太田述正コラム#4162(2010.7.30)
<狩猟採集時代の性(その2)>(2010.12.9公開)
 (3)狩猟採集時代の性
 「・・・ボノボは、我々にとって最も近しい親戚であるところ、平等主義的で平和的な集団の中で生活し、天文学的な頻度で性交を行うが、これらは我々の自然性向が那辺にあるかを示すものなのだろう。・・・」(C)
 「・・・我々は、今日研究されているところの前農業時代の人間と人類学者達によって研究されているところの園芸に従事している人間について考察を行った。
 欧米の影響に深く晒されてきていない人々の性的なことについても相当量の情報が蓄積されている。
 我々が依拠すべき、旅行者や植民主義者による、歴史的記録として残された<世界の様々な人々との>直接的接触についての記述が活用できるのだ。
 また、我々は人間の体自体からも非常に多くの情報を引き出すことができる。
 ペニスの形状、睾丸の大きさ、また、睾丸の組織が精液をつくり出す能力、更には、我々がセックスを行うやり方から・・。
 例えば、睾丸の大きさは、どのように我々がセックスを行うやり方を教えてくれるだろうか。
 我々の睾丸はチンパンジーとボノボのものほど大きくないけれど、我々の射精量は彼等の約4倍だ。
 理論からすると、雄が精液細胞のレベルで競争するとすれば、彼等ははるかに大きな睾丸を持つようになるはずだ。というのも、乱交する動物では、異なった雄の精液が互いに卵子に最初に到達しようとして競争しあうからだ。
 我々の睾丸が単婚的であるギボンやゴリラほど体との比率で小さくないという事実は、我々が長期にわたって非単婚的ではなかったという考え方を補強する。
 これに加えて、我々のペニスの形状は、女性の生殖システムに真空を生み出すことによって以前からそこにあった誰かの精液を引っ張り出すために進化したことを強く示唆している。
 人間の男性における精液競争を示すあらゆるものが、<このように>存在しているのだ。
 そして、誰も示唆しなかったことで我々がこの本の中で示唆したことのうちの一つは、睾丸は遺伝的に体の中で環境的圧力に最も速やかに適応する部位であることから、単婚の歴史的文化的賦課(imposition)の結果、我々の睾丸は1万5000年ないし2万年前よりもはるかに小さくなった可能性が大いにある、という点だ。
 ちなみに、我々は、当然のことながら、精液の量が我々がこうして話をしている間にもどんどん甚だしく減りつつあることを知っている。・・・」(C)
 「・・・そこでいよいよ乱交パーティーだ。
 「適者生存」は、精液レベルにおいてのみ、我々祖先に適用できる。
 「考え方は単純だ。仮に一人以上の男性の精液が排卵中の女性の生殖管の中に存在しておれば、精子それぞれが卵子を受胎させるために互いに競争しあう。
 女性は、…自分の繁殖力を宣伝するための様々な手練を持っていて、より多くの<男性の>競争者を誘う・・・。
 男性達は、最良のつれあいを探しているところの、はにかみやの女性への「進入(entrance)」を勝ち取るために互いに競争しあうよりも、・・・大勢の男性が同じ女性とセックスをしてそれぞれの精液を膣の中で競争させたのだ。
 今日に至るまで、人間の射精の最初のほとばしりには「精液を他の男性達の射精によるほとばしりの中の化学物質から守る」化学物質が含まれている。
 また、最後のほとばしりには、その後の到来者達の前進を遅らせる殺精子(spermicidal)物質が含まれている。・・・
 これは、・・・どうして、女性が性的に高まるのにあれほど時間がかかる一方、男性<の射精>があれほど早く終わってしまうのかを説明するものだ。
 また、それは、どうして女性がセックスの最中に男性より大きな<よがり>声を出すか(いわゆる女性の性交発声(female copulatory vocalization)というやつだ)をも説明するものだ。
 つまり、それはその地域にいる男性達への番についての定型的(of sorts)呼びかけとして機能しているわけだ。
 以上の生存上の便益は巨大だった。
 子供の父親が誰かを知るすべがなかったことから、子供達は、単一の単婚ペア達によってではなく、狩猟採集者のコミュニティーによって育てられた。
 全員がふんだんにオルガスムを味わった。(女性は特にそうだった。)
 女性が財産として、或いは物々交換用の物(chip)としては使われなかったので、両性の間の平等が進展した。
 だからこそ、今日の男性は、複数の男性と一人の女性との集団セックスを題材にしたポルノにより関心があるのだし、多くの人にとって不倫をしないでいることは困難なのだ。
 そんなことは要するに自然じゃないのだ。ああ!・・・」(A)
(続く)