太田述正コラム#5343(2012.3.7)
<皆さんとディスカッション(続x1484)>
<太田>(ツイッターより)
 グリーの田中良和が、フェースブックの創始者に比肩する若手全球的インターネット企業経営者として、CNNで鳴り物入りで紹介されているね。
http://edition.cnn.com/2012/03/05/business/japan-entrepreneurs-tech/index.html?hpt=hp_mid
 ソーシャル・ゲームの世界って覗いてみたいようなみたくないような・・。
 英国の生徒が覚えてなきゃいけない英国史からの年についての10の質問。(ケンブリッジの教授が出題。)
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/quiz/2012/mar/06/history-dates-quiz
 ボクは全問正解したぞー。
 キミもやってみたら?
<Noranero>(同上)
 チラッ…チラッ… 英語の語彙力の測定テスト~英単語のボキャブラリーレベル計測試験~ – Weblio
http://uwl.weblio.jp/vocab-index
<TA>
 誠に申し訳ありませんが、また橋下市長に関係する質問をさせて下さい。
 まず、最近話題の「大阪市職員基本条例(案)」の前文をお読みください。↓
 「我が国社会の停滞の要因は、社会の変化、特に国際社会の変化に対応できない社会構造にある。これを打破するには、とりわけ、「民」が求める政策を実現することを阻む硬直化した公務員制度を再構築することが求められる。
 我が国は、憲法で公務員の選定・罷免権は国民の権利である(日本国憲法第15条)とし、国民主権をうたっている。しかしながら、日本社会の現状は、統治機構という観点からみると、公僕であるべき「公」が主体となっており、これは是正されなければならない。
 我が国社会の停滞を打破し、「民」主体の社会とするために公務員制度改革を行うことを目指し、この条例を制定する。・・・」
http://www.fukushima32.com/report/img/230930_osakasyokuinkihonjourei.pdf
 おかしなところは山盛りですが、とりわけ興味深いのは、「社会の停滞」の原因は公務員にあるという主張です(私にはそう主張しているようにしか読めません)。
 これに、以前太田さんが引用された文章↓
 「・・・<橋下市長は、>公務員を「身分」から「職業」に変えようとしている。一般企業では不況だとリストラがあり、従業員の数が減らされる。失敗すれば降職や減俸もあるが、公務員の場合はそうではない。定年まで身分が保障され、定年後は天下りもある。公務員は「職業」ではなくひとつの「身分」になっているというのだ。橋下さんはこれを「職業」に変えようとしている。」(コラム#5285。田原総一朗)
 とを併せて読むと、ブルジョワ階級打倒だのプロレタリア革命だのを叫んだ共産主義者の再来のように見えてきます。
 まあ、「よくある役人批判」の類と軽く捉えることも出来るでしょうが、ところで、この手の役人批判(蔑視、敵視)というのは世界共通なのでしょうか。
 これに関し、まず、ギリシャの公務員の「多さ」に関するコラムをお読みください。↓
 「欧州危機の発火点となったギリシャの財政危機に関して、ギリシャの公務員数の多さが指摘されるようになった。例えば、東京新聞の首都アテネ・ルポ「政府は腐敗、国民はデモ」(2011年10月14日)ではこう指摘されている。
 「税金を食いものにしてきた政治家と公務員の共犯関係も危機の一因だ。(中略)1981年、現首相の父アンドレアス・パパンドレウ元首相が樹立した同国初の左派政権は、高福祉型の社会づくりを推進。診察料や学費が原則無料の病院、大学を全国につくり、職員を増やした。放漫財政の懸念も強まる中で、トルコとの緊張関係から軍事費もふくらみ、膨大な財政赤字を抱え込んだ。30年前に27万人にすぎなかった公務員は今や80万人。労働力人口の4分の1、110万人超が公務員との説もあるほど、ギリシャは「公務員天国」と揶揄される。」
 上記データ<(引用元の、OECD諸国の公務員数(2005年)のグラフ)>では、ギリシャの公務員数は、労働力人口の14.1%となっているので、この記事とは明らかに食い違う。世銀WDIによればギリシャの労働力人口(2005年)は510万人であるので、その14.1%は72万人である。OECD調査へのギリシャ政府の回答が過小回答であったか、あるいは記事の説が過大であるか、2005年以降増加したかのどちらかである。複数の組み合わせの可能性もある。脱税や汚職・賄賂が横行しているとされるギリシャで正しい計数を期待するのがそもそも無理なのかも知れない。
