太田述正コラム#5165(2011.12.10)
<皆さんとディスカッション(続x1402)>
<太田>(ツイッターより)
 記事発見。
 「…<オリンパスが>飛ばしを考え、実行に移す直前の99年に『960億円の損失』というのはあり得ない数字だ…運用損以外の何か、表に出せない損失が溜まっていて、それを同時に処理したのではないでしょうか」(アクシーズ元幹部)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20111208-00000001-gendaibiz-bus_all
3年前の永久非公開コラムを思い出してほしいが、4年半ちょっと前に訪れていてしかるべき無限の寂寥感に今頃苛まれるというのも不思議なことだ。
あの頃は生きるか死ぬかだったからかもしれないが・・。
いくら人間科学をかじったところで、自分自身の心理は容易にコントロールできないもんだねえ。
<通りすがり>
≫「ところがポーランド政府は1938年10月6日に全てのポーランド旅券につき検査済みの認印が必要であるとする新しい旅券法を布告した・・・(中略)・・・ナチス政府からもポーランド政府からも受け入れを拒否されたユダヤ人たちは国境の無人地帯で家も食料も無い状態で放浪することとなり、彼らは窮乏した生活を余儀なくされ、餓死者も大勢出た。」≪(コラム#5002。岩村)
 ↑
 この部分、誤解だと思いますが。
 当時はドイツがポーランド国内の「ドイツ系ポーランド人」(所謂第五列)と呼応して多数の工作員を次々と自国からポーランド国内へ送り込んでおり、ポーランド政府によるこの旅券見直しの決定はそれへの緊急対処でしたから。
 もちろん戦間期のユダヤ系ポーランド人たちにはローザ・ルクセンブルクのように共産主義者が多く、ポーランド政府としては彼らがポーランドに戻ってきて赤化活動をすることを警戒はしていましたが、現実にこのシナリオは可能性が薄いです。
 というのも、そもそも彼らはドイツの赤化のためにポーランドを離れドイツで活動していたのですから。
 ご確認のほどを。
<太田>
 確認を促すとすれば、それは私に対してではなく、著者の岩村に対してでしょう。
 いずれにせよ、こういうご指摘には典拠を付けてくださいね。
<ζζΨΨ>(「たった一人の反乱」より)
≫陸海空のどれかにもよるし、人にもよる。いずれにせよ、もう少し具体例をあげてくれないと答えようがないよ。≪(コラム#5163。太田)
 チャンネル桜で太田さんと競演していた川村純彦さん、松村劭さん、 佐藤守さんらは 中国が尖閣諸島を掠め取ろうとしているから自衛隊を強化して守らなければという水島さんの説に同意しているように見えました。
 あと、志方俊之さんは太田さんと競演したたかじんの番組中で北海道のソ連上陸脅威論を信じていたかのように見えました。
<太田>
 私の出た番組の動画にたまたま同席した人だけで論じるのはいかがかと思うな。
 将官じゃなかったけど、ボクが一緒に本を出した兵頭二十八さんも一応元自衛官だよ。
<ζΨΨζ>(「たった一人の反乱」より)
 中上健次と比べると、村上春樹が大人向けラノベ扱いでも仕方ない気がする。
 主人公は個人主義者という感じがありありとしていて、そういうところがあるから、欧米人にも理解しやすくて評価につながってるのかな?
 あと、英語がすばらしいという外国人の感想も聞いたことがあり、あの村上春樹の日本語独特の収まりの悪さ(それが人気と不人気の元でもあるけれど)が英語で読むとなくなってるのかもしれない。
<ψψΖΖ>(同上)
 単に翻訳家が優秀なだけだったりして。
<ψΖψΖ>(同上)
 現代美術なんかは、高校の美術の教科書で止まってる人間から見たらキチガイによる制作としか見えないだろう。
 村上の軽い文体が気に食わない人間は止まってるんだよ。
<ψΖΖψ>(同上)
 「村上」違いの余談だが、村上隆とかがやってるような現代美術が何であんな変なのばっかりなのかについてはこれが凄く分かりやすかった
http://www.youtube.com/watch?v=ufY13_Or3ws#t=1m22s
<ψψΖΖ>(同上)
 相変わらずオタキングは面白いなぁ。
 話脱線するけどこの人が提唱するダイエット方法の「レコーディングダイエット」っての一度やってみたんだけど、半年ほどで68㌔→58㌔に見事10㌔ダイエット出来たよ。
<ψΖψΖ>(同上)
 村上隆はこういう動画で現代美術の現状と傾向を解説している。
http://nicoviewer.net/tag?q=%E6%9D%91%E4%B8%8A%E9%9A%86
 現代美術の中心はアメリカであり、日本は経済と同じようにガラパゴス状態で、村上は日本の美術教育のあり方に批判的。
 あまりにも世界の現状と乖離しているのではないかと。
 こういう部分も太田さんの政治評論と似ているんだよね。
 「2005年4月、ニューヨークで個展 『リトルボーイ展』を開催。
 自身の作品の他、ジャパニーズ・オタクカルチャーや日本人アーティストの作品が展示され。またリトルボーイ展では「父親たる戦勝国アメリカに去勢され温室でぬくぬくと肥えつづけた怠慢な子供としての日本と、そうした環境ゆえに派生した奇形文化としてのオタク・カルチャー」、「それがゆえにオタク・カルチャーのきっかけはアメリカにもあるのだ」との考えが提示された。
       ↑
 これ、まるで太田さんのコラムみたいなんだが。
 村上隆はこう書いている。
 「原爆が投下され、直後日本は無条件降伏し、15年におよぶ太平洋戦争が終結した。2005年。戦後60年。現代の日本、平和だ。しかし日本に住み暮らす者は気づいている。どこかおかしい事を。
(中略)
 資本主義の名の下、アメリカの傀儡政権が完全完成した後に来た平板な残骸としての国家。
 その空虚の坩堝の中で生きる人間たちが繰り広げる、言葉では割り切れない堂々巡り原爆投下後、アメリカに支配され、「空虚の坩堝」のなかでわれわれは暮らしている」、というわけで、こうも書いている。
