太田述正コラム#5167(2011.12.11)
<皆さんとディスカッション(続x1403)>
<コラム#5165の訂正>(ブログは修正済)
「ピアノ協奏曲第1番作品1(1891年) ピアノ:ラフマニノフ自身(絶品!)」の後に下掲↓を挿入する。
http://www.youtube.com/watch?v=IhVVQ7_MyJA
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<太田>(ツイッターより)
 アラブの春、欧州南部の冬~夏に引き続き、今度は一周遅れのロシアの冬が到来? モスクワを始め、ロシア各地で反プーチン派のデモ。
http://www.bbc.co.uk/news/world-europe-16122524
 ニンテンドーのスーパー・マリオ、ドンキー・キング、ゼルダの伝説、各シリーズのクリエーターってこんな人だったのか。
http://edition.cnn.com/2011/12/08/tech/gaming-gadgets/miyamoto-new-role/index.html?hpt=hp_c2
 ファミコン・ゲームを一度もやったことのないオッサンの独白。
 そう言えば、パチンコは、一度やったことがあるだけだなあ。
<一読者>
通りすがり氏が言うようなポーランド政府がドイツ系ポーランド人の第五列やユダヤ系の共産主義者たちを警戒していた話も聞いたことがあるが、私はそれとはまた別のことで岩村氏やデッシャーやグレーバーの事実歪曲を指摘させていただきたい。
 彼らの典拠は『The Expulsion of Polish Jews from Germany October 1938 to July 1939: A Documentation』(Sybil Milton著、Oxford Journal)だと思うのだが。
 以下はそのサマリー。
 ユダヤ人はまずドイツ側でSSによって10マルクを超える手持ち現金が全て没収されたうえ、国境検問所まで数キロの道のりを徒歩で移動させられ、ポーランドに入国します。
 ドイツによるユダヤ人追放はいきなり行われたためポーランドの国境すべてにワルシャワの中央政府から通達が行き届いていたわけでなく一部で国境警察がユダヤ人の入国を拒否するという混乱が見られたことは確かですが、最終的に国境までやってきたユダヤ人はすべてポーランド側に受け入れられ、いったん各地にある大きな街に収容されます。
 たとえばズバシン市では近隣の複数の国境検問所から入国したユダヤ人がいったん集められ、政府は臨時通達を出して、ワルシャワで必要な行政手続きが完了するまで彼らが許可なく街の外へでるのを禁止しました。
 ズバシンでは陸軍の施設が宿舎として割り当てられましたが、地元のグジボフスキというユダヤ系ポーランド人実業家も彼の工場を宿舎として提供しました。
 当初はいきなり多数の人々を収容しなければならなかったので、各地の自治体当局は彼らへの差し入れの提供を現地のポーランド人住民たちに呼びかけ、地元住民たちそれに応じてこのユダヤ人たちにボランティアでお湯や食料などの差し入れを行いました。
 ワルシャワでも一週間後にはボランティアのユダヤ人被追放民救済委員会が組織されます。
 現地でも様々なボランティア組織が即座に結成され、宿舎の人々に差し入れ、行政手続きの手伝い、郵便の配達代行、子供たちの世話、医療、文化活動などを行いました。
 このボランティア組織群の事実上の代表にはリンゲルブルムというユダヤ系ポーランド人実業家が就きました。
 地方のボランティアによる救済委員会には280万ズウォティ、合同委員会には70万ズウォティの義捐金がポーランド全国から集まりました。
 この間、ワルシャワの中央政府はドイツと交渉を行いました。
 一部の人々は宿舎から脱走しましたが、これはあくまで政府通達が臨時でなく永続的なものだと彼らが勝手に思い込み、当局の説明をちゃんと聞こうとしなかったからにすぎません。
 実際、中央政府によるドイツとの交渉が進むにつれて、宿舎の人々が町から出る許可がどんどん与えられ、11月末までにすべての宿舎は閉鎖されます。
 その時点で宿舎に残っていた人々(たとえばズバシンでは4000人が居残っていたそうです)もポーランド各地に親類を頼って引っ越し、国内に身寄りのない人は主に第三国へと渡っていきました。
→ここまでは、「岩村氏やデッシャーやグレーバー」が依拠しているとあなたが思う典拠からの要約引用ですよね? これを読むとポーランドがユダヤ人を迫害したわけではないように読めますが、「岩村氏やデッシャーやグレーバーの事実歪曲」はどうして生じたのでしょうか?(太田)
 一般的に言って、とりわけポーランド史に関し巷で定説となっているものはまったくの出鱈目、捏造、歪曲、嘘が多いような気がする。
 外国のポピュリストたち反ポーランド主義者たちによって意図的に行われているのではないだろうか?
