太田述正コラム#5528(2012.6.10)
<皆さんとディスカッション(続x1571)>
<太田>(ツイッターより)
 「日本の国家イメージが世界一であるワケ…中国は思いあがってうぬぼれたり、逆に極端に自分を過小評価したりしてはならない。さまざまな角度から自分や日本を見つめ直し、自分のなすべきことをすることが一番重要である。」
http://j.people.com.cn/94475/7839553.html
 自戒的ヨイショ記事であるぞな。
<QCWgTivy0>(「たった一人の反乱」より)
 ↓何でこんな結論になっちゃうんだ?
 「官邸の初動、現場への「過剰介入」で混乱招く 国会原発事故調…」
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS0901J_Z00C12A6MM8000/
 菅氏ら官邸側の「過剰な介入」としては、福島第1原発の吉田昌郎前所長ら現場に状況を直接確認したことなどを挙げた。
原子炉格納容器から気体を放出する「ベント」の遅れや海水注入の中断問題などを念頭に「官邸と発電所が直接やり取りする、本来法律が予定しない情報伝達があった」と批判した。
 政府の現場介入を巡っては、3月14日に東電の清水前社長らが政府に福島第1原発からの「全面撤退」を求めたとされる問題が焦点となった。
政府側が東電の申し出を現場から全員が避難する「全面撤退」だと受け止めたのに対し、国会事故調は「東電が全面撤退を決定した形跡は見受けられない」と結論付けた。
<Mbx1a15T0>(同上)
 一部退避(撤退)なのか全面退避(撤退)なのかはっきり言わなかった清水(*1,*2)を、3月15日午前4時17分官邸に呼んだところ、清水は菅に「もちろん撤退などありえません。」(*3)と回答。
 同日午前5時35分、菅は東電に乗り込んで、「『逃げようとしたのはおまえか。おまえか』と一人一人指を指していったという」(*4)事実関係だった。
 ところが、菅は国会事故調に対して「清水社長が撤退しないと言ったんだということを言われていますが、少なくとも私の前で自らが言われたことはありません。」(*5)と、2011年4月18日参議院予算委員会で自分が言ったこと(*3)を否定したもんだから、国会事故調の菅に対する心象が悪くなったのかな?
*1「こうした情報から考えて、私は状況的には「全面撤退ではなかった」という東電の説明には少し無理があると感じている。
 東電側が「全面撤退ではなく、必要な人員は残します」とどこかの時点でいっていれば、あるいは、「部分撤退の内容」を少しでも示していれば菅首相はじめ官邸側はこんな反応をしなかったと思う。それを言ったデータはない。
 炉を制御する人間を残す程度の撤退ならば、東電社長自らが夜中に何度も保安院や官邸に電話をかけたのも不自然だ。政府事故調や国会事故調は、このてんまつを明らかにしなければならない。」
*2「15日の時点では、緊急対応メンバー以外を2Fに移動させる趣旨を明確に伝えられなかった(「退避」という概念が常に「一部退避」であると解釈するのは無理)。」
*3「2011年4月18日参議院予算委員会での菅総理の答弁では、「どうなんです。撤退なんてありえませんよ」と言うと、清水社長は「もちろん撤退などありえません。」と答えたことになっている。」
*4「記事を引用させていただく。
 【菅氏は居並ぶ東電幹部に対して、『逃げようとしたのはおまえか。おまえか』と一人一人指を指していったという。……
 東電側はこの際も通常通り録音を行おうとしたが、同行者の一人が録音をしないように働きかけたと証言している。働きかけた同行者が誰かは判然としていない。】(以上)」
*5「「私の方から清水社長に対して、撤退はありませんよということを申し上げました。それに対して清水社長は、はい、分かりました、そういうふうに答えられました。」
 「清水社長が撤退しないと言ったんだということを言われていますが、少なくとも私の前で自らが言われたことはありません。」
 「私が撤退はありませんよと言ったときに、そんなことは言っていないとか・・・そういう反論が一切なくてそのまま受け入れられた。」(菅元総理の国会事故調での発言)」
*1、*4
http://astand.asahi.com/magazine/wrscience/2012032000009.html
*2、*3、*5
http://www.naiic.jp/wp-content/uploads/2012/06/18thCM_PresentationFinal_v2.pdf
<QCWgTivy0>(同上)
 うーん、その部分の菅の記憶の曖昧さで、ここまで官邸に厳しい評価になるのはねえ…。
 当事者を一堂に集めて証言させた方が真相に近づけたんじゃないのかなあ。
 あと<上で記した>リンク先、俺が見たときよりだいぶ書き換わってるね。(汗)
<太田>
 前にも書いたと思うけど、繰り返しておく。
 かなり全球的標準からズレるに至っていたところの、先の大戦の頃の日本軍においてさえ、こんな、中央と出先との齟齬なんて聞いたことがない。
 かくも重要な話を文書(含む電信)で交わさないってんだから、いかに戦後日本が安全保障/危機管理を忘れちゃってるかということだな。
 メールじゃなくて、FAXを使っていた・・FAXはメールよりも読み違いが起こり易い・・らしいが、そのFAXすら使わなかったんだもんね。
 なお、本件に限らず、原発事故対処の初動に関して、東電側ではなく、政府側を批判する連中は、およそ安全保障/危機管理感覚が欠如している、と思った方がいいだろうね。
<KC>
 太田様、引越しお疲れ様です。
≫KCさん、これで平仄があっているでしょうか?≪(コラム#5526。太田)
 了解しました。
 あと、ブログに公開された、以下の部分の訂正ができていません。
#5516(2012.6.3)皆さんとディスカッション(続x1566)
#5518(2012.6.4)皆さんとディスカッション(続x1567)
#5522(2012.6.7)皆さんとディスカッション(続x1568)
#5524(2012.6.8)皆さんとディスカッション(続x1569)
<太田>
 ブログの訂正は、OKが出てからやろうと思っていた次第です。
 OKが得られたという理解の下、その後、ブログを直しましたが、ご確認をお願いします。
 なお、「#5515(2012.6.4)皆さんとディスカッション(続x1568)<(配信忘れ!)>→#5518(2012.6.4)皆さんとディスカッション(続x1567)」と前回記しましたが、このコラムは、ブログにだけはアップしており、有料読者とまぐまぐ(2種)には配信し忘れていたようです。
 それでは、その他の記事の紹介です。
 カネや武器の援助を得て、シリア反体制派の政府側に対する相対的な力が増大しつつあるってさ。↓
 Syria rebels gaining ground, strength・・・
http://www.washingtonpost.com/world/middle_east/syria-rebels-gaining-ground-strength/2012/06/08/gJQAYDB9NV_print.html
 世界的女優の、あのチャン・ツィイー (章子怡)が、何度も(先般失脚した)、あの薄熙来にカネで買われた、という話(デマ?)が出回っている。↓
