太田述正コラム#4899(2011.7.30)
<皆さんとディスカッション(続x1278)>
<太田>(ツイッターより)
 経産省原子力安全・保安院、四国電、中部電に「やらせ」発言依頼(06、07年原発シンポ)
http://www.asahi.com/special/10005/NGY201107290029.html
http://www.asahi.com/special/10005/OSK201107290090.html
 ボクの言ってたとおりだろ。
 麗しい淳風美俗は感動もんだ。
 もちろん、当時の自民党政権のご意向を受けての話だぜ。
<ΖΙΙΖ>(「たった一人の反乱」より)
 「藤井裕久首相補佐官(79)と野中広務元官房長官(85)が29日、TBSの番組収録で不人気の菅直人首相を持ち上げた。野中氏は「歴代総理を見てきたが、菅さんほど一生懸命働いている総理は記憶にない」。藤井氏も「戦後32人の総理がいるが、12~13人は菅さんより下(の評価)だ」と述べた。」
http://www.asahi.com/politics/update/0729/TKY201107290472.html
 素直に読むべきなのか、発言の裏を読むべきなのか・・・。
<太田>
 世界の常識デアル。
 素直に読むべし。
 例えばだ、官僚の使い方を知らないとかの批判も菅に対してなされているが、東日本大震災/原発事故対処にあたって、こんな鉄面皮の悪徳官僚らが牛耳ってる官僚機構なんて使いようがないと思わないか。
 菅、ホントよくやってるよ。↓
 「規制機関による「やらせ」という信じ難い不祥事を受けた緊急会見<で、>・・・寺坂院長は「第三者委員会の調査を待ちたい」「保安院は検証を受ける側」と繰り返すばかり。保安院の次長を務めていた二〇〇六年の四国電力のシンポについても、「記憶を呼び起こしているが、(やらせがあった)認識はない」とあいまいな答えだった。
 自身がこれまで表に出なかったことについては、「批判は受け止めるが、院の広報担当者が毎日、会見に対応している」。結局、逃げ腰の回答に終始し<た>。」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2011073002000037.html
 本件をもうちょっと。
 今、菅民主党政権にたてついてる旧与党の自民も公明も同罪だからな。↓
 「保安院やらせ、歯切れ悪い当時の与党関係者・・・
 「当時は原発を推進するため、致し方ない面もあったのかもしれない」(<公明党>幹部)との声も漏れた。」
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110729-OYT1T00905.htm
 誤解しないで欲しいが、ボクは別にやらせ自体を否定してるわけじゃないからね。
 経産省や電力会社が公式に指示しない形でやらせを実現すべきだったってことさ。
 だって、原発反対派だって、動員をかけてるだろうし、シンポジウム出席者の発言だって「指導」してんだろうしね。
 この記事に、本件に係る各電力会社の対応の違いの表が載っている↓
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110729-OYT1T00937.htm
が、東電等は、うまく立ち回ったってことだろうね。
 東電等に天下ってた経産官僚がしっかり仕事をした・・天下り制度が「機能」していた・・ということかもしれないけどね。
<SS>
≫稲わらに放射性物質が付着したことについては(東電ひいては経産省が代表するところの日本)政府に責任があり、稲わらが使い物にならなくなったことへの賠償責任は当然あるだろうが、稲わらを食わせた肉牛が使い物にならなくなったことまでの賠償責任を(農水省ひいては同省が代表するところの)政府に負わせるのはいかがなものか、何となれば、農水省は(倉庫に保管していない)牧草を家畜に食わせないように通知はしていたのだから、この通知を踏まえれば、畜産業者には、稲わらだって(そして穀類だって)(倉庫に保管していないものは)食わせてはいけないのではないか、という懸念くらいは抱くべきだったんじゃないか、と言ってるんだよ。(懸念を抱けば、県なり農水省なりに問い合わせたり、稲わらなり出荷する牛肉なりの放射能検査をしてもらったりしたはずだろ。)つまり、稲わらに倉庫に保管していないものがあるということを農水省が把握していなかったという過失と、畜産業者が上記懸念を抱かなかったという過失のどっちが大きいのかってこと。≪(コラム#4875。太田)
 ・・・誤解・事実誤認があります。
 まず、3月17日付の農林水産省通知は「大気中の放射線量が通常よりも高いレベルで検出された地域」に対して発せられたものであり該当地域として想定されたのは緊急避難地域+α(当時はまだホットスポットの存在すら明確に把握されていなかったし、計画的避難地域も設定されていなかった。)であります。
 宮城県が「大気中の放射線量が通常よりも高いレベルで検出された地域」に該当すると考えた人間は農林水産省、宮城県職員、宮城県農民の誰一人としていないのです。宮城県が「大気中の放射線量が通常よりも高いレベルで検出された地域」であるとの検査結果はいまだに発表されていません。