 なお、ギリシャの2大労組の1つでゼネストを主導している「ギリシャ公務員連合」(37万人)のイリアス・イリオプロス事務局長(60)は、日本人記者のインタビューにこう答えている(東京新聞2011年10月15日)。
-公務員数が多すぎるとの指摘もある。
 「とんでもない。百万人の怠け者の公務員がいるかのようなイメージが独り歩きしている。公務員の数はこれまであやふやだったが、われわれが集計したところ67万人にすぎない。パパンドレウ首相の『公務員の待遇を改善する』という甘い言葉を信じて、多くの人が彼の党(全ギリシャ社会主義運動)に投票してしまったが、(その後公務員削減に転じた)彼を信じている人間はもう少ない。もちろん全員がいい公務員でないのは確かだが、政党と公務員との癒着や腐敗は過去のことだ」」
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/5192.html
 ギリシャの財政破綻の原因を公務員の「多さ」と報じているのは、日本のメディアだけなのでしょうか。仮に日本だけとすると、そのような報道になったのは、日本の公務員が異常に少ない(典拠は上記引用元のOECD諸国の公務員数(2005年)のグラフ。あるいはコラム#866)ことからくる誤解か、橋下市長のような異常な(あるいは異常かつ一般的な)役人蔑視・敵視による偏見によるものと考えられます(何となくですが、私は後者が原因のように思います)。
 橋下市長のような類の役人批判、蔑視・敵視思想というのは、世界共通どの国にもある類の話なのでしょうか。それとも日本特有のものなのでしょうか。
<太田>
>ギリシャの財政破綻の原因を公務員の「多さ」と報じているのは、日本のメディアだけなのでしょうか。
 ギリシャ人の労働時間は短いという話(コラム#5325)と同様、ギリシャの公務員は多すぎるという話も神話に過ぎません。
 しかし、下掲の論考↓のタイトルからも推察できるように、この神話は、結構日本以外にも普及しているようです。
 
 Public Sector Employment in Greece — Myths and Realities
 The debate over Greek public sector employment is characterised by a lack of real data and much stereotyping. In 2011, Greece’s public sector employment is 8% of the population and 18% of the active labour force. In the United States, public employment accounts for 7% of the total population and 15% of the labour force. Greece, however, has an extensive public provision of education and healthcare, whereas in the United States these functions are largely provide by the private sector. The OECD confirms this: “Greece has one of the lowest rates of public employment among OECD countries, with general government employing just 7.9% of the total labour force in 2008.”・・・
http://www.philip-atticus.com/2011/09/public-sector-employment-in-greece.html
 現実には、この論考↑が記しているように、(労働時間の話同様、)ギリシャの公務員数は、OECD諸国中、最も対人口比や対労働者総数比で少ない国の一人なのであり、この話もまた、文字通り神話なのです。
 さて、「役人批判、蔑視・敵視思想」(以下、「」という)について、インターネットで国際比較できるか調べたかったのですが、適当なサイトが見つかりませんでした。
 しかし、調べるまでもなく、自由民主主義体制の国で「」なんて通常存在するわけがありません。
 なぜなら、「」は、公務員を使う政治家、ひいてはこれら政治家を選出した自分達自身に唾するというマゾ的なトンデモ「批判」でありトンデモ「思想」だからです。
<ΒΒΒΒΒ>(「たった一人の反乱」より)
http://www.youtube.com/watch?v=pr_iT-qF34c&feature=related?
