが、それでもアメリカは日本とは比べ物にならないぐらいに先進国やってるね。
 それに比べ、
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2010010600022
日本の政治のレベルの低さは怖ろしい。
 こんな短期間の仕事でドクターストップがかかるほどの老人を任命した責任を鳩山は問われることになるだろう。
 文化、ソフト産業、軍事、そして政治。日本はアメリカの負の側面なんかより、学ぶべき長所を深く研究していったほうがプラスになるだろう。
<太田>
 本日公開したコラム#3686でとりあげられている、米国の犯罪率、就中殺人率の高さや、この期に及んでいまだに全国民をカバーするわけでもない医療保険の是非を議論しているような国が「日本とは比べ物にならないぐらいに先進国やってる」とは、気は確かかい?
 また、日本の政治のレベルの低さについては、後でも出てくるけど、自ら、そんなけったいな国である米国の属国になったことによる身から出たさびってやつさ。
<TU>
≫まともなイギリス人だったら、米国人の有色人種差別意識に嫌悪感を抱くはずです≪(コラム#3749。太田)
 「サッチャー氏 表と裏?
 一九七九年に女性として初めて英首相になったサッチャー氏が、ベトナム難民の受け入れに抵抗し、アジア系より白人系難民を優先的に受け入れようとする人種差別的な姿勢を示していたことが、三十日に英公文書館が公開した機密文書で明らかになった。英紙ガーディアンが報じた。
 当時は南ベトナム政府崩壊に伴い、難民がボートピープルとしてあふれ出し、英植民地だった香港のキャンプには約六万人を収容。さらに急増していたことから、国連は英国に一万人規模の受け入れを要請していた。
 サッチャー氏は英ソ首脳会談では「ベトナム難民は麻薬中毒者か犯罪者だ」とするコスイギン首相に対し「難民は共産主義の独裁から逃れた」「英商船が救助した難民たちは勤勉な人たちで、子どもも多い」と“鉄の女”らしく毅然(きぜん)と反論した。
 だが、閣僚との協議の場では「白人も入居できてないのに、彼ら(ベトナム難民)に公営住宅が与えられるのは、間違っている」とまで発言。「ポーランド人やハンガリー人
難民のように英社会になじみやすい人の方が(私の)抵抗は少ない」とも述べていたという。
 ただ、英政府は難民受け入れ問題を協議する国際会議の提唱国でもあったため、英語ができる人を優先に三年間で一万人の受け入れを決めた。」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2009123102000061.html
<TU>
 英国民が選挙で選んだ首相ってまともなイギリス人じゃないんですかね。
 三十年程度で意識はそんなに変わるでしょうか?
<太田>
 サッチャーは、米国に倣って英国にも市場原理主義を導入しようとした(コラム#2075、2076、2290-2、2850、3196、3539、3541、3575、3634、3636)、イギリス人にあるまじきダメ首相ですよ。
 (私は、コラム#1866までの、この点でのサッチャーへの前向きの評価をその後、180度転換した。)
 彼女、ベルリンの壁崩壊後のドイツ再統一にも反対したKYでもあった(コラム#3668)しね。
 そんな首相をいただきながらも、ベトナム難民を一万人も受け入れることにしたってんだから、やっぱ、英国は立派じゃないの。
<ββΘΘ>(同上) 
 「「うつ百万人」陰に新薬?販売高と患者数比例・・・
 うつ病患者が100万人を超え、この10年間で2.4倍に急増している。不況などの影響はもちろんだが、新規抗うつ薬の登場との関係を指摘する声も強い。安易な診断や処方を見直す動きも出つつある。・・・」
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20100105-OYT1T01486.htm?from=main6
 ほらやっぱり。
 製薬メーカーの儲けを増やすためにうつ病の流行が作られて来たということでしょ。
<太田>
 鬱病が新薬によって治りやすくなり、鬱病患者が逃げ隠れする必要がなくなってきた、ということでしょう。
 そのことを素直に喜ばなくっちゃ。
 生活保護だって、制度を悪用する人は出てきますが、だからといって、生活保護の必要性がない、ということには全くならないのと、同じです。
<BERNIE>
 
 リクエスト映画評論について、募集方法の変更のお知らせです。
 より多くの方に参加して頂くため、以下のアンケートフォームに書き込んで頂くことにしました。
http://www.smaster.jp/Sheet.aspx?SheetID=24405
 募集結果はこちら↓(既に投稿頂いている分は入力済み)
http://www.smaster.jp/Result.aspx?SheetID=24405
今回の応募締め切りは1/20です。
 また、応募作品への投票も、アンケートフォームを使用して行い、そこでの順位を参考に、太田さんに評論する作品を決めて頂きます。
 応募作品が多数の場合は、Mixi上で選考を行い、投票対象作品を5本程度に絞りたいと思います。
 皆様のご参加をお待ちしています。
<太田>
 オフ会アンケートの方も引き続きよろしく。
http://www.smaster.jp/Sheet.aspx?SheetID=24100
 こっちの方は、抽選による景品付きですよ。
 一回目の抽選は、次回のオフ会会場で行う予定です。
<MMHero>
 はじめまして。
 いつもメルマガを拝読させていただいております・・・太田さん固有の観点からの問題の分析をいつも心待ちにしております。
 ・・・Twitter上では、ブログ記事の紹介を中心に投稿されておりますが、読者からの願いとしては、ツイッター上での議論等もお伺いしたいと心待ちにしています。
 総理も始められたということで、Twitter熱が高まっている中、ご専門に裏付けられた太田さんのニュース分析等をリアルタイムで受信出来るようになると、太田さんの論評活動の重要性が広まり、国益にも資するものとなるのではないかと考えています。