 たとえばWikipediaの「ナチスに勝るとも劣らず反ユダヤ主義的だったポーランドは…」はデッシャーの主観ではないか?
→この部分、典拠が付されてません!(太田)
 太田さんも読者をミスリードしない記述を心掛けていただければ。
 とくに、Wikipediaを引用するのは避けたほうが良い。
 太田さんが以前取り上げた戦後のキェルツェ暴動についても、あれは相手がユダヤ人だから起きたのではなく、相手が誰であろうと何民族だろうと起こり得た事件。
 戦争直後当時の法的に誤った住宅行政と、共産行政当局自身のミス隠ぺい・責任転嫁の体質が原因だったため。
→やっぱ、典拠が付されてませんよ。(太田)
<太田>
 それでは、その他の記事の紹介です。
 そう簡単に行くのかい?↓
 「・・・オリンパスの損失隠しを受けた過去の決算訂正と2011年4~9月期決算の作成作業が大詰めに入<った。>・・・同社の監査は09年3月期まであずさ監査法人が、10年3月期以降は新日本監査法人が担当している。10日時点で両監査法人とも適正意見とする方向だ。過去の決算については一部を監査対象から除いた「限定付き適正」とする可能性は残っている。・・・」
http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C889DE1E5E3EBE3E2E5E2E3E3E3E0E0E2E3E3869891E2E2E2
 ドイツ(欧州大陸)側から、英国にEUから出て行くよう示唆。↓
 ・・・Great Britain is an EU member that never truly wanted to be part of the club. It was more of an observer than a contributor and it always had one eye on Washington. Indeed, it is telling that the country never joined the border-free travel regime known as Schengen — Britain still checks everybody who enters the country from the other side of the Channel. The political establishment was likewise extremely skeptical of the common currency from the very beginning.・・・
http://www.spiegel.de/international/europe/0,1518,802933,00.html
 「人間主義・唯一神・人権」(コラム#4880、4882、4884)シリーズやコラム#4885で私が主張したことを真っ向から否定するコラムが出てたな。↓
 <冗談じゃない。↓>
 Individualism <is> a basic human right・・・
 <何で戦前の日本の「ナショナリズム」が共産主義やナチズムやイスラム原理主義と並置されるんだよ?↓>
 We have seen enough terror and crimes against individuals in the name of anti-individual identities, committed in the name of communal (communism in all forms), national (Japan’s imperialism), religious (Sept. 11, 2001, attacks), cultural (female genital mutilation) or ethnic identity (Nazi Germany).
 <そうだよ。だから戦前の日本を並置させちゃいけないんだ。↓>
 Individuals have the right to live according to their ideas and governments have the duty to secure the possibility of this. The state itself, however, must remain neutral with regard to the life choices of individuals.・・・
 <中共等の唱える「アジア的諸価値」なんちゅうのはむろんインチキだ。↓>
 This approach has been always contested. More recent criticism comes from countries still immersed in “thick” traditions, insisting on the communal nature (or definition) of human beings, which, subsequently, would require a cultural reformulation of human rights that secures greater influence of the state or the community on the individual’s way of life. China’s propagation of so-called “Asian values” is such an example.
 <現在もまた、日本が台湾、中共、そしてマイケル・サンデル大先生(コラム#3622、3624、3626、4862)と並置されている。中共は脇に置いとくとして、その通りだよ。↓>
 US political philosopher Michael Sandel’s “encumbered self” is another one and it is no coincidence his book, Justice, has become so popular in countries with “thick” cultures, such as Taiwan, China and Japan.・・・
http://www.taipeitimes.com/News/editorials/archives/2011/12/10/2003520366