太田述正コラム#4223(2010.8.30)
<皆さんとディスカッション(続x939)>
<ΕΔΔΕ>(「たった一人の反乱」より)
 <コラム#4221での小沢評、>これって、太田述正流“風が吹けば桶屋が儲かる”論だろ。 
 ヒトには喧しいくらい煩く言うのに、小沢のことになると典拠も示さずに悪意あるレッテル貼りするする理由は、ひょっとして別なとこにあるんじゃまいかと思ってしまうが。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A2%A8%E3%81%8C%E5%90%B9%E3%81%91%E3%81%B0%E6%A1%B6%E5%B1%8B%E3%81%8C%E5%84%B2%E3%81%8B%E3%82%8B
<太田>
 絶賛してくれてありがとう。
 ボクの書いてること、素人には????だけど、玄人にとっちゃ、乗数効果並みの常識だって言ってくれてるんだからな。
 ちなみに、乗数理論は、経済学者にとって常識(共通財産)で、ニューディールや先の大戦中等の乗数効果が1を超えているか否かは、この理論を前提に戦わされている議論だ。↓
 「風が吹けば桶屋が儲かる・・・<は、>経済学においては、ある主体の支出が様々なプロセスを経て何倍もの支出になる乗数効果や、投資が投資を生む波及効果のたとえとして持ち出される場合がある。」(ウィキ上掲)
 なお、コラム#はあげないけど、私に議論を提起する人は、氏素性がはっきりしない以上、事実についても、そしてできれば意見についても、典拠を明らかにすべきだとする一方で、私自身は、氏素性がはっきりしている上、一人で多数を相手にしなければならないこともあり、典拠をつけるもつけないも自由だってこれまで言ってきてるぜ。
<マロン>
 吉田ドクトリンの墨守<や>税金の無秩序な垂れ流し・・・については、首相が小沢さんだろうと菅さんだろうと変わりがないのではないですか。
<太田>
 鳩山前首相や菅首相には安全保障政策がありません(菅首相については、そもそも何の関心もなさそうです(コラム#4203))が、小沢は著書等で表明された明確な吉田ドクトリン墨守的安全保障政策・・そのコアは憲法解釈の更なる変更を通じての集団的自衛権行使の禁止の恒久化・・があります(コラム#省略)。
 政策がない人物と致命的な政策をウリにしている人物との間で、lesser evil である前者を選ぶのは当然でしょ。
 また、「小沢氏が財政事情を無視してまでも、マニフェストをできるだけ実施すべきと考えている一方、菅首相は財政再建を優先する姿勢を見せている」(真壁昭夫信州大学経済学部教授(2010年8月30日発行 JMM [Japan Mail Media] No.599より)というのが、経済通の共通認識であり、菅と小沢じゃ明確に違いがあると思いますよ。
<マロン>
 ・・・小沢さんが、政治家志望者を選挙で勝たせて政治家に育てた(そのために税金を含む資金を使った)ということについては、何が問題なのかわかりません。
 より多くの人間を養っている人が尊敬されるというのは普通の感覚だと思います。
<太田>
 小沢は、公共工事受注業者ないし業界から工事費の一部をネコババしてきた疑いが濃厚ですが、それが事実だとして、こうして得られたカネで自分の勢力拡大を行ってきた小沢のどこが問題なのか分からないっておっしゃっているわけ?
