太田述正コラム#3787(2010.1.24)
<皆さんとディスカッション(続x723)>
<ΒΒΚΚ>(「たった一人の反乱」より)
 ・・・早稲田クラスの大学にも太田氏のファンがいるんだな。<大学での>次回の<講義の>予定はないの?
 早稲田と言えば東大に次いで国会議員を輩出している大学だから日本の「独立」に直接的な影響があるかもな。
 火をつけるには、外から火を浴びせるよりも中に火種を作って中から燃やした方が断然効率がいい。
 学生に指導するのはまさに後者だな。
<太田>
 内からも外からも燃やさにゃ。
 いずれにせよ、そんな評論家みたいなこと言ってずに、キミ自身が何をできるかを考えて欲しいな。
<ΒΚΚΒ>(同上)
 政権交代する前に太田さんは、与党民主党が道を踏み外したら自民党が全力でそれを咎めるから問題なしと予想を書いてたけど、本当にそうなるんだろうか。
 鳩山の次が菅で、その次に小沢が総理大臣になると、たかじんの番組で三宅久之が予想してたけど、どっちの予想が当たるか。
<太田>
 検察のみならず、日本の国民の関心という資源だって有限なんだから、誰であれ、常に木ではなく森を見なきゃ、百年河清を待つが如しだぜ。
 民主党が抱える種々の問題については、同党から立候補したことのある私こそ、皆さん以上に熟知していたわけだけど、それ以上に自民党はひどかった。
 だから、民主党への不安、不信は「木」としてぐっとこらえて民主党に投票し、自民党を政権の座から引きずり下ろすという「森」に集中すべきだ。
 そう私は言い続けてきたわけだが、8年経ってようやく日本の有権者の多数が遅ればせながらそう思うようになってくれた。
 その結果、ついに民主党(を中心とする)政権が実現したわけだ。
 鳩山、小沢の体たらくにもかかわらず、自民党の支持率が全く回復しないところに、有権者の多数の上記目覚めがどれほど堅固な思いに基づくものであるかが現れている。
 私に言わせれば、政権をとるちょっと前から鳩山、小沢の不祥事が取り上げられ始めたこと、そして政権をとってから、ますます民主党の抱える不祥事問題が喧しくなったことは、実は政権交代の賜なのだ。
 日本のジャーナリズムや(恐らくは)宗主国米国の関心が民主党の有力政治家に向けられるようになったこと、ゼネコンが、公共事業の更なる、しかも大幅削減は必至であると観念し、彼等が談合やみかじめ料等の話を積極的にするようになったこと等から、小沢らが追い詰められるに至ったというわけさ。
 
 森を見なきゃならないと言えば、現在公開中の「チャーチルの第二次世界大戦」シリーズの明日公開予定の最終回をぜひ読んで欲しいが、先の大戦期間中の大部分英首相を務めたチャーチルは、(私見では、)木を見て森をみないヘボ政治家の典型だった。
 結果、彼は大英帝国を過早に瓦解させただけでなく、共産主義勢力に東欧と東アジアの大半を献上してしまった。
 そのチャーチルでさえ、おぞましいイデオロギーにとらわれ、森どころか木すら目に入らなかった、当時のローズベルトやトルーマン米大統領・・ただし後述参照・・よりゃ、ずっとずっとマシだったけどね。
 そうそう、忘れるとこだった。
 今後小沢が首相になるなんてことは、金輪際ありえないさ。
 自民党が効果的な鳩山、小沢批判ができなきゃ、桝添要一とか丸山和也といった、自民党の延命に力を貸した戦犯たるオボチュニスト達が新党を立ち上げて、小沢ないし小沢亜流が首相になるのを阻止してくれるだろうて。
 それでは、その他の記事の紹介です。
 ベルリン封鎖時の空輸作戦は、トルーマンの独断専行だったんだね。
 大戦中のチャーチルの独断専行は、(私に言わせれば、)大失敗に終わったけれど、これは大成功に終わった。↓
 いずれにせよ、国の最高指導者たる政治家の責任は重いなんてもんじゃない。
 もちろん、日本のような属国にはこのことははてはまらないが・・。
 When Soviet dictator Joseph Stalin tried in 1948 to drive the Western powers out of Berlin by imposing a ground blockade to halt supplies going into the devastated German capital, military and diplomatic advisors urged President Harry Truman to retreat rather than risk another war.・・・
 Rejecting that counsel, Truman adopted a British idea and ordered his military chiefs to mobilize a massive airlift to ferry food, fuel and medicine from Allied air bases in Britain and West Germany to more than 2 million desperate residents in Berlin.・・・
