太田述正コラム#6287(2013.6.24)
<皆さんとディスカッション(続x1940)>
<太田>(ツイッターより)
 スノーデンが香港からモスクワへ。
 更にキューバ経由でベネズエラを目指すらしい。
 香港当局はあえて彼を逮捕せずに逃した。
 出発前の彼の最後っ屁は、中共のインターネット中枢の一つである精華大学をNSAがハッキングしたって話だ。
http://www.bbc.co.uk/news/world-asia-china-23019414
 ご活躍だわねえ。
<太田>
 結局、彼、エクアドルに行くことになりそう。↓
http://www.slate.com/blogs/weigel/2013/06/23/why_ecuador.html
 モスクワの空港に降り立ったスノーデンは、ウィキリークスの法務チーム一員の女性と一緒。↓
 ・・・When the former NSA contractor who leaked top-secret details of U.S. and British surveillance operations landed in Moscow on Sunday, Snowden disembarked from Aeroflot Flight SU213 with Sarah Harrison, a member of the WikiLeaks legal team, by his side.・・・
 <エクアドルの外相も亡命を求められたと明かした。↓>
 On Sunday, WikiLeaks said in a statement that Snowden would petition Ecuador for asylum. The government in Quito — which has granted WikiLeaks founder Julian Assange asylum at its embassy in London — confirmed that it had received an official request for asylum from Snowden.・・・
 <一緒だった女性は、ロンドンのエクアドル大使館に逃げ込んだままのアサンジの側近の一人。↓>
 Harrison, a British citizen, a journalist and a legal researcher, is not a lawyer. But she is considered a close confidant of Assange and a high-level member of WikiLeaks, and her presence suggested the direct involvement of the group’s founder in the decision to aid Snowden. ・・・
http://www.washingtonpost.com/world/wikileaks-aids-snowden-on-the-run/2013/06/23/4fc54630-dc2c-11e2-a484-7b7f79cd66a1_print.html
 <モスクワの空港には駐モスクワ・エクアドル大使も現れたが、彼自身が取材陣にスノーデンはどこだと聞き回るありさま。(スノーデンは空港内のカプセルホテルに泊まったらしい。)↓>
 ・・・The appearance at the airport of Ecuador’s ambassador, Patricio Chavez, added to the melee.
 The envoy appeared lost as he wandered around the terminal, approaching a group of journalists to ask: “Do you know where he is? Is he coming here?” A reporter replied: “We thought you did.”・・・
http://www.guardian.co.uk/world/2013/jun/23/edward-snowden-gchq
 関連報道だ。
 (GCHQは外国同士、及び外国とのインターネット通信だけを傍受してると言ってるが、)英国内の通信の85%は国際ケーブルを通って一旦外国のサーバーに入り、そこからまた英国内に戻って来るんだと。↓
 ・・・Internet traffic is also liable to be routed internationally even if the message is exchanged between two people within the UK. “At one point, I was told that we were getting 85% of all UK domestic traffic — voice, internet, all of it — via these international cables.”・・・
 <NSAはソフトと要員250人を英国に送ったが、これは、英国から米国内の通信を傍受するのが目的ではないかという疑惑がもたれている。↓>
 ・・・the NSA agency has exported its computer programs and 250 of its analysts to operate the system from the UK.・・・
http://www.guardian.co.uk/uk/2013/jun/23/mi5-feared-gchq-went-too-far
 <GCHQは、通信のかなりの部分を傍受し、関心を払う必要のないものを捨て、残りを内容は3日間、メタデータは30日間保存している。↓>
 ・・・GCHQ, assisted by the NSA, intercepts and collects a large fraction of internet traffic coming into and out of the UK. This is then filtered to get rid of uninteresting content, and what remains is stored for a period of time — three days for content and 30 days for metadata.・・・
 <GCHQは国際ケーブル1600中1500から傍受したことがあり、現在、400から同時傍受できる態勢を築こうとしている。↓>
 GCHQ was able to survey about 1,500 of the 1,600 or so high-capacity cables in and out of the UK at any one time, and aspired to harvest information from 400 or so at once — a quarter of all traffic.
 <現在までのところ、200の国際ケーブル(光ファイバー回線)に傍受端子を取り付け終わっている。↓>
 As of last year, the agency had gone halfway, attaching probes to 200 fibre-optic cables, each with a capacity of 10 gigabits per second. In theory, that gave GCHQ access to a flow of 21.6 petabytes in a day, equivalent to 192 times the British Library’s entire book collection.
 <GCHQは英国内通信は自動的に除外していると言っているが、英国内通信の定義が定かではないし、そもそもそんなことができるのか、という疑問がある。↓>
 GCHQ documents say efforts are made to automatically filter out UK-to-UK communications, but it is unclear how this would be defined, or whether it would even be possible in many cases.