 一読者からの不躾なお願いですが、ご検討いただき新たな言論が広がっていくことを期待しております。
<太田>
 ご提案ありがとうございます。
 しかし、現在、私、ぎりぎりのワークロードでやってますので、それやるの基本的に不可能です。
 ただし、大事件が勃発した時には、有料読者向けに、その事件を報じた記事類をもとにコラムを書く・・逆に言うと本来の小むつかしいコラムを書く必要がない、ので、これら記事を読む都度、簡単に要約なりコメントなりをTwitter上でリアルタイムでご披露する、ことは考えられますね。
 それでは、その他の記事の紹介です。
 以下の2つの記事が示唆しているのは、要するに、鳩山首相も小沢幹事長も、非合法にカネを調達し、そのカネで、前者は権力を買い、後者は権力を買うと同時に私服も肥やしている(疑いがある)、ということです。
 二人に共通するのは、権力は単に自己実現の手段(の一つ)に過ぎず、その権力で何をやるかになど、関心がなさそうだ、ということです。
 私が繰り返し申し上げているように、属国の日本には、中央レベルにおける政治など存在しないに等しいからこそ、そんな倒錯が起きるわけです。↓
 
 「危機管理を専門とするコンサルティング会社「ユーラシア・グループ」(本部・ニューヨーク)は4日、今年の10大リスクを発表し、「日本」を5番目に掲げた。
 発表によると、「官僚と産業界の影響力を制限しようとする民主党の活動が、より高い政治的リスクを生み出している」と指摘。鳩山首相を「選挙だけでなく、効果的な意思決定にも長(た)けていない」と酷評し、「今年1年と続かない可能性がある」とした。また、「真の実力者である小沢民主党幹事長は閣外におり、正式の政策(決定)ラインからも隠れている」と、解説している。・・・」
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20100105-OYT1T01155.htm
 「小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の会計処理を巡る問題で、政治資金収支報告書に記載されていない資金移動・・・総額は17億円を超える。・・・」
http://mainichi.jp/select/today/news/20100106k0000m040144000c.html
 だから、海兵隊を(、そのための揚陸強襲艦を除き、)日本から全面撤退させる以外に方法はないのさ。↓
 「・・・米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設候補地をめぐり、在沖縄米海兵隊は5日までの共同通信の取材に「普天間のヘリコプター部隊は移設後も、一体運用する地上部隊と飛行時間で20分以内の近接距離に配置する必要がある」との軍事上の見解を明らかにした。・・・
 政府与党内では普天間の航空部隊を下地島(同県宮古島市)へ移す案も浮上しているが、同島から北東へ300キロ以上離れた本島に、ヘリが20分で到達することは不可能・・・」
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2010010501000874.html
 チョンボが続いている以上当然のことですが、米国でその諜報システムの問題点について深刻な議論が起こっています。↓
 ・・・Long-term weaknesses in US intelligence-gathering have been ruthlessly exposed over the last fortnight by the Christmas Day airline plot and the Afghanistan suicide bombing which killed seven CIA officers・・・
 ・・・the biggest US crisis in intelligence-gathering since 9/11 had been brought about mainly because no single agency is in charge, with a dozen agencies fighting for their own turf.・・・
 ・・・a source supposedly as significant as Balawi should never have been brought inside the base, because it risked exposing him; also, he should have been debriefed by a much smaller group, not the dozen or so CIA men present when he set off the bomb.・・・
 ・・・a hiring freeze under President Bill Clinton had left a gap at the CIA. “When a bunch of guys like me retired all at 50, there’s a gap. And now we’ve got a lot of inexperienced people coming on who are being forced into senior positions in the field before they’re ready.”・・・
http://www.guardian.co.uk/world/2010/jan/05/cia-intelligence-weaknesses
 ・・・”In Afghanistan we’ve been focused on counter-terrorism・・・