 ・・・When the rumor broke that Chinese film star Zhang Ziyi had been paid for sex with disgraced Communist Party strongman Bo Xilai, the story grabbed headlines around the world. But in China, where many believe that liaisons like this are just part of doing business, few eyebrows were raised by the allegations.・・・
 <この話はともかくとして、中共で、女優の卵達が肉体を武器に成功を手に入れる、という図式はかなり一般的に見られるらしい。↓>
 Yet insiders say the problem of trading sex for favors may be more prominent among young star wannabes, who’ve not made it in the industry yet. It’s no secret that expensive cars pile up outside the gates of the Beijing Film Academy, the Central Academy of Drama, and other prestigious arts schools around the city, waiting to pick up students as they leave campus.・・・
 <これは、現在の中共におけるモラルの崩壊の一徴表であるというわけ。↓>
 Observers say the trend is a sign of the moral decay in China that is a byproduct of the country’s breakneck economic growth.・・・
http://www.thedailybeast.com/articles/2012/06/09/chinese-not-surprised-by-zhang-ziyi-scandal.print.html
 小笠原諸島の歴史が簡明にまとめられている。日本「帝国」が行った最初の領土拡張の対象が小笠原諸島だったんだと。↓
 ・・・the <Bonin> island was left largely to rule itself until 1875, when Japanese settlers and officials took over in what the historian Daniel Long calls the first act of territorial expansion by a budding Japanese empire.
 <英語をしゃべる欧米系の土着民が住む島がアジアの国によって獲得された、世界史上、唯一のケースだとさ。↓>
 “Chichi Jima was probably the only case where the island was claimed by an Asian power and the natives were English-speaking Westerners,”・・・
 <「土着民」達の下での小笠原諸島は、殺人と一夫多妻制という無法地帯だったって。↓>
 ・・・the island was untouched when sailors’ tales of an “uninhabited paradise” drew the 35-year-old Mr. Savory and about 20 settlers. They eked out a living selling provisions to passing Yankee whalers and British warships.
 <海賊にも何度も襲われ、カネや女達がかっさらわれた。だから、日本政府が支配を及ぼした時、「土着民」はこれを受け容れた、というわけ。↓>
 Many visiting captains remarked on the lawlessness of the island, recording tales of murder and polygamy. It also proved vulnerable to pirates, who in 1849 made off with Mr. Savory’s gold — and his wife. Witnesses later told a passing captain that the abduction was a tall tale: they said the woman, who was much younger than Mr. Savory, eagerly joined the marauders, leading them to his hidden wealth.
 Islanders say that such raids may have led the settlers to peacefully accept the Japanese as rulers, who treated them with benign neglect. ・・・
 <戦後、米国は欧米系だけの復島を許し、ここを核貯蔵庫付きの潜水艦基地として用いたんだねえ。↓>
 After the war, the United States Navy used the island for a submarine base. The Navy allowed the Western-descended settlers to return in 1946, but Japanese former residents were barred from coming back — possibly because of the nuclear warheads that historians say were stored on the island.
 <1968年に日本に返還され、欧米系の人々は米国籍をとる選択肢を与えられ、多くは米国に移住したとさ。↓>
 When the island was returned to Japan in 1968, the Westerners were given a choice of becoming either Japanese or American citizens. Many left for the United States. ・・・
http://www.nytimes.com/2012/06/10/world/asia/fewer-westerners-remain-on-remote-japanese-island.html?ref=world
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太田述正コラム#5529(2012.6.10)
<映画評論32:マンデラの名もなき看守(その3)>
→非公開