 <例えば、Gメールは、英国内で送ろうとしても、英国外のサーバー経由で通信が行われ、これを自動的に除外なんてできそうにない。↓>
 For example, an email sent using Gmail or Yahoo from one UK citizen to another would be very likely to travel through servers outside the UK. Distinguishing these from communications between people in the UK and outside would be a difficult task.・・・
http://www.guardian.co.uk/uk/2013/jun/21/how-does-gchq-internet-surveillance-work
<xrWA2eR2>(「たった一人の反乱(避難所)」より)
 <2KibsC4Qクンの言ってること(コラム#6285)、>すんません<が、>全く説得力がないんですが。
≫ 「尖閣問題」
選択肢
一、日中両国による尖閣問題棚上げ(日本の譲歩)
二、尖閣の現状維持(領土問題なし)≪
 <一>は、双方が合意のもとで棚上げを最終解決にするときだけですよね。
 中国や韓国との交渉ごとは、一旦こちらが譲歩したら、向こうが労せず戦線を進めて、こちらは防衛線を下げて最終的に全てを失うことになると、この60年間学習してこなかったのですか?
<2KibsC4Q>(同上)
>中国や韓国との交渉ごとは
 尖閣問題は日中間の問題です(台湾はここでは除外)。
 韓国は関係なし。
 戦後、中国と領土問題ありましたか?
 日清戦争で獲得した台湾を清は引き渡しを拒みましたか?
 後、ここで言及しているのはセロトニントランスポーターのSS型が多い日本人の決断の傾向です。
 ここは損失が見込まれる選択なのでギャンブル的選択(損失の全額解消≒現状維持)を選択すると予想。
 アメリカ関係で言えば、今年に入っての安倍首相冷遇を見ても、アメリカは尖閣棚上げを望んでいます。
 幕末から終戦までの期間については、横井小楠コンセンサス(帝政ロシア・赤露の脅威)と言う大きなフレーム(脅威なのでLossFrame)があって、この大きなLossFrameの下でLossFrame/Gambleの意志決定が成されたと言うのが私の解釈です。
日米開戦前夜の米国の脅威と言うのは、横井小楠コンセンサスと言う大きなLossFrameの中の小さなLossFrameであった点は忘れないで下さい。
 (日本人にはLL型はほぼいないので、日露戦争・日中太平洋戦争はGainFrame/Gambleではない。
 すなわち、日露戦争・日中太平洋戦争はただの領土獲得的侵略ではないことは、遺伝子が示している、なんてね。)
 戦後については、吉田ドクトリンと言う大きなフレーム(経済的利得があるので日本人の多くはGainFrameと思っている)があって、この大きなGainFrameの下でGainFrame/Sureの意志決定が成されてきたし、今もなされていると言うのが私の解釈です。
 ここで何がSureで何がGambleかを決定するのは米国の支持・反対であって、日本単独では意思決定できない、つまりSS遺伝子だけからは予測できないのではないでしょうか。
 (SS遺伝子から離れて、米国の意向を論じなくてはならなくなります。)
<xrWA2eR2>(同上)
 とりあえず、セロトニントランスポーターのSS型が少ないアメリカ人、イギリス人、ドイツ人、スペイン人はこのような領土問題では、どう行動するのか、セロトニントランスポーターのSS型が多い日本人と違う決断の傾向があることを、立証してくれ。
それが出来たら、信用しよう。
 太平洋戦争だけでなく、日清・日露戦争も損失見込み選択でのギャンブル選択だと思ってますよ。
>戦後については、吉田ドクトリンという…日本人の多くはgain frameと思っている
 では、太田さんが提唱している日本独立論には否定的ですか?
>SS遺伝子から離れて、米国の意向を論じなくてはならなくなります
 現在の喫緊の課題である尖閣について述べられてないですが。
 この問題は親中国の米国が戦争・紛争に関わりたくないのは明白です。
 尖閣が中国領であろうが日本領であろうが、米国の利益に問題がないからです。
 沖縄までいくと何らかの動きがあるでしょうが。
 昨年の石原知事の尖閣国有化に際してCIA、検察特捜部の動きがなかった事からも言えるでしょう。
 つまり、尖閣に関しては日本政府の判断が優先されると考えるのが自然ではないでしょうか?
<2KibsC4Q>(同上)
 LL型に関しては自主独立というだけでわからない。
 私としては日本人論の中の分析ツールとしてSS型に言及してるだけ。
>では、太田さんが提唱している日本独立論には否定的ですか?
 答えはいいえ。
 ただし、私がどう思うかではなく、日本人の不特定多数がどう思うかが重要なのですよ。
>後半に関して
 米国は中立なわけでしょ?