「彼女の歌が評価されない日本の音楽業界は腐ってる。・・・
 トイレのなんとかより断然コッチだろ
 売れはしなかったが必ず生き残る曲だよ・・・
 名曲? ・・・
 俺も親父に言いたかったなあ?」
http://www.youtube.com/watch?v=DAcPPta0Gkw&feature=related
<太田>
 だけど、曲も歌詞も植村花菜「トイレの神様」↓チックだと思わない?
http://www.youtube.com/watch?v=Z2VoEN1iooE
 それでは、その他の記事の紹介です。
 だから、恩給制度を復活して天下りを厳禁すべきなんよ。↓
 「・・・二〇〇九年当時、六百十四の厚年基金があり、三分の二近くの三百九十九基金の理事などに六百四十六人の社保庁OBなどが天下っていた。・・・」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2012030702000044.html
 (対テロ戦争なる有事の下にある)米国では、(オバマ)大統領は、「外国にいる」米国人たる敵性(テロリスト)容疑者の殺害を命じうる、と司法長官が明言した。↓
 ・・・In his speech,・・・U.S. Attorney General Eric Holder・・・was clear and unambiguous on only one point: “The president may use force abroad against a senior operational leader of a foreign terrorist organization with which the United States is at war — even if that individual happens to be a U.S. citizen.” The use of the word “abroad” is interesting because senior administration officials have previously asserted that the president may kill an American anywhere and anytime, including within the United States.・・・
http://www.foreignpolicy.com/articles/2012/03/06/obama_s_kill_doctrine
 チンパンジー、カプチン猿、ペンギンの雌も売春行為を行うとさ。それぞれ、カネに相当するのは・・。↓
 ・・・ Female chimpanzees living in the Ivory Coast have been observed to trade sex for meat. In one experiment capuchin monkeys were taught to use silver discs as a sort of money (they could be redeemed for grapes), and it wasn’t long before one monkey exchanged one of the tokens for sex. Dr. Fiona Hunter, a researcher at Cambridge university, observedFemale penguins in Antarctica trading sex for stones and pebbles. Adelie penguins need rocks to build their nests, and some females–though they already had a mating partner–would have sex with a single male while away and then take some of his stones. While the females may have had other motives than gathering pebbles, Hunter noted that “stones are the valuable currency in penguin terms,” and penguins are usually very protective of them.・・・
http://www.slate.com/articles/news_and_politics/explainer/2012/03/rush_limbaugh_calls_sandra_fluke_a_prostitute_is_prostitution_really_the_world_s_oldest_profession_.html
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<Anonymous:翻訳>
 太田コラム#5341より。
 ミャンマーに対する経済制裁を、依然、維持すべきだとするバカバカしい主張だ。
 ミャンマーの変化をもたらした決定的要素は決して経済制裁じゃないというのに・・。↓
 <6年前にミャンマーに対する経済制裁はむしろ逆効果である、と指摘した英国の元駐ミャンマー大使の指摘は、(このコラムニストの意見は違うけど)正しいさ。↓>
 ・・・元駐タイ英国大使であるデレク・トンキン(現在はネットワーク・ミャンマーの代表)は、より柔軟なアプローチを政府に対し求め、2006年にこう述べた「制裁を課すのはただ状況を悪化させただけで、力により軍事政権を極度に包囲した事は、不幸にもビルマの人々の解放を延ばした。私は自らのミャンマー訪問経験の中で、制裁が自由を成し遂げる助けになると考える人に出会ったことが無い。」
 しかし、その見解はもはや妥当ではない。・・・
 ・・・ミャンマーは、半世紀、軍の支配下にあるが、20年を超える経済制裁は最終的にうまくいっているように見える。それは、ビルマの人々が真に自由になりえるまで圧力を維持するに足る十分な理由だ。
<太田>
 ボクのコラム#5341での「解説」、元駐タイ大使を元駐ミャンマー大使と誤記してたね。(ブログは修正済み。)
 さて、’more than’ をあなたは「以上」と訳したけれど、細かいようだが、「を超える」と直した。
 その理由は、下掲↓の下の方の「想像以上である」の解説の箇所を見て欲しい。
http://ejje.weblio.jp/content/%E4%BB%A5%E4%B8%8A
 よって、9-5=4点、さしあげます。
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太田述正コラム#5344(2012.3.7)
<文化について考える(その5)>
→非公開