 「子どもの喧嘩の時に相手を揶揄するように名付けられた原子爆弾の愛称そのままに、我ら日本人は『Little Boy』=『ちっちゃな子供』そのままだ」
http://www.dnp.co.jp/artscape/artreport/it/u_0509.html
<ΖψΖψ>(同上)
 なんでも原爆に結び付ける村上隆のサブカル論に辟易するんだな。
http://d.hatena.ne.jp/gotanda6/20050608/pikadon
 奴は芸術家なのか評論家なのか歴史家なのか、果たしてなんなのか?
<AH>
 太田コラムのなかでも戦間期をとりあげたものを特に興味深く拝見しています。
 「人種的帝国主義」(#4498など)といういいかたには敬服しています。
 最近JAMES BRADLEYの”IMPERIAL CRUISE”を読んだあとには一入です。
 (この本も太田コラムで知ったものです。)
<太田>
 「一入です」は何かのミスプリでは?
<AH>
 「一入」は「ひとしお」(新潮社日本語漢字辞典)です。
<太田>
 あーそうだったんですか。
 こういう字をあてるとは知りませんでした。
 お恥ずかしい次第です。
 それでは、記事の紹介です。
 今やドイツは名実ともにEUの盟主となった。↓
 No so long ago, France was the political driver and Germany the economic motor of the European Union. “Now,” remarked former European Commission president Romani Prodi in February, it is Merkel “that decides and Sarkozy that holds a press conference to explain her decisions.” This searing image could be embellished with the 24 EU members cowering in the press room — and Britain now watching through the window. ・・・
http://www.foreignpolicy.com/articles/2011/12/09/_merkelization_of_europe?page=full 
 英国はEU加盟国中、唯一、財政規律強化条約への加入を拒否。↓
 European leaders say 26 out of 27 EU member states have backed a tax and budget pact to tackle the eurozone debt crisis.
 Only the UK has said it will not join. Prime Minister David Cameron said he had to protect key British interests, including its financial markets.
 The 17 countries that use the euro have all agreed to the deal.・・・
http://www.bbc.co.uk/news/world-europe-16115373
 英国がEUそのものから脱退する日も遠くない?
 何度でも言うが、アングロサクソンと(野蛮な)欧州とは心を通い合わせることなんてできないのさ。↓
 How long will Britain stay in the EU?・・・
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/d9e7cd56-226a-11e1-923d-00144feabdc0.html#axzz1g1Pz7WuP
 オランダ政府が、初めてインドネシアでの1947年の大虐殺事件(少なくとも150人の一般人が死亡)について謝罪した。↓
 The Dutch government has apologised for a massacre committed by its soldiers in Indonesia ・・・on the 9th of December, 1947・・・as the country fought for independence. ・・・at least 150 people were killed.・・・
 The Netherlands had previously expressed regret over the killings, but never formally apologised.
http://www.bbc.co.uk/news/world-asia-16104751
 ちょうど100年前、インドのマハラジャに、領内で近代化的施政を行うとともに、インド皇帝たる英国王ジョージ5世に欠礼をあえてした人物がいたってさ。↓
 100 years ago when, in front of 100,000 spectators, the Gaekwar of Baroda, otherwise known as Maharajah Sayyaji Rao III, bowed improperly when presenting himself before the British monarch・・・George V・・・, then turned his back disrespectfully and walked away.・・・
 Each Indian ruler or “native prince” was expected to perform proper obeisance to the King-Emperor by bowing three times before him, then backing away without turning.