 つまり、米国の反対はない≒Sureだと言うことです。
 現在において第一義的な参照点は米国で、あなたの論じているのは第二義的参照点だというのが、私の見解です。
 参照点を変えさせれば、フレームが変わるんですよ、それがフレーミング効果なんです。
 繰り返しになりますが、私個人がどう思うかではなく、自民党・官僚・不特定多数の日本人がどう思うかですよ。
<xrWA2eR2>(同上)
 わからないでは話にならないでしょう。
 SS型は日本人だけではなく、中国人や韓国人も同じなのだから、日本人論に適用することには、限界があるでしょう。
 ましてや、複雑な事情がからむ領土問題で、SS型だけを頼りに行動を決めるのは無意味だ。
>日本人の不特定多数がどう思うかが重要
 まあ、その通りですが。価値判断よりは思考過程を重要視する人でしょうか。
>参照点を変えれば、フレームが変わる
 確かに尖閣問題は参照点は中国です。
 loss frameでのrisk takeですから、SS型で説明できると思いますが。
<2KibsC4Q>(同上)
 フレーミング効果の基礎となるのがプロスペクト理論です。
 「プロスペクト理論の国際政治への応用に伴う問題点1(分析上の問題点)
 プロスペクト理論は、個人の選択に関する理論であるが、国際政治では国家(や他の主体)による戦略的相互作用が行われる。
 即ち、
 1)個人レベルの選好及びフレームがどのように国家という集合体の選好とフレームに収斂していくか、
 2)複数の主体のそれぞれの選択がどのような相互作用を伴うか、
の2点が理論化されなければならない。」
http://www.geocities.jp/kubota_norihito/prospect.htm
 自分は、1)とは逆に、最上位にある吉田ドクトリンというフレームが、下位のフレームに強い作用を及ぼす場合があると考えています。
 最上位の吉田ドクトリン上で例えばGainFrame/Sure(現状維持を含む)であることが確保された場合、下位のフレームもGainFrameの性格を帯び、また米国の明確な反対が無い選択肢はSureの性格を帯びると考えます。
 2)に関して、吉田ドクトリン上でGainframe・LossFrame・Sure・Gambleは米国の意思決定により規定され、日本の意志決定(SS遺伝子)の寄与はほとんどないと考えます。
 (尚、尖閣問題で吉田ドクトリンに大きな変更があったとは考えていません。)
 「プロスペクト理論の国際政治への応用に伴う問題点2(方法論上の問題点)
 プロスペクト理論にとって意思決定者がどのような参照点を持っているかを予め知っている必要がある。しかし、参照点の特定は実証レベルで困難である事が多い。この点に関して、実際の意思決定行動から参照点を推定することは循環になってしまい、方法論上問題がある。実証に際しては意思決定者の期待効用の計算では説明ができないという点を明らかにし、他の要因をコントロールした上でそれぞれの行動を説明しなければならない。」(引用元同じ)
一、日中両国による尖閣問題棚上げ(日本の譲歩)
二、尖閣の現状維持(領土問題なし)
 どちらがSureかGambleかは参照点による選択肢です。
 私はすべての参照点を知りえないので、二がGamble/Sureだとは判断し得ません。
 しかし、米国の明確な反対がない以上、上で述べたことからどちらの選択肢もSureの性格を帯びていると考えます。
 以上2点から、尖閣問題における意思決定は、単に日本人のSS遺伝子によるフレーミング効果上のLossFrame/Gambleとは言えないというのが私の見解です。
<太田>
 誰が誰なのか、ところどころ分からなくなっちゃったが、上記の整理の仕方が間違ってたら、指摘してね。
 人間は本来的にはみんな人間主義的だって言ったって、それが実際に発現するかどうかは歴史的社会的条件いかんなわけだけど、同じことが、セロトニン・トランスポーターの型が同じ人についても言えるんだろね。
それでは、その他の記事の紹介です。
 村上も筆坂も言ってることはまことに正しいが、党内にいた時にそういった趣旨のことを主張はしなかったんだろうし、それぞれ党を辞めた(辞めさせられた)理由は本件に係る意見の相違じゃなかったよな。
 それが問題なんだよ!↓
 「・・・村上正邦元自民党参議院議員会長:安倍・・・は戦後レジームから脱却して「美しい国」「強い日本」を取り戻すんだといってきた。それなのに靖国神社には行かない、尖閣には自衛隊を送らないで、結局ぜーんぶ逃げた。憲法改正だって、第96条、つまり憲法改正の手続きを先行させるといっているが、これこそ逃げです。・・・中身を出すと公明党との連立が危うくなるような雰囲気があるから、これも逃げている。・・・
 筆坂秀世元共産党参院議員・書記長代行:戦後レジームは何も憲法の話だけではなくて、日米安保体制、在日米軍の存在も戦後レジームでしょ。果たしていまの日本は独立国といえるのか。安全保障でも経済でも、アメリカのいうことを聞かずに何もできないじゃないか。そんな状態で自主憲法を制定することなんてできるのか。自民党が1955年にできたときの結党宣言では、自主憲法制定だけじゃなく、外国駐留軍の撤退もはっきり謳っていたんです。憲法9条を改正して軍隊をもち、在日米軍には出ていってもらうと。
 村上:憲法改正の核にアメリカがある。そこから逃げてるから安倍は卑怯なんだ。・・・
 筆坂:・・・護憲派の人々は在日米軍が大嫌いですが、9条と在日米軍はセットで、9条を厳密に守って在日米軍が出て行くと日本は丸裸になって困るわけでしょう。護憲派はリアリズムに欠けている。だから、改憲派も護憲派もアメリカの存在を見て見ぬふりをしてごまかしている。・・・」
http://news.infoseek.co.jp/article/postseven_194603
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太田述正コラム#6288(2013.6.24)
<パナイ号事件(その18)>
→非公開