 The key is to to get the best match of capabilities to address three key issues: security, governance, development. You have to look at it in a holistic way.・・・<i.e.> the system of British colonial administration.・・・
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2010/jan/05/spooks-struggling-afghanistan-allied-intelligence 
 もっとも、米国の諜報諸機関がどれだけしっかりしてたとしても、イエーメンのような国じゃ、途方に暮れちゃいますがね・・。↓
 ・・・US attacks or support for attacks on suspected militants could increase the number of Al Qaeda sympathizers in Yemen.・・・
 A potentially greater destabilizing influence than militancy in Yemen is water shortages, which are already the root of a large percentage of the inter-tribal fighting that plagues the country.
 The UN has ranked Yemen as one of the most water-scarce countries, and・・・Sanaa’s wells will go dry by 2015 at current usage rates. ・・・
http://www.csmonitor.com/World/Middle-East/2010/0104/In-Yemen-locals-worry-about-Obama-policy-on-Al-Qaeda
 トルストイ没後100周年を迎える今年、全世界の国々の中で、たった一国盛り上がってないのがロシアであり、それがどうしてなのかを分析した記事です。↓
 ・・・One country, however, has so far conspicuously failed to share in this global Tolstoy mania ? Russia. Rumour has it that Vladimir Putin toured Tolstoy’s country estate incognito as a young KGB spy, but so far the Kremlin is not planning any major event to mark the centenary of Tolstoy’s death on 20 November.・・・
 In the west, Tolstoy is generally rated as the greatest literary novelist: last July, Newsweek placed War and Peace at the top of its meta-list of 100 great novels. (Orwell’s Nineteen Eighty-Four snuck in second, with Joyce’s Ulysses third.) Critics hail the extraordinary psychology of Tolstoy’s characters, and veterans say nobody has written better about battle. And the east, especially Japan, reveres Tolstoy’s philosophy. “Across the whole world there is a huge Tolstoy boom. He’s esteemed everywhere apart from here [in Russia],” Deryabin admits.・・・
 ”Dostoevsky focuses his attention on painful problems, on the dark side of the human soul. Tolstoy is the opposite. He defends fundamental values such as love, friendship and family relations. He gives positive answers to the questions mankind is asking. In this sense he gives more hope,”・・・
 ・・・the writer’s criticisms of Orthodox religion and authority make him a dangerous figure for those in power ? both in Tsarist Russia and also today,・・・
 The church excommunicated him in 1901, unhappy with his novel Resurrection and Tolstoy’s espousal of Christian anarchist and pacifist views. In 2001, the church reaffirmed Tolstoy’s excommunication, and conservative Russian Orthodox thinkers have even placed Tolstoy’s works on a blacklist.
