太田述正コラム#5407(2012.4.8)
<皆さんとディスカッション(続x1516)>
<太田>(ツイッターより)
 カシミールの印パの停戦ライン北端の高度6千数百mのサイチェン氷河地区にあるパキスタン軍基地が雪崩に襲われ100~150人の兵士が生き埋めになった。
http://www.guardian.co.uk/world/2012/apr/07/pakistan-avalanche-rescuers-search-soldiers
 この悲劇にはパキスタンのみならずインドにも責任がある。
 もちろん、旧宗主国の英国の責任も<忘れちゃいけない>。
 正当防衛ならぬ正当攻撃を認めたStand Your Ground法を導入した米国の州がどこか、及びこの法の普及に伴ってどんなに正当殺人が増えてきたか、が一目で分かるよ。
http://www.washingtonpost.com/politics/2012/04/07/gIQA82t61S_graphic.html?hpid=z2
 西部劇の時代へと逆戻りした米国!
 訪米するなら場所を選ばないと危険だぞ。
 女の子が6歳の時の、21歳のプロボクサーで子供が大好きだったカシアス・クレイ(モハメッド・アリ)との出会いの写真をどうぞ。
 その11年後、彼女はアリとの結婚を予感し、23年後、本当に二人は結婚した。
http://www.nytimes.com/interactive/2012/04/08/magazine/mag-08lives.html?ref=magazine
<TA>
 北朝鮮による「衛星」打ち上げに対しての日本の対応について質問させて下さい。
 「一体何から何を守るのか。長距離弾道ミサイル発射とみられる北朝鮮の「衛星」打ち上げに備え、防衛省が石垣島に展開した地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の警備で、陸上自衛隊員に実弾を装填した小銃や拳銃を携行させることが明らかになった。自衛隊施設以外では国内で初めてのことだ。・・・」(「琉球新報」の記事ですが、「世間」の反応も観られる「痛いニュース」のURLを貼ります)
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1706250.html
 まず、(「琉球新報」の論旨とは異なりますが)この「衛星」に対して、ミサイル発射実験の妨害という意図の場合を除き、PAC-3による撃墜等の直接の武力行使を準備する意味・メリットは一切ないと理解して間違いないでしょうか。↓
 「・・・実際に迎撃が必要となる事態が生起する蓋然性は非常に低い。また、そもそも日本のミサイル防衛システムは、今回のように日本を飛び越える飛翔体の迎撃ではなく、日本を狙ったミサイルの迎撃用である。また、ミサイルそのものではなく、落下してくる部品を迎撃するような事態はミサイル防衛では想定されていない。」
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2012040600011.html?iref=webronza
 つまり、日本の対応は、現政権による単なる国内向けの政治パフォーマンス、及び、自衛隊(制服組?)による日本国民に向けての軍事的には無意味な単なるアピール(「ソ連脅威論」と同種・同目的)にすぎないのでしょうか。
 「衛星」(から落下してくる部品)を撃ち落とす準備及び行為は、グローバル・スタンダードから言って、戦争行為になるのでしょうか。現在の日本は、「戦時」ということになるのでしょうか。
 基地内で軍人がこういった銃器を携行することは、グローバル・スタンダードから言って当たり前のことなのでしょうか。当たり前か否かは戦時・平時で変わるのでしょうか。
 銃器の携行については軍事の初歩の初歩のような質問なのでしょうが、「右」・「左」、世間および「世間」の論調を聞いていると頭がおかしくなりそうなので、お助け頂ければ幸いです。
<太田>
>「衛星」(から落下してくる部品)を撃ち落とす準備及び行為は、グローバル・スタンダードから言って、戦争行為になるのでしょうか。
 なるわけがありません。
 ま、しかし、沖縄での準備は、落下部品を迎撃しても基本的に海上でのことだから地上に落下破片被害はまず生じないでしょうが、東京圏での準備は、迎撃するのとしないのと、どちらが被害が大きくなるのか、にわかには分かりませんね。
 なお、沖縄での準備は、有事にグアムを狙って発射されるホンモノの北朝鮮のミサイルを中途で迎撃すること・・文字通りの集団的自衛権の行使・・のよい訓練になることは確かでしょう。
>現在の日本は、「戦時」ということになるのでしょうか。
 平時です。
>基地内で軍人が<装備品防御のために>こういった銃器を携行することは、グローバル・スタンダードから言って当たり前のことなのでしょうか。当たり前か否かは戦時・平時で変わるのでしょうか。
 当たり前というより義務でしょう。奪われたら大変なことになりますし、破壊されても大損になります。
 これは、戦時でも平時でも変わりません。
 ついでに、WSJ上のここ数日の関連記事を紹介しておきましょう。
 飛んでいる「ミサイル」を撃ち落とせ、と叫ぶコラム。↓
 ・・・This time, the U.S., along with its allies South Korea and Japan, should consider blowing the North’s missile out of the sky.・・・
 <関連諸国連決議と同盟諸条約に基づき、この「ミサイル」は違法で撃ち落とすことは合法だってさ。↓>
 It can be justified with reference to U.N. resolutions and long-standing self-defense pacts with Asian allies. ・・・