 The Germans’ role was similarly impressive. All social classes joined the fight against Soviet intimidation — women in high heels pushed wheelbarrows, and doctors wielded shovels to transform rubble into new airfields in just three months. Berliners’ willingness to set aside animosity toward Western pilots who had annihilated their city amazed the Americans, who were extolled as “angels in uniform.” ・・・
 From the day the airlift began on June 26 until the end of the next month, more than 14,000 flights delivered more than 70,000 tons of fuel, food, medicine and other supplies — yet it was less than half of what had reached the city before the blockade. With planes landing and taking off every three minutes, flight crews and controllers were stretched to the breaking point. Lack of sleep and insufficient maintenance were main causes of crashes that killed a total of 73 Western airmen by the end of the 11-month airlift. ・・・
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/01/22/AR2010012201973_pf.html 
 米自動車産業没落の理由が簡明に説明されている。↓
 ・・・<GM’s> Sloan’s vision of turning cars into dream machines, embodiments of their owners’ aspirations, left a gap that the Japanese, and later Korean, automobile companies later exploited. Unfortunately, Detroit came to believe that sizzle sold, while technology and reliability were of secondary importance.
 Two other factors made Detroit vulnerable. One was its provincialism. Michigan became a one-industry state, dominated by the Big Three and hundreds of auto parts suppliers. It became unthinkable that auto companies could be run by anyone but Midwestern “car guys”.
 A second vulnerability was the grip of the United Auto Workers (UAW) union, led by Walter Reuther, who exploited the complacency of the Big Three in the 1950s and 1960s, when money was flowing, to hammer out labour deals that later produced vast pension and healthcare liabilities.・・・
http://www.ft.com/cms/s/2/78e355e0-06e0-11df-b058-00144feabdc0.html
 夫婦は、とりわけ夫にとって、寝室を別にした方が健康にはいいってよ。↓
 Sharing a bed with someone could temporarily reduce your brain power – at least if you are a man・・・
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/5197440.stm 
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<globalyst:翻訳>