 多くのマスコミも役所にだまされた報道を行っているわけですが太田さんまでが「農水省は(倉庫に保管していない)牧草を家畜に食わせないように通知はしていたのだから、この通知を踏まえれば、畜産業者には、稲わらだって(そして穀類だって)(倉庫に保管していないものは)食わせてはいけないのではないか、という懸念くらいは抱くべきだったんじゃないか、と言ってるんだよ。」と書かれているのはまことに残念でなりません。
 また、この件の本質は「宮城県もかなり広範囲でセシウムに汚染されていた。」ことにあります。
 いまとなっては確認のしようがありませんが3月中旬はヨード131の汚染も相当な程度に及んだと想定されます。
 住民は今も汚染に脅かされていることをはっきりとPRしてほしいものです。
http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/earth/nuclear/tepco-nuclear-disaster/11071901htm <→リンク切れ(太田)>
http://www.maff.go.jp/j/press/seisan/c_suisin/pdf/110624-02.pdf901.htm→<リンク切れ(太田)>
<太田>
 その翌日、コラム#4877で、私、「これに関しては、畜産業者は責められないだろうな。↓
 「・・・福島県だけでなく、宮城県の業者が販売したわらの汚染も相次いで分かり、使った農家が広がっている。・・・
 「宮城県から仕入れたわらで、汚染されているとは夢にも思わなかった」・・・」
http://www.asahi.com/national/update/0718/TKY201107180619.html 」と書いてますよ。
 ところで、読者の一人から、下掲の国会での参考人陳述の紹介がありました。
 広島原爆20個分の放射能が放出された計算になるんだってさ。しかもその影響は・・。 しかし、この参考人の怒りをぶつけるような話し方と行政府、立法府批判は、チトどうかと思うね。
 だって、(どの党の推薦か知らんが、)立法府は彼に発言する機会を与えたわけだし、そもそも、今まで彼の見解を政府や世論に訴える活動を、彼、どんな風にどれくらいやってきたんだい? ↓
http://www.youtube.com/watch?v=eubj2tmb86M
<太田>
 昨日のTAさんの問題提起に答えておきましょう。
 石油成金の国や都市国家を除いた、最先進国の購買力平価による一人当たりGDPを比べると、ノルウェー、米国、アイルランド、スイス、オランダ、オーストリア、スェーデン、カナダ、オーストラリア、フィンランド、デンマーク、ベルギー、英国、ドイツ、日本、フランス、イタリアの順番になります。
 英国から上の諸国を見てみると、スイス、オーストリアという飛び地を除けば、イギリス及びイギリスの旧白系植民地、ないしはイギリスの周辺でイギリスの歴史において、イギリスと密接な関係のあった諸国ばかりです。
 ですから、「<米国が世界の覇権国家となりえたのは、>アングロサクソンの本家本元のイギリスが世界の覇権国家となりえた理由と基本的に同じです。」と私がコラム#3754で申し上げたことは、間違いなさそうです。
 では、どうして米国が2位、つまりはアングロサクソン諸国のトップなのでしょうか。
 それは、第一に、米国の生産性が高いからです。
 上記諸国中、米国より生産性が高い国は、ベルギー、アイルランド、オランダ、ノルウェーの4カ国しかありません。
 第二に、米国の労働時間が長いからです。
 石油成金のノルウェー以外のベルギー、アイルランド、オランダの一人当たりGDPが米国より低いのは、これら諸国の労働時間が短いからです。
 思うに、米国の労使の力関係において、後者が優位なのでしょう。容赦なく合理化がなされ、残された労働者はこき使われる、ということです。☆
 その米国は、上記諸国中、貧困率、殺人率、平均寿命、が最悪の国でもあります。
 つまり、私に言わせれば、米国は、高い一人当たりGDPを高いコストをかけてたたき出している異常な国である、ということになります。★
 (ちなみに、これらの問題に対処するための治安維持費や刑務所費用や医療費等に高いコストをかけること自体がGDPを押し上げます。)
 (以上、☆★の箇所を除き、下掲による。)
http://www.conferenceboard.ca/hcp/details/economy/income-per-capita.aspx#Lower_usa
 
 さて、このような、アングロサクソン諸国中の米国の特異性をどう説明するかですが、私は、かねてより、米国のアングロサクソンと欧州とのキメラ性を唱えてきたところです。
 米国の非人間主義性、すなわち、人種主義と市場原理主義、は欧州由来である、というわけです。
 これに加えて、私は、米国に渡ってきた人々が(一族、地域社会からの)デラシネであることについても指摘してきました。
 デラシネたることを選ぶ、ということは、(これもかねてから指摘しているように、)彼らはリスク選好度が高い、賭博師的人々である、ということになります。
 欧州では理論に留まっていた市場原理主義が米国では実践されたことの背景にはこのことがある、と言えそうです。
 このように考えてくると、米国人は双極性障害者的(芸術家的/非人間主義者的)ではあっても鬱病者的(現実主義者的/人間主義者的)ではないはずだ、ということになるのでは?