Others whisper that Tolstoy’s beliefs make him un-Russian. They also moan about his unwieldy syntax. And it is hard to imagine that Tolstoy would have kind things to say in return about Putin’s bureaucratic-authoritarian state,・・・
http://www.guardian.co.uk/books/2010/jan/06/leo-tolstoy-the-last-station 
 中共が、断固、精神疾患の疑いのあるヤク密輸入者たるパキスタン系英国人を死刑に処した理由が解き明かされています。↓
 ・・・Beijing was able to cast Shaikh as more than just a lunatic. Because of his British family?and British agitation for his release?he also played into Chinese anxieties about imperialism and opiate smuggling. Referred to as a “national disgrace,” every Chinese schoolchild learns that the Opium Wars of the mid-19th century were an embarrassing military defeat for China, leading to the cession of Hong Kong to Britain, widespread opium addiction, and British immunity in Chinese courts. This immunity, known as extraterritoriality,・・・
 ” Chinese netizens have called this execution part of “the modern Opium Wars,” and one lamented that “170 years later, Britain is again picking at China’s wounds.”・・・
http://www.newsweek.com/id/229239 
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<globalyst:翻訳>
コラム#3749より
 英仏以外の欧州諸国が使うことができる米国の戦術核の現状についての詳細な記事が出てました。↓
 ・・・自国で核兵器を作った国、つまり英国、フランスおよびロシア以外に核兵器を使用可能な国のリストは、欧州の知られたくない不公正な事実である。真実は、ベルギー、ドイツ、イタリア、オランダは、その空軍基地に核爆弾を貯蔵し、かつ、それらを輸送可能な航空機を有している。これら4カ国には約200個のB-61重力投下型熱核爆弾が分散、配備されていると見られている。冷戦時代に締結されたNATO協定では、これら米国所有の爆弾は、紛争時に、 ホスト国の空軍に移管できることになっている。ベルリンの壁崩壊から20年が経過したが、オランダ、ベルギー、イタリアおよびドイツ人パイロットは何時でも核戦争に参戦することができる。・・・
 欧州におけるB-61の拡散と称される「核の共有」は、NPT発効以前に整えられたので、法技術的には適法である。しかし、これら4カ国および米国は、NPT調印者であるので、「核兵器の移送を受けず、また、こうした兵器を直接的、間接的に管理しない」ことを誓約している。<とはいえ、「核の共有」>は、まさに、長期に亘ってNATO協定が必要としてきたことであることは言うまでもない。・・・
 ・・・<これは、>米国が、条約に基づく米国の責務の一部であるところの核軍縮へ向けて真剣に対策を取らなかった一例で<も>ある。・・・
 2006年に行われたある世論調査によれば、これら4カ国の約70%の国民が、米国に核兵器を引き上げることを望んでいることが明らかとなったが、それ以前に、ベルギー議会は、既に満場一致でNATOに核兵器を引き上げることを求めている。・・・
 科学者連盟のハンス・クリスティンは「韓国から核兵器を引き上げた後の太平洋地域と同様に、核の傘は、長距離兵器によって存続可能である。」と言っている。・・・
 2001年に、ギリシャ空軍が新型戦闘機を発注した際、B-61を輸送できない型の戦闘機を選択し、米国に、そのギリシャ国内の核兵器を引き上げることを強いた。米国は今でもトルコ国内に核兵器を保有しているが、トルコ空軍はもはや拘わっていないと言う専門家もいる。ドイツは、近々にトルネード戦闘機を退役させ、代わりにB-61を輸送できないユーロファイターを選択するであろう。・・・