 まさかね。
 なお、「菅首相に近い民主党幹部は28日、小沢一郎前幹事長が2006年~09年の代表当時、「組織対策費」として特定議員に政治資金を集中的に配分していたことを問題視し、調査に入っていることを明らかにした。」
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100829-OYT1T00075.htm
という話も、恐らく本当なんだろうけど、そんな資金の「傾斜配分」をやるんなら、そもそも、小沢、民主党の中にいちゃダメなんですよ。
 民主党の党資金にだって、政党助成金の形で税金が大量投入されてるんですよ。
 (ちなみに、政党助成金制度が導入されたのは、小沢が実質的な切り盛りをやっていた細川・羽田政権時代
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%94%BF%E5%85%9A%E4%BA%A4%E4%BB%98%E9%87%91
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E6%B2%A2%E4%B8%80%E9%83%8E
ですから、小選挙区制度とともに小沢が導入したと言ってもいいでしょう。)
<マロン>
 一般には、税金を何に使うのかよりも前に、税金を余計に取られることを嫌がるのではないでしょうか。
<太田>
 一般論ではまさにその通りですが、その一般国民が消費税引き上げに3分の2が賛成しているんですよ。
 「読売新聞社が<6月>12~13日に実施した参院選第1回継続全国世論調査で、財政再建や社会保障制度を維持するために、消費税率の引き上げが必要だと思う人は66%で、「そうは思わない」29%を大きく上回った。」
http://www.yomiuri.co.jp/election/sangiin/2010/news1/20100613-OYT1T00676.htm
<マロン>
 そういう国民感情を察知できず、菅首相は、大事な選挙の前に消費税に触れて民主党の議員を減らしました。鳩山さん小沢さんの辞任後で、圧勝する大チャンスだったのにも関わらず。
<太田>
 ですから、菅首相の消費税発言は、十分国民感情を察知しつつも、その表明のタイミングを誤り、国民に唐突感を与えた、という点に憾みがあったということです。
<マロン>
 選挙に大敗するということは、下のものの面倒をきちんとみられなかったということです。
<太田>
 そもそも、民主党は選挙に大敗したとは言えません。
 民主党は昨年の衆院選の時に比べて政党支持率を減らしただけで、相対第一党の地位は守ったからです(コラム#省略)。
 当選議員数で自民党を下回ったのは、参院選における一票の重みのばらつきが極めて大きい、という技術的理由からに他なりません。
 一体、それでは、どうして民主党は支持率を減らしたのでしょうか?
 菅首相の消費税発言の唐突性よりも、前体制を担った鳩山・小沢両名の不祥事と危うさの方により大きな原因がある、と見るべきでしょう。
 更に言えば、菅の消費税発言の唐突性が、前体制の危うさと二重写しで受け止められたために増幅された、と見るべきでしょう(コラム#省略)。
<マロン>
 にもかかわらず、民主党では誰も大敗の責任を取りませんでした。
<太田>
 確かに、幹事長以下の選挙担当者は、トカゲの尻尾切りではあるけれど、更迭してしかるべきだったかもしれませんね。
<マロン>
 ・・・以上のことから、菅首相は、すきあらば消費税を上げようとしているだけではなく、国民の気持ちを知る能力がなく、また筋を通そうとしないので、私は支持できません。
<太田>
 菅首相は、英米の有力紙である英ファイナンシャルタイムス、米ワシントンポスト、米クリスチャンサイエンスモニター、英テレグラフ、英ガーディアンが揃って太鼓判を押す(小泉元首相と並ぶ?)ポピュリスト的政治家
・・国民の気持ちを知る能力が高く、国民の気持ちに訴えることを得手とするパーフォーマンス型政治家・・の最たるもの
http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2010/06/post-408d.html
であり、消費税発言は、その上手の手から水が漏れた、ということでしょう。
 (スキあらば消費税を上げようとしているのは、自民党も含め、現在の政治家のほぼ全員ですからねえ。)
 なお、ポピュリスト的政治家に筋を通すよう求めるのは、木によって魚を求めるようなものでしょう。
 それにしても、それならどうして小沢がいいのか、あなたからご説明がありませんねえ。
 私自身、今度の民主党代表選(首相の予備選挙)はlesser evil の選択だと申し上げているところですが、小沢の方がlesser evilである、とあなたは本当に思ってらっしゃるのですか?
<マロン>
 ちなみに増税についてなんですが、長期にわたって国債の金利が低いままであることから、緊急の課題とはいえないのではないですか。
<太田>
 典拠を付ける習慣を今のうちに身につけましょう!