 The maharajah not only ignored royal etiquette by turning his back on the king and queen after formally introducing himself but compounded his perceived insolence by reportedly “laughing disrespectfully” as he departed from their presence.・・・
 <マハラジャの中じゃ2番目の存在だったんだね。↓>
 Gaekwar of Baroda – second in importance only to the Nizam of Hyderabad・・・
 He was the first Indian ruler to introduce compulsory and free primary education in his state in 1906, placing it far in advance of the rest of British India.
 In addition he played a key role in the development of Baroda’s textile and banking industries, expanded women’s rights, improved access to education, banned child marriages and legislated against discrimination between different castes.・・・
http://www.bbc.co.uk/news/world-asia-16051168
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 一人題名のない音楽会です。
 ハメリンの第19回目です。
 ここで、ロシア人作曲家のシリーズと行きましょうか。
 –ピョートル・チャイコフスキー(1840~93年)–
Etude No.7(lullaby)(ハメリン編曲) 左手のみでの演奏
http://www.youtube.com/watch?v=v37vL_xnCmQ
 –アレクサンドル・スクリャービン(1872~1915年)–
ピアノソナタ第2番(Sonata-Fantasie)(1897年) スクリャービンの曲の中で例外的に「歌謡曲」調なるがゆえに私が好きなもの。
http://www.youtube.com/watch?v=F6zKTb8luV0&feature=related
 –セルゲイ・ラフマニノフ(1873~1943年)–
絵画的練習曲《音の絵》(Etude Tableaux)作品33 第7曲 変ホ長調(1911年)
http://www.youtube.com/watch?v=zVsp5nCWeHc&feature=related
(ピアノソナタ第2番(1913年) 駄作だと思うが、ロシア革命が起こり、ラフマニノフが亡命を余儀なくされる直前
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%83%AB%E3%82%B2%E3%82%A4%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%83%95%E3%83%9E%E3%83%8B%E3%83%8E%E3%83%95
の作品であるということもあり、掲げておく。
http://www.youtube.com/watch?v=Ysg7dmF4zmI&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=UDJoR278r20&feature=related )
ピアノ協奏曲第3番作品30(1909年)(注)
http://www.youtube.com/watch?v=Ii-wr4cljc8&feature=fvwrel
http://www.youtube.com/watch?v=4ZEKYK8083s&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=nYhlU6sAOAw
(注)「技術的・音楽的要求に於いてピアノ協奏曲の中で最難関の一つとも言われている」(ウィキペディア前掲)曲だからハメリンが好むわけだ。
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 ハメリンの演奏ではないが、上記第3番を、ラフマニノフの他の3つのピアノ協奏曲と比較してみよう。いずれも名曲だが、私の好みでは、2>1>3>4 となる。芸術家や科学者は、若い時から天才の名を恣にし、30歳近くして絶頂に上り詰め、後は衰える一方、という冷厳な事実をつきつけられる思いがする。時間のある方は、ご自分の耳でお確かめいただきたい。
ピアノ協奏曲第1番作品1(1891年) ピアノ:ラフマニノフ自身(絶品!)
http://www.youtube.com/watch?v=IhVVQ7_MyJA
http://www.youtube.com/watch?v=hFSfv8MUgIg&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=IhVVQ7_MyJA
http://www.youtube.com/watch?v=QUzi1DNBEVk&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=BdW8W9ngmvc&feature=related 
ピアノ協奏曲第2番作品18(1901年) ピアノ:キーシン 誰でも知ってる最高傑作
http://www.youtube.com/watch?v=4Ud_wGMXRnQ&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=42aMCKX0k9Y
http://www.youtube.com/watch?v=jWRb90BRB5w&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=jWRb90BRB5w&feature=related 
http://www.youtube.com/watch?v=EWF10gP9LQQ&feature=related 
http://www.youtube.com/watch?v=r_6niD3DvW0&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=3rIflzamYLo&feature=related 
ピアノ協奏曲第4番作品40(1926年)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%82%A2%E3%83%8E%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2%E7%AC%AC4%E7%95%AA_(%E3%83%A9%E3%83%95%E3%83%9E%E3%83%8B%E3%83%8E%E3%83%95)
 改訂版(死後の1944年出版) 第1楽章 ピアノ:アシュケナージ
http://www.youtube.com/watch?v=h9FOmqLr9Ys
 初演版(長いー!) ピアノ:アレクサンダー・ギンディン(Alexander Ghindin)
http://www.youtube.com/watch?v=l67IDCckP7I&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=bWTeZSb8C7A&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=4SEqS-BAnMw&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=tovJfhrCbLI&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=ULQbrtK4SKw&feature=related )
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(続く)