太田述正コラム#5339(2012.3.5)
<皆さんとディスカッション(続x1482)>
<太田>(ツイッターより)
 今までスカンディナヴィアの植物は、氷河期が終わった9000年前にまでしか遡れないと考えられてきたが、針葉樹(conifer)は、長い氷河期の間、氷に覆われていなかった山の頂上部分等で生き延びてきたということが遺伝子分析で分かったんだって。
http://www.bbc.co.uk/news/science-environment-17235229
 日本の研究者が、蜘蛛の糸でもって、現在一般に使われている弦楽器の弦よりも強く音も良い弦をつくることに成功した。その音色が聴けるよ。
http://www.bbc.co.uk/news/science-environment-17232058
<親善>
 <コラム#2184>「人種別知能指数比較(その1)」<を読み>ました。
http://blog.ohtan.net/archives/51073126.html#comments
 IQで脳は計れないのが学者の一致した見解です。
 IQとは「同年齢の他の人と比べてどうであるか」というだけで、天才度を示すものではありません。
→IQは、「同年齢の他の人と比べて<空間把握能力や数理処理能力という脳の働きが>どうであるか」を計るわけですから、「脳は計れ」るということが前提になっていますよね。
 また、「天才」とは、ある分野で傑出している人のことですが、「空間把握能力等」が傑出している人はやはり「天才」でしょう。(太田)
 
 一人ひとりが様々な多様性と個性的な才能を持つ人間の脳。
 その能力を数値化するという取り組み自体が、到底不可能であると言わざるを得ないというところが、現代脳科学が行き着いたひとつの結論。
→脳の「能力」の総体を数値化することはできないかもしれませんが、脳の特定の「能力」を数値化することはできるわけであり、そんなことまで「到底不可能」であると言っている「現代脳科学」者は一人もいないのでは?
 IQは脳の空間把握能力等を計ることができていない、という指摘をしている「現代脳科学」者がいるのかもしれませんが、それなら、その名前を典拠付きで示すべきでしょう。(太田)
<太田>
 要するにあなたの投稿は、言葉の定義が恣意的で論理も通っていません。
 だからこそ、典拠を付ける努力をする意義があるのですよ。
 あなたの「主張」を裏付ける典拠を発見することは、いかなる意味においてもできないことでしょうし、そのことを知れば、あなたは投稿を取りやめることができたでしょうからね。
<ΓΓΓΓΓ>(「たった一人の反乱」より)
 昆虫をペットとして飼うのは世界的には珍しいことだったのね。
 フェラーリに乗る昆虫業者は儲かってるんだろうな。
 これは、縄文文化の賜物と解釈してよいのでしょうか?
http://blog.livedoor.jp/itadaku_eigo/archives/5474026.html
<太田>
 そうです。縄文文化/人間主義の賜物です。
 それでは、その他の記事の紹介です。
 イスラエルの最高裁長官(女性!)の引退と新長官の就任の式典で、アラブ人最高裁裁判官(キリスト教徒)が国歌斉唱の時に起立はしつつも歌わなかったことをめぐる顛末だ。日本の国歌斉唱の時に、歌詞が気に入らない人は、この裁判官のように、起立はしつつ、歌わなきゃいい。↓
 ・・・<At> the retirement last week of Israel’s chief justice and the swearing in of her successor・・・Salim Joubran, the only Arab among the court’s 15 justices, standing but not singing. ・・・
 <彼は、終身最高裁判事としては初めてのアラブ人。↓>
 Justice Joubran is the first Arab in the country’s six decades to hold the post permanently (there was a temporary appointment of an Arab a dozen years ago) ・・・
 <国歌の歌詞は、シオニスト臭ふんぶんたるもの。
 でも、右派は激昂し、左派は歌詞の修正を求めている。↓>
 For those familiar with the lyrics to Israel’s anthem, “Hatikva,” (in English, “The Hope”)<(注)>, it comes as little surprise that a Christian Arab like Justice Joubran might not embrace its focus on the 2,000-year-old “yearning of the Jewish soul” to be “a free nation in our land, the land of Zion and Jerusalem.” And just as those on the right took the opportunity to lament what in their view is the disloyalty of Israeli Arabs like Justice Joubran, the left seized the moment to urge a rethinking of the lyrics to make them more inclusive. ・・・
 <この歌詞は、1878年に書かれたもの。↓>
 The lyrics of Israel’s anthem were written in 1878 by Naphtali Herz Imber as an expression of the national sentiments of the Jewish people, and the Jewish people only. No Arab citizen who had any self-respect, political awareness or national consciousness could sing these words without committing the sins of hypocrisy and falsehood.・・・
http://www.nytimes.com/2012/03/05/world/middleeast/anger-and-compassion-for-justice-who-stays-silent-during-zionist-hymn.html?_r=1&ref=world
(注)いい曲だねえ。(歌詞の英訳が読めるよ。)↓
http://www.youtube.com/watch?v=NjfFpFW9OdA
 先の大戦中、ナチスドイツは「純粋」アーリア人繁殖計画を推進したが、アーリア人のための自然(生態系を含む)改造計画を推進したことは余り知られていない。↓
 ・・・ During World War II, Hitler and his henchmen devised an agenda, both political and genetic, that was nothing less than the Nazification of nature. The human cost is well known: the extermination of millions while, in baby farms scattered around Europe, robust SS men and blond, blue-eyed women produced thousands of babies to use as seed stock for Hitler’s new master race. What’s little known is that their scheme for redesigning nature didn’t stop with people. The best soldiers needed to eat the best food, which Nazi biology argued could grow only from the purest of seeds. So using eugenics, a method of breeding to emphasize specific traits, the Nazis hoped to invade the genetic spirals of evolution, seize control and replace “unfit” foreign crops and livestock with pure ones.