 私のお答えは、私の選んだ典拠に譲ります。↓
 「<平成22年度予算について見ると、>歳入は、税収で賄われているのは6~7割程度であり、約3割は公債発行(国の借金)に頼っている。歳出は、総額88兆5.480億円。内訳、・・・国債費(20兆2.437億円 22.9%)・・・
 「新規国債発行額は過去最高の44兆3030億円であり、当初予算段階から借金が税収を上回る戦後初の事態となった」
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/domestic/budget/
 「今後さらに高齢化が進めば、毎年発行される国債を購入する原資となっている家計の貯蓄が枯渇して、国債の消化を海外の投資家に頼らねばならなくなるだろう。それだけではなく、これまで家計によって購入されてきた国債が老後生活の資金をとして利用するために大量に売却されることも考えねばならない。」
http://www.nli-research.co.jp/report/econo_eye/2009/nn100129.html
 以上、女性に対するアファーマティブ・アクション精神に則り、丁寧に対応させていただきました。
<ΔΕΔΕ>(「たった一人の反乱」より)
 イスラムシリーズ<(コラム#4218、4220、4222)(未完。未公開)>面白い。
<雅>
≫私見によれば、より根本的には、カトリシズムのような理性的(合理論的)宗教の方が原初及び現在のイスラム教のような非合理的宗教よりもむしろ危険であるからです。≪(コラム4222(未公開)。太田)
 この実例はWIKIを回ってたら見つけたこれですね
 キリスト教徒の集団により、414年、アレクサンドリアからのユダヤ人の違法で強制的な追放と、415年、最も著名なアレクサンドリアの哲学者ヒュパティアの虐殺があった。 これで、緊張はその頂点に達した。
 四旬節のある日、総司教キュリロスの部下である修道士たちは、馬車で学園に向かっていたヒュパティアを馬車から引きずりおろし、教会に連れ込んだあと、彼女を裸にして、カキの貝殻で、生きたまま彼女の肉を骨から削ぎ落として殺害した。
 まあ、こわいもんです。
 補足程度に。
<太田>
 414年じゃまだカトリシズムが成立していたとは言えない、態様的に、249年に同じアレクサンドリア(アレキサンドリア)でキリスト教徒が大量虐殺された(コラム#4222)事件よりもむしろ軽易であるとも言える、という2点から、必ずしも適切な例ではないと思います。
 あげるとすれば、異端審問(コラム#688、1019、1399、1780、2022、2028、3961、4198)、魔女狩り(コラム#2114、2116、2503)、アルビジャン十字軍(カタリ派に対する十字軍)(コラム#1150、1839、2022、3041、3678、3682)などでしょうね。
<ΔΔΕΕ>(「たった一人の反乱」より)
 <ΕΔΕΔサン(コラム#2021)、>太田さんって生きてる間に評価を受ける人では無いと思う。
 よってくる人間敵味方関係無く片っ端から切り付けちゃう人だし。
 発信してる内容自体は素晴らしいから死んでから評価されそうだ。
<ΔΕΕΔ>(同上)
 著書を書いてないから死んでから評価されることはないよ。
 いや、正確には書いてるんけど、時事ネタだから将来陳腐化するし、評価されることはないよ。
 やっぱりアカデミックなところに向けて書かないと死んでから評価されるということはない。
 ただ、生きてる間に発言している内容が聴衆の血となり肉となり、その考えが将来の日本人に何らかの影響を及ぼせれば、死んで「太田述正」の名が埋没しても、太田さんにとっては嬉しいことなんではないかな。
<太田>(ツイッターより)
 (コラム#4221に関し)そう言えば、チャーチルについてもシリーズで書いたばっかりだし、日々書き綴られ「発展」する太田ブログをもとに本をつくるって容易なことじゃない・・なーんて第三者みたいなこと言っちゃって・・。
 編集メンバーの皆さん、どうぞよろしく。
<Chase>
 太田さんの欠缺箇所について、太田さんに整理いただきました結果、明らかな欠缺箇所として、”「ロシアの「脅威」の消滅」中のロシア圏からの支那の離脱”を備忘録として記録し、他は、既存コラム(作業段階で確認して)に拠るということで。
>日々書き綴られ「発展」する太田ブログをもとに本をつくるって容易なことじゃない
これは、私も常々感じていました。
 これも当然、入るだろうなと思いつつ、やはり、際限なく繋げるわけにもいかないし。。。などと。
 そもそも考えたら、属国論の支柱の太田修正主義史観は、太田さん自身の主要な問題意識であるため、意識されずとも、(コラムのタイトルに関わらず)随所に出てきますからね(これからも今後も。。)。
 数年前のシリーズにおけるテーゼの提示よりも、最近のディスカッションの中での、分かりやすい凝縮された表現をされている場合の方に目が移りがちで、ここも悩むところです。(実際、サイトの検索機能で検索すると、最近のそういった部分も引っかかります。)・・・
<ChaosDwarfLord>(ツイッターより)
 保守の人が防衛強化とよく言うが、自衛隊人員希望数が足りた事が無い状況を憂いて、徴兵制導入を主張する処を見た事が無い。
 私は先を考えて、道州制導入ならば地域の消防団、青年団を明治の自警団に戻し、州軍として整備したら言いと思う。
 この提案をどう思われますか?