 <そうすりゃ、北朝鮮も少しは言動を改めようとするだろうって。↓>
  Taking military action against an illegal missile test would show Kim and his military leaders that there also is a stick that the West can wield. That alone might cause better behavior・・・
 <だけど、米国自身、そうしようとは全くしていない、と嘆く。↓>
 Despite the unprecedented threat, there is no indication that the White House is thinking about shooting down the missile. The Pentagon is doing the same things it did last time the North shot off ballistic missiles in 2009: It’s moving some ships to the area, sending a radar platform into Asian waters and assuring our friends that we stand by them.・・・
http://online.wsj.com/article/SB10001424052702303299604577323412088526458.html
 日本の「迎撃」準備を取り上げた記事だ。↓
 <1998年には何もせず(できず)、2009年には「迎撃」態勢をとった。↓>
 ・・・Japan has seen two North Korean missiles fly over its northern region, in August 1998 and April 2009. Japan deployed ballistic-missile defenses in the latter case. ・・・
 <今回は、前2回と違って沖縄上空を通過するのが大きな違い。何て立って沖縄は、日中の接点だからだとさ。↓>
 This time, North Korea says it will launch in a southerly, not an easterly, direction. That means the rocket is expected to pass high over Okinawan islands in the East China Sea, an area that has become a security concern for Tokyo amid disputes with China and worries over that country’s increasing military profile.・・・
 <3隻のイージス艦(SM-3搭載)と8個パトリオット(PAC3)中隊中4個を沖縄に、4個を東京圏に配備する。↓>
 It is mobilizing three Aegis-equipped ships, which carry SM-3 missiles, and is deploying eight land-based Patriot missile batteries: four on Okinawan islands, and four in Tokyo and surrounding areas.
 <北朝鮮のおかげで、自衛隊は絶好の訓練ができる、と軍事アナリストの前田哲男は語る。↓>
 ”The Ministry of Defense and the Self-Defense Forces must be thankful to Pyongyang for providing a chance for training under such real circumstances,” said Tetsuo Maeda, a Japanese military analyst.・・・
http://online.wsj.com/article/SB10001424052702304072004577327132139129246.html?mod=WSJ_World_LEFTSecondNews
 それでは、その他の記事の紹介です。
 これで宗主国サマ政府が同様の申し入れをしてきたら・・。↓
 「米国生命保険協会(ACLI)など米国と欧州など15の業界団体は6日、民主、自民、公明3党が衆院に共同提出した郵政民営化法改正案に対し、「深い懸念」を表明する共同声明を発表した。・・・」
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20120407-OYT1T00319.htm
 一事が万事だよ。
 現在の韓国は、日本帝国がつくったってこと。
 かわいいねえ。↓
 「韓国のデパートで今も行われている日本式朝礼・・・」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/04/08/2012040800049.html
 
 天下の朝鮮日報の記者がこんな不正確なコラム書いちゃダメじゃん。↓
 「・・・琉球王国は、・・・1609年に日本による最初の侵略を受けてからも、1年に2回中国に朝貢して海上貿易権を維持し、一方で中国に隠れて日本にも使節を派遣した。・・・
 沖縄<戦で、>・・・住民たちは「玉砕作戦」という命令に従い、集団自決したり、日本軍に虐殺されたりした。・・・」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/04/08/2012040800044.html
          