Google Series 1-1
コラム#3765より
この文脈の中に、グーグルによる、これまた衝撃的な、対中共宣戦布告宣言を置くと、いよいよ風雲急を告げてきたという感があります。↓
・・・グーグルは、昨火曜日に、グーグルのコンピュータへなされた中共発の大量のサイバー攻撃が明かになったとした後に、中共での事業から撤退すると脅した。
 その結果、グーグルは、中共におけるグーグルのサーチエンジンの検閲にこれ以上同意することはなく、そして中共から完全に撤退するであろうと述べた。
 グーグルは、サイバー攻撃の主要な目的は、中共人権活動家たちのGmailアカウントにアクセスすることであったが、また、財務、技術、メディアおよび化学の各分野の大企業20社をも標的としていたと言った。
 グーグルは、サイバー攻撃と中共政府とを公には関連付けなかったが、グーグルの調査に詳しい者たちは、グーグルの行動を正当化する十分な証拠があると言った。
・・・<グーグルの決定は>ツイッターやフェイスブック、ユーチューブを含む海外に置かれた多数のサイトおよびSNSへの遮断に見られる過去一年にわたる中共でのインターネットへの締め付けの最中に行われた。
 2つのGmailアカウントにはアクセスされたが、<Eメールの内容ではなく>盗まれたのはアカウントデータと件名だけだったので、サイバー攻撃は目的を達成しなかった考えられる、とグーグルは述べた。
 他に少なくとも大企業20社が同様に標的にされたことが分かっている。グーグルは「これらのアカウントはグーグルのセキュリティー欠陥からアクセスされたのではなく、ユーザーのコンピュータ上に置かれたフィッシングやマルウエアを通じて行われた可能性が高い」としている。・・・
コラム#3767より
グーグルの戦いの続報です。↓
 ・・・グーグルは、サイバー虐待の最も極端な形態<であるところのネット検閲>に抵抗してきており、そして、これ以上はしないと述べた。このことは一層重要である。と言うのは、このことが、中共はインターネット上の悪い隣人であると言うことが今や可能であると西側企業および政府に気付かせることになるからである。それ<ネット検閲>は、また、ハッキングを通じての商業上のスパイ行為に加えて、スパム業者が世界中の人々から搾取する手助けとなる何千ものサイトを提供することを可能とする。それ<ネット検閲>は知的財産を盗むことを可能とする(最近ではサイバーシッター社の訴え)。それ<ネット検閲>は新たな成熟をもたらすかもしれない。中共政府は、好きな様にはできないことに気づいた。
 ・・・私は、中共で営業する主要なインターネット企業がこのように抵抗する他の例を知らない。・・・
 中共の多くのインターネットユーザは、今朝、グーグルの道義に基づいた見解を賞賛した。中共のポータルサイトであるSina.comのツイッターのようなスタイルのミニブログ形式のサービス上で最も話題となっているのは「グーグルが中共から撤退する」である。60,000を越えるコメントの幾つかを見ると、反応は圧倒的にグーグルを応援するものであった。・・・
 ・・・<中共は>インターネット検閲者としての権力に対して一層大きな挑戦を受けている。<中共は>前例のないグーグルの検索エンジンの検閲を許容しないとの声明を受入れるのだろうか?或いは、<中共は、>グーグルが荷造りして出て行くことを許し、世界最大の市場である中共の何百万人ものインターネットユーザーから<グーグルを>奪うだけではなく、中共が北京オリンピックに多大な時間と資金とを費やし世界市場の中心的存在として登場したとの中共の主張に大きな汚点を残すのだろうか?当局者が完全に沈黙したのは、苦渋の選択であり、そして多分、グーグルが声明を出した瞬間に噴出した昨日のデジタル嵐に対する古めかしいアナログ時代の反応の理由であろう。・・・
 あなた自身の領域のプライバシーを密かに侵害することと、誰かの領域でそれをすることは別問題である。この事件は、プロジェクトの不合理性を示している。つまり、万里のファイアウォールは、世界最大の輸出国となろうとする欲求とは両立しない愚行である。それは自然に崩壊する。しかも間もなく。
 本件に関連して、ワシントンポストが、社説で、米国政府に行動を促したことは注目すべきだろう。↓
 ・・・米国消費者は、一方で、中共の検閲に諂うアップルやマイクロソフトのような会社からの答えを望んでいるはずだ。インターネット活動家らは、マイクロソフトは、Bingによる中共内外の中国語検索を検閲し、また、アップルは、中共人がダライラマに関連するアプリケーションをダウンロードすることを妨害したと言っている。 ・・・
 グーグルが中国語ベースの検索サービスを維持するか否かによらず、中共人は、<中共の>ファイアウォールを破ることによって、検閲されていないグーグルの検索にアクセスし続けることが可能となろう。クリントン女史が、今月、声明を出すことを計画しているのは、インターネットイニシアティブの主要部のはずである。
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太田述正コラム#3788(2010.1.24)
<新編著英国史(その1)>
→非公開