<太田>
>自衛隊人員希望数が足りた事が無い
 各自衛隊とも定員に対する充足率が100%でないことを指されているのでしょうが、そもそも充足率というのは、予算で決められるものであり、この充足率を量的に達成できなかったことはこれまで一度もないはずですよ。
 (日本で徴兵制が憲法解釈上禁止されていることは改める必要がありますが、)現実問題として、世界の大部分の国で、徴兵制はもはや必要がありません。
 装備の高度化に伴い、徴兵して兵士を急速に増やしたところで、簡単にはこれら装備を使いこなせるような戦力にはならないからです。
 しかも、日本には領域的脅威は見通しうる将来にかけてないのですから、そもそも、戦力を急速に増やさなければならない必要すらありませんからね。
 州軍構想については、コメントを控えます。
 話は全く変わります。
 『グラン・トリノ』<(コラム#3999)を28日にDVDで>鑑賞<した>。
 お見事! パチパチパチ。
<おーつか>
『グラン・トリノ』はアメ保守であるイーストウッドの限界が非常によくわかる形で出ていると思います。
 ・・・
 作中、物語をドライブする最重要人物である少女には何の救いもなく、作中、おそらくいちばんの被差別クラスであるギャングたちは殺人犯にされて逮捕されるだけ。
 そしてイーストウッドのマッチョ精神が、若い少年に受け継がれるという話ですよね。
<太田>
 詳しくは、これから書く映画評コラムに譲るけど、ご他聞に漏れず、イーストウッド映画(コラム#3806、3893)はもうチート深いでござるよ。
 それでは、この他の記事の紹介です。
 EUは「解体」しつつあるってことか。↓
 ・・・ renationalization of politics has been occurring across the E.U. ・・・
 ・・・right-wing populism is on the upswing — a product, primarily, of a backlash against immigration. This hard-edged nationalism aims not only at minorities, but also at the loss of autonomy that accompanies political union.・・・
 Meanwhile, the demands of the global marketplace, coupled with the financial crisis, are straining Europe’s welfare state. As retirement ages rise and benefits dwindle, the E.U. is often presented as a scapegoat for new hardships. ・・・
 The newer members from Central Europe, who have enjoyed full sovereignty only since communism’s collapse, are not keen to give it away. ・・・
 European participation in the wars in Iraq and Afghanistan has added to the weariness. ・・・
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/08/27/AR2010082702138_pf.html
 「同じような国」のメキシコの国民であるからこそ、中共、インド、ブラジルのいかがわしさが分かるってことか?↓
 ・・・ In a provocative piece in the September/October issue of Foreign Affairs, the former foreign minister of Mexico warns that bringing in these new players・・・China, India, Brazil and other countries・・・ threatens the principles and practices of democracy, free trade, nuclear nonproliferation, environmentalism and international justice that such institutions — and most of their current leadership — seek to spread. ・・・
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/08/27/AR2010082703813_pf.html
 中共の日本型経済体制の実態が描かれている。↓
 ・・・Of the 129 major state enterprises, more than half the chairmen and chairwomen and more than one-third of the chief executive officers were appointed by the central organization department of the Communist Party. A score or more serve on the party’s Central Committee, which elects the ruling Politburo.・・・
 it is hard to argue with success, other economists say, and China’s success speaks well of its top-down strategy. Asian powerhouses like South Korea and Japan built their modern economies with strong state help. Many economists agree that shrewd state management can be better than market forces in getting a developing nation on its feet. ・・・
http://www.nytimes.com/2010/08/30/world/asia/30china.html?_r=1&hp=&pagewanted=print
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太田述正コラム#4224(2010.8.30)
<どうしてイスラム教は堕落したのか(その4)>
→非公開