太田述正コラム#4780(2011.5.31)
<日進月歩の人間科学(続X21)>(2011.8.21公開)
1 始めに
 バイリンガルのメリットと、人間には楽観主義者が多いこと、についての記事をご紹介しましょう。
 どちらも最新の研究の紹介というよりは、最近の研究の到達状況の紹介ですが、いずれも私自身に思い当たる節のある話であるだけに、興味深く感じた次第です。
2 バイリンガルのメリット
 「・・・二つの言語の継続的使用は、アルツハイマーの症候群の到来を遅延させる。・・・
 バイリンガルは、重要な情報に集中しより重要でない情報を無視する能力を持つ認知システムを備えていることが分かった。・・・
 <バイリンガルの>脳のネットワークは、しゃべるたびに、二つの言語が飛び出てくるのでコントロール・システムは、すべてをより分け、その時々におけるもっとも適切なものに関心を向けるべく働く。
 従って、バイリンガルはコントロール・システムをより使うし、その継続的使用はそのシステムをより効率的なものにする。・・・
 <ただし、そのためには、>この二つの言語を常に使っていなければならない。たまにしか<片方は>使わないというのでは、バイリンガルによって裨益することはできない。・・・
 ・・・バイリンガルはマルチタスクについても・・得手だ。・・・
 ・・・特定の非言語的テストにおいてすら、バイリンガルの人々は早く解答を出す。・・・
 ・・・彼らは、完全に非言語的な問題を解決するのに言語諸中枢を含むところの異なった類のネットワークを使っているように見える。・・・
 バイリンガルであることは良いことであり、それは脳を強くするし。
 それは脳を訓練するのだ。・・・」
http://www.nytimes.com/2011/05/31/science/31conversation.html?hpw=&pagewanted=print
(5月31日アクセス)
 私は、小学生時代にバイリンガル環境で生活していましたし、その後も、少なくとも読むことに関しては、バイリンガルであり続けました。
 子供の時にピアノ漬けにされたこともそうだったのですが、幸いにして、偶然も働き、私は、さほど出来の良くない頭を持ち合わせていたにもかかわらず、それをより活用できるような環境に置かれた、ということになります。
 両親に感謝しなければなりませんね。
3 人間には楽観主義者が多い
 「・・・神経科学と社会科学は、我々はどちらかというと、現実主義的であるというより楽観主義的であることを示唆している。・・・
 楽観主義者達は、一般に、より長時間働きより多く稼ぐ傾向がある。
 ・・・楽観主義者達はより多く貯金までする。
 そして、彼らは離婚率は人並みだが、再婚率は高い。・・・
 心疾患患者を研究している研究者達は、楽観主義者達は非楽観主義的な患者達に比べて、より多くのビタミンを摂り、低脂肪の食事をし、運動をするので、全般的な血管リスクが減少していることを発見した。
 癌患者達についてのある研究は、60歳未満の悲観主義的な患者達は、同じ健康、地位、年齢の非悲観主義的な患者達に比べて8か月以内に亡くなる割合がより多いことを明らかにした。
 実際、次第に集積されつつある科学的諸証拠は、楽観主義は進化を通じて人間の脳に刻み込まれている可能性がある、という結論を指し示している。・・・
 ・・・<第一そうでなければ、>死が確実に訪れることが分かった時点で進化は止まっていたかもしれないではないか。・・・
 死についての知識が輝かしい未来を描く根気強い能力とともに出現しなければならなかったというわけだ。・・・
 期待することは、我々のパーフォーマンスと行動を変えることで自己実現的となる。
 そして、それは究極的には、何が将来に起きるかに影響を与えるのだ。
 しかし、しばしば、期待することは、現実それ自体を変えることなく、我々のこの世界の感知の仕方を単に変容せしめるだけに終わる。・・・
 軽度の鬱の人々は将来の予想を比較的に正確に行う。
 彼らはこの世界をありのままに見るわけだ。
 換言すれば、非現実的な楽観主義を生み出すところの神経メカニズムが欠如しておれば、人間すべてが軽度の鬱になってしまう可能性があるのだ。・・・
 たくさんの病気の中から<自分が罹ってもいいものを>一つ選ばせると、被験者達は、突然、自分達が選んだ病気が、以前よりも恐ろしいものでなくなっていることを発見する。・・・
 ・・・また、我々は、人々が、過去に経験したつらい出来事をより前向きにとらえるようになることも発見した。・・・
 ・・・我々の脳・・・は、我々が遭遇した出来事について、我々がその生起の際に下した決定に対し、より高い評価を与えるような仕組みになっている。
 これは、二つのつらい選択肢からの選択・・例えば、二つの治療法から一つを選ばせる・・を強いられた場合だけでなく、それがうれしい選択肢からの選択であった場合にもあてはまる。・・・
 あなたがある決定をする時、それが仮定的な選択であった場合ですら、あなたはその決定を、より高く評価し、それが自分に愉楽をもたらすことを期待する。
 この自分の下した決定に対する肯定的態度は、我々が良くも悪くもない諸選択から、より高揚した愉楽を引き出すことに資する。
 これがなければ、我々の人生は、ああすればよかったとの思いで満たされることになりかねない。正しいことをやったのだろうか。考えを変えた方がよくないかと・・。こうなると、我々は動きがとれなくなり、何も決められず、前に進むことができなくなってしまう。・・・
 ・・・人々が学習する時、彼らの神経細胞は楽観主義を増進させる望ましい情報は忠実に記録するけれど、期待に反する望ましくない情報を編入することには失敗するわけだ。・・・
 前向きの期待をすることが、おおむね、生存確率を高めるというまさにその理由で、進化によって楽観主義が選択された、と推測したくなるところだ。
 研究によって発見されたところの、楽観主義者達はより長寿でより健康であるという事実、これに加えて、大部分の人間は楽観的偏りを示すという事実、更には、楽観主義は特定の遺伝子に結びついているとの次第に出現しつつあるデータ、は、この仮説の強い裏付けとなっている。
 しかし、楽観主義は不合理でもあり、望まぬ結果をもたらすことがありうる<ことを忘れてはなるまい。>・・・」
http://www.time.com/time/health/article/0,8599,2074067,00.html
(5月29日アクセス)
 私は、自分が楽観主義者であるという認識を持っていましたが、これを読んで、この点についても恵まれているな、と思った次第です。
 私は、日本を「独立」させたいし、私の生きている間にそれが実現すると楽観主義者らしく思い込んでいるわけですが、この私の楽観に基づく活動が、実際に日本を「独立」へと早期に導くことに資することを信じて止みません。