 つまり、米国人に精神障害者が多いのは、過酷な社会なので発症する者が多い、しかも、発症した場合、一族や地域社会が支えてくれないので医者にかからざるをえず、統計にその多くが拾われてしまう、という理由からのような気がします。
<新日本人>(2010.7.12)
 防衛省OBと言えば、エリートな方で、一般人(私のようなもの)より知識と経験の豊富であるというイメージですが、人間をアッラー(Allah)として崇拝の対象としている人々をイスラームに所属させているなどびっくりするような内容を堂々と載せている。
イスラーム=一神教(偶像崇拝禁止)
<新日本人>(2010.7.17)
 真実を語らない過激派よりのH/Pから切り取った情報を貼り付ける前にイスラームのアハマディア運動の信仰をアハマディアのH/Pで確認すれば良かったと思います。
<太田>
 上掲2つの投稿があったことに、今まで気が付きませんでした。
 私は、コラム#679で、「インド亜大陸、就中パキスタンのイスラム教は、19世紀末にインド亜大陸のパンジャブ地方で生まれた、イスラム教に由来する(という意味ではドルーズ派(ドルーズ教・・・)やバハイ教と同じ)カディアニ(Qadiani。Ahmadiとも呼ばれる)派(教)の強い影響を受けている。」と書いたのであって、カデイアニ(アフマディー)が「イスラームに所属」しているなんて言っていませんよ。
<unknown>
 <コラム#679(2005.4.3)>「パキスタン(その2)」に<における>
http://blog.ohtan.net/archives/50955154.html#comments
アハマディアに関する間違った情報を即訂正してください。
<太田>
 同趣旨(?)のご要望に対して、アフマディーの創始者のアフマドが預言者であったかどうかについては、コラム#4067(2010.6.13)で既にお答えしてますし、その折、「アラーをイギリス人としているとか酒を飲むとかについては、・・・判断を保留させていただ」いたところです。
 なお、預言者云々については、その時に私が引用した英語ウィキペディアの記述が現在でもそのまま変わっていません。
 私にメールするくらいなら、このウィキペディアの記述の訂正を試みたらいかが。
<太田>(ツイッターより)
 日本人でも、はやり歌の歌手たる女性と違って、クラシック音楽の奏者(歌手を含む)たる女性が結婚「退職」したっての聞いたことがないが、何でだろうね。
 それどころか、後者の場合、鳴かず飛ばずの奏者ですら止めない。
 音楽にも貴賤があるということなのか、クラシック音楽演奏には中毒性があるのか。
<太田>
 それでは、その他の記事の紹介です。
 英国で、戦略爆撃を経験した人々は、ドイツに対する戦略爆撃に反対した。
 戦略爆撃を経験したことのない米国人!↓
 ・・・ a 1941 opinion poll found that “in the northernmost counties of England, where there had been no bombing at all, 76 percent of the respondents approved bombing German civilians. But in the most heavily bombed areas of London, the people were split 45 percent for the reprisal bombing and 47 percent against. The people who had seen the horrors of what area bombing can do were the least likely to inflict it on their worst enemy.・・・
http://www.washingtonpost.com/entertainment/books/gregory-a-freemans-the-last-mission-of-the-wham-bam-boys/2011/04/13/gIQAfvbbSI_print.html
 イギリスにおけるキリスト教信仰は消滅に向かいつつある。↓
 ・・・attendance at Church of England service・・・is still falling: down to 1.13 million a week, barely 2 per cent of the population.・・・
http://www.ft.com/intl/cms/s/2/b240ec06-b8ca-11e0-8206-00144feabdc0.html#axzz1TPR03HK9
 ブレーキをかけるという脳波を感知し、ただちに急ブレーキを車にかけさせることで、100Kmで走っていた車を3.66mも手前で停止させることができるんだって。↓
http://www.bbc.co.uk/news/science-environment-14329748
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 一人題名のない音楽会です。
 予定を変えて庄司紗矢香(1983年~)小特集を2回に分けてお送りします。
 庄司の演奏が新たに多数アップされているのを発見し、これらが削除されないうちに、皆さんにご披露すべきだと思いました。