To that end, they created an SS commando unit for botanical collection, which was ordered to raid the world’s botanical gardens and institutes and steal the best specimens.・・・
 <世界の優秀食用植物の種を侵攻した各地から集めた。↑
 また、穀物ができやすいような気候に変えるために植林しようとしたし、ナチスの理想とする風景に作り替えようともした。↓>
 Elsewhere, the Nazis proposed planting forests to sweeten the climate so that it was more favorable for their own crops, and they spoke openly about reshaping the landscape to better suit Nazi ideals. ・・・
http://opinionator.blogs.nytimes.com/2012/03/03/genes-on-the-march/
 フィリピンでも昔から黒人に対する差別意識があったんだというんだが・・。
 どうして、世界のどこでもこのような差別意識が見られるんだろうね。↓
 ・・・Philippines <people> long ago considered the Malayo-Polynesian tribes superior and the Negrito tribes inferior・・・Hispanic culture merely reinforced that prejudice with its Eurocentric paradigm. Superimpose Hollywood. The standard of beauty is fair skin, tall nose, straight hair.・・・
http://edition.cnn.com/2012/03/03/world/asia/philippines-forgotten-children/index.html?hpt=hp_t3
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 ユリア・フィッシャーに感動した昨日の読者が、今度は、技量も美貌もフィッシャーに匹敵する女性バイオリニストを発見した、とオフザケ(?)で言ってきた。
 チャイコフスキーのバイオリン協奏曲(映画より。出だしはオフザケ)
http://www.youtube.com/watch?v=_UEs0aubxoY&feature=related
 この映画でバイオリンを「弾いてる」のは俳優のMelanie Laurent。
 実際に演奏しているのはSARAH NEMTANU。
 NEMTANUの演奏を他にも探してみた。↓
 チャルダッシュ(コラム#3360、3434)
http://www.youtube.com/watch?v=I2QQm7RKn38&feature=relmfu
 Avant de mourir 名曲じゃん。
http://www.youtube.com/watch?v=RUOEA9Xi3Ts&feature=relmfu
 なお、チャイコフスキーのバイオリン協奏曲と言えば、庄司紗矢香のこの演奏は絶品。(コラム#5265で紹介したうちの一つと同じだが、別途アップされたもの。)↓
http://www.youtube.com/watch?v=GAkw_Wi4yIo&feature=related 
 庄司の繊細さに対するにフィッシャーの力強さといったところか。
 それにしても、フィッシャーがピアノも超一流の水準に達しているのは神がかりだ。
 (当時まだ成長期だったという留保付きだが、)僕の拙い経験では、毎日ピアノを2時間は弾き込まないと技量を維持できない。(休むと、技量水準を回復するためには、休んだ日にちより多くの日にちがかかる。)
 これは才能の多寡とは無関係な事実だと僕は思う。
 ということは、フィッシャーは、バイオリンのコンサート前日も当日も、長時間ピアノに向かう、という生活を続けている可能性が高いってことだ。
 彼女は、もともとはピアニストになりたかったのを、母親が兄をピアニストにしたいのでお前はバイオリニストになりなさいとしつけたらしい。(彼女の英語ウィキペディア)
 こんな恐るべき子の親になってみたいもんだ。
 しかも、美人ときている。
 彼女だったら、音楽映画に、そのままで主役として出演できるだろう。
 フィッシャーついでに昨日のディスカッションの訂正だ。
 彼女のピアノ演奏の曲の最初のURLが間違ってた。(ブログは訂正済み。)正しいのはコレ。↓
http://www.youtube.com/watch?v=um-JtQGDcUM&feature=list_related&playnext=1&list=SP1C296831741BD4F3
 ところで、田中香織さんのピアノ演奏会(コラム#5321、5323)のスポンサーの一つのサイトに、彼女の演奏会評が出ていた。↓
http://kawai-kmf.com/concert-info/2012/02.25/report/
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太田述正コラム#5340(2012.3.5)
<文化について考える(その3)>
→非公開