太田述正コラム#3822(2010.2.10)
<日進月歩の人間科学(続X12)(その1)>(2010.3.14公開)
1 始めに
 相互関係の中に我々は存在しているわけですが、我々の心と体は密接な関係にあります。
 そんなこと当たり前だろうと思われるかもしれません。
 しかし、従来言われている意味とちょっと違った意味で、両者は密接な関係にあるのです。
 今回もご紹介するのはニューヨークタイムスの記事です。
A:http://www.nytimes.com/2010/02/02/science/02angier.html?hpw=&pagewanted=print
(2月2日アクセス)
B:http://pss.sagepub.com/content/early/2010/01/08/0956797609359333.full
(2月9日アクセス。上記記事が引用していた研究。以下同じ)
C:http://www.psychologicalscience.org/pdf/ps/gestures_learning.pdf
2 心と体の密接な関係
 「・・・<ある研究で、被験者に対し、>(a)4年前の自分の日常生活の様子を思いだし、その頃の典型的な日の出来事を心に描く<場合と、>(b)4年後の将来の自分の日常生活の様子を想像し、その暁の典型的な日の出来事を心に描く<場合とで、それぞれ体がどうなるかを計測した。>・・・
 ・・・<その結果だが、>過去を思った被験者達は・・・2~3ミリ(A)・・・後ろに傾いた・・・のに対し、未来を思った被験者達は・・・2~3ミリ(A)・・・前のめりになった。・・・」(B)
 
 「・・・<このように、>我々が情報を処理する過程は、単に心に関係しているだけではなく、我々の体全体に関係しているのだ。・・・
 最近の・・・ある研究では、研究者達が・・・大学の学部学生達を二つのグループに分け、第一のグループには熱いコーヒー<の入った>カップを持たせ、第二のグループにはアイスコーヒーを持たせた。
 学生達はその後、実験室に入れられ、・・・実在しない人々の姿を見せられ、その人柄を評価するように言われた。
 その直前まで暖かい飲み物を抱いていた学生達は、アイスコーヒーを持っていた学生達に比べて、これら実在しない人物をより暖かく友好的であると判断する傾向があった。・・・
 <また、別の研究では、>・・・学生達に自分が社会的に受容された時のことと社会的に冷遇された時のこととを思いだすように指示した。
 拒絶された時の記憶に係る過去の光景を眼前に思い浮かべた者は、同僚達から評価された暖かくもやがかかった思い出に包まれていた者に比べ、その部屋の気温を平均して5度<(華氏か?(太田))>低く判断した。・・・
 <更に別の>研究では、被験者達のうち、浮気やカンニングといった罪を犯した時のことを思いだし続けるよう求められた者は、<自分が汚れているという思いからか、>彼等が行った善行を思いだすよう指示されていた者に比べて、後で消毒綿(antiseptic cloth)を要求する傾向が見られた。・・・
 ・・・<またまた別の研究では、>ある科目について、特定の本が枢要であると言われた学生は、この本が勉強にあたって補助的なものに過ぎないと言われた学生に比べて、この本を、より物理的に重いものと判断した。・・・
 <同じ趣旨の研究で、学生たる>被験者達が軽いものと重いもののクリップボードを手に持たされ、調査結果を書き留めさせられた。
 まず、彼等は、6つの見知らぬ外国の貨幣の価額を推測させられた。
 次に、学生達は、大学の委員会が外国からの研究助成金の<配分>金額を決定する際、彼等の意見を考慮するとして、彼等の考えをどれくらい重視してくれると思うかを示すように促された。
 最後に、被験者達は、(彼等の大学の立地する)アムステルダム市とアムステルダム市長についてどれだけ満足しているかを尋ねられた。
 <これらの一連の研究の>いずれにおいても、クリップボードの重さが間接的に影響していると思われる結果が出た。
 重い方のクリップボードを持たされた学生達は、軽いボードを持たされた学生達よりも諸貨幣をより高額なものと判断した。
 また、重い方のクリップボードを持たされた被験者達は、大学の財政問題に対する自分達の意見を重視すべきだと主張した。
 より重たいボードを持たされた者達は、物事を真剣に考えるようになり、市長の仕事ぶりとアムステルダムの住みやすさとの関係をより考慮することが証明された。・・・」(A)
 
(続く)