 重要なコラムだが、やっぱ最初の一文は不正確でいただけないな。(筆者は前東京特派員。)↓
 「韓国は在日韓国人に対し、一種の負い目意識を持っている。国を奪われ、日本に強制連行された同胞とその子孫だからだ。・・・」
 在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)系に属するが韓国籍を持つ人は5万人程度・・・
 <これは、>歴史も理念も良心も見られない便宜上の選択だ・・・
 彼ら<は>・・・盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権下で(韓国系の)民団に浸透し、組織を掌握<した。>・・・今月の韓国総選挙では<彼らの>動きが見られないものの、彼らが組織的影響力を示すことのできる12月の大統領選で本性を表すこともあり得る。転向の形跡が見られない「主体(チュチェ)思想派」(主思派)出身者が今回の総選挙で国会入りを目指しているのも、韓国の選挙に親北朝鮮勢力が介入する一連の流れと無関係ではない。」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/04/02/2012040201371.html
 ブラジル経済の奇跡は終わったってさ。
 関心ある方は、記事全体を読んでいただくことにして、些末な事実を紹介しよう。↓
 The end of the Brazilian miracle.・・・
 <ブラジルを未来の国と形容したのは、かのツヴァイクだった。↓>
 ・・・the Austrian writer Stefan Zweig, best known in Brazil as the author of a 1941 book Brazil: A Land of the Future・・・
 <ブラジルの陽気さにはサウダーデが表裏のように伴っているところ、そのことを象徴するボサノバの歌がある。↓>
  Brazil’s most venerated composer, the late Bossa Nova icon Tom Jobim, and his partner Vinicius de Moraes once wrote a song entitled Happiness with a refrain that notes, “Sadness never ends/Happiness does.”・・・
 <それが、これだ。↓>
< http://www.youtube.com/watch?v=iVFpYxTV54E >
http://www.foreignpolicy.com/articles/2012/04/07/carnaval_is_over?page=full
 女性の第二次性徴の始まりが早まっていると前に記した(コラム#5391)が、男性の声変わりの時期も早まりつつあって、ドイツの少年合唱団は困ってるって。↓
 Leipzig’s St. Thomas Boys Choir copes with voices deepening at a younger age・・・
http://www.washingtonpost.com/world/europe/leipzigs-st-thomas-boys-choir-deals-with-change/2012/04/07/gIQAYaXC2S_story.html?hpid=z1
<mk2:翻訳>
 コラム#5397より:
 パンが人気になるにつれ、安く腹を満たしてくれる小麦製の中華料理も人気になった。日本史家のジョージ・ソルトが主張するように、大量のメリケン粉(アメリカ製の小麦粉)と中華式の調理法の知識を身に付けた旧軍人達の中国からの帰還が結びつき、それが餃子(肉入りの蒸し団子)や中華そば(だし汁に入った小麦の麺、後程、ラーメンとして知られるようになる)の流行をもたらしたのだ。
 1950年代半ば、日本における共産主義の恐怖を防いだ後、アメリカの日本に対する援助の根拠は、より一層、商業的な様相を帯びるようになった。そして軍需産業の建て直しに熱心な日本政府は、嬉々としてアメリカと協定を結んだ。1954年から1956年の間、二国は、日本がアメリカの(大量にある)余剰小麦を買い受けることを承諾する、という内容の一連の合意書を交わした。その見返りに、一連の抜かりのない工作を通じて、アメリカは日本の兵器産業に資金を貸し付けたのだ。
 プロパガンダが総出で行われた期間、日本人に対して、米からパンに替えるよう勧める全国的宣伝が日米両政府の共同の指揮で始められた。・・・
 最も大きな効果をあげたのは学校給食制度だった。占領期間にアメリカによって始められたその計画は、日本の生徒達に毎日、パン、粉ミルクそして肉入りのシチューなどが含まれた食事を保証するものであった。・・・
 一旦、インスタントラーメンが登場すると、もう後戻りすることはなかった。1958年に台湾出身の安藤百福という実業家によって、アメリカ産流入小麦を消化する目的で創り出されたインスタントラーメンは、当初、露店の作りたてのラーメン一杯分よりもはるかに高価な物であった。しかし、それはすぐに中流層にとっての珍品から、時間に拘束された労働者にとって経済的で便利な主食に進化した。1961年、安藤の会社である日清は5億袋を売り上げ、1966年には25億を凌駕していた。・・・
<太田>
 パンパカパーン!
 23-10=13ポイントですね。
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太田述正コラム#5408(2012.4.8)
<日本・法王庁「同盟」(その3)>
→非公開