太田述正コラム#0118(2003.5.9)
<国際貢献度がビリの日本>

 4月末に米外交専門誌「フォーリン・ポリシー」が発表した発展途上国支援総合指数(http://www.foreignpolicy.com/参照)によれば、日本の成績は先進21カ国中、20位の米国の後塵を拝し、最下位となっています。
 この総合指数は「援助」、「貿易の開放度」、「発展途上国への投資」、「平和維持活動への貢献」、「環境問題への取り組み」、「移民への開放度(難民支援度を含む)」の六つの指数の平均値です。
 ちなみに、
総合順位は、蘭、デンマーク、ポルトガル、ニュージーランド、スイス、スペイン、独、スエーデン、オーストリア、ノルウェー、英、ベルギー、ギリシャ、仏、伊、アイルランド、フィンランド、加、豪、米、日

 「援助」の順位は、デンマーク、スエーデン、蘭、ノルウェー、ベルギー、スイス、仏、英=フィンランド、オーストリア、アイルランド、スペイン、ポルトガル、独、ニュージーランド、加=豪、ギリシャ、伊、日、米、

 「貿易の開放度」の順位は、米、豪=ニュージーランド、蘭=伊、英=ポルトガル=スエーデン、オーストリア=スペイン=デンマーク=独=フィンランド=仏、ギリシャ=ベルギー、アイルランド=加、日、スイス、ノルウェー、

 「発展途上国への投資」の順位は、ポルトガル、スペイン、スイス、蘭、英=ノルウェー、日、オーストリア、アイルランド=ニュージーランド、加、米、スエーデン、フィンランド=仏、豪、伊、独=ベルギー、デンマーク、ギリシャ、 

「平和維持活動への貢献」の順位は、ギリシャ、ノルウエー、デンマーク、ニュージーランド、ポルトガル、伊、仏、独、アイルランド、英、蘭=ベルギー、スペイン、豪、オーストリア、加、フィンランド、米、スエーデン、日、スイス、 

「環境問題への取り組み」の順位は、スイス、スエーデン、独=スペイン、蘭、オーストリア=フィンランド、伊、ポルトガル、英=デンマーク、仏、ギリシャ、ベルギー、日、ニュージーランド、ノルウェー、豪、加、アイルランド、米、 

「移民への開放度」の順位は、ニュージーランド=スイス、ドイツ、オーストリア、加、ノルウェー、アイルランド=ベルギー=蘭、デンマーク、スエーデン、豪、英、米、スペイン、ギリシャ、日、フィンランド、伊、ポルトガル、仏、となっています。
 
 米国の総合成績がふるわないのは、米国が軍事力の整備に力を入れており、この軍事力を背景に世界の警察官としてふるまっている(=軍事力を世界各地に前方展開し、或いは軍事力を世界各地に投入できる態勢を維持し、積極的に発展途上国等に軍事援助を行っている)と自覚していることもあって、その他の国際貢献にまで手が回らない、にもかかわらず軍事力の整備そのものは発展途上国支援総合指数に反映されていないためです。

 フィーリン・ポリシー誌は、米国以外の軍事力も多かれ少なかれこのような国際公共財的性格を帯びているものの、検討の結果軍事力の整備を発展途上国支援総合指数には反映しなかったとしています。
 同誌はその理由の詳細を明らかにしていませんが、
・国際公共財)としての軍事力の役割は、軍事力の本来の役割・・領域主権の確保や外交(国益擁護)の手段・・の外部効果に過ぎないとも言え、軍事力の整備のうちどれだけを国際公共財分としてカウントするかはむつかしい、
・仮にカウントできたとしても、そのうち発展途上地域の平和と安定に費やされる割合を計算することも困難である、
・この計算ができたとしても、「世界の警察官」としての行動が、「世界の暴力団」的行動(=平和と安定を妨げる行動)だと米国以外(とりわけ「取り締まり」の対象になる国・地域・団体)の眼には写る場合がある、等の理由からだと推察されます。

 また米国の「援助」の成績がふるわないのは、米国が「援助」に世界の警察官としての役割を補完する役割しか基本的に与えていない(=「援助」を戦略的に用いている)こと、「援助」の中に私的援助が含まれていないこと(後述)、等が原因です。

 さて、「平和維持活動への貢献」と「援助」での日本の成績はブービーなのですが、よく総合指数の解説を読んでみると、実質ビリだということが分かります。
 「平和維持活動への貢献」が実質ビリだというのは、この指数は、[国連の平和維持活動への拠出金]と[国連及びNATOの平和維持活動人員の派遣数を一人一月あたり1万米ドルで金額に換算したもの]の合計を[GDP]で割って算定しているところ、ビリのスイスは国連に加盟したばかりであるために実績がまだ殆どないという特殊事情があるからです。
 また「援助」が実質ビリだというのは、ODAの対GDP比をベースに、ひもつき度、管理費の割合、政府借款の利子支払額、被援助国の貧困度やガバナンス(清廉度、政治的自由度等)という質の要素を加味して指数を計算しているところ、慈善団体等が行っている私的援助活動が、データが得られない国があるためか、この指数から除かれており、これを加味すれば米国の援助総額は二倍に増え、私的援助活動が低調な日本と活発な(ビリの)米国との順位は大幅に逆転してしまうからです。

 日本がいかに世界の一員であることをわきまえない、利己主義的な国であるかを改めて考えさせられますね。