 その庄司は、更に成長を遂げていました。↓
 「2009年、クラシック音楽からインスピレーションを得た絵画と映像作品の個展”Synesthesia”(共感覚)を開催。庄司は、ヴァイオリン演奏が「第一のインタープレテーション(解釈)」とするなら、視覚的表現は「第二のインタープレテーション」であると語っている」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BA%84%E5%8F%B8%E7%B4%97%E7%9F%A2%E9%A6%99
 –ベートーベン–
ベートーベン バイオリン協奏曲(1806年) 演奏:Nov. 10th 2006
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B3%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2_(%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%B3)
 第1楽章 アレグロ・マ・ノン・トロッポ
http://www.youtube.com/watch?v=Eiecjy_7abQ&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=galiXjiFoow&feature=related
     カデンツァ(庄司のオリジナル) 5:05~7:27
http://www.youtube.com/watch?v=yXU_bElrny8&feature=related
 第2楽章 ラルゲット ト長調
http://www.youtube.com/watch?v=EwzncqmiyOs&feature=related
 第3楽章 ロンド アレグロ ニ長調
http://www.youtube.com/watch?v=SOqOY-7C7x4&feature=related
ベートーベン バイオリンソナタ第5番「春(Spring Sonata)」(1801年) 演奏:Nov. 8th 2010
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%82%BF%E7%AC%AC5%E7%95%AA_(%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%B3)
 第1楽章 Allegro
http://www.youtube.com/watch?v=VD_HrTyCI7I&feature=related
 第2楽章 Adagio molto espressivo
http://www.youtube.com/watch?v=YJqAqJD7J54&feature=related
 第3楽章 Scherzo,Allegro molto
http://www.youtube.com/watch?v=CxpNrZTcH_s&feature=related
 第4楽章 Rondo,Allegro ma non troppo
http://www.youtube.com/watch?v=ujiNrtpEeUk&feature=fvwrel
同 バイオリンソナタ第9番 「クロイツェル(Kreutzer)」(1803年)同上
 「ロシアの文豪レフ・トルストイによる小説『クロイツェル・ソナタ』は、この曲に触発されて執筆された作品である。嫉妬心にかられ妻を殺してしまった夫の悲劇が描かれている。ヤナーチェクはこの小説に刺激を受けて、弦楽四重奏曲第1番『クロイツェル・ソナタ』を作曲している。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%82%BF%E7%AC%AC9%E7%95%AA_(%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%B3)
 第1楽章 Adagio sostenuto – Presto – Adagio
http://www.youtube.com/watch?v=L4z9yUV81Zg&feature=related
 第2楽章 Andante con variazioni
http://www.youtube.com/watch?v=lSOwYDbqUl0&feature=fvwrel
 第3楽章 Presto
http://www.youtube.com/watch?v=ySLEjHKBf6I&feature=related
同 バイオリンソナタ第8番(1802年?) 同上
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%82%BF%E7%AC%AC8%E7%95%AA_(%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%B3)
 第2楽章 Tempo di minuetto ma molto moderato e grazioso 
http://www.youtube.com/watch?v=PMRH4dmRBXc&feature=related
(続く)
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太田述正コラム#4900(2011.7.30)
<終末論・太平天国・白蓮教(その